二頭のサラブレッドの幸福を願い奮闘する日々

スピ君とプーちゃんの様子について、またウマを取り巻く環境、時事問題などもつぶやいています。
#引退馬

【公開】ハッピーホースの馬達~プーちゃんことマイネルディンプル(後編)

2016-12-18 23:18:47 | 公開日記
前編
http://blog.goo.ne.jp/happy-horse-diary/e/a6d31fd312ddae2b0df0d1377297b765



プーちゃんのように、体中にメラノーマ(悪性黒色腫)が回ってしまった芦毛馬は肉にはならないため、殺処分の対象となります。

プーちゃんが、1995年にマイネル軍団から募集に出ていたことは覚えていましたので、放牧地で草をはむプーちゃんを見ていたら、なんとなく「ご縁」を感じました。




引っ越して来たばかりで、スピ君も新しい土地に慣れるのに不安だろうし、余命短い馬であれば、スピ君が最初の一冬を共に過ごす相棒がいたほうがよいだろう、と考え、高齢まで頑張ったプーちゃんを堵殺場ではなく、我が家で看取ってはどうか、と考え、「馬達の相性に問題なければ、ひきとります」とクラブに伝えました。









早速、スピとプーを同じ放牧地に放し相性を見て、問題無い、と判断。これで決定です。この決定の後、自宅の放牧地の拡張工事をしました。

ただ、プーちゃんの当時の様子は、儚さを感じるほどで、クラブの放牧地では元気そうにしていても、馬房に戻ると横たわっていることが多く、うちに連れて行く前に死んでしまうのではないかと思ったほどです。


私の引っ越し作業も一段落した2012年6月27日、スピ君を自宅に移動しました。「1週間程度の後、プーちゃんを連れて来てくださいとクラブにお願いしました。

ところが、プーちゃんは、1週間経っても来なかったのです。なんでだろう?と思いつつも、「またお仕事に復帰したのかな?」程度に考えていました。実は、ひどい大けがを負っていたのです!

その事故のことを知ったのは、2週間以上経過してからのこと。何故連れて来ないのかスタッフに聞くと、怪我をしている、と。かなりひどい怪我であることだけ知らされました。

7月14日頃、経営者から電話があり、「いつ連れて行ってくれるのか?」と問われたため、「怪我が治ったら連れて来て下さい」、と返事をすると、前膝から出血している写真が送られてきました。



※怪我をしたのは6月28日と聞いています。放牧地から馬を戻す時に、蹄の裏の汚れを落とす時につなぐための牧柵は、(この地域の風習か?)わざと簡単に抜けるように作ってありました。28日午後、新人スタッフがプーちゃんをここにつないだところ、怖がったプーちゃんが後ずさり、牧柵が抜け、空を舞って地面に落下、弾んでプーちゃんの左前膝を直撃、という怪我でした。プーちゃんは、牧柵を引きずりながら狂ったように自分で厩舎に血しぶきをあげながら走り戻ったそうです。

この後、パートさんから電話があり、「ここにいたらディンプルは治らないし(殺される!と言っていた男性スタッフがいたそうです!)、かわいそうだから早く連れて行ってやってくれないか。」と言われ、何が何だかわからないまま、7月17日火曜日、プーちゃんは我が家にやって来ました。

怪我から3週間近く経過しているにも関わらず、たらたらと流血し肉がモリモリ出っ張っていました。クラブは治療しないで大丈夫と言って連れて来たのですが、あり得ない状況でしたので、治療再開を決めました。

我が家到着時のプーちゃんです。

Pooh mini theater

ここはどこ?僕はどうなるんだろう?不安な表情のプーちゃん。




我が家の砂馬場で初めてゴロンした時のプーちゃん。



もともと、厩舎は一頭用で、飼料置き場の部屋にプーちゃんがはいりましたので、厩舎の改造も必要になりました。9月から11月まで2か月再びクラブに戻し、その間にアスファルト舗装のやり直しや、壁囲い、屋根などの工事を終え、以来、毎日、我が家で過ごしています。


ところで、見た目美しいプーちゃんには、コマッタ癖がたくさんありました。

そのひとつが、グイッポ(さくへき)と呼ばれる悪癖です。牧柵や、馬せん棒に下顎をひっかけて、空気を呑みこむと、ある種の快感を覚える馬がいて、厩舎に1頭いると感染すると言われています。







空気が腹にたまり、疝痛の原因となるため、悪癖とされています。疝痛対策が必要になりました。


さらに、グイッポに関連し、後肢がいつもボロの中に埋もれるため、蹄叉が腐るという状況になっていました。馬せん棒の前に一日中、立ったまま、グイッポをするため、ボロが一か所に集中して落ちるからです。蹄叉腐乱の治療もすぐに必要になりました。

蹄叉腐乱のため、後肢をなかなか上げません。また、手入れで足を洗おうとすると、水を恐れ、暴れました。過去に蹄葉炎を患って水がしみた経験があるのではないでしょうか。

ブラッシングしようとすると、脇腹が痛いのか、噛む、横蹴り、のいずれかをみまうことになりました。

そして、秋の風が冷たくなる頃、頻繁に喉詰まりを起こすようになり、苦しくてジタバタすることも多く、頻繁に獣医さんのお世話になりました。

手がかからない優等生のスピ君しか見たことがない私には、いきなり重荷となる馬でした。

また、尻回りのメラノーマも大きくなってきたようで、あわててシメチジンの投与を始めるなど、次から次へと問題が発生。ところが、上記のようなトラブルはどこ吹く風で、プーちゃん自体は、どんどん元気になりました。

表情が豊かになり、人の言葉を聞きわけるようになり、足も洗わせてくれるようになり、ここでの生活を満喫し始めたようでした。

足腰が弱くならないよう、できる限り、馬場で運動をさせるのですが、最初のうちは、5周もまわると、ぜいぜいしていましたよ。

https://youtu.be/Sx3_42_6HNM

※パソコンでご覧になると、セリフもご覧いただけます。







そして、性格が落ち着いて来て、心を開いてくれるようになった2013年の秋、獣医さんからは、「まだ7~8年生きるちからがある」と言われました。

私には、スピ君1頭を養うのがやっとのため、元気であるにも関わらず、安楽死をさせねばならない、という問題に直面しました。すると、プーちゃんの将来を心配した人達から、「みんなで支える道を探れないか」との問い合わせを頂くようになり、2014年1月から、引退馬協会の対外支援事業、引退馬ネットのおちからを借りて、マイネルディンプルサポータークラブをスタートすることになりました。







8つ年下のスピ君とじゃれあう事で、脳も体も活性化するようで、年々、気持ちが若返っているかのようです。

しかし、病は確実に進行しており、2015年12月は、最悪の事態を迎えました。



お尻のメラノーマが破裂し、痛みから飲まず喰わずとなったプーちゃんでしたが、全国から青草が送られ、季節外れの青草を食べることで、命を繋ぐことができました。








その後、獣医さんも驚く回復を見せ、以前よりもさらにパワーアップしたプーちゃんは、悪癖である「グイッポ」をしなくなりました。心配のひとつが消え、良い方向に向かうと喜んでいた矢先、2016年9月には、首の付け根にできたメラノーマが関節に干渉し、首を上げることができなくなりました。

獣医さんが首のメラノーマを刺激すると、「痛い!」と反応し首が上がらない原因は特定できました。

獣医さんからは、「こんなふうにだんだんと、出来ていた事が出来なくなってくるから、覚悟しようね」と言われ、毎日、今、生きていることを大切に日々を過ごすことにしています。

今は、何もお仕事のなくなったプーちゃんですが、病に倒れる都度、不屈の精神で復活するファイターの姿に、多くの方から勇気づけられるとメッセージを頂いています。

あといつまで元気でいられるかわかりませんが、生きている限りハッピーライフを。
それがプーちゃんと、プーちゃんをお世話する私の目標です。

応援頂ければ幸いです。










コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。