ゆうすげびと の うた

ゆるやかに そして たおやかに 喧噪の日々のなかで しずかさを とりもどすために…。

舞台「猟銃」について(1)

2011-11-06 17:44:11 | 演劇
10月1日以来、この場所から遠ざかっていました。

この間、
それなりの数のお芝居や映画を観ていたんだけれど、
なかなか纏まったことを書くところまで至っていませんでした。

そこに私自身の生活実態があるわけで…、
そのことが悪循環を引き起こして、
さらなる表層的な日常のリフレインを生じさせるばかり…。
単に演劇や映画を「費消」しているだけの
「観る」という行為をただ繰り返しているだけの
感じに陥っておりました。

この陥穽もしくは埋没を
どこかでストップさせないと…。

てなことで、10月22日・23日の二日にわたって
東京・パルコ劇場で観てきた舞台「猟銃」の
中間総括的感想を認めることにします。


猟銃
 原作:井上靖 翻訳:セルジュ・モラット
 日本語監修:鴨下信一
 演出:フランソワ・ジラール
 出演:中谷美紀、ロドリーグ・プロトー

22日は一番前・中央よりの座席で
23日は中程・やや左の座席で鑑賞と、
なかなか恵まれた「猟銃」との対面ができました。

井上靖の原作小説の主たる構成要素たる
三人の女性の、一人の男に宛てた
それぞれが訣別の決意表明とも言える書簡。
これをどのように料理するのだろうか? と
興味津々の緊張感で芝居のなかに入っていきました。

冒頭の小説地の文ともいうべき部分は
池田成志による朗読が少し長めに録音で流れたのは、
興味を少し削ぐ感じがあって、演出的にはちょっと頂けませんでした。

朗読箇所がおわり、
舞台が仄かに明るみを帯びるなか、
中谷美紀嬢が登場しますが、
原作の三人女性の手紙を
延々と読み・演じるという「ひとり芝居」
といってもよいスタイルで構成されています。

舞台上で、おおきな動きはなく
静かに手紙を読み進めるように演技が
進んでいきます。
それは極めて「日本的」な象徴と表象で
構成されいます。

観終わったあと、
あまりにも贋作小説の書簡を
90分間美紀嬢が語り続ける構成に対して、
多少のフラストレーションを感じたのでしたが、
帰りの飛行機の中で、そして帰福してからも、
舞台のイメージや匂いや台詞の語感を
何度も何度も、反芻していました。

演出のフランソワ・ジラールも、演じる中谷美紀も
原作のもつエスプリのようなものを深く深く解釈し、
洗練された形で表象することに成功しているのではないか
と思えるようになりました。

原作の美しい文章と、その底に流れている心情・心性が
みごとに表現されていたのかも知れません。

三人の女性をひとりで演じ分け
延々とひとり語り続ける中谷美紀さんの
表現には感服です。

三つ目の彩子の手紙(遺書)での、
着物をひとり着付けながらの語りは
ひとつのクライマックスを
静かに静かに、しかししっかりと
表現していました。

来週末は、ここ福岡の地で
再度「猟銃」と対面します。

今度はどのように受け止められるのか
いまから愉しみにしています。


「猟銃」インタビューSPOT movie


「猟銃」舞台映像入り 地方公演SPOT movie



【関連記事】
「猟銃」を読む[2011-07-01]
映画「猟銃」を観る[2011-07-02]
女性のしなやかな強さ~ in 「猟銃」中谷美紀インタビューmovie Vol.1[2011-07-03]
身体性に挑む?~ in 「猟銃」中谷美紀インタビューmovie Vol.2[2011-07-03]





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大千穐楽の“荒野に立つ”

2011-08-13 19:45:51 | 演劇
阿佐ヶ谷スパイダース Presents
「荒野に立つ」
大千穐楽の公演に (昨夜)
福岡・イムズホールに行ってきました。

同じ芝居を5回も観たのは、
F-Stage以外はありません。

さすがにこれだけ観ると、
ジグソーパズルのピースも
ほぼすべて嵌まった状態になります。

役者それぞれのセリフの意味と位置づけ
それそれの役者の役割と意味などが
自分なりにすべて繋がって、
わかるわかると、楽しく面白く
演劇空間を愉しむことが出来ました。

役者ひとりひとりの
存在感のある演技も堪能しました。

無駄のないセリフと動き、
空間構成、照明、音響…
どれをとっても
私の右脳と左脳をともども
大いに刺激してくれる芝居でした。

安藤聖さん
  全編通して引きつけられっぱなしで、
  これから目の離せない役者さんの一人になりました。
  すばらしかった。とりわけ、
  玲音の代行で、転球さんと絡むシーンは好きでした。
川村紗也さん
  店員さんの気怠い感じ最高でした。
  自然でユーモラスで、チャーミングな演技
  好きでした。
黒木華さん
  田端のファンになってしまいました。
  声がとっても魅力的で、
  透明でニュートラルな役どころに
  アクセントが付いて心地よかったです。
斉藤めぐみさん
  オイルマッサージの受付嬢。笑いました。
  新聞を持って追いかけ・追いかけられる役など、
  あまり表に出てこない役どころでしたが、
  この芝居は、あなたの存在なくしては
  成立しないのではないかと、5回みて
  おぼろげながら気づいたような気がします。
佐藤みゆきさん
  妹の音羽の演技、姉との確執と姉への思いが交錯し、
  迫真の演技だったと思います。
  心に残りました。
伊達暁さん
  こんなに演技が巧い方とは知りませんでした。
  メクライ(安藤聖)とキスをする場面、
  メクライ(中村ゆり)と再会するシーン、そして
  父(中村まこと)との電話のやり取り、
  それぞれがコントラスト鮮やかによみがえってきます。
中村まことさん
  絶大なる存在感と演技力。
  “父”という先行する世代を代表する役どころは
  同時にパターナリズムをも象徴している
  と思いながら観ていたのですが
  この芝居の深みを作るのに欠かせない存在だと思いました。
  まことさんの存在なかったらこのお芝居は表層的な
  若者の自分探し劇に留まっていたかもしれません。
中村ゆりさん
  静かに、そして哀しげに、そこに在る感じが
  とっても好きでした。黒ユリの花のようでした。
  セーラ服姿でイマドキの女子高生のしゃべり口と
  玲音の寂しげな語り口と、ゆりさんならではの
  存在感に、心奪われてしまいました。
中山祐一朗さん
  もう、文句なしのキャラクタですね。
  このお芝居の進行役ですね、謎郎さんは。
  安心して笑える間の取り方、最高です。  
長塚圭史さん
  バイト先の上司、マッサージ店の店長、そして
  ちょっととぼけた探偵と、
  長塚さんならではの演技に笑いながら惚れ惚れとしてしまいました。
  そして何より、すばらしい劇作ありがとうございました。
初音映莉子さん
  美雲の存在は、朝緒の分身―
  朝緒を客観的に見ているもう一つの朝緒
  というか、もしかしたら…
  朝緒の失くした“目玉”そのものなのかもしれません。
  安藤さんとは対照的なキャラクタとして
  メクライに寄り添いながら、
  終盤での電話(メクライの代役)シーン好きです。
平栗あつみさん
  素敵なお母さんでした。
  心を病んだ朝緒に対する母の心情と
  鐘を無心し家を捨てようとする玲音に対する母の心情と、
  この二つの娘を思う心情がみごとに伝わってきました。
福田転球さん
  もう最高です。高広代行の転球さんは、
  最高でした。
  転球劇場を無性に観たくなりました。
水野小論さん
  長身で背筋が伸びた美人秘書役、ステキでした。
  冷たそうで実は人間味を裡に秘めている
  そんなところが好きでした。
横田栄司さん
  熱血教師の実と虚を
  軽やかに胡散臭く、誠実に
  演じられ、この芝居のなかで
  猟奇的な存在として光っていました。

今回出演された役者の皆さんを
また別の舞台でも観てみようと
思っています。

もともと
阿佐ヶ谷スパイダース×中村ゆり
ということでセレクトし観に行ったお芝居でしたが、
あまりにも私の琴線を刺激的に振るわせる劇作だったため、
東京、大阪、福岡と、計5回の舞台を観るという
贅沢な暴挙を敢行する羽目になってしまいました。
それだけの価値のある“劇”だったと
しみじみ感じ入っています。
そして、
たくさんのすばらしい役者さんと
出会えた芝居でもありました。


「荒野に立つ」の戯曲を掲載中の
『悲劇喜劇』最新刊(9月号)も取り寄せ、
再度、じっくりと読み込んでみようかと
思っています。



【関連記事】
荒野に立つ[2011-07-24]
再び、大阪の“荒野に立つ”[2011-08-04]
地元福岡の“荒野に立つ”[2011-08-12]




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地元福岡の“荒野に立つ”

2011-08-12 13:50:37 | 演劇

阿佐ヶ谷スパイダース Presents
「荒野に立つ」のキャスト・スタッフのみなさん、
ようこそ福岡・博多に!

昨夜、イムズホールに
観てきました。

イムズホールでの舞台設置は
サイド席が東京・大阪の他の劇場に比べて
はるかに大きいボリュームで座席が設置されていました。
(1列10席程度×5列てなとこでしょうか)
客席がちょっと横に広い感じです。
それに前列との段差があまりないため、
前の人の頭が気になります。

なので、ちょっと意識が拡散する感じかな、
と開演前までは思っていましたが、
芝居がはじまると、静かに
耳をすまし、感覚を研いで、記号を読む作業を進めていくと
しっかりと舞台世界に入り込んでいきました。

この作品は、
 喪失
 暗闇
 迷い
 閉塞
 自分探し
 自己の拡散・分裂
 自己存在の希薄性
などなど…、
この現代に生きる私たちが誰もが直面している
(いや、直面せざるをえない状況に追い込まれている)
ことがらが、
ひとつの“喪失”を軸に、断片的に語られ、
一つ一つの物語(ナラティヴとエピソード)が
それぞれ重なり合い、分裂し、交錯して、
一つの複合的なまとまりを形成している、
そんな作品です。

中心人物の朝緒(安藤聖)、
 その分身ともいうべき美雲(初音映莉子)と、
自死を選んだ玲音(中村ゆり)、
ふたり(あるいは3人以上の)“現実”が
複合的に重なり、交差していきます。
(そして他の登場人物の“現実”の断片が
 エピソードとしてそこに絡みついていきます)

終盤の電話のシーンでさえ、
(ここで物語の全体像が見えてくるのだけれども)
「代行」という手法が巧く使われていて、
ここからラストにかけて、
物語の収束のさせ方は、何度観ても好きです。


失くした目玉を見つけたとしても、結局それは、
ポケットに入れるしかないのでしょう。
決して元には戻らないのですから…。
そして、
 目玉を失くしたかもしれないことを知ること
 失くした目玉を人の手を借りてでも探そうとすること
そのことこそが、
いま私たちにもっと必要なことなのかも知れません。

そして、私たちは、
見つけた目玉はポッケトにしまい、
遺された目玉でしっかりと暗闇を見つめ
光を見つけていくしかないのです。


私は、この「荒野に立つ」の 何に
こんなに惹かれるのだろう? 何で
こんなにこだわっているのだろう?
それは私自身もきっとメクライだからかもしれません。



きょうの、夜の部も
イムズホールに行きます。
いよいよ大千穐楽です。


【関連記事】
荒野に立つ[2011-07-24]
再び、大阪の“荒野に立つ”[2011-08-04]
大千穐楽の“荒野に立つ”[2011-08-13]



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再び、大阪の“荒野に立つ”

2011-08-04 19:07:39 | 演劇
阿佐ヶ谷スパイダース
「荒野に立つ」

東京・シアタートラムに続いて
大阪・ABCホールでの公演も観てきました。



ステージの間口がABCホールの方が若干広い分
少しだけ面持ちが違ってみえました。

今回は、長塚圭史も主演していた
 映画「tokyo.sora」
を思い出しながら観ていました。

tokyo.soraは石川寛監督作品。
東京にひとりで住む20代6人の女性のお話です。

tokyo.sora トライフルソング


映画で、井川遙が演ずる
美容師を目指す女の子と
この芝居で中村ゆり演ずるところの
玲音とを重ねながら観ていました。

tokyo.soraは6人の女の子の
閉塞的で終わりのない日常が多少交差しながらも、
基本的には、それぞれの孤立と孤独と不安が
描かれていきます。

「荒野に立つ」においては
 朝緒(安藤聖)、玲音(中村ゆり)、美雲(初音映莉子)
の三人の喪失感―
それはとりもなおさず
失われてしまったものは何なのかをめぐる問いと
それを探す試み―自分探し―として旅が、
閉塞感と焦燥感を伴って描かれていきます。

そして、
この三人をそれぞれの役者が
それぞれ独立して演じるのではなく、
時折、相互に「代行」という作業のなかで
交錯して演じられていきます。
つまり、それぞれがそれそれの個でありつつも
独立した個ではない誰かとして融合していきます。

今回の芝居でもっとも興味深かったのは
この実験的とも言える試みでした。

私たち観客は、攪乱させられ
混乱させられていきます。

きっとこの物語は
玲音の死によってはじまる物語なのでしょう。
玲音は、繋がることを欲しいながらも
朝緒が繋がってくれなかった(話を聞いてもらえなかった)がために
死を選びます。たとえ朝緒が聴いてくれたとしても
死を選んだのかもしれません。


tokyo.soraでは、井川遙演ずる女の子は
板谷由夏演ずる女の子との出会いがあったのにもかかわらず、
結局は死を選んでしまいます。
この死がtokyo.soraの哀しい現実として描かれて居ます。
そして、板谷由夏が隣に住む女の子と繋がろうとするところで
物語は終わります。

この「荒野に立つ」は
その死から物語を始めているのではないかと思いました。

すべての人々が、そのことを自覚しているかどうかはともかく
みんな殺伐とした荒野に立たされています。
それは、
 現実に追われつづけたり
 見せかけの快楽であったり
 呻吟を必要としないオートマチックな何モノかであったり
 (自分探しという作業さえもプログラムであったり)
 他者と繋がれないもどかしさであったり
 繋がることのわずらわしさであったり…。
八方塞がりの現実の中、七叉路で立ち尽くしている。

他者の死によってしか
私は自分を見つめることが出来なくなっているのかも知れません。
いや、その死そのものをさえ
自分以外の何者かに促されないかぎり
その契機を持ち得なくなっているのかもしれません。

そんなこんな考えながら…
大阪の荒野に立っていました。

新しくなった大阪駅には
巨大な恐竜がいました。



すっごく立派になった
大阪ステーションシティを
ちょっとプラプラ…。

ここ大阪駅と、
同じく新しくなった博多駅・博多シティ。
この二つを
ゴジラが壊しに来るのはいつの日か?
なんてことを思いながら、
新大阪から新幹線に乗り込みました。

来週は、福岡イムズホールで、
荒野に立つことになります。
(楽しみ、愉しみ)


【関連記事】
荒野に立つ[2011-07-24]
地元福岡の“荒野に立つ”[2011-08-12]
大千穐楽の“荒野に立つ”[2011-08-13]



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「パール食堂のマリア」に会いに行く

2011-08-03 09:20:24 | 演劇
今回の東京行きは
ただただ この
青☆組
の芝居を観ることだけが
目的でした。

先月、
極私的東京観劇ツアーを敢行した際の
配布チラシのなかに
青☆組の「パール食堂のマリア」発見、
是が非でも観たい!と思い、
帰福後
仕事をなんとかやり繰りして時間を確保、
昨夕、行ってきました。



三鷹市芸術文化センター 星のホール
青☆組 VOL.15
パール食堂のマリア
 作・演出:吉田小夏
 出演:藤川修二、福寿奈央、高橋智子、石松太一
    林竜三、小瀧万梨子、如月萌、足立誠、櫻井竜
    天明留理子、荒井志郎、木下祐子、大西玲子


1972年頃の横浜をモデルにした
とある港町の、とある食堂の家族と
それをとりまく人々の小さな物語といったところでしょうか?

こういう言い方が正しいのかわかりませんが、
かつての良質な日本映画(小津などの)を観ているような
心地よさがありました。

場所の設定や時代背景についても
十分に考証され、物語が編まれているのですが、
それはあくまでスパイスのようなもので、
普遍的な主題がしっかりと描き込まれている
いいお芝居だと思いました。

これで青☆組の舞台は4度目になるのですが、
やっぱり、青☆組の演劇は好きです。

わざわざ時間作って、東京・三鷹に行った甲斐があったというものです。

劇中、“死”の形象というか、
死や無や虚といったことを表象する部分が散見するのですが、
それれが、否定的な暗さのみを連想させるのではなく、
生の肯定に根ざしているところにとても共感がもてました。

それも生を手放しに謳歌したり礼賛するような質としてではなく、
あくまで私たちの日常や生活の上に立つ
強さのような、静かな勁さような
そうなところに基づき、そんなところを志向しているような…。
それが青☆組の芝居が好きな理由かも知れません。

観る前は、一階から入ったのに
帰るときには、二階から出てくる感じなのが
すごくいい!

「恋女房達」以来4作品めの青☆組。
これからも可能な限り
その劇空間を感じ続けて行きたいと思います。

さて、今日はこれから、
新幹線で移動して、
大阪で「荒野に立つ」を
再び観てから帰福です。




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現在的なこの国の姿 ~「アセンション日本」を観劇

2011-07-25 00:16:10 | 演劇

アセンション(ascension)とは、「上昇、即位、昇天」を意味する英単語。
The Ascensionで「キリストの昇天」を意味する宗教用語。
ニューエイジ、新興宗教などの
スピリチュアルな考え方を尊ぶ思想では、この語は
「惑星地球の次元上昇」の意味で用いられ、
未来の予測の一つとして盛んに取り上げられる。
しかし、科学的根拠はない。
アセンションの存在を支持する人々によれば、アセンションとは
  人間もしくは世界そのものが現在の三次元から
  より高次元の存在へと進化すること
とされる。
アセンションの存在を支持する人々は、
アセンションは2012年前後に起こるのではないかと推測しており、
  現在の地球の環境問題や混沌とした社会現象、
  人間の善悪に対する意識レベルの低下
をその変化への前触れであると見なしている。
                   (以上、Wikipediaより)


いきなり引用ですが、
「アセンション」がそのタイトルに付いた芝居が
今回の東京観劇ツアーの締めの一本でした。
紀伊國屋ホールで観てきました。

演劇ユニット トレランス
アセンション日本
 作・演出:上杉祥三
 出演:長野里美、天宮良、上杉祥三
    岡森諦、高木稟、関戸将志、池下重大
    柳橋朋典、武田優子、小林賢治、山口麻衣加
    神原弘之、下村和啓、佐野信輔、坪内悟
    神保良介、秋山秀樹、山丘千恵子、杉山幸子


第三舞台の長野里美と劇団夢の遊眠社の上杉祥三の夫婦が
演劇ユニットを結成していたのは知っていたけど
芝居を観たのはこれがはじめてです。

3.11と原発問題を真正面から扱ったはじめての劇作だと思います。

日本神話や龍などの神秘的な題材もシンボルとして使いながら、
現在的な問題を、いや、ずーと問題は存在し続けていたんだろうけど
私たちが再度認識と態度を迫られている原発・エネルギーの問題を、
ある意味ジャーナリスティックに描いて見せた演劇でした。

その分、記号が短絡的で、メッセージが線形的な印象は否めませんでしたが、
いま、まさに考え行動しなければならない事柄を提示してくる芝居でした。

“念”~「今に気持ちを込める」
このセリフが象徴的に響いてきました。

演劇ユニット トレランスのこれまで劇作をまったくしらないので、
これまでの作品を観てみたくなりました。

次回作も観に行こうと思いました。
(その前に第三舞台の長野里美をもう一度観ておかなければ…)



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荒野に立つ

2011-07-24 03:01:09 | 演劇
22日夜の回を観て
あまりに良かったので
翌日も三軒茶屋のシアタートラムに出掛け
23日昼の部も観てきました。


阿佐ヶ谷スパイダース Presents
荒野に立つ
 作・演出:長塚圭史
 出演:安藤聖、川村紗也、黒木華、斉藤めぐみ
    佐藤みつき、伊達暁、中村まこと、中村ゆり
    中山祐一朗、長塚圭史、初音映莉子、平栗あつみ
    福田転球、水野小論、横田栄司


中村ゆりが阿佐ヶ谷に出るのでセレクト。
(福田転球も出てるしね)


ホント久しぶりの阿佐ヶ谷スパイダースでした。

阿佐ヶ谷スパイダース(長塚圭史)の作風が変わったかな?
思って観ていました。

これまでは自虐的な笑いを中心に
ぐいぐいとえぐられるような内容が多かったような気がしますが、
今回、久しぶりに観たのもあるのでしょうか、
シンボリックで抽象度が高い、洗練されたセリフと構成で、
静かに静かに迫ってくる舞台でした。


「いま・ここ」に暮らす
私たちの日常や心性が題材でありテーマです。

そうした私たちの日常経験や気持ちのありようが
断片として提示されていきます。

それらの断片は最初バラバラのようで
(それは私たちに日常の現実が正に断片化されているかのように…)
次第に輪郭が浮かび上がっていく作り方は絶妙でした。
抽象から具体へと
演劇世界のなかでの現実がトレースされていきます。

ひとつの役を、別の役が「代理」して演じていく手法も
代替可能な個人を表象しているようでもあり、あるいは
誰もが大なり小なり共通の似たような経験をするであろう
ということを暗示してるようでもあり、
示唆的で刺激的な演出でした。

演劇上の、ストーリーや時間・空間、役割を
攪乱させる。
それは、私たちの「現実」の暮らしそのものが
すでにどうしようもなく攪乱されたものとしてあること、そして、
リアルであることのアクチュアルな根拠が希薄化していること、を
演劇世界から逆照射してくるものとしてあります。

かつて「青年は荒野をめざす」という歌がありました。
しかし「いま・ここ」の私たちが生きる日常は
すべての人々にとって果てのみえない「荒野」として
目の前に広がっています。
(「終わりのない日常」と表現した社会学者もいました)

私たちにとって「荒野に立つ」とは…、
 じっと立って、耐えるのか
 呆然と佇むしかできないのか
 それとも立ちすくむのか
 あるいはいつか前に一歩踏み出すのか
そんなことを考えながら観ました。

久しぶりに脳髄を刺激してくれる
秀逸な芝居を観たと思いました。

阿佐ヶ谷スパイダース『荒野に立つ』 Trailer Movie


第二弾! 阿佐ヶ谷スパイダース『荒野に立つ』 Trailer Movie



最後に、
中村ゆり出演の芝居としては
「1945」に続いてのいい芝居だったと思います。
(こちらもゴーチ・ブラザーズのお芝居でした)
そして、中村ゆりの醸し出す
薄幸で儚げな役どころは、
やっぱり彼女ならではの美しさとして
抱きしめたくなる舞台でした。


福岡でも8月11・12日に公演が予定されています。
イムズホールにもまた観に行こうと思っています。


【関連記事】
再び、大阪の“荒野に立つ”[2011-08-04]
地元福岡の“荒野に立つ”[2011-08-12]
大千穐楽の“荒野に立つ”[2011-08-13]




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身体性に挑む?~ in 「猟銃」中谷美紀インタビューmovie Vol.2

2011-07-03 10:16:25 | 演劇
中谷美紀初舞台の「猟銃」
美紀嬢のインタビューの続きです。


この舞台作品は、
美紀嬢出演の映画「シルク」で監督だった
フランソワ・ジラールが演出しています。

中谷美紀嬢は、
フランソワ・ジラールさんの演出の楽しみを
このように語っています。

今回のキャラクターをつくるに当たって、
肉体の形から探りたいと仰っていたんですね。
身体を整える整体のようなものを利用して、
本来だと整える作用を逆に崩す作用に使って、
肉体がどれだけ崩れたりアンバランスになったりするかで、
心も変わってくるだろうし、声の出方も変わってくる。
そうしたことによって三者のキャラクターを演じ分けたい
というふうい仰ってたんですね。
ですから私の中でもこの三役を演じることで何が起こるか、
まるで予想が付かないですし、
その予想がつかない無限の可能性に今回は賭けたい
と思っています。本当に楽しみにしています。


なるほどなるほど…
舞台ならではの身体性が見どころということですね。
三人の登場人物をどんなコントラストで崩し分けるのか
楽しみです。
(妻・みどり と 娘・薔子 の崩し方は、
 なんとなく予測できるけど…、
 愛人・彩子をどんな風に崩すのだろうか?)

そして、
どんな舞台作品になるのかの質問には…

きっと、ご覧くださるすべての方が、
ご自身の人生を走馬燈のように振り返ることを余儀なくされるような、
ちょっと恐ろしい作品でもあると思います。
本当に人間の本質が透けて見えるような作品だと思うので、
心してお出かけ頂きたいなと思うんですけど…。


私好みのテーマがたくさん詰まった芝居の予感です。
井上靖の原作を、
演出のジラール氏と初舞台の中谷美紀が
どう解釈し、いかに料理してくれるか
本当に楽しみになってきました。


「猟銃」中谷美紀インタビューmovie Vol.2




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女性のしなやかな強さ~ in 「猟銃」中谷美紀インタビューmovie Vol.1

2011-07-03 00:10:16 | 演劇
この秋絶対観ようと思っているお芝居
中谷美紀初舞台の「猟銃」

その芝居についてのインタビューを
YouTubeに見つけました。

このなかで、中谷美紀さんは
井上靖さんの原作「猟銃」の印象について
語っています。

一人の男性が本当の孤独を知るに至った過程を
三人の女性の「手紙」によって解き明かしていく
のですけれども、女の人の持っている“業の深さ”
というか、それと同時に力強さというか…、
男性にはきっと耐えられないであろう苦しみを、
女性はかくもしぶとく耐えて前に進んでいくもの
なのだというふうに、(自分自身も同じ女性です
けど、)女性のしなやかな強さというものをこの
作品から改めて感じさせられました。


舞台では、妻・愛人・愛人の娘の三役をこなす美紀嬢。
女の持つ“業の深さ”をどのように演じてくれるのか
愉しみ、楽しみ…。


「猟銃」中谷美紀インタビューmovie Vol.1




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カーテンコール

2011-06-15 23:52:22 | 演劇
先週末の“レミゼ”な日々の余韻を
引きずりながら、今週を過ごしております。

東宝さんがYouTubeに、
私が観劇(感激)した3回の公演のうち
なんと3回分ずべてのカーテンコールの模様を
アップされいたのを発見!

早速ここに貼り付け
今夜もしみじみと
レミゼ余韻に浸ることにしました。

『レ・ミゼラブル』6月10日(金)カーテンコール!


6月11日(土)夜の部「レ・ミゼラブル」カーテンコール(前編)


6月11日(土)夜の部「レ・ミゼラブル」カーテンコール(後編)


6月12日(日)『レ・ミゼラブル』大千穐楽特別カーテンコール



東宝さんに感謝!




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“あぁ 無情”な3日間

2011-06-12 22:52:36 | 演劇
東京2泊から戻ってきました。

10日・11日・12日と
レ ミゼラブルな日々になりました。

当初の予定は、
10・11日の新妻聖子&笹本玲奈出演公演のみを
観劇する予定でした。


(10日夜の部の出演者)

でも…、2日間にわたる
あまりに感動した舞台に、
初演スペシャルキャスト版の
千穐楽公演も観ることにしました。

こちらの出演者は…


この当日券をゲットしようと
今日は朝から帝国劇場に並びました。
朝10時から抽選に集まった人は
なんと700人!

コレは無理かと弱気になりつつも、
並んでいたとき、
たまたまこの色紙の真ん前で
止まったので…、



新妻聖子に希望をもらったような気がして、
「これは行けるかもしれない!」
と確信しつつ並ぶことにしました。
(といいつつ、今日は彼女出演はないのですが…)


結果…、

 

やりました!
何とか補助席で観れる番号をゲット!です。


大千穐楽ということで、
出演者・観客ともに力が入っていました。
カーテンコールの盛り上がりもただならぬもので、
拍手の嵐は何度も何度も鳴り止みませんでした。
25年間2572回公演にも及ぶ歴史の積み重ねの凄さと重さを
感じることができました。


今回の公演で、私がもっとも感動をもらったのは、
この人です。



笹本玲奈演ずるエポニーヌが歌う
On My Own は、心に染みわたってきました。
その声に、歌に、磨きがかかって
何もかもを吸い込むような情感が
波紋ように劇場を包み込みます。

そしてなにより
いたいけな少女の心情を
みごとに演じてくれていました。

昨夜のカーテンコールでの
挨拶の元気な言葉にも
感動をもらいました。


笹本玲奈、新妻聖子…
その誰もがすばらしく、
それらが客席と一つになっていく
舞台という場は、
やっぱり化学反応を引き起こす
パワーを孕んでいるものだと
しみじみ実感したモノでした。
(たとえそれが商業主義的なものを内包していたとしても
 きっとそれからはみ出す何かが、人間の営みの凄さなのだと…)






結局、私は、この場所に
3日間にわたって通ったことになります。

帝国劇場は100周年とのこと。
そして、25年間2572回の歴史をもつ“レ ミゼラブル”。

そのうちの、たった3日間 わずか3公演ですが、
共に経験できたこと、記憶に刻むことが出来たことは、
とってもとっても光栄なことたと
しみじみとこの記事を書きながら感慨に耽っています。

こうして、私の“レ ミゼラブル”な3日間は
駆け抜けていったのでした。


本当に“ありがとう”







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聖子と玲奈に、会いに…

2011-06-11 00:46:00 | 演劇
東京に来ています。

新妻聖子と笹本玲奈に会う!
これが今回の目的です。

そう…



この作品を観に、やってきました帝国劇場。
はじめての“帝劇”です。

そして、“レ ミゼラブル”もはじめてです。

きょうのキャストは…

 

でした。

中盤から、新妻聖子扮するファンテーヌは死んじゃって
出てこなくなるし…、
笹本玲奈演ずるエポニーヌも革命のさなか
途中で死んじゃうし…。
でも、最期の場面で
二人がジャンを誘う天使のように出てきたときには、
涙が出るほど嬉しかったです。

千秋楽が近いのもあって、
カーテンコールが、長目で
とってもとっても満足でした。


なんと!、今日の席は一番前!
かぶりつきで、すべてが堪能できました。

座席はちょっと後ろのになるけど
明日も行きます、“レ ミゼラブル”

明日は、新妻聖子&笹本玲奈ともども
ほとんどにキャストが千秋楽なので、
カーテンコールも盛り上がりそうです。

なので、新妻聖子&笹本玲奈の初日の
カーテンコールの模様を観た上で、
明日の、“レ ミゼラブル”に臨みます。



お芝居そのものの感想は、
また今度と言うことで…。




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プレミアム・デュエット

2011-02-24 16:22:48 | 演劇
昨年、12月に観に行った
音楽劇「プライド」

一条ゆかりの漫画の世界を
見事に舞台しにしていました。

そのお芝居が、NHK BS2で放映されます。
(BS-hiでは2/5に既に放映済みですが…)

登場人物を4人に絞った脚本も見事だったのですが、
なんと言っても、
 新妻聖子演じるところの緑川萌 と
 笹本玲奈演じるところの麻見史緒 との
デュエットはすばらしかった。
二人が 歌で闘い、歌で繋がって行くさまが
見事に表現されいます。

まさに“プレミアム・デュエット”です

その映像が、既にYouTubeにアップされていたので、
予告編がわりにここにも転載します。

劇中では3曲をデュエットしているのですが、
そのうち、私のもっともお気に入りの1曲を…

Invocation~祈り~ 新妻聖子 笹本玲奈


プレミアムシアター
 音楽劇「プライド」
  2月28日(月)[27日(日)深夜]
    午前0時40分~3時35分

  原作:一条ゆかり
  脚本:大石静
  演出:寺秀臣
  出演:佐々木喜英 笹本玲奈 鈴木一真 新妻聖子

  (収録:2010年12月14日 シアタークリエ)


【関連記事】
感動の「プライド」[2010-12-12 20]




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東京ノズルズル『お前のために歌うさ!』

2011-02-21 19:03:36 | 演劇
こんにちは、ご無沙汰です。

きょうは演劇公演のお知らせです。

私がちょっぴり関わっている学生演劇の
学生さんが卒業後、東京で役者修行をしていたのですが、
仲間と劇団を結成し、来月“旗揚げ公演”をする運びとなりました!

なので、その告知をば…。




東京ノズルズル ~旗揚げ公演~

お前のために歌うさ!

 作・演出:佐々木太陽
 出演:秋山静、佐々木大陽(以上 東京ノズルズル)
    駒井温子、近藤なつみ
    川本直人(CLEOアクターズオフィス)
    祖父江草子、細川佳央

 【日時】2011年3月18日(金)~20日(日)

   18日 19:00
   19日 14:00 / 19:00
   20日 13:00 / 18:00

 【場所】阿佐ヶ谷アートスペース・プロット
      東京都杉並区阿佐谷南1-9-10

 【チケット】前売・当日 2000円(全席自由)



劇団結成の趣意書というか宣言文には次のようにあります。




おもしろいお芝居が期待できそうです。


もちろん、私は、観に行きます。

みなさんも是非足をお運びください。





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雨と猫といくつかの嘘

2011-02-07 19:21:14 | 演劇
「青空…!」から明けて土曜日、
私は、東京で芝居を2本観ました。

そのうちの一本。

青☆組 vol.14
「雨と猫といくつかの嘘」
 作・演出:吉田小夏
 出演:木下祐子、藤川修二、福寿奈央
    高橋智子、荒井志郎、林 竜三

青☆組は、昨年6月に
「恋女房達」を観て以来のファンです。



なので、今回の東京はそのための
特典航空券です。


さて、今回の「雨と猫といくつかの嘘」

誕生日をリフレインさせる手法で
ひとりの男の人生を描いている作品。

確かにひとりの人間の生は
 区切りがあり有限で閉ざされているだろうけども、
しかし、それらは同時に
 譲り葉のように繋ぎ続けられるものであるし、
雨によって閉ざされたかのような空間のなかで、
 境界の曖昧さを残しつつ、それらが完全には閉ざされてはいないのだ。

 猫は死ぬときには姿を消す。
 死ぬときに誰かに看取られた猫は、もう二度とは生まれ変わることはない。
 だから、もう一度生まれ変わりたい猫は身を隠す。
 未練のない猫は、身を隠さず、だれかのそばで死ぬ。

佐野洋子の絵本「100万回生きたねこ」をモチーフにしながらも、
それを、私たちの人生のなかで繰り返される誕生日の思い出 と交差させながら
そこから、人間の“生”を紡ぎ出していく吉田小夏さんの脚本は、
日常のリアルを描きつつも、それでいて詩的で、それゆえに物語的で
とても素敵なテイストの劇作だと思いました。

明日8日まで、アトリエ春風舎に公演中。
お薦めです。


次回作の青☆組にも期待です。
また東京まで行ければいいのですが…



【関連記事】
 ・こいにょうぼうたち(2010-06-06)





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