経済財政諮問会議ウォッチング

経済財政諮問会議での議論のまとめと感想。

平成19年4月17日

2007-04-22 17:07:02 | Weblog

 今回もいろいろな資料がありますが、あまり心に響くものがありません。2月27日の会議と同じような感想をもちました。

 そういえば、2月27日の会議に出てきた生産性向上計画に算出根拠を示して欲しいと書いたのですが、今回の民間議員提出資料では
これら3つの戦略を通じて、「進路と戦略」の内閣府参考試算で示された「新成長経済移行シナリオ」を実現することを目指す。
この試算によれば、一人当たり時間当たり労働生産性の伸びは、5年で5割増を実現することが可能となる。
(注)過去10年間の一人当たり時間当たり労働生産性の伸び率1.6%が、2011年度に2.4%に5割増
とありました。確かに、参考試算の新成長経済移行シナリオでは2011年度の潜在成長率が2.4%になっていますが、これですませてしまうのでは、労働生産性などという言葉を持ち出さなくともいいわけで、労働生産性5割増というならば、もう少し丁寧に説明してくださいな。

 本日のお題に関連して教育と金融で思うところを書いておきます。

 現在、高校進学率は100%近く、大学進学率も50%を超えているわけですが、そこで評価に値するだけの教育が行われているのでしょうか。別に、勉強が嫌いなら中学卒業で仕事をするというのがいいとは思わないけれども(まあ、そうなれば民間議員が目標としているところの就業率は上がりますが)、今みたいに普通科高校全盛で社会に出ても役にたつのかどうかわからないような科目ばかり勉強するのがいいのかどうか。高校で終わるのであれば、もっと社会に関係した勉強があった方がいいのではないでしょうか。そして、半分以上が大学、短大に行くのは行き過ぎ。もちろん、ちゃんとした目的意識があって勉強すればいいのですが、単に進路決定を先延ばしにしているだけなのではないでしょうか(大学院に行くのも同様)。

 大学をここまで増やした(おまけに80年代後半からの臨時定員増もそのままにした)おかげで大学全入時代が到来しました。それが日本経済にとって望ましい状況といえるのかは疑問で、いずれ淘汰があるものと思っています。国立大学も入学試験日をバラバラにしてしまえば淘汰の波にさらされるかもしれない。税金投入を減らすという意味では国立大学の淘汰の方が効果的ですね。

 東京をニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際金融市場にしようというのが決まり文句となっていますが、これについて「ドルと英語とペンタゴン」という話を読んだことがあります(「金融行政の敗因」西村吉正)。こうした手段をもたず、留学生を引きつけるような魅力もなく、世界に読まれるような経済紙ももっていない国で世界の中心たる金融センターなどといっても何だかね~というようなお話でした(脳内記憶モードですから歪んでいる可能性あり。正しくは前掲書をお読みください。)。 世界の中心たる立場を望むのであれば、イラン問題でもドーハラウンドでも何でもいいのですが、世界をリードしていくような能力と覚悟をもっているのでしょうか。

 てなところで本日はお終い。先週は2回も会議があったようですが、そんなにやられてもこっちは追いつきません。といいつつ、最後に揚げ足取り。4月20日の会議後記者会見の時間が19時35分~20時58分 となっていますが、あまりに長すぎるでしょうが。


平成19年4月6日

2007-04-15 09:35:41 | Weblog

 すみません。先週末は更新できなかった。おわびに、今回は長々と駄文を書き連ねてみます(こら)。

ハローワークの市場化テスト
 厚生労働大臣がILO条約の件、弱者のセーフティネットであること、3事業一体運営の必要性など縷々述べていますが、議論の帰趨は明らか。そもそも、市場化テスト自体が、目を付けた事業は必ずテストにかける、反論は許さないという仕組みなのだと理解しております。どうしても市場化できない業務も市場化するために「特定公共サービス」という規定すらあるのですから、、、ということで、条文を見たら既に職業紹介事業も入っていた(32条)。これは人材銀行のことでしょうか。

 それで、厚生労働大臣に対する反論
(八代議員) 民間にできることは民に任せ、官でなければできないことに貴重な公務員を使うという方向で積極的な御提案をいただきたい。
・よく「官から民へ」とか「民でできることは民で」とか言われるわけですが、このスローガンには官が担っていたはずの公平性や公共性についての配慮がない。こういうスローガンを振り回すのはいかがなものかと思うのですが。
(丹羽議員) サービスの面では、民間の方が官よりもずっとサービス精神が旺盛で、私は、職を求めて来る人々のためになる仕事をするだろうと思っている。
・官に対する不信をここまで率直に言われてしまうと反論のしようがないでしょうな。しかしまあ、こうしたことが議論になる背景には、ハローワークに対する不信感が前提にあるのではないかと思う次第(菅議員の発言とか)。公務員の不祥事では社会保険庁がたたかれていますが、ハローワークも負けてはいません。例えばこんなページ
http://report.jbaudit.go.jp/org/h17/2005-h17-0787-0.htm
 どうも、社保もハロワも元は地方事務官。こうした組織のガバナンスに大きな問題があったと思えてならない(実態は知りません)。
 ハローワークの職員は2万人以上いるとのこと。

http://www.gyoukaku.go.jp/genryoukourituka/dai4/siryou2_2.pdfのp5)
この雇用を守るのがハロワの最大の使命だなどという冗句もあるわけですが、国民の信頼を得られるように頑張ってください。

・労働市場改革
 民間議員の紙を読むと、要は就業率を上げましょう、労働時間を縮めましょうということ。かつては、関連制度を包括的・抜本的に見直す「労働ビッグバン」が不可欠(11月30日の民間議員提出資料)などと勇ましかった割りには穏やかな?提案です。ホワイトカラーエグゼンプションっをめぐるドタバタを見て、制度よりも実体でいこうということでしょうか。
・完全週休二日制の100%実施
・年次有給休暇の100%取得
・残業時間の半減
 いいですね~。年次有給休暇取得率が平均で半分弱(17.9日の付与で8.4日の消化)で、しかも低下傾向(1999年までは50%を超えていた)にあるというのは異常です。でも、給与というのは働いた対価なのですから、今の待遇を維持しつつ、残業は減らして休暇もばっちり、、、というのは虫がいいのでしょう。時短分は生産性の上昇で補ってとお題目を唱えてみても誰も保証はしてくれません。

時短については異論も出たようです。
(尾身議員) 体力の限界を超えるようなことは人道上規制すべきだと思うが、働きたい人は働いて、働きたくない人は働かなくもいいという自由を認めていくのが、基本的な国家社会の一番の活力の基である。残業時間を半減しろとか、納得づくで働いている人を働いてはいけないとかを、国家の方向として決めることについては、私は極めて疑問だ。そういうことを決めることは、我が国が衰退する原因になるのではないか。機械的に、働かない方がいいとか、完全週休2日制がいいとか、そういうことを国家として決めるのは、私はどうかと思う。
(甘利議員)日本では働くというのはそもそも喜びである。働く喜びとか、働く生きがいとか、そういう視点でとらえている。苦痛から解放される時間とのバランスというのではなく、働くこと自身のこれが生きがいで喜びだという質の方へも、是非目を向けたらどうかと思う。
これに対しては以下のお答え。
(丹羽議員)尾身議員と甘利議員の考え方はそのとおりだと思う。ただ、この問題は、女性の就業率をいかに上げるかとか、いかに一般の労働者のワークライフバランスをとるかというところから始まっている。総理が前の議題のときに言われたように、労働の多様化の時代であり、できるだけ多くのオプションを労働者に用意して選択してもらう時代が来ているということだと思う。
 多様な働き方とかワークライフバランスという言葉が資料でも会議でも何回も何回も出てくるけれども、その本音は人間ならばみんな結婚して子供をつくって仕事も育児もばっちりやっていくというライフスタイルの強制なんですよね。自由を重んずる人たちがこの問題になるとにわかにこの立場に立ち、財政出動まで主張する(既に出してますが)のが不思議。そんなに多様性が大事なら内閣府や厚生労働省に「豊かな生活を目指すDINKs推進局」とか「楽しい独身生活擁護局」といった部局をつくってくださいな。

 余談1ホワイトカラーエグゼンプション
賃金は労働の対価。では労働をどう評価するかとなると難しい。勤続年数とか、実労働時間といった数字なら客観的ですが、労働の中身の評価とは言えない。しかし、ホワエグがぽしゃったということは評価は嫌だ。不合理でもいいから労働時間で見てくれということなのでしょう。
 余談2
(甘利議員)政治家はワークライフバランスなんかめちゃくちゃ
 思わず笑ってしまいました。しかし、政務に支持者まわりで休日なしの生活なのでしょうね。国会議員の職責を考えれば良い仕事をしてもらうのが第一で赤坂の家賃が9万円で安すぎるなどと批判するのはいかがなものかと。
 余談3あげあし取り
(高橋内閣府政策統括官) 配布資料「日本の生産性の現状」をご覧いただきたい。 1ページ目左側は、2005 年時点での労働生産性の国際比較。労働者一人当たり時間当たりで生産性比較だが、日本はOECD平均を下回り先進国中最低で、アメリカの3割程度の水準しかない。
 正しくはアメリカより3割低いということのようで。なお、製造業に比べて非製造業の生産性の伸びが低いのは当然。何でもかでも規制改革に結びつけるのはいかがなものかと。