Foreign Media Analyst in Japan

日本のメディアで海外情報が載らない日はない。海外情報の正確性、専門性や最新性をめざし、独自の収集、解析、翻訳にチャレンジ

米国グローバル・軍事・戦略分析サイト“STRATFOR”記事のいいかげんさ

2010-08-31 18:52:34 | 信頼性の高い情報とは
 

 前回に引続きとはいえ約1年半ぶりに本ブログを書くこととした。その背景は8月30日付けで筆者の手元に届いた軍事・外交面の国際情勢を分析している米国シンクタンク“STRATFOR”の記事「中国:中国人民銀行総裁が亡命の噂(china Rumors of the Central Bank Chief’s Defection)」を読んでその内容のいいかげんさに驚いたからである。(note)

 この噂の出どころは香港に拠点を置く通信社“Ming Pao”の8月28日付けの記事「米国財務省長期債(U.S.Treasury Bonds)における約4,300億ドルの損失の責任を巡って中国政府が総裁 周小川(Gov.Zhou Xiaochuan) を含む中国人民銀行(People’s Bank of China:PBC)の何人かを個人を処罰するようだという記事から始まったようである。

 この記事のいいかげんさは、“STRATFOR”はこの噂につき事実確認をまったく行っていないといいながら、一方では中国の国営メディアが現在総裁は問題なく業務をこなしていると強いメッセージを送っているとか、中国内では総裁亡命に噂がひろがり、その結果、周総裁の名前はインターネット検索エンジンでは困難となっているとも書かれている。

 ポリシー・アナリストの筆者としては先ずは事実確認を行うべくPBCサイトはいうまでもなく、中国の民間メディア等の情報を集めてみた。そこから見えたのは少なくとも8月30日午後に総裁は2人の海外の要人と会っている。

 なんとその1人は日本の金融・郵政改革担当大臣(国民新党) の自見庄三郎(じみ しょうざぶろう)である。実はこの2人は本年8月3日、東京において中国人民銀行、日本銀行および韓国銀行の3中央銀行総裁による第2回公式会合が開催されたことなども含め 金融安定、域内金融協力およびその他共通の話題等について短時間ながら話合っている。

 もう1人は国際会計基準委員会財団(IASC Foundation:IASCF)評議委員会議長であるトマソ・パドア・スキオッパ氏Tommso Padoa-Schioppa (前イタリア経済・財務大臣)である。

 PBC公式サイトではこの2人の要人との北京での記念写真を撮影時間も正確に記載して公表している。

 このような事実から追えばごく簡単な作業にもかかわらず、世界的シンクタンクとして怠ることは極めて遺憾と考え今回のブログをまとめた。

 なお、今回にブログに内容はあくまで筆者の個人的興味からまとめたもので真実でないかも知れない。筆者は中国語もほとんど理解できない。特別に中国政府に借りがあるわけではないが、情報の透明性を追求する米国らしからぬ記事と受け止めた。

1.周総裁の8月30日の午後の公式日程
(1)16時29分 IASCF評議委員会議長であるトマソ・パドア・スキオッパ氏と会談している。
 なぜ、PBC総裁が国際会計基準委員会財団(IASCF)の代表と会うのか、筆者なりに補足する。
「欧州連合(EU)では、2009年以降にEU域外の第三国の証券発行者がEUの証券市場に公募または上場する場合には、国際会計基準(IFRS)によるかまたはこれと同等の会計基準の使用が義務付けられている。2006年2月に中国財政部が公布した新企業会計準則は、2007年1月から中国国内の上場会社に適用され、国務院の国有資産管理委員会は、中央政府のすべての国有企業に対して2008年1月から新準則を全面的に実施することを決定している。
欧州証券規制当局委員会は欧州委員会に対して、現時点では中国の新準則の同等性について最終的な判断を行うべきではなく、欧州委員会が中国の証券発行者に対してEU市場にアクセスするときに中国の会計基準を使用することを受け容れたとしても、2011年までにはその同等性の判断を可能とする適切な証拠すなわち新準則の適切な実施状況が存在していなければならないと助言した。その後の中国財政部の報告により新準則は適切に実施されているとの情報もあって、EUの証券市場においては2011年まで経過措置の適用が認められた。」(近藤公認会計事務所「中国の新会計準則とIFRS(2009年1月26日)」より一部抜粋) 

 以上で、この時期に周総裁が会談する背景が理解できよう。

 なお、中国のウェブ・メディア「文新伝媒」は8月30日の周総裁の日程を詳細に紹介している。

(2)16時50分 金融・郵政改革担当大臣(国民新党) の自見庄三郎と会談している。
このPBCの広報内容が事実か否かは“STRATFOR”は日本政府に確認すれば直ちに確認できよう。

2.今回の噂ニュースを巡って中国サイトを検索して気になること
 “PBC”サイトを読んでいるとしつこく中国人民銀行の研究員募広告がバナー広告としてでてくる。中国語なのでなんとなく読めてしまうのでつらつら読んでしまうが、ここまで来るとクッキーも行き過ぎで「検閲」ある。国際的な民主主義の原則からは許されない。

(note)別途筆者は“STRATFOR”の編集者にメールを送るつもりであるが、わが国の金融・郵政改革担当大臣の英訳は“Financial Services Minister”は誤りである。
では正式にはなんと書いたら良いのか。「じみ庄三郎」大臣のHPでも書かれていない。
外訪、国際会議に出たときはなんと書いた名刺を出しているのか。

〔参照URL〕
http://app.response.stratfor.com/e/es.aspx?s=1483&e=97254&elq=643be328785245da936365cbf20ac17c
http://www.pbc.gov.cn/detail.asp?col=100&id=3767
http://www.pbc.gov.cn/detail.asp?col=100&ID=3765 **********************************************************

Copyright (c)2009-2010 平野龍冶.All rights reserved.No reduction or republication without permission




最新の画像もっと見る

コメントを投稿