花日和 Hana-biyori

農ガール、農ライフ


「農ガール、農ライフ」垣谷美雨(かきや みう)/祥伝社

おんな一匹33歳、大卒派遣社員だった久美子が、新規農業者として自立しようともがく物語。旧態依然とした日本の農業界や、独り身の女性が自立して生きていくことの厳しい現実をいくつも描き、女の幸せな生き方とは?と問いかけてくる。

うーん、これな。と唸ってしまう、結婚しない身寄りのない女の寄る辺なさよ。久美子は頭はいいし勉強熱心だが、英語が出来たり資格があったりと突出した能力があるわけではない。こういう人いっぱいいると思う。

そんな彼女が、派遣社員という不安定さを憂い、結婚を逃げ道とせず自力で独立事業主になろうと励むわけだが、日本のシステムはそう甘くない。農業学校で農業を学ぶまでは良かったが、いざやろうとすると大きな壁が、というより全力で拒否され続ける。住むところも何度も危うくなり、勧められて婚活してみるも運命の出会いなどあるはずもなく、「オスとメスの品評会」に打ちのめされる。

「男女平等」なんて概念ない方が良かったのに、と久美子がひとりごちるのがツライ。農業に限らず、学生時代は女も仕事を持って独立しろと言われるが、いざ数年勤めてみると女の幸せは結婚だなんて波が否応なくざぶざぶ襲ってくる。

ウーマンリブと家族に組み込まれた人生、両方を歩んだ人生の先輩や、貧困にあえぐバツイチ、シングルマザーなどの言い分をうまく取り込み、どちらがいいと決めつけないように気を使って書いている。というか、人によって向き不向きがあるのでどちらが正解とはいえない、とこの著者は知っているだろう。久美子が選んだ人生だって、迷いつつ進むことにはなっている。ただこれは、自分の力で生きていく独身女性を肯定し応援する物語だ。

文章は読みやすく軽快で、といって軽すぎずちょうどいい読み応え。久美子が、落ち込みつつも前向きに人生を切り開いていく様は清々しく、重いテーマを捉えているものの読後感は爽やかだった。
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