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回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

ピアノ調律騒動

2021年05月24日 18時07分59秒 | 日記

普段はあまり弾かないピアノ。それでも前回調律してから4年も過ぎてしまったので、前回と同じ楽器店に電話をして調律してもらうことにした。その楽器店が紹介してきたのがやはり前回と同じ調律師。スタインウェイ本社認定コンサートチューナーという肩書きを持ったベテランだから間違いはない。前回と同じく白い大型乗用車を自分で運転して現れた。部屋に入るなり、日本ではほとんど見かけないものだったのでよく覚えている、それに家もちょっと特徴があったので、と(古い家、というところをお世辞で)。

一時間半ほど、大きなキャリーバッグの中から道具を引っ張り出して、上前板や鍵盤押さえなどを外して一つ一つの調律が終了、確かめて欲しいといわれてちょっと弾いてみると、生き生きとした音色になった(ような感じ)。これなら満足、と言ったら、今度は深刻な顔をして、実は、鍵盤押さえを外した時に側板に引っかき傷をつけてしまったので見て欲しい、と。改めて鍵盤の右側の側板を見るとかすかに10センチほどの傷がある。よく見れば色の違いもわかるものだが、自分用のピアノであり50年近く経った、一部には色あせたところもあるし、それにこの傷はそれほど気にならない程度のものだ。大変申し訳ない、とこの調律師は自分の失敗に気落ちしているようだったので、別に売り物にするわけではないので心配しないで欲しい、ところで時間があるならコーヒーでもどうかと勧めてみた、

コーヒーを飲みながら聞くと、コロナのせいでコンサートが軒並み中止になり仕事が激減している、という。更に、テレワークで自宅で過ごす時間が増えてピアノの調律も増えるのではないかとも思ったが、ピアノ教室などの不振の方が影響が大きいらしい。彼は個人で仕事をしているので、まともに影響を受けたようだが、それでも余裕のある辺りはこれまでの貯えが充分あったのか。

彼によると、スタインウェイはニューヨークとハンブルグに製造拠点があり、日本はハンブルグの担当地域に入っているため、日本にあるのはほとんどがハンブルグ(ドイツ)製で、このようなニューヨーク製のスタインウェイは珍しいのだということだった。それに個人からこのピアノの調律を頼まれることはあまりないから、今日は楽しみにしていた、それに、どちらかと言えばグランドピアノが中心で、アップライトピアノは珍しいと。帰り際、あまりに申し訳なさそうな顔をしていたので、もう気にしなくて良いですから、と言って見送った。

その後、近くのスーパーに買い物に行っていたら彼から電話がかかってきた。先ほどの件だが、自分の知り合いに大手ピアノメーカー専属でピアノの修繕を専門にしているベテランの職人がいる。彼に話をしたら、明日にでも修理に伺えると言っている。ついてはまた手間を取らせるが、もう一度お邪魔させてくれないか、と。もちろん、修理費は請求しない。このままでは気が済まないので何とか了承してほしい、という。そこまで言うのなら、ということで翌日待っていると彼ともう一人初老のいかにも職人という風情の男が現れた。やはり大きなキャリーケースを引いて。その中には20-30ほどの小さな塗料の入ったチューブが並んでいて、まるで画家の道具のようだ(実は本当の画家の絵の具をみたことはないので、映画などで見た風景の受け売り)。

改めて上前板と鍵盤押さえを外し、傷の所の色に合わせるように何種類かの塗料を小さなパレットの上で調合し、それを何度も何度も薄く塗り重ねていく。そうしているうちに傷の部分が埋められかつ色も元の色に戻ってきた。ついでにほかの所にあった小さな傷も修復してくれた。この日は運よく晴れていたので乾燥も早くなりそうと言いつつ、結局作業は一時間以上かかった。

前日と同じく、作業の後、たまたま佐賀の嬉野産の紅茶があったので、それを飲みながら話を聞いてみるとこのピアノ修理の職人は初めは家具職人として仕事を始めたが、30年ほど前ピアノ修理の求人を見て何か人とは違う仕事をしてみたいと思いこの道に入った。それ以来ピアノ修理一筋、確かに腕と責任感は人一倍ありそうに見えた。ピアノの移動中にどこかに触れて傷をつけてしまうことはときにあるし、また、陽が当たって色むらが出来たり、と、コンサートホールから学校、ピアノ教室まで修理の引き合いは結構来るという。

どんな名人でも人間である以上絶対ということはない。こちらにとっては大したことではなかったが、調律師にとっては自身の面目(プライド)のかかった大事件だったのだろう。時間は取られてしまったが、普段なかなか見ることのできない職人の仕事を垣間見れたというのは得難い経験。上手な修理のおかげで今は何事もなかったようなこのピアノ・・・。

庭の片隅に群生しているスズランが咲き始めた。

 

 

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (1-102popra)
2021-05-24 20:53:32
スタインウェイアップライト、とある工房で見たことがあるような?

その時も、弾くとどんな感じなのかなと思いました。

素晴らしいピアノ、頼もしい職人さん、いいですね~☺️

うちも今週調律です。お金かかるので一年半毎にしてもらってますけど、今後はもっと間隔あけざるを得ないかも😅

ちなみにヤマハの、もう今はない型の最小グランドです😊ピアノサークルの皆さんはすごいピアノの所有者が多いです😲ピアノは本当に贅沢品なので、後ろめたい気持ちになることしばしばですね😥
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Unknown (harborside)
2021-05-25 17:57:28
popraさま
スタインウェイアップライトの鍵盤押さえ(鍵盤板?)は、下からネジで固定されているという特殊な構造になっていました。そのために引き上げるときに側板を擦ってしまったということです。多分何か理由があるのでしょうが😕
一年半ごとに調律ですか。本当はそうしなければいけないのでしょうがつい先延ばしにしてしまいます。調律師からは、また4年後に、と言われました。きっとあまり弾いていないことを見破ったのでしょうね😅😅。
ピアノは少し高額ではありますが、やはり楽器の中では王様でしょう。世の中にある他の贅沢品に比べれば、決して後ろめたい気持ちになることはないのではと思いますが😀😀😀。
そういえば「戦場のピアニスト」という映画で主人公の、ピアノを弾けることで命が助かったというくだりが強く印象に残っています。
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