「あなたらしくない」という言葉が胸を打った。
僕らしいという意味がわからなかった。
それは君に見せていた表情を、すっかり見せなくなってしまったということなんだろう。
ごめんね。の言葉は彼に対してふさわしくないから、僕は別の方向からお礼をするために、あの時より時間もずいぶん経ったのに、もう一度同じように振舞いたいと努力するにはどうすればいいかと思ったが、進歩もない。
人生の時間の少しを使って、もう少し器用に動けていたらステキだったのだろうけど、僕に相応しいものとして、今のような日々に少しずつ目を向ける。
やがてまた冬のように寒い心の谷に落ちる前に、今日は少し懐かしい気持ちで話しておきたかった。
ある日突然なのだ。
旧友と連絡を取ったり、もう会えないような人との繋がりを感じたり。
中空に紐がふらりと揺れていて、その反対側に何も結んでいないのを呆然と見ているだけで、ゆらゆらとしているのを、少しだけこの光景は見ておく価値もあるんじゃないかと思った。傍目には。だ。
光景の主人はそれはもういつもいつもたまったものではないけど、僕は自分の視線を影法師の方向に託して、どうだい、少しは面白いかいと聞きたくなった。
「ありふれているさ。それだけ」
批評じみた言葉は慰めにもなりはしなかった。
そういえばそんな気持ちの裏返しで、こんな人生に復讐したいといつも思っているもう一人に対しても、影法師は言うんだ。
「ありふれた気持ちさ、それ以上は」
君に日差しを上げよう。あの手の届かない場所からこぼれるそれで焼きつくして一度消えて、夕暮れや遮るものの中に入ったら、またいつものように言葉をくれ。客観的で、ありふれて、つまらない、だが。
僕は冷静さと、そういう距離感を持つことを、ようやく取り返したのだ。
2014年、1月に。