ひさらのきまぐれ。

多趣味だけどどこかぼんやりな私(ひさら)の気まぐれブログ。
趣味の話、日々の話。

宮崎県椎葉村嶽之枝尾神楽(紀尾井ホール)

2010年02月07日 | 舞台
■出演:椎葉村嶽之枝尾神楽保存会、椎葉 勇、椎葉和男、椎葉武則、椎葉一 他
徳丸吉彦(企画・構成)
■曲目:「注連の大祭」より 注連誉、注連引鬼神、大神神楽、稲荷神楽、芝引、綱切



宮座権椎葉村は多様な神楽や民謡を伝承していることで、注目されている地域です。広い村内の各地区でそれぞれに伝承された異なる舞や音楽があり、中でも今回上演された嶽之枝尾の神楽は、激しい太鼓と静かな舞いで知られているそうです。

柳田國男の報告もあり、そういうものがあるんだ、ということは認識していましたが(国の指定重要無形文化財ですし!)実際に見るのは初めてのことで、大変興味深く楽しかったです。

形式化された舞いであることもあって、最初のうちは「邦楽芸術」を見ているようなどこか難解なよそよそしさも感じていましたが。
力技で神が縄を引く姿や、村人たちが神殿内に闖入してきたりする場面を見るうちに、これが村の共同体における大切な儀式であることが伝わってきました。このこと自体を村人たちが楽しんでいる様子が感じられたのです。
舞の最中のハプニングもお互いに声を掛け合って(何と言っているかは方言なのと大きな太鼓の音にかき消されたのとで聞き取れませんでしたが)乗り越えたり。太鼓の音と掛け声の相乗効果で気分が乗ってしまい少々やりすぎちゃう人もいたりして。またそれを笑いながらたしなめる人がいるのも神楽の一部。

お祭りだけに。最後に向かってどんどんと調子を上げていく楽しさが満載でした。

そもそも神楽は神社祭祀なので宮司さんの存在が不可欠。とはいえ、舞が奉納されている神殿の中でただ一人何もせず、最初からじっと座ったまま。座ってるだけも大変だよね、と座りにくそうにもぞもぞしている姿を見ていたら、最後の最後で大きな見せ場がありました。
「綱切り」という〆の演目は、藁で編んだ大蛇に見立てた綱を真剣で切り落とすダイナミックな舞い。この首をまず一番に切り落とすのが宮司さんの役目。
見事一太刀で切り捨てた宮司さんはほっと一安心の様子。落ちた首を刺した槍を村人が大きく掲げて「宮司が見事討ち取りました。アッパレアッパレ!」と大音声で呼ばわる。すると自然に「おおお!」という歓声と大きな拍手が沸き起こって、会場が一体化する快感を得ました。

注連縄のようなものを一刀の元にばっさりと切り落とすのは、なかなか難しいことだと思います。宮司さんに続いて村人たちもそれぞれ胴体部分(二番首?!)を斬っていくのですが、うまくいかなかったりしてそれがまた笑いを誘って、結束を固める役割にもなっているようでした。

今回は舞台仕立て、いわばオペラで言うコンサート形式。
ダイジェストで6番ほど、しかも1番を長くても25分程度に短縮したということ。本来は33番あり、1番が40分くらいはかかるというのだから、壮大です。本来は何夜もかけて上演されるものなのだそうです。
しかも真っ暗闇の中で!
現地で見てみたい気持ちが俄然盛り上がってしまいました。

たまたま見たのが公演最終回ということで、舞台に飾り付けられていた御幣を分けていただきました。赤白緑の折り紙を切って飾った竹の棒です。村の人たちの手作り。宮司さんの切り落とした大蛇の首も縁起物だからどうぞ、と言われはしたのですが、流石にそれは遠慮しました(笑 この大蛇も作るのには半日以上かかるのだそうです。
会場に飾り付けられていた榊も、椎葉村から空輸したのだとか。東京で売ってる榊ではしょぼくて飾りにならない上、高いというのが理由だそう。…確かに(笑

人々が一年を無事過ごしたことを心から安堵する喜び、また来年も豊穣で幸せに過ごせるようにと神に祈る敬虔な姿勢、そういったものを神楽として今でも連綿と受け継いでいる人々が少し羨ましくさえ見えました。




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1 コメント

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コメントくださった方へ (ひさら)
2010-02-11 21:25:25
宣伝だけを目的としたコメントはこちらで削除させていただいております。
このブログは自分の見た舞台に関する応援の気持ちを綴っている場所です。営利目的とは全く方向性が違います。
なにとぞご了承ください。
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