5月の終わりに。

　ようこそ。

　思い出話をしよう。
　僕には「義兄さん」とROの中で呼んでいた人がいた。リアルの仕事が忙しくなり接続はしなくなったが、今も、特に僕の所属する場所では誰もが心に鮮やかに記憶している。僕はいつの間にかその人を「義兄さん」と呼んだ。最初の理由は単純である。僕のプリと、その人のクルセの髪型がおんなじだったのである。だが僕はだんだんとその人を「義兄」と呼んだ理由を段々と深く確信していった。その人は、僕の、いやおそらくROの中にあって、僕が知る最も優良なプレイヤーであったのである。それはテクニックというものではない。むしろ天然と言われるほどに「うっかりまちがえててきにヒールしてしまったぜ」と発言し、そもそも発言には誤爆が多く、装備は僕と同じくらいスローペース。INTクルセだが「効率狩り」という概念に疎く、頓着せず、そして何より仲間に愛されていた。そしてそれと同じくらい仲間を愛していた。恨み言や愚痴のたぐいは記憶になく、口癖は「がはははは」である。ある時、その義兄さんを、とある人がこう言った。
　
　「あの人は強い人だよ。どんな時でも笑っている。心の暗闇に勝てる人だ」
　
　大好きだった。彼を知っている人誰も彼も同意するだろう。いまだにギルドの人はその人を含めて３～5人の不在をいつも寂しく、だがその思い出を大事に持っている。名前を出すだけで、優しい気持ちになれた。正直で、だが無責任な発言や、人を傷つけるような発言は一切僕の記憶に無い。人は冗談めかしく、だが半分本音で誰よりも「最強」の人だと言った。色々な意味で優秀なプレイヤーではなかった。だが僕が知る限り、おそらくこれから先も最も「優良」なプレイヤーだった。

　僕は義兄さんのような人になりたいと思っていた。清濁を併せ呑み、腹の底に押さえ、それすらかき消すように笑ってくれる。誰もがあの人に会えれば安心した。そんな存在でありたかった。でも僕は時々訪れる、自分とそして他人への暗闇を見つめてしまった。
　その人はもう、6ヶ月のログインをしていない。おそらくキャラクターは消えたかもしれない。だが、僕の中から彼が消えることはありえない。非公平も、装備も、効率も経験地も、それ以上のものがあることを彼はいつだって教えてくれたのだから。出会えた意味は、彼が僕にもたらしてくれたものを、このROで教えてくれたものを、また別の人に。

　僕は彼ほど強くない。けれど彼のようにあろうとしたい。笑っていたい。誰も彼も平等に想っていたい。あの人は笑っていた。あの人がいるだけで、みんな笑顔の中に包み込まれるようだった。

　僕はあの人のようになりたい。

　寂しげな言葉で、とげを刺すような心でいる人たちに、僕ができることがあるのならば。誤解を恐れずに言うのならば、僕は手段を選ばない。
　血も涙もある悪党を、目指しているが故に。

　そんな風に、僕は義兄さんも含めて、出会った人を忘れることは出来ない。たとえどんな思い出だろうと、一緒に笑った思い出がある人ならなおさら。とあるヤツのように、時々顔を見せてくれるだけでもうれしくなる。僕はこの世界に経験地や装備を求めてきたわけではない。ただ、冒険と仲間を求めてこの世界に招かれた。
　僕にとって最強というものは、人と人の間に生まれるものなのだから。
　　

　個別返信。
　＞某タヌ社長へ。断片的な言葉は双方誤解を残しがちです。もしあの発言が僕への言葉なら…きりたんぽつつきながら蒸気堂と膝を突き合わせて小一時間問い詰めるべきですな…(キョピーン( ゜Д゜)φ=φ

　＞弟子一号（後者
　また誤解を与えているようで。でも僕に言うということは僕には届いてくれると想っているんだと思う。そして苦言になるのは、この言葉が君に返った時があるからだろう。かまわないよ。君がそれで気が済むのであれば。なぜなら、自分の観念で決め付けているのは、その発言の状況で、すでに君自身も僕を決め付けているからさ。それこそ自分の尺度で。
　君と僕はよく似ている。とてもね。
　また戻っておいで。僕は待っているさ。

　＞チケ切れして休暇しているみなさんへ。
　5月は僕も忙しくてね～。てかギルドと僕自身のことでいっぱいいっぱいだったのさハッハッハ。そのせいで某アニキにはご迷惑をば。
　また会おう。ぜひ、会いたいから。

　…ってメインの垢切れ取るやん。ふ、残りの垢で楽しむまでよ。

　きょうも、しあたー・れいんぼーべりーから、ごきげんよう。