フリーソフトや、フリーのオンラインシステムを使うと、分子生物学の実験に使うソフトウェアにはお金をかけないでも済むことが多いです。
製品としていろいろ良いソフトウェアは販売されているんですが、わたしはフリーのものしか使っていません。
科研費で買おうと思ったこともありましたが、消耗品の方にまわすお金が多すぎて結局買えませんでした。
PCRプライマーの設計は、有名どころではPrimer3というオンラインシステムがあります。
リアルタイムPCR用のプライマー設計にも使えるかどうかは不明です。
タカラバイオでは、プライマー設計のTipsを配布しております。
参考にどうぞ。
わたしがよく使っているのは、DNAClubというフリーウェアです。
かなり古いソフトですが、プライマー設計・制限酵素切断サイト確認が行えます。
ただ、コピーペーストのときに最後の1塩基落ちたり、制限酵素切断の機能があまり充実していないので、わたしはプライマー設計と設計したプライマーのTm計算だけに使っています。
DNAClubはこちらからダウンロードできます。
わたしがRT-PCRのプライマー(サンプル間の遺伝子発現比較)を設計するときの手順は、
(1)Entrez Nucleotide database で目的のmRNAシークエンスデータを手に入れる。
(2)そのシークエンス中のCDSの部分をDNAClubへコピペ。
(3)適切な長さでプライマーセットを選ぶ。
増幅フラグメント長がだいたい300~700bp程度
upstreamとdownstreamのTm値が近いもの(55より上。できれば高いペアを選択)
その他選択条件はタカラバイオのTipsを参考のこと。
(4)選択したプライマーシークエンスを、ブラストサーチ
このプライマーが、
・他の遺伝子配列にマッチしていないか。
・もしgenomic DNAに結合した場合、upstreamとdownstreamとの間隔が何ベースになるかを確認。
→RT-PCR用のプライマー設計で、一番いいのは、cDNAからの増幅産物とgenomic DNAからの増幅産物のサイズが違うように設計することです。
言い替えれば、エクソン上にプライマーをおいて、upstreamとdownstreamのあいだにイントロンが入るように設計する。
これをしておけば、RT(逆転写)しないサンプルでRT-PCRして、もしバンドがでても、サイズがcDNAからの増幅産物よりはイントロン分大きくなるので、得られたプロダクトがcDNA由来と判断しやすい。
ここでもし、ヒトのサンプルを扱っている場合に、他のヒト遺伝子にup/downともに2,3ベース以内の誤差で結合しているようであれば、そのプライマーセットは捨てて、再設計。
まんいち、メインはヒトのサンプルで、将来的にマウスのサンプルも扱うということであれば、マウスmRNAにもヒットしているペアを選んでおくと良いかも...
(5)(4)を通過したプライマーセットをオーダー。
オリゴ合成サービスは、施設内にそういうサービスを行っている部門を持っているところもあるかもしれませんが、わたしの場合(日本での場合)、外注していました。
よくお世話になっていたのは、
・エキシジェン
・ジーンデザイン
・北海道システムサイエンス
です。
渡米してからは、施設内にオリゴ合成サービス部門があるので、そちらにオーダーして翌日には届いて使えます。
(6)注文したプライマーセットが届いたら、まず行うことは、そのプライマーセットがきちんとワークするかどうかを確認します。
(7)グラディエント機能付きサーマルサイクラーを持っている場合、ソフトウェアで計算したTm値-5℃を中心として上下にアニーリング温度を振って、予想バンドサイズでシングルバンドになる温度を求めます。(PCR-その1)
(8)次に、そのバンドが本当に本来増幅されるべきシークエンス由来かどうかを確認します。
方法は大きく2つあります。
(A)シークエンシング
今はほとんど外注だと思いますが、自分でシークエンサーを操作して行う場合、サイクル反応後のエタ沈で70%エタノール洗浄時には、ペレットを崩さないようにチューブをゆっくり動かしてチューブ内壁を洗う程度で十分です。そうしないとペレットがとんで、シークエンサーでのピークが低くなり、きれいに読めなくなります。
シークエンスデータの簡単な確認方法は、そのデータ(AGGTT...)を上述のブラストサーチへペーストし、検索します。 そうすると、マッチした配列を表示してくれるので、その中から標的遺伝子の項目を見ると、××% identicalと表示されます。
シークエンサーで注意が必要なのが、・・・AAAA・・・などとおなじ塩基が何ベースか続く配列です。場合によってはシークエンサーが4塩基ではなく3塩基とシークエンサーのシグナル波形を判断することもあります。
シークエンサーで通常1runで読める長さは5・600bpがいいところなので、たいていはup/down両方から読んでダブルチェックになりますが、それ以上の長さの場合、ダブルチェックできないまたはシークエンス中央部が読めないなんてこともあるかもしれません。
(B)制限酵素切断パターン確認
フラグメント中に切断サイトがある制限酵素3種類程度で切断し、電気泳動し、適切なサイズにバンドが出現するかを確認する。
6配列を認識して切断するシックスカッターやそれ以上の長さのものを選んだ方が無難。4カッターは切断サイトが多くなりすぎる傾向があります。
制限酵素を2種類使って切断する場合の最適なバッファーを探したい場合は、New England Biolab.のDouble Digest Finderが便利です。
(9)以上の確認が終わった段階で、”実験に使えるプライマー”認定がおります。
制限酵素切断サイトの確認によく使っているソフトウェアは、”pDRAW32”というフリーウェアです。
このソフトは、制限酵素切断サイト確認、バーチャル電気泳動パターン確認、プラスミドマップ描画などいろいろ使えるソフトです。
あと、必要なソフトウェアは、プロモーター領域への転写因子結合サイト検索ですが、これはオンラインサービスがあります。
・TFSEARCH(超有名)
・WWW Promoter Scan
どちらも調べたいプロモーター領域のシークエンスをインターネットエクスプローラーなどのブラウザ上でコピペして、ボタンをぽちっで結果が出てきます。
TFSEARCHの場合、最初は閾値をデフォルトのまま検索し、その後閾値を下げていき想定した転写因子が結合できるかどうかを見るやりかたで調べます。
いま行っている実験の中では、上記のようなかんじでフリーウェアで対応していますが、製品版を買うと、もっと楽に実験を進められるんでしょうか...?
研究費が湯水のように使える環境にもしなったら、そういう製品版解析ソフトを買ってみようと思います。
高いんですよね、そういうソフト...
10万円とか、「桁が一つ違う?」と思うような金額です。
製品としていろいろ良いソフトウェアは販売されているんですが、わたしはフリーのものしか使っていません。
科研費で買おうと思ったこともありましたが、消耗品の方にまわすお金が多すぎて結局買えませんでした。
PCRプライマーの設計は、有名どころではPrimer3というオンラインシステムがあります。
リアルタイムPCR用のプライマー設計にも使えるかどうかは不明です。
タカラバイオでは、プライマー設計のTipsを配布しております。
参考にどうぞ。
わたしがよく使っているのは、DNAClubというフリーウェアです。
かなり古いソフトですが、プライマー設計・制限酵素切断サイト確認が行えます。
ただ、コピーペーストのときに最後の1塩基落ちたり、制限酵素切断の機能があまり充実していないので、わたしはプライマー設計と設計したプライマーのTm計算だけに使っています。
DNAClubはこちらからダウンロードできます。
わたしがRT-PCRのプライマー(サンプル間の遺伝子発現比較)を設計するときの手順は、
(1)Entrez Nucleotide database で目的のmRNAシークエンスデータを手に入れる。
(2)そのシークエンス中のCDSの部分をDNAClubへコピペ。
(3)適切な長さでプライマーセットを選ぶ。
増幅フラグメント長がだいたい300~700bp程度
upstreamとdownstreamのTm値が近いもの(55より上。できれば高いペアを選択)
その他選択条件はタカラバイオのTipsを参考のこと。
(4)選択したプライマーシークエンスを、ブラストサーチ
このプライマーが、
・他の遺伝子配列にマッチしていないか。
・もしgenomic DNAに結合した場合、upstreamとdownstreamとの間隔が何ベースになるかを確認。
→RT-PCR用のプライマー設計で、一番いいのは、cDNAからの増幅産物とgenomic DNAからの増幅産物のサイズが違うように設計することです。
言い替えれば、エクソン上にプライマーをおいて、upstreamとdownstreamのあいだにイントロンが入るように設計する。
これをしておけば、RT(逆転写)しないサンプルでRT-PCRして、もしバンドがでても、サイズがcDNAからの増幅産物よりはイントロン分大きくなるので、得られたプロダクトがcDNA由来と判断しやすい。
ここでもし、ヒトのサンプルを扱っている場合に、他のヒト遺伝子にup/downともに2,3ベース以内の誤差で結合しているようであれば、そのプライマーセットは捨てて、再設計。
まんいち、メインはヒトのサンプルで、将来的にマウスのサンプルも扱うということであれば、マウスmRNAにもヒットしているペアを選んでおくと良いかも...
(5)(4)を通過したプライマーセットをオーダー。
オリゴ合成サービスは、施設内にそういうサービスを行っている部門を持っているところもあるかもしれませんが、わたしの場合(日本での場合)、外注していました。
よくお世話になっていたのは、
・エキシジェン
・ジーンデザイン
・北海道システムサイエンス
です。
渡米してからは、施設内にオリゴ合成サービス部門があるので、そちらにオーダーして翌日には届いて使えます。
(6)注文したプライマーセットが届いたら、まず行うことは、そのプライマーセットがきちんとワークするかどうかを確認します。
(7)グラディエント機能付きサーマルサイクラーを持っている場合、ソフトウェアで計算したTm値-5℃を中心として上下にアニーリング温度を振って、予想バンドサイズでシングルバンドになる温度を求めます。(PCR-その1)
(8)次に、そのバンドが本当に本来増幅されるべきシークエンス由来かどうかを確認します。
方法は大きく2つあります。
(A)シークエンシング
今はほとんど外注だと思いますが、自分でシークエンサーを操作して行う場合、サイクル反応後のエタ沈で70%エタノール洗浄時には、ペレットを崩さないようにチューブをゆっくり動かしてチューブ内壁を洗う程度で十分です。そうしないとペレットがとんで、シークエンサーでのピークが低くなり、きれいに読めなくなります。
シークエンスデータの簡単な確認方法は、そのデータ(AGGTT...)を上述のブラストサーチへペーストし、検索します。 そうすると、マッチした配列を表示してくれるので、その中から標的遺伝子の項目を見ると、××% identicalと表示されます。
シークエンサーで注意が必要なのが、・・・AAAA・・・などとおなじ塩基が何ベースか続く配列です。場合によってはシークエンサーが4塩基ではなく3塩基とシークエンサーのシグナル波形を判断することもあります。
シークエンサーで通常1runで読める長さは5・600bpがいいところなので、たいていはup/down両方から読んでダブルチェックになりますが、それ以上の長さの場合、ダブルチェックできないまたはシークエンス中央部が読めないなんてこともあるかもしれません。
(B)制限酵素切断パターン確認
フラグメント中に切断サイトがある制限酵素3種類程度で切断し、電気泳動し、適切なサイズにバンドが出現するかを確認する。
6配列を認識して切断するシックスカッターやそれ以上の長さのものを選んだ方が無難。4カッターは切断サイトが多くなりすぎる傾向があります。
制限酵素を2種類使って切断する場合の最適なバッファーを探したい場合は、New England Biolab.のDouble Digest Finderが便利です。
(9)以上の確認が終わった段階で、”実験に使えるプライマー”認定がおります。
制限酵素切断サイトの確認によく使っているソフトウェアは、”pDRAW32”というフリーウェアです。
このソフトは、制限酵素切断サイト確認、バーチャル電気泳動パターン確認、プラスミドマップ描画などいろいろ使えるソフトです。
あと、必要なソフトウェアは、プロモーター領域への転写因子結合サイト検索ですが、これはオンラインサービスがあります。
・TFSEARCH(超有名)
・WWW Promoter Scan
どちらも調べたいプロモーター領域のシークエンスをインターネットエクスプローラーなどのブラウザ上でコピペして、ボタンをぽちっで結果が出てきます。
TFSEARCHの場合、最初は閾値をデフォルトのまま検索し、その後閾値を下げていき想定した転写因子が結合できるかどうかを見るやりかたで調べます。
いま行っている実験の中では、上記のようなかんじでフリーウェアで対応していますが、製品版を買うと、もっと楽に実験を進められるんでしょうか...?
研究費が湯水のように使える環境にもしなったら、そういう製品版解析ソフトを買ってみようと思います。
高いんですよね、そういうソフト...
10万円とか、「桁が一つ違う?」と思うような金額です。