
出演:イ・ソンギュン、IU、パク・ホサン、ソン・セビョク、キム・ヨンミン
演出:キム・ウォンソク 脚本:パク・ヘヨン 制作:2018年
[5段階評価:★★★★★+★]
CSで一挙放送されていたので、録画して全16話を一気に見たんですが、
も〜ぉ、号泣した!!!
アイユーちゃんがあまりに一途で…ソンギュンさんがあまりに切なくて…毎話泣きすぎて目がとんでもなく腫れてしまった。。私にとっては超危険なドラマでしたね(苦笑)
建設会社の派遣社員として働くジアンは、借金返済と障害を持つ祖母を養うため昼夜を問わず働いていた。愛想がなく返事もろくにしないジアンに対して会社の同僚たちは冷たい。学歴も資格もないジアンを採用した部長のドンフンは、唯一彼女に声をかける存在だった。
ある日、ドンフンの元に不審な宅配物が届く。中身は5000万ウォンの商品券。なぜそんな大金が自分に届いたのか分からず、とっさに机の引き出しに隠してしまう。振り返ると、ジアンがこちらをじっと見ていた。
差出人不明の商品券を巡り、窮地に立たされるドンフン。彼を救ったのは、ジアンのある意外な行動だった。
後にドンフンがジアンの生い立ちと過去を人づてに聞いて、そのあまりの不遇さに涙するんですが、私はそれを聞いて号泣してましたよ(涙)とにかく毎話大泣きするほど心が揺さぶられたドラマで、ここから先はちょっとネタバレありで書きたいと思います。
※以下ネタバレあり
ドンフンとジアンは、無口で必要なことしか話さないので、人間関係はいろいろとこじれてます。ドンフンは誠実で男気があって思いやりもある人なんですが、妻との関係は冷えきっていた。妻のユニは弁護士で、自立した都会的な女性。早く田舎から引越したいと思っているのに、ドンフンは地元の仲間とサッカーをしたり、兄弟と飲みに行くことで心の隙間を埋めていたので、引越しには同意できなかった。妻は夫の仲間たちとは馴染めず、夫の実家にも居場所がない。ドンフンが話すことといえば「今スーパーだけど何かいるか?」の言葉くらい。こういう状況だと奥さんは孤独でしょうね。そんなとき、ユニは大学の同級生と再会する。会社の社長で洗練された同期の姿はさぞかっこよかったことでしょう。浮気した妻を擁護するつもりはないけど、結婚する相手を間違ったんだろうなと思いました。
ドンフンは妻との関係がよくないことを分かっている。構造エンジニアとしてやりがいのあった仕事も、大学の後輩が社長に就任したことで左遷され、出世も危ぶまれる状態。誠実でまじめに生きてきたにも関わらず、家庭でも職場でも生きづらさを感じていた。
契約社員のジアンは、誰とも話さず、目も合わさず、人との関わりを完全に絶っていた。誰かと親しくなっても、自分の過去を知ればみんな去って行くことを知っているから。
ジアンは14歳のときに人を殺していた。
親の死後、借金を背負わされたジアンは、身体の不自由な祖母に暴力を振るう取り立て屋を刺し殺してしまう。やせ細った14歳の少女が、大きな大人を刺し殺す事態に胸が痛みました。。どうすればよかったんでしょうね。人を殴ることになんの躊躇もない大人から、祖母をどうやったら守れたのか? でも他人は『人殺し』という事実にしか目を向けない。「いい子だな」と言ってくれたドンフンも、その事実を知れば去って行くだろうとジアンは思っていた。
ジアンがドンフンに対して心を開くきっかけになったのは、”盗聴”。ドンフンの後輩でユニの浮気相手でもあるジュニョンと組み、ドンフンを会社から追い出して報酬を得ようと、ドンフンのスマホを盗聴していた。そこから聞こえてくるのは、ドンフンの人情味あふれる誠実な姿と、生きることに対してどうにもならない苦しさだった。
イヤホンから聞こえるドンフンの低音ボイスがめっっっちゃいいんですよね。聞いてるだけで癒される声。弱みを握るのが目的だったジアンも、いつしか声が聞きたくて盗聴するように。そうやって聞いているうちに、ドンフンの息遣いだけで彼の感情が伝わってきて、いま悲しんでる、苦しんでると感じると、ジアンは彼の元に走って行くようになります。声をかけて慰めるでなく、数歩うしろを歩いて見守るだけのジアンが、とてもいじらしかったです。
障害のある祖母を無料で施設に預けられると教えてくれたドンフンに、ジアンはお礼として会社で履くスリッパをプレゼントするんですが、それをドンフンはなかなか履こうとしない。
なぜドンフンは履かなかったのか?
ジアンは苦しい生活をしていて、1日1食、もしくは2日に1食で昼夜働いていて、そんな彼女がドンフンのために買ったスリッパ。ドンフンはそれを履くことで、彼女の想いを受け取ったと誤解させたくなかったのかもしれない…でも、スリッパをジアンが捨てたとき、ドンフンはすごく怒ります。
「どうして捨てた?!もう一度買え!」
ドンフンにとっても、とても大事なスリッパだった。でも履けば後ろめたい気持ちが湧いてくる。気軽に履くことができないほど、彼女に対する感情があった。
ドンフンはジアンを好きだったのか?
私は好きだったと思いますねぇ。気のない相手からもらった物なら、それがなくなっても怒ったりはしない。ドンフンにとってジアンは気のない相手じゃなかったと思う。
ジアンの気持ちを受け入れることができなかったのは、妻子がいることと、ジアンの年齢のせいだと思います。ドンフンは45歳で、ジアンは21歳。親子ほどの年の差で、ドンフンは事あるごとにジアンを”子供”だと言っていました。
守ってあげないといけない可哀想な子供…でも実際は、大人である自分の方が守られていた。ジアンが姿を消し、ケータイも解約して連絡を取る術がなくなったとき、失ったものの大きさに呆然とするドンフン。お互いがお互いを必要としているのに、ドンフンはそれを口にしなかったですね。そういうところがドンフンらしいんですけど。。
3兄弟は性格がバラバラなようで、ソックリでした。涙もろい長男、キレまくる三男、一見冷静沈着な次男のドンフンもまた、人情に熱く涙もろくて、キレると爆発するタイプでした。3人とも誠実で心根が熱かったなぁ。
今世は、誠実であればあるほど生きづらい世の中だった。来世は、誠実な人が生きやすい世の中になってるといいですね。
挿入歌もとってもよかったです♪
(↓)IUカバーバージョン「Dear Moon」
アイユーちゃんはマジで素晴らしかったなぁ。『未生』の演出家だそうで、『未生』でイム・シワンが開眼したように、このドラマでアイユーちゃんも開眼しましたね。
2人が偶然再会したとき、ドンフンがこの上なく幸せそうに微笑んでいて、私もとっても幸せな気持ちになりました。
【オマケ】セリフが少ないドラマではっきりしない部分があるので、独自に検証してみます。
その①:ジアンを手伝っていたギボムは何者か?
ジアンのほぼ言いなりになって犯罪を手伝うギボム。家族ではなさそうだし、お金のために手伝ってる風でもない。ゲーム中毒で、1日中ネットカフェにいるのに、犯罪の手際は素晴らしくいい。ジアンより若そうな彼が、なぜそんなに手慣れているのか?
終盤、その答えが映像で出てきます。取り立て屋にジアンが殴られていたとき、側には同じように殴られている少年がいました。おそらくその子がギボムで、やっぱりこの子も親の借金のせいで、取り立て屋に犯罪を手伝わされていたと思われます。幼少時から手伝っているのでいろいろと手慣れている。
ジアンを手伝う理由は、セリフで出てきます。
「お前の借金の中に俺の借金も入ってるんだろ? 悪いと思ってる」
ジアンが取り立て屋を殺したことで、ギボム自身も救われたんじゃないかと思います。だから恩があるし、ジアンを心配もしている。この子もいい子でしたねぇ。頭がよくて行動力もあるので、光の中を歩いてもらいたい。
その②:ドンフンと妻は和解したのか?
ドンフンの机に飾られた幸せそうな妻と子の写真。一見もとに戻ったようにも見えるんですが、でもこの中にドンフンがいないんですよね。もとに戻っているならアメリカに会いに行ってるだろうし、一緒に写真も撮ってるはずです。でも3人の写真がない。私は家族ではなくなったことを示唆していると思いました。円満離婚できていて今も交流があり、父親であることになんら変わりはない。
奥さんがアメリカに行ったのは、浮気が公になったことで韓国内では弁護士として働けなくなったからだと思います。であれば、当分韓国には戻らないだろうし、会社を立ち上げたドンフンがアメリカに行くとも思えない。たぶんドンフンのために離婚してるんじゃないかなぁ。