前の巻で「お盆」の翌朝に龍神が焚き上げられる「火送り神事」に続き、
この巻は「水神祭り」の龍神に住職が目を描き入れる「魂込み神事」から始まった。
そこに「神仏習合の理念にのっとり」と、修験道の温泉場らしい説明をするのも周到だ。
妙や和樹・類・剛(に莉子も加わった)若者たちが青春しつつ温泉街の文化を継承したり、
過疎化・少子化を受けた祭りの存続に向けたアイデアを出したりする一方で、
大女将と湯守の倉石がふと若い頃のことを思い出していたりする。
そんな中、登山道の整備、地元食材を活用したスイーツの開発など、
役場の観光課の類を軸にして、それぞれの世代が温泉街の活性化に動いている。
簡単に上手く転がっていくようなものではかないが、
少しずつ良い方向に積みあがっていくところが心地よい。
そして、若い人が成長したり大切なものを受け継いだりする先には、
当然の帰着として別れもある。
葬儀は、ふだん連絡をしない人に連絡が行き、ふだんなら来ない人が駆け付け、
会えないはずの人に会えたりする場だ。
村八分の例外の二分が、火事と葬儀であったことを思い出す。
それにしても、議員の宮本さんにそんな秘密が隠されていたとは。
それと和樹の弟の智樹については、持ち越しだな。
若い人は大人たちほど簡単に割り切れるものではない。
しかし、心の底から傷つくことが出来るのも、若いうちの特権だ。
4か月1話のスローペースだが、1話が40数ページと長く、
複数の人物を出入りさせながら物語を進めるだけのゆとりがあり、
その分、しっかりと物語をつかみ、きっちりと着地させながら次へ進んでいく。
2巻で春を迎えてから急速にスピードダウンした物語は、ようやく冬に近づている。
ところで、「海街Diary」のすずに対する和樹の呼び方が、
いつのまにか「義理の姉さん」から「鎌倉の義姉」になっている。
このゆっくりとした近づき方も良い。
まだかたくなに後ろ姿しか描かれないけれど。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます