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平方録

闇が撤退してゆく現場に立ち会う

午前4時に目覚めて5分間のラジオニュースを聞くともなしに聞いて、ベッドを離れる。
東側に並んだ2つの部屋の窓のシャッターを上げ、窓を半分開けて外の空気を入れる。
半分というところが自分でも中途半端だな、と苦笑したくなる時があるが、常時使う部屋ではなく、ただ風通しのためだけに開けているのでこの程度だろうと勝手に判断しているということだろう。

空気の通りをよくするためなら全開の方がいいと思うが、いつごろからこういうブレーキというか、半端なことをするようになったのか、正直言って自覚できるものは何もなく、気が付いたらこうなっていたというしかない。
すべて曖昧、惰性。
こういう例は単なる窓開けに限らず、日常の様々な分野にも現れるもので、「まぁこのくらいにしておくか」とか、「こんなもんだろうな」と折り合いをつけることがしばしばである。
人付き合いと言うことに関心を向ければ、「いつも全開」なんてことはあり得ず、お互いの距離を注意深く測りながら、その度合いを測るのを恒としている。
この場合は心の窓とでも呼ぶことになるのだろうか。
「ピシャッと閉じられたまま」とか「かすかに開いた隙間から」とかという表現が存在するように、その開き加減にどうしたって注意が向くのだ。
開けっぴろげで構わない素晴らしい付き合い方って言うのも、ちゃんとある。

何故か思わぬ方向に話がずれた。元に戻そう。

東側の部屋が終わるとパソコンを置いている部屋の床から天井の高さまである折り戸を全開にして網戸にする。
部屋の中と外の空気が一気にまじりあっていく。
終戦記念日が過ぎた朝は夏とはいえ夜明けには少し間があるので、景色に色はついていない。ぼんやりと輪郭が浮かぶだけだ。
とりあえずベランダに出て身体ごと外気にさらし、外の空気を吸い、空を見上げる。
今朝の場合なら立待月が南より少し西に傾いた辺りに浮かんでいる。
周囲はまだ月明かりが通用するくらいの暗さなので、存在感はまだ残っている。

言い忘れたが、起きてここまでの間、トイレでは電気を点けたがそれ以外は暗闇を手探りとカンで移動する。
闇と闇から抜け出す微妙な境目というものがあって、そういうかすかな変化をしっかり見極めるのを楽しみにしているからであって、人工の明かりなんてとんでもないのだ。
闇に潜むモノノケなどの存在が本当だとすればいささかコワイが、山奥のあばら家でもないのだからそんな心配もない。

これらの一連の窓開けが済むとようやく歯を磨き、顔を洗う。
歯ブラシに歯磨きをつけるところだけ明りを点け、直ぐに消してしまう。歯磨きに明りは必要ないし、顔を洗うにも明りは必要ない。
鏡を見たって、かつての紅顔はとっくの昔に消え失せているし、暗くたって一向に差障りがない。輪郭さえ見えていればいいだけの話だ。

これが終わるとパソコンに向かう…というのが常識的なパターンじゃないかと思う。
しかし、網戸のすぐ脇かあるいはベランダにデッキチェアを持ち出して再び坐り直す。
このころになると、と言ったって時間にすれば10分程度しか経っていないから4時20分ころのことだが、既にふれた「闇と闇から抜け出す微妙な境目」というものをこの目で確かめようという魂胆である、
映画の場面がパッと変わるようなわけにはいかないが、じっとして辺りに神経を集中させていると「あっ、確かに今ちょっと兆したよな」というホントに微妙な瞬間というものがあるものなのだ。
するとそれを肯定するように、その極微細な変化がどんどん加速して行って、気が付くと辺りが薄っすら白み始めるという瞬間を迎えることができる。
この辺りになるとヒグラシが鳴き始める。
これを過ぎると後はぐんぐん明るさを増し、いつの間にか闇は全くその痕跡を消し去るのだ。

今朝も確かにその一連の変化を目にした。気が付いた。
これが時刻にして4時45分ころ。
この時刻は次第に遅くなってゆく。
そしてようやくパソコンの前に座ってパソコンのスイッチを入れる。
テーマは何も決まらないまま、あっという間に5時の時報を聞く。
焦るボク。書きたいことが思い浮かばない…

ええいっ ! しょうがない、かくなる上は起きてからパソコンのスイッチを押すあたりまでを実況中継しちゃえ…ってのが今朝の文章ってわけです、ハイ。

04:33の東の空。肉眼ではこんな色はついていない。光学レンズってやつはニンゲンの目では見えにくいものまで解像してしまうらしい
目で見るのとは印象が全く異なる

06:00 太陽が顔をのぞかせた山の左にあるビルの更に左寄りから上がっていた太陽だが、北回帰線からどんどん遠ざかり始めた…

見出し写真は今朝収穫したニガウリ。白ゴーヤが大きくなるのを待っていたが、黄色く変色し始めてしまった
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