見出し写真は北海道・網走市のモヨロ貝塚から出土した土製のクマ頭部像である。
表情が何ともユーモラスで、なんだかどこかで見覚えのある表情のようにも思えたので、見出し写真に掲げてみた。
このほか北海道のオホーツク沿岸の「オホーツク文化」と称される遺跡から動物をモチーフにした遺物が多く出土していて、この頭部像は土製だがその6割が骨や角、牙製という動物由来の素材に掘られたりしているものが多い点がこの文化の特性だという。
元々が牙や角に掘られたものだから、おしなべて小さなものなのだが、観察眼の鋭さというのか、その写実の見事さも相まってボクにはとても魅力的な動物像に思えてしばしじっと見入ってしまった。
横浜の日本大通りにある新聞博物館に隣接するビルの横浜ユーラシア文化館で開かれている「オホーツク文化~あなたの知らない古代」展を見てきた。
知らなかったが北海道には弥生時代は存在せず、本州で言えば6世紀の古墳時代から9世紀の平安時代前期までオホーツク沿岸に花開いていたのが、この文化であるという。
そしてサハリンから千島列島を含めた地域に広がる文化圏が出来上がっていたらしい(最後から2番目の写真参照)。
そして一番最後の写真には本州の文化との比較のできる年表写真を掲げておいたので参考になればと思う。

まさにボクの知らなかった世界だった

骨製のクマ像 体長7~8cmくらいの小さな作品だが、陸獣の王のヒグマの堂々たる存在感が伝わって来る

目鼻立ちの表し方、特に目の表情が生き生きしていて実に現代的というか、まるで生きているかのような見事な表現

このヒグマはよく太っていて、ちょとブタのような格好に見えるのはご愛嬌 でも顔つきは精悍そのもの

動物園でクマが座り込んで前足で食べ物を抱えて食べている姿を見ることがあるが、その姿を彷彿させる よく観察していると思う

他にもたくさんの座像が

見出し写真の頭部像を角度を変えて見てみたら、何とも人懐かしそうな表情に愛嬌があって親しみが湧く

この文化は特に動物の像が多く残されているのだが、わけてもヒグマを表現したものは9割に及ぶというくらい特別な存在だった
この文化圏の人々は竪穴式住居に暮らしていたことが分かっているが、その住居の祭壇的な役割を担ったであろう場所から、一定方向に向けて整然と積み上げられたヒグマの頭部が出土するのだという
ヒグマを特別視していたことを現していると見ることができ、この時代の人々の精神世界を垣間見るものと理解されているようだ

そのヒグマに対する思いは生活必需品の大型土器の縁飾りにも登場する

4か所に置かれたクマの頭部

4~5cmほどの牙に掘られたラッコ像

前足を胸の前で合わせ、後ろ足はきちんとそろえたお得意ポーズが実にそっくりに表現されている

こちらはキツネらしい

こちらはクジラとかトドなどの海獣だろうか

人物の像もあった こちらは牙に掘られた婦人像 鏡に映った背中には衣服の形も表現されていた


マッコウクジラの歯牙で出来た婦人像 これは利尻島で出土したものだが、出土例は少なく、これまでに10点余りしか発見されていないという
それにしても異様な表情をしている
この写真では不鮮明なので、以下にパンフレットを写したものを掲げておくので説明文と合わせて参考になればと思う


こんなものを獲って食べていたのだろうと推測されている

文化圏の地理的広がり ちなみに北海道では海辺にしか遺跡は残されていないというから内陸では生活する術がなかったということか

年代表 アイヌ文化が出現する3~4世紀も前の時代に花開いた文化だったようである