今日は春日部での撮影だった。
会場に向かう電車の車窓から遠くの地平線に浮かぶ、真っ白な富士山が見えた。
思いがけない所で出会った凛としたその姿はとても美しく、
私は、流れる景色を他所にしばらく見惚れていた。
そんな素敵な出会いが予兆していたかのように、
今日のお客様も私にとって心に残る方々だった。
今日はお色直しが二回あり、一回目のお色直しのメイクシーンを
撮影しようと美容室に行き、その時気付いたのだが、
新婦さんは怪我をして、頭に傷を負っていた。
メイクさんが、その傷が見えないように気遣っていたのだが、
彼女は、「皆、私の怪我の事知ってるんで・・・。」と言った。
その時はそれ程大きな怪我だとは思わなかったのだが、
新婦の両親へのお手紙で、その怪我が、
生死を分ける程の大変な事故だったことを知った。
彼女は、自分が今ここに居られるのは、諦めずにずっと側に居て看病してくれた
お父さん、お母さん、そしてお兄ちゃんのお陰だと涙を流しながら言った。
病院の先生には、今後は話せなくなるかもしれないと言われたそうだ。
今彼女が、この場にこんなにも澄んだ笑顔で居ること、
自分を愛してくれる家族への感謝の気持ちを、声に出して表していること。
その一つ一つが一時は、奇跡だったのかもしれない。
そして、そんな彼女を支え、優しく大きな愛で守ってくれた新郎。
この人とならどんな事も乗り越えていける。
そう感じた瞬間があったことだろう。
後から聞いた話によると、二人は既に二年前に入籍はしていたらしい。
けれど、彼女の体調があまり良くなかった為、式はしていなかったそう。。
それを聞いた時私は、会ったその日にたった半日だけ接しただけで、
二人と、二人の家族の今日のこの一日に込められた想いを、
ちゃんと残せてあげられたんだろうか。。と思い、不安になった。
その事実を知っていたら、もっと、もっと撮ってあげれたのではないか・・。
だけど、それはこの家族だけに当てはまることではない。
全ての新郎新婦に、そしてその全ての家族に、今日この日に寄せる
それぞれの様々な想いがきっとあるのだ。
この家族だけが特別なのではないのだ。。
私たちに出来ることは、この日までにどんな事があったにせよ、
これから先、どんな事が二人にそして、家族に待っていようとも、
結婚式という一生で特別なこの日が、ずっとずっと笑顔で残るように、
今日のこの日を精一杯、笑顔で残すこと・・・。
そんな写真を撮ることなのだと思う。
それが全てなのだ。
私はそう信じている。そして、そうあって欲しいと心から願っている。
今日の二人と家族も、皆幸せで、笑顔が溢れていた。
今まで沢山の苦労があったことだろう。
涙もたくさん流れただろう。
だけど、今日の写真を見たら、きっとこの先どんな時も笑顔になる!
なぜなら、写真の中の二人と二人を囲む人達は、
皆幸せそうに笑っているから
この先、この二人にきっと幸せが訪れる事を心から祈っている。