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言葉喫茶【Only Once】

旅の途中で休憩中。

手のひらを暗やみに

2020-09-20 21:57:13 | 言葉






誰かが見た暗やみを、わたしが知る事は無い。
わたしが抱く暗やみもまた、誰にも知られる
事は無い。


暗やみの彼方に
ひと握りの星がある
どうか忘れないでほしい
ひかりばかり見つめていては
大切なものも見えなくなるから
そこに暗やみがあるなら
それは必要だからだ
目を凝らせば
見えてきはしないだろうか
かすかな喜びや
本当のねがいが
見落としてきた
大切なものが―


歩く。歩く。この暗やみを、ゆっくりと、ひり。
目を細めてジッと手のひらを見つめてみる。
その時、初めて、手のひらにも星がある事を知
った。


あなたは
その手のひらを
暗やみに浮かべてみた事が
あるだろうか














ありふれた言葉を

2020-09-17 23:04:03 | 言葉








おはよう
こんにちは
こんばんは
おやすみ

いただきます
ごちそうさま
ありがとう
ごめんなさい

げんきですか
おひさしぶりです
じゃあね
またあした

ありふれた言葉
それは
尊い言葉だ
やさしい想いだ

飾りもなく
手垢にまみれた
宝物のような
言葉たち

想ったなら
あなたや
だれかに
つたえたい

そう
いつものように

















黒と白のドラマ

2020-09-15 22:40:01 | 言葉







ゆるぅり
ぐうるぐる

ゆらん じわり


小さな円の中をまわる
黒と白

ふたつの壁はほどけ
やがて
ひとつの渦の
終わりへとたどり着く


  器の中で待っているよ
  君がここへ来るまで
  
   うけとめて
   それだけで良い


・・・・・・―とぷん・・・


マグカップの中で
渦をまく黒と白

小さな陰陽が
ひとつの色に変わる頃
誰にも見えないドラマが
底にある












泡立ち

2020-09-14 23:41:04 | 言葉







夜が
泡立っている


不規則な雨が
窓を殴りつけては

夜を
泡立たせている

そうして
わたしは眠れない


ブランケットの膜の奥
巣ごもりをするが

わたしもまた
すでに泡立っており

ブランケットに
しがみついてみるが

泡をぬぐうことは
ついに 叶わず


窓の外では

夜が
バチバチと弾けて
大地へと流れ落ちている


言葉にならない
泡が
まなうらにこびりついたまま

今夜
わたしは眠れない









あるいのち 〜ウメモドキ〜

2020-09-14 21:46:36 | 言葉






幹や枝を
うねらせながら
力づよく地に根を張る
ウメモドキ


冬の終わり
骨組みだけの傘に
青いいのちがふつふつと芽吹き
小さく息をするのを見た
それは夜明けよりも美しい
いのちの目覚めだった

春の途中
寒々しい姿をした傘は
青々と茂りはじめて
ひらひらと
風に吹かれる新緑のにおいを
胸いっぱいにためた

夏の始まり
ウメモドキは
緑色の傘のよう
どこからともなく訪れては
枝に留まり羽根を休める
鳥たちのための小さな森であった

秋へ向かう
庭の中の小さな森に
赤い実がなった
つめたく鋭い陽射しを浴びて
一粒ひと粒が燃えている
今も色鮮やかな ひとふりの傘


やがては
木枯らしや雪の重みに
からだをしならせるであろう
ウメモドキ

それは

雪の白に
木の実の赤
黒々とした枝を魅せる
螺旋の姿をした いのちだ