「おう、熊さん、浮かない顔してどしたぃ?」
「やぁ、八っあん、おはよう。そんなに浮かない顔に見えるかい?」
「なんだか呆れたような、怒ったような顔してるぜ」
「あのな、辺野古の話だよ」
「ヘノコって、あの沖縄のかい?」
「そうだよ。沖縄県民の大多数が反対しているのに、サンゴやジュゴンが暮らす海を埋め立てて米軍の飛行場を作っちまおうと、政府が工事を強行してるアレの事さ」
「それがどうかしたかい。沖縄の問題にも関心があったなんて知らなかったぜ」
「昔ね、あの計画地の対岸の浜辺にあるリゾートホテルに泊まったことがあるんだよ。いい所でさ。そんなところに対岸からジェット戦闘機やら何やらがしょっちゅう飛び上がったら、さぞや台無しだろうな…って思ったりしてさ」
「沖縄はどこに行っても米軍基地ばかりだものなぁ」
「そいでさ、新聞に出てたんだけどさ、肝心のアメリカで『あの工事が完成するのは不可能に近い』って言う見方が広がってんだってさ」
「ん?」
「アメリカにね、外交政策や安全保障政策について共和、民主の歴代政権に政策提言をしてきているシンクタンクがあってさ、『戦略国際問題研究所』ってところらしいんだけどさ、そこがね、昨年秋に提出した報告書で『完成する可能性は低い』って結論付けたんだそうだ」
「へぇ~! そんなこと言ったって、ありゃ最初の予算を相当オーバーしながらもどんどん税金をつぎ込んで工事してんだろ。それが完成の可能性は低いってどういうことよ」
「報告書ではさ、7万1000本もの杭を打たなきゃダメなような軟弱地盤じゃ、明らかに不安定。しかも杭打ちだけじゃなくて地盤そのものの改良工事も必要になることから、仮に見た目は出来上がったとしても実際に使えるかどうか…って首を傾げてげてるってことのようだぜ」
「そりゃぁもっともな疑問だなぁ。沖縄県民だってあそこの地盤は軟弱だから飛行場には不向きだって、最初から言ってたじゃん」
「でもさぁ、そんな疑問がアメリカで湧こうが何しようが、日本政府ってのは耳を貸さないんだよな。一度決めたらメンツがあるんだか何だか知らねぇ~けどさ、立ち止まって考えるってことが出来ねぇ~んだよ。責任問題が怖ぇ~んだろうよ。そんないい加減な計画に大量の税金を際限なくつぎ込んでいるのが現状なのに、そういう視点はこれポッチもねぇ~んだから始末が悪いや」
「迷惑至極なのはきれいな自然を奪われ、反対の意思表示を無視され、踏みにじられる沖縄県民だよな」
「沖縄の一部にはいつまでもこんなに虐げられ続けるなら、いっそ独立しちゃおうっていう意見もあるんだろ。このままならオイラも応援しちゃうかもな」
「これも新聞で読んだんだけどさ、かの喜劇王チャールズ・チャップリンの言葉にこんなのがあるそうだよ」
「ん? チャップリンは何て言ったんだよ」
「人生――人の行動は、アップで見ると悲劇だが、ロングで見ると喜劇である」
「うまいっ! なるほどなぁ~、辺野古で起きていることは俯瞰して見ると喜劇ってことか。けだし名言じゃね~か」


わが家の猫額の庭の一部が明るく光っている ♪ バラもつつがなくツボミを膨らませている ♪