無頓着の俳句入門

歴史に残る著名な先生方の教えを無頓着が入門書として初心者向けにわかりやすくまとめました

第3章 俳句の文法 3-16 言葉の使い方(11)

2009-09-18 19:11:11 | 文法編
(19)終助詞

文末のいろいろな語に付き、その語に一定の意味を加え
文を終止させる。

イ.疑問・反語を示す → か
 <例句>蟻地獄かくながき日のあるものか (加藤楸邨)
ロ.疑問・質問・反語を示す → や
<例句>泊らずて行く菊の句のなからめや (大須賀乙字)
ハ.疑問・強意を示す → ぞ
<例句>死はいやぞ其きさらぎの二日灸 (正岡子規)
二.強意を示す → もの、かし
<例句>湯豆腐や澄める夜は灯も淡きもの (渡辺水巴)
ホ.感動を示す → は、はや、や、よ、な、も、か、かな
<例句>大文字一の字消えし人の字よ (山口誓子)
<例句>母の日やけふは熟路を歩まんか (中村草田男)
へ.禁止を示す → な、そ
<例句>忘るなよ藪の中なる梅の花 (松尾芭蕉)
ト.希望・意志を示す → な、ばや
<例句>一時を庭の櫻にすごさばや (高浜虚子)
チ.願望を示す → もがな
<例句>黄菊白菊其外の名はなくもがな (服部嵐雪)

(20)間投助詞

いろいろの語に付き文節の切れ目にあって語勢・語調を
整える。

イ.語調を整え語勢を強める → や
<例句>古雛の衣や薄き夜の市 (内藤鳴雪)
ロ.切字を示す → や
<例句>十六夜や地球の上に我家あり (星野立子)

以上

第3章 俳句の文法 3-15 言葉の使い方(10)

2009-08-19 16:39:45 | 文法編
(18)副助詞

いろいろな語に付き、その語と一体となって副詞のように
下の用語の程度・分量・状態などを限定・修飾する。

イ.限界を示す → まで
 <例句>武士や鶯に迄つかはるる (小林一茶)
ロ.おおよその程度・範囲を示す → ばかり
<例句>山碧し花桃風を染むばかり (飯田龍太)
ハ.限定を示す → ばかり
<例句>五月雨の雨だればかり浮御堂 (阿波野青畝)
二.その他(~したての、~しそうに) → ばかり
<例句>南縁の焦げんばかりの菊日和 (松本たかし)
ホ.限定を示す → のみ
へ.おおよその程度・範囲を示す → ほど
<例句>寝所見る程は卯花明りかな (小林一茶)
ト.添加を示す → さへ
チ.他を類推させる → さへ
<例句>この新樹月光さへも重しとす (山口青邨)
リ.表現をやわらげる → など
<例句>老大事春の風邪などひくまじく (高浜虚子)
ヌ.強調を示す → し、しも
<例句>鮓つけて誰待つとしもなき身哉 (与謝蕪村)

以上


第3章 俳句の文法 3-14 言葉の使い方(9)

2009-07-20 12:49:05 | 文法編
(17)係助詞

いろいろな語に付き、その語に強意、疑問、反語などの
意を添え下の活用語との結びつきを強める。

イ.区別・強意を示す → は
<例句>北国の庇は長し天の川 (正岡子規)
ロ.強意を示す → は
<例句>降りつのり半ばは閉ぢし夕牡丹 (水原秋櫻子)
ハ.強意・添加を示す → も
<例句>月さして遠き牡丹も見えわたる (日野草城)
二.並列を示す → も
ホ.強意・感動を示す → も
<例句>業平の墓もたづねて桜狩 (高野素十)
へ.語調を整える → も
<例句>咳の子のなぞなぞあそびきりもなや (中村汀女)
ト.強意を示す → ぞ、こそ
<例句>夏立つ野何の焔ぞ棒立ちに (石田波郷)
チ.疑問・質問・反語を示す → や
<例句>流さるるやも知れぬ春田を打ちゐたり (大野林火)
リ.疑問・反語を示す → か
<例句>袖口かどこかさやさや萩の花 (細見綾子)

以上


第3章 俳句の文法 3-13 言葉の使い方(8)

2009-06-15 13:34:08 | 文法編
(16)接続助詞

上の用言と下の用言を関係付けて上下の文節を接続する。
接続のしかたで順接、逆接、単純接続に分かれる。

①順接助詞(順当な結果に続ける表現法)
イ.仮定順接 → ば
 <例句>小言いふ相手もあらばけふの月 (小林一茶)
ロ.確定順接 → ば、に、ながら、つつ
<例句>みちのくの雪深ければ雪女郎 (山口青邨)
ハ.事実を述べて接続する → ば、に
<例句>来てみれば夕の桜実となりぬ (与謝蕪村)
二.恒時条件を示す → ば
<例句>念力のゆるめば死ぬる大暑かな (村上鬼城)
ホ.同時順接 → ながら、つつ
<例句>春めくと覚えつつ読み耽るかな (星野立子)

②逆接助詞(順当でない結果に続ける表現法)
イ.確定逆接 → ど、ども、に、て、ても
<例句>雪ふるやきのふたんぽぽ黄なりしに (山口青邨)
ロ.単純な逆接 → て、ながら、つつ、に
<例句>粟の穂の太りて軽し秋の風 (松本たかし)
ハ.仮定的強調表現 → とも、ど、ども
<例句>紙ぎぬのぬるともをらん雨の花 (松尾芭蕉)

③単純接続助詞(仮定や確定の条件がなく上下の動作・状態が同時に共存する)
イ.並列・順序を示す → て
<例句>しら玉の雫を切って盛りにけり (日野草城)
ロ.補助動詞結合 → て
<例句>おろかなる犬吠えてをり除夜の鐘 (山口青邨)
ハ.状態を示す → て、して、ながら
<例句>故もなく寧からずして木の芽季 (富安風生)
二.動作の継続・繰り返しを示す → つつ
<例句>欝々と蛾を獲つつある誘蛾燈 (阿波野青畝)
ホ.打消を示す → で
<例句>枯萩のいつまで刈らであることか (高浜虚子)
ヘ.時間的な継起関係を示す → と
<例句>秋ゆくと照りこぞりけり裏の山 (芝不器男)

以上

第3章 俳句の文法 3-12 言葉の使い方(7)

2009-05-08 12:56:16 | 文法編
(15)格助詞

格助詞は活用のない付属語であるが、語について文節をつくり、
句の主題を示したり、意味を加えたり、声調を整えたりする。

①体言について文節を作る格助詞
イ.主語を作る → の、が
 <例句>二人居の一人が出でて葱を買ふ (細見綾子)
ロ.連体修飾語を作る → の、が、つ
<例句>一月の川一月の谷の中 (飯田龍太)
ハ.目的語を作る → を
<例句>病み臥して啄木忌知る暮の春 (富田木歩)

②用言の補語(連用修飾語)を作る格助詞
イ.場所を示す → に、にて、で
<例句>八九間空で雨ふるやなぎかな (松尾芭蕉)
ロ.時を示す → に、にて
<例句>雨にゐて月明の樹を思ひをり (加藤楸邨)
ハ.方向・帰着点を示す → に、へ
<例句>幽冥へおつる音あり灯取虫 (飯田蛇笏)
ニ.経過点を示す → を、から、より、ゆ
<例句>西ゆ北へ雲の長さや夕蜻蛉 (大須賀乙字)
ホ.起点を示す → を、から、より、ゆ
<例句>弱木より動き吉野の青あらし (平畑静塔)
へ.動作の目標・目的を示す → に
<例句>命をかし郭公聴きに軽井沢 (松根東洋城)
ト.状態の変化の結果を示す → に、と
<例句>もろこしの穂に出てそよぐ月夜かな (村上鬼城)
チ.引用・内容を示す → と
リ.動作の共同を示す → と、して
<例句>二人してむすべば濁る清水哉 (与謝蕪村)
ヌ.動作の原因・理由を示す → に
ル.状態・比況を示す → に
<例句>珈琲にさくら四分や恋に似る (森澄雄)
ヲ.動作の手段・方法を示す → に、にて、で、して
 <例句>白粉の花に遊ぶや預り子 (松瀬青々)
ワ.比較の基準を示す → より
カ.即時を示す → より
 <例句>草の葉を落つるより飛ぶ蛍哉 (松尾芭蕉)
ヨ.並列を示す → と
 <例句>菖蒲田と草山とあるやさしさよ (松本たかし)
タ.強意を示す → に
レ.添加を示す → に
 <例句>しぐれつつ花咲く菊に葉のにほひ (飯田龍太)

以上