14歳の息子が同級生を殺害したとして逮捕された父親の視点で描かれる、重い話です。事件に対して息子は口を閉ざし続けますが、この表紙の絵はその時の顔でしょう。青白い顔で固く心を閉ざした少年。こんなわが子と正面で向き合わなくてはならないのが親、ということを厳しく突き付けられるように感じました。
改めて思うのは、人は子をもうけただけで「親」になるものじゃない。それでも、子どもにとって親に愛されているという実感は、人格に大きな影響を、おそらく一生及ぼす、ということです。
仕事は出来ても親として家庭人として未熟だった父親が、事件を通して息子と真摯に向き合い「親」になっていきます。息子は事件を起こす直前、父の携帯に電話していましたが、父親は会社の飲み会を優先させ、出ませんでした。あの時あの選択をしなければという人生の重大ポイント。あの時電話を取っていればと思わずにはいられませんが、結局それだけではなく、それまで何度も送ってきた息子からのSOSを見逃し続けていたのです。
なぜ仲が良かった同級生を殺してしまったのか、ミステリー感覚もあり引き込まれました。思春期の子どもの実態や心の内は、大人には伺い知ることのできない別の世界だと思い知らされます。それにしてもちょっとこの両親は、思春期を甘く見すぎというか、放って置きすぎた感は否めません。でも、けっこうどこにでもいる普通の親、家庭なのかもしれないとも思えます。
「心を殺すのとからだを殺すの、どっちが悪いの」
「物事の良し悪しとは別に、子どもがどうしてそんなことをしたのか考えるのが親」
などの言葉が象徴的で、様々に考えさせられる話でした。
(この本はyuiさんのブログで知って読んでみました)
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