いつ捕まるか分からない不安と同時に、子育ての喜びに浸ってしまう感覚が、ちょっと今の自分に似た感覚というか、肯定感のない共感があった。
自分は犯罪者としての不安というのは無いわけだけど、いわゆる「一番可愛い時期」がもうすぐ過ぎようとしているのかなあという不安とか、今の子供たちの置かれている状況、少子高齢化の社会に暮らす困難さとかが色々思いやられて、幼稚園選びで不安定な精神状態だったせいもあり益々不安になってしまった。
この、赤ちゃんを誘拐して育てた女性も、警察に捕まることよりも子供と引き離される事のほうを恐れて逃げ続けていたから。それは逮捕される瞬間にも子供の朝ごはんの心配をしていたという所に特に現れていた。
しかし中盤では私は、どんなにひどい親だったとしても産みの親から引き離して勝手に子供を連れて行った罪は許せなかった。特に、この人が誘拐するまで追い詰められた経緯が、前半ではほとんど語られないから余計。
でも後半に、女の子の立場からまた事実を客観的になぞるように振り返ったので色々な面で腑に落ちた気はした。
最後はこの二人が再会するのかなあと期待したけれど、たぶんこういう終わり方で良かったんだと思う。お互いが求め合っていると分かっただけで。そこに至るまでが単純ではなく著者が登場人物の気持ちをひとつづつ丁寧に慮って描いたこと分かる。本当の親子ってどう作られていくかって事を見せられたような気がする。
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