最近映画はレンタルアップのビデオを買ってきて観ることが多い。やはり借りるより安いし、そもそも近場にレンタルビデオ屋が無いという最悪の状況なので、メイトリクスに言わせれば「この手に限る」ってなもんだ。また何度も言うように、どうでもいい映画や食わず嫌いだった映画も気楽に観られるし、佳作を拾ったときの喜びといったらそりゃ大層なもんである。目指せ中古ビデオハンター。
さて、本日観た映画はウォルター・ヒル監督、アル中おじさんニック・ノルティ主演「ダブルボーダー」と、L.Q.ジョーンズ監督、そしてマイアミバイスのソニー・クロケットことドン・ジョンソン主演「少年と犬」という作品である。
まずは「ダブルボーダー」。監督と主演の名前で分るように「48時間」コンビである。このビデオはバイオレンスの煽り文句に釣られて買ってしまったが、典型的な失敗パターン。つまらない映画を引いた時ほど悔しいものは無い。脇役にマイケル・アイアンサイドも出ていることだし、相当期待してしまっていたのが悪いんだ。
とにかく全てが今ひとつ過ぎる映画。まず、ジェリー・ゴールドスミスの音楽が盛り上がらないのがまずい。だんだんストーリーを追う気力もなくなる。あー、もうろくに話思い出せないよ。良かった点と言えばアクションシーンかな。頑なに撮っている感じは好感を持てる。血糊がなかなかダイナミック。テンポもいいし銃の綺麗な撮り方も心得ているとみえる。あと、ラストの銃撃戦って「ワイルドバンチ」そのものじゃねえの?絶対オマージュだよな。多数対数人で機銃撃ちまくってスローになって血糊出まくって意地で戦って皆死んで…。上手く撮れてるから憎い!
あと職安での白人と黒人の喧嘩芝居がツボだったな。
白「ちぢれ毛 お前は? おめえだよ どんな仕事につく気だ」
黒「おれか?」
白「おめえだよ」
黒「脳外科医だよ アホウ(brain surgeon, asshole!)」
白「黒いオカマ(nigger faggot)がそんな口きいていいのか?」
黒「You, call me nigger faggot?」
白「他に黒いオカマが列に並んでるかよ」
黒「クソヤロー!(fuking piece of shit!)」
黒人白人をぶん殴る。(もちろん芝居)
ってな流れである。特に私の貧弱な英語力で抜き出した英語の部分だが、かなりツボで10回くらい見直してしまった。そして素晴らしいと思うのは字幕である。「ちぢれ毛」なんか一言も言ってねえし、「アホウ」とか秀逸すぎるだろ。見事に感じが出ているよ。
ってなわけで、この映画で一番面白かったのは一番不謹慎なシーンでしたとさ。
さて、次いでドン・ジョンソン様主演の「少年と犬」はどうだったか。なんとこいつがなかなかの拾い物でびっくり。先に微妙な映画を観ていたせいで「どーせこれも…」って思っていたのだが、一気にそれが吹っ飛ばされた。
核戦争後の地球。男は食料と女をむさぼる世界。実に分りやすい基本設定。そしてなんと主人公は一匹の犬とテレパシーで喋る。この犬は食料や女を嗅ぎつけることが出来るのだ。二人は時には反発し合うこともあるが、熱い友情で結ばれていた。
さて、そんな中、主人公は一人の女と出くわす。この女、実は地下世界から来た者だったのだ。主人公はこの女を他のハンターどもの手から守るために翻弄し、そのなかで犬は負傷してしまう。で、その後、主人公は地下世界へ行くことになり、負傷した犬は地上に残していくことになる。
地下世界に行くと、一見地上とは大違いの平和な世界に見えるが、実は委員会というものがきっちりとした規律をもって独裁社会を築いていた。主人公は囚われの身となってしまう。その主人公を女が助けに来る。女は「あなたを主体にクーデターを起こしたい」みたいなことを言う。主人公はきっぱり断る。女はさらに「愛してるから、お願い、幹部を殺して」みたいなことを言う。主人公はいくら愛しているだのキスされても頑なに拒み、女もついに折れ、地上への脱出を試みた。
さて、地上に出るとそこに犬の姿は無い。主人公が呼びかける。かすかな反応が。そう、地下世界の入り口近くで犬は待っていてくれたのだ。しかし飢えと先の傷で息も絶え絶え。主人公はすぐに薬と食料を持ってくると言う。しかし犬は自分を置いていけと言う。一方で女は、愛してる、犬は置いて2人だけで行きましょうとか言う。主人公はそんな女を見つめる…。そして画面が暗転…。
さーてこっからネタバレなんだが。ここで私は本当に度肝を抜かれた。ビデオのパッケージにある煽り文句「衝撃のラスト」ってなんのことかいな、このまま犬が死んじまうのか、なんて思っていたのが甘かった!そんな甘っちょろいもんじゃないんだ!どうせこんなよく分からんB級作品みねーよという方はどぞ。ま、ほとんどの方はそうだろうがね…。
えー、画面が暗転し、そっから焚き火のアップになるんですね。背景は朝焼け。嫌な予感が…。えっ?えっ?主人公と犬が朝焼けをバックに歩き出すシーンに切り替わる?ややっ!?やっぱり???ま・さ・か!きーべー!!
そうなんですねー、燻る焚き火跡の近くには女の着ていた服らしきものが…!!
主「彼女は愛してると勘違いしてたんだよ」
犬「味気ない女だったな」
主「アッハッハ」
いやー主人公と一緒に私もアッハッハですよ!大爆笑!そして「ええー!?」って。もうね、これぞ衝撃のラストってもんを見せ付けられた!そしてこれぞ究極の友情なのだな!友情なのか!?もうよく分からないけど、とにかくびっくりした!
そんなこんなで、あまりにもびっくりしすぎて長くなってしまったが、主演のドン・ジョンソンはマイアミバイスやる前で凄く若い。あと低予算っぽいのに頑張っている感じが出ていてすごく良い。映像がね、結構すごい。地下世界の演出なんか本当に独特。なんだあのセンスは。ついでに、監督のL.Q.ジョーンズって人調べたら名脇役者じゃないか。以前ここで感想書いたことのある「爆走トラック’76」にも出てたし、チャック・ノリスがデビッド・キャラダインを痛快に爆死させる「テキサスSWAT」、ドクターセガール大暴れの「沈黙の陰謀」にも出演、そして「ワイルドバンチ」では悪役だったのか。すごいじゃないか。知らなかったよ、ごめんなさい。
というわけで、本日観た両作品とも「ワイルドバンチ」がちょっぴり絡んでいる感じがして、こういう偶然があるのも面白いところ。やっぱりこういう映画の観方はやめられないな。しばらくレンタルアップの籠を漁る日々が続きそうだ。