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傷病手当金、出産手当金の不正防止へ算定法変更

2014-11-05 | 労務情報
病気や出産で休職する会社員に健康保険から支給される手当金について、厚生労働省は給付の仕組みを見直す方針を固めました。休む直前の報酬額を実際よりも高く申告し、高額な手当を受け取る不正疑惑が問題になっているためです。急増する医療費を不正防止で少しでも抑える狙いで、来年の通常国会で法改正を目指します。

手当の額の基準になるのは、「月収」で、この月収を日額にした金額の3分の2が休業1日につき支給されます。傷病手当金は最長1年半、出産手当金は原則98日分が支給されます。2012年度は傷病手当金が150万件・計2800億円、出産手当金が22万件・計900億円支給されています。

しかし、事業主と従業員が示し合わせ、申請直前に給料を高くして月収をつり上げ、高額の手当金を受け取る不正の疑いがこの数年、浮上しているようです。
協会けんぽの調べでは、08年10月からの約5年半に、就職から2カ月未満で傷病手当金を受け取った人のうち、標準報酬月額が47段階で最高の121万円の人が174人いました。
また出産手当金では、3,400人が出産予定日の3カ月以内に被保険者資格を得ていた。妊娠7~8カ月ぐらいで雇用されたことになります。出産直前に賃金が突然上がった人も約9,400人いました。こうした事例に、不正な報酬引き上げが含まれている可能性が高いと協会けんぽはみています。


手当金の不正受給は、2009年ごろから問題になってきたようです。しかし報酬つり上げを含む不正が認定されたケースはほとんどありません。2013年度の法改正で不正が疑われる事業主への立ち入り権が協会けんぽに認められました。2013年10月~14年3月に40件に立ち入りし、3件を不適正と認定、2件が申請を取り下げています。
 報酬の引き上げ疑惑については、事業主が高い賃金を実際に支払い、従業員に手当金で払い戻させているのではと疑われるケースもあるようで、この場合は、支払い実態があるため、不正認定はより困難となります。

こうした実態をふまえ、厚労省は参照する標準報酬月額を直前の1カ月ではなく、一定期間の平均にする方針です。具体的には、申請前の1年間の平均を軸に検討する見通しのようです。一方で、雇用期間が参照される期間に満たない場合などでは、支給される手当金は減額される見込みです。

(朝日新聞)