ぐるぐる・ぶらぶら

歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【読書】日本のエリート リーダー不在の淵源を探る

2015-08-30 22:46:14 | 読書記録

エリートの明確な定義はないのだけれど、
主に明治期以降に現れた指導者層と、もうひとつ「知的エリート」
について過去の経緯から状況を紐解いている。


-----
世の中に、暗黙の待望論があるような気がして、日本の中では
どうなっているんだろうと思って手に取った。

本書を読んでいると、エリートには、
 リーダーシップを取るポジションに至るもっと前に自覚がある、
というのが、エリートでないリーダーとの違いのように思われる。
その自覚は、学歴や出自に伴って生じている印象が強い(歴史上は)。

これだけ多様化してフラット化して、将来予測が難しい時代に、
エリートは生きにくいかもしれない。
自覚的に育ってきたしても思ったようには進まないから。
変化対応力を教育され習得して育ってきたなら話は別だけど。
→コイズミさんちの三男さんとかイメージですかね。

エリート不在は、リーダー不在とイコールではない。
"エリート"タグに関係なく、リーダーはそこここに生まれ出でているし、
本書が気にかける「知的エリート」(ホンモノの)はそういう層と
けっこう交流していると思う。

ただ、国家を動かすレベルになると、どうなんだろうなぁ。
その疑問は結局解けなかった。

-----
日本のエリート リーダー不在の淵源を探る
橘木俊詔 著
朝日新聞出版 朝日新書 2015/04
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=16959

(2015.8.23)


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【映画】彼は秘密の女ともだち

2015-08-29 20:28:28 | 映画

冒頭の映像から既にオゾン・マジックたっぷり。
観客の平凡な予想なんか軽々と裏切りながら心を満たす。

こまごま言おうとすると、ある種のネタバレになってしまうので、
あんまり内容については言えないんだなぁ。

ただ、観た感覚としては、

なめらかな触感のような。
あるいは、
美しく盛り付けられ、しかし、一口含んだ瞬間、予想を裏切る味覚で
食べる者を歓喜させ、平らげるまでさまざまな味覚で驚きが絶えることが
ない一皿。

そんな感じ。

洒脱なエピソードで描かれるのは、沈み、動揺し、沸き立つ、心の動き、
奥底にある生きていく力。

ちょっとした秘密とかスリルって、何かを揺り起こすのかな。
見ている方も何かエナジーが湧いてる。(←影響受け易すぎ?)

-----
公式サイト:http://girlfriend-cinema.com/

(2015.8.29)


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気になる本 2015/08/24-30

2015-08-25 23:20:33 | 気になる本

2015/08/25

オンライン・バカ 常時接続の世界がわたしたちにしていること/マイケル・ハリス/2,376円/青土社
http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791768806

江戸化物草紙/アダム・カバット/1,166円/KADOKAWA(角川ソフィア文庫)
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=321502000513

色彩楽譜 「音のコード化」による音楽の数値解析/小谷 秀行/1,620円/パレード

イスラーム国/アブドルバーリ・アトワーン/2,592円/集英社インターナショナル

2015/08/24

満洲怪物伝 「王道楽土」に暗躍した人物たちの活躍とその後/歴史REAL編集部/1,944円/洋泉社 

 


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気になる本 2015/08/17-23

2015-08-22 20:18:53 | 気になる本

2015/08/22

弔いの文化史 日本人の鎮魂の形/川村 邦光/950円/中央公論新社(中公新書)
http://www.chuko.co.jp/shinsho/2015/08/102334.html 

ネットコミュニティの設計と力 つながる私たちの時代/近藤 淳也/2,700円/KADOKAWA
http://www.kadokawa.co.jp/product/321307000125/

2015/08/17-21

サンガジャパン Vol.21 2015Summer特集輪廻と生命観/1,944円/サンガ 
https://samgha.co.jp/samghaec/html/products/detail.php?product_id=228

貧困を救うテクノロジー/イアン・スマイリー/3,240円/イースト・プレス
http://www.eastpress.co.jp/shosai.php?serial=2427

金子國義/津原 泰水 監修/1,404円/河出書房新社(文藝別冊)
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309978659/

世界を破綻させた経済学者たち 許されざる七つの大罪/ジェフ・マドリック/2,268円/早川書房
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000012797/

人はいかにして蘇るようになったのか 蘇生科学がもたらす新しい世界
  /サム・パーニア/2,592円/春秋社 
http://www.shunjusha.co.jp/detail/isbn/978-4-393-36126-9/

イスラームの深層 「遍在する神」とは何か/鎌田 繁/1,512円/NHK出版
https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C2010101&midCategoryCode=1

「身体」を忘れた日本人/養老 孟司 C・Wニコル/1,404円/山と溪谷社
http://www.yamakei.co.jp/products/2814640020.html

ヨーロッパの祝祭と年中行事 新装版/マドレーヌ・P.コズマン/2,484円/原書房
http://www.harashobo.co.jp/

相対性理論/アインシュタイン/1,080円/岩波書店(ワイド版岩波文庫)岩波文庫1988の再刊
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/science/index.html


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【映画】この国の空

2015-08-22 19:09:39 | 映画

終戦間際の東京杉並。
食糧は乏しいけれど何とか日々の食事を摂れる。
空襲警報は始終鳴り響くたびに防空壕と母屋を往復し、近隣の街の空が
赤く染まるのを何度も見、戦災の悲惨な情報を、ラジオや新聞で目にして。

「死」が我が身に降りかかるぎりぎり手前にある、くらし。

不穏な情勢の表現はあるものの、全体的に静かなトーン。
にも関わらずなのか、それゆえ一層なのか、
じりじりとした緊張を孕んだ里子の世界が胸にくる。

里子、よく躾けられた丁寧な言葉遣いと所作、行き止まりの予感と焦燥、
裡に生命の抵抗がたぎる、二階堂ふみ。
言葉もいいけど、表情がすばらしい。

市毛は知的でセンチも見せる。
ずるさと色気。なまなましさ。長谷川博己が好演。
畳を拭いてちょっと正気に戻るところなんか絶妙。

ふいに里子は成熟する。
ぱん!と実がはぜるように。割れた表皮から艶やかな何かが現れ出で。
里子と市毛が逆転するのだ。市毛が幼く見える。

工藤夕貴と富田靖子が母と叔母を。
近親憎悪とか家族愛とか、そんな言葉では単純にくくれない空気を
生んでいた。いい女優さんたちだなぁ。

-----
「食べる・飲む」という行為とそれに係る行動が、さまざまな形で
人々の状況や心情を映していて印象的。

戦時の抑圧と、個々の人々の人らしい奔放さのようなものとの対比に
いろいろと感じるところがあった。

-----
公式サイト:http://www.kuni-sora.com/

(2015.8.22)


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【読書】オープンダイアローグとは何か

2015-08-16 21:50:58 | 読書記録

「対話」のみによる精神疾患治療の手法。

精神疾患の治療手法として著されているのだけれど、企業経営の
あたらしい形となにやら重なっているような気がして手に取りました。

こういう読み方は、著者の方には失礼なのかもしれないです。
すみません。

でも直感は当たり。
「ケロプダス病院の実情」で述べられている、スタッフの自律性や
対話立脚型の運営は、ホラクラシー型組織そのものではないかと。

翻訳されているセイックラ氏の論文では、治療としての「対話」の
良し悪し(評価)に言及しているのですが、これは組織内で対話を
通じて何かを進めるときのヒントになりそうです。

そして身体性のこと。
なぜかは分からないけれど、身体性というキーワードはとても
気になるし、大事なことのように思います。

「オープンダイアローグ」のアプローチは、治療の枠組みに留まらず、
広く何かを変革しそうな予感がします。

多様性を受け入れるということ。
多様な当事者が参加する対話。
例えば病的と健常の、例えば上と下の、そういった線引きをなくして
いくところに、何かがある。

「オープンダイアローグ」は、私が直感的に理解したところとしては、
身体性とともに「言語的表現」のやりとりにおいて、ことばを選ぶ
ことがとても重要そうです。
治療者には、対話における対応力を裏打ちする思考の幅広さや
自由自在さが、求められるだろうと推察します。
組織内対話であれば、ファシリテータに当たる人に。

分かり易く書いていただいていて、門外漢でも理解できます。
「オープンダイアローグ」に至る精神医学や哲学(たぶん)の系譜と
して出てくる諸々は、知識が足りず、想像で乗り切りました。
でも、とても知りたい気持ちがそそられました。

さらにビビッときたのは「オートポイエーシス」。出た!!
以前から気になっていたし、
これはやはり、ちゃんと本を探して読まねばなるまい。。。

-----
オープンダイアローグとは何か
斎藤 環 著・訳
医学書院
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=87749

それにしても、従来型治療法に携わる側(学会等)の反応は…
理解できなくはないけれど、そんなに簡単に爆発的普及をできる
ようなことでもないだろうし(対応可能な"人"を育てるのに時間が
かかりそう)、二者択一ではなく「そういうのもある」という
受け入れはできないものなのだろうか。
絶対的効果の論証ができないとダメなのかしらん。医学界。

(2015.8.15)


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【読書】日本の森列伝 自然と人が織りなす物語

2015-08-16 19:22:17 | 読書記録

とても面白くてわくわくして、
そして考えさせられた。

さすが元記者さんだからか、ルポルタージュ部分がしっかり入りつつ、
森という自然の表象に対する好奇心と愛情があふれている。
読み手は日本各地のさまざまな「森」と出会うことができる。

巨樹に目が行きがちだし、その長い生命が醸す安定のようなものに
惹かれるけれど、巨樹は象徴。巨樹だけでない、後から育っていく
若木があって初めて、森=一樹種の群れが、継続されるのだ。

12の森、生い立ちも今の姿も、今おかれた環境もそれぞれ。
水の蓄え度合いや、どのような気候・土壌なら育ちやすいかも違う。

環境が絶え間なく変化する中で、
どうやって数百キロも森の生息地が北上したのか?
なぜその巨樹は、そんな異形なのか?
 :
人が関わらない太古の物語もあれば、人の手で始まったり、
人の手で絶えかけたりと、人のくらしとの交わり方もまたそれぞれ。

読んでいて無性にその森に行ってみたくなるけれど。
山のシロウトは簡単には近づけない。
それは却ってよいことかもしれない。

ジャーナリストであり、森林インストラクターであり、山岳会員でもある
作者だからこそ、見て伝えてくれているところがままあると思う。

保全の今後についての課題も。

-----
日本の森列伝 自然と人が織りなす物語
米倉 久邦 著
山と溪谷社 ヤマケイ新書 2015/05
http://www.yamakei.co.jp/products/2815510260.html

(2015.8.4)


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【読書】マインドフル・ワーク

2015-08-16 18:44:04 | 読書記録

多少バズワード化している感もある「マインドフルネス」ですが、
これは本質的なところをきちんと伝えてくれる本です。

発端は70年代のヒッピー文化に遡り。
エセやオカルトも入り交じった中で、当時から本質を捉えて実践して
きた人々がいて。
今日様々なことが計測可能になった結果、脳科学の領域である程度
まで実証が成されるに至る。

企業や軍隊のような組織に取り入れられ、人々の心もちを変える。
基本的に、善な方向への活用、非常にストレスの高い職場に働く人々の
苦痛を軽減したり、創造性を高めるなどの方向性が主ではあるけれど、
前線に駆り出される兵士への適用や、功利的な目的での適用のような
微妙なケースとそれに対する批判についても言及している。

この本での主張は、それは哲学であり、科学だということ。
科学ではあるけれど、未知・不確定なものでもあるということ。
それゆえオカルトや宗教性との明確な線引きがしにくかったり、有効性
について懸念もゼロではないところに、支持者の苦労があるのだろう。

別のところで読んだ「原始仏教は宗教というより哲学」という理解と
符牒が合った。
IT系の有力新興企業のトップにインド系の方が多いことと無関係では
ないの、かも。

-----
全くこういうテーマを知らない家族に、マインドフルネスの初歩、
身体感覚の「スキャン」の話をした後、それが癒しや集中力という
成果にどうつながるのかを説明しようとして「ありのままの今を
受け入れる」とは一体どういう状態だろうと改めて考えてしまった。

そこで起こるのは。
感覚=五感による外部情報のキャッチから思考に至る流れをフェーズ分け
することなのかも知れない。
言語含め、感覚のインプットに対する脳の反応の手前で、いったんそれを
保留するのだ。情動が起動される前に。
情動の起動がスローになることで、違う情動(多くの場合は穏やかな)に
軌道が変更されるのかな…そんなことをつらつらと考えてみたりした。

-----
マインドフル・ワーク 「瞑想の脳科学」があなたの働き方を変える
デイヴィッド・ゲレス 著
NHK出版 2015/05
https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=00816772015

(2015.8.8)


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【歌舞伎】歌舞伎座 八月納涼歌舞伎 第一部・第二部・第三部 2015年8月

2015-08-16 18:07:08 | 歌舞伎

※第一部のみ2015.8.16追記

歌舞伎座
松竹創業120周年
八月納涼歌舞伎
第二部・第三部

総じて晴れやかで楽しい雰囲気、フレッシュな納涼歌舞伎。
若手すくすく、中堅はますます個が立ってきた。
-----

<第一部> 

一、おちくぼ物語

おちくぼの君・七之助さんのなだらかな変化の色気。
観客的には酒を食べた後、も少し豪快でも良さそうなんだけど
あくまでしとやかなのは、そういう型なのかな。

巳之助さんの帯刀がいいなぁ。狂言回し。嫌味のない朗らかさ。

隼人さんの左近少将、おちくぼの君が真意を疑うのも無理ない
微妙な軽さを漂わす。

高麗蔵さん出色。(楽しそう…)。
彌十郎さん、優しくもダメな父を徹底。
新悟さんの阿漕もよかった。

この役の国生さんの声、福助さんを思い起こさせる。

亀蔵さんの配置がちょっと控えめでもったいないかも。

二、棒しばり

文句なしに楽しい。
3人の呼吸。

いろいろ昔を思ったりしそうになったけど、いつの間にか
ひたすらみることを楽しんでいました。

これから先、何度も見たい。

きっとみるたびに変わっていく。楽しみ。

 

<第二部>

一、ひらかな盛衰記 逆櫓

松右衛門/樋口次郎兼光の橋之助さん。
前半のかろ味から、隈取で下のほうから響く声色の後半に
鮮やかに転換。
ある意味、上手すぎるのかも。

扇雀さんのお筆が、口は詫びつつもお家が優先度最高位という
身分の立ち位置の違いを観る側に押し出してくる。
権四郎(彌十郎さん)を怒らせる道筋がくっきり。

児太郎さんが女房およしで大健闘。

船頭、国生さん、宜生さん、鶴松さん、フレッシュ~。
10年くらい経ったら、この世代が中心軸になってくるんだろうな。


二、銘作左小刀 京人形

七之助さん、京人形のカクカク振りと柔らかな色気の行ったり
来たりが見どころ。
勘九郎さんの甚五郎との間合いに力みなく、整いすぎず、
観る方もリラックス。楽しい。

新悟さんの女房おとく、すっきりした気性。

イケメンとキュートの絵のようなカップル、隼人さんと鶴松さん。


<第三部>

一、芋掘長者

橋之助の達者な踊りもさることながら、
巳之助さんを見ていて、亡き三津五郎さんの舞踊の、
えも言われぬ品や透明感を思い出した。

第二部の京人形に続いて新悟さんが存在感出し始め。

ところで国生さんの声って、和事に合いそうね。


二、祇園恋づくし

扇雀さんの二役。

鴨川の床での、扇雀さん次郎八と勘九郎さん留五郎の、
京-江戸の自慢合戦、終幕の舞い、技と技の戦いが見応え。

役者さん全体、コメディのリズムが通っていて、安心して笑える。
「一座」の風情、醍醐味。

-----
歌舞伎を見始めた頃、納涼歌舞伎は
勘三郎さん(当時勘九郎さん)と三津五郎さん(当時八十助さん)が
回していた。挑戦的で、他の月と違う開いた雰囲気があった。
丁度ひと世代変わった。何かは確実に受け継がれている。

今日は第二部と第三部、先月のアテルイといい、中村座・陽春大歌舞伎
といい、七之助さんが憑依系(北島マヤ的)の化けっぷりになってて、
見る度にワクワクが止まらない。

(2015.8.8、2015.8.16)


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【映画】さよなら、人類

2015-08-12 23:11:36 | 映画

なんだか、すっごいなぁ。

といっても、
ストーリーは日常のような非日常のようなだし。
そして、基本的にとても静かな作品である。

絵。
一瞬一瞬の場面が、シュールで静かな絵画のようである。
実際、端役の役者たちが静止状態で背景化してたりする。

会話とシチュエーションが。
やるせなかったり、
孤独だったり。

コミュニケーションを通じてでなく、社会・体制・集団が
誰かを傷つける場合もある。暗喩。

いろいろな形の傷つき方。

そういうのが混ざり合わさって、痛み残りと癒しが同居する。

-----
公式サイト:http://bitters.co.jp/jinrui/

(2015.8.12)


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気になる本 2015/08/10-16

2015-08-11 23:05:38 | 気になる本

2015/08/11

優美な織物の物語 古代の知恵、技術、伝統/クリスティーナ・マーティン/1,296円/創元社 アルケミスト双書
http://www.sogensha.co.jp/booklist.php?act=details&ISBN_5=21460

一冊でまるごとわかる北欧神話/吉田 敦彦/799円/大和書房 だいわ文庫
http://www.daiwashobo.co.jp/book/b200878.html

四國遍禮道指南 全訳注/眞念/1,166円/講談社 講談社学術文庫
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062923163&_ga=1.143069244.827072634.1431181027


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【読書】森と日本人の1500年

2015-08-08 08:45:52 | 読書記録

日本人と、森や特定種の樹木とのかかわりを紐解く。

古代から近代に至る林業も、詳細を読んでみれば案外ステレオタイプ
ではなく、時代や施政者や経済状況において様々。
「だめにしちゃったんだ…残念」と思う歴史上の記録も出ていたり。

吉野林業の事例/歴史は、示唆するところが大きい。

森は短期間で結果が出るものではないのだ。
森として成立しているなら、それは生態系が確立しているということ。
森が永きにわたって成立しているとき、そこには歳を経た古樹がある。
彼らの寿命は数百から数千年。

人間は何世代もの連なりを以ってでないと、森と付き合えない。
そうやって相手(森)の呼吸や生き方のようなものに、呼応しながら
人間が望む姿に近づける関与をする。
人から見れば理想的にも思えるし、しんどくて、かかわる人々の心が
まっすぐにそこに向いていないとやり遂げられないように思う。


一方で、1つの森(=生態系)自体もまた生まれてから成熟し
環境の変化によって、別の生態系に遷移する、という形で"死んで"いく。

保全という課題。
保全とは?保つためにするのは、囲って静観か、立ち入って関与か。
そんな投げかけでこの本は最終章は締められている。

-----
森と日本人の1500年
田中 淳夫 著
平凡社新書 2014/10
http://www.heibonsha.co.jp/book/b183467.html

(2015.7.26)


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【映画】野火

2015-08-02 00:05:05 | 映画

嗚呼。なんという。

これまでに幾つか観た塚本監督作は、日常から少しずれたところに
ある狂気の世界を描いていた。ある種の寓話性を帯びた。
だから、客観的に観続けることができたのだけど。

これは違う。

あざやかな緑の、美しくも畏怖を感じる迷宮に観客は放り込まれる。

その中での、悪夢のような成り行き、光景。
おびえと空腹から、狂っていく感覚。

果てしない密林の中で、恐怖と狂気の膨張の終わりもまた、見えない。
そう感じられて恐ろしい。
死ぬことでしか脱出はありえないのではないか。

強烈な絵が重なって重なって、ひとらしい感性が失われていく変化が
みごと。(きつい…)。

田村一等兵が、彷徨で肺病が悪化して弱々しくなるものの、
あまりな状況を過ごすうちに、時折妙に動じなくなっている瞬間が
増えるのが興味深い。
そういえば、安田など"強者"も怯えがなく動じないのが特徴的。
何かが麻痺しているようなのである。

-----
公式サイト:http://nobi-movie.com/

(2015.8.1)


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【映画】セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター

2015-08-02 00:03:23 | 映画

ヴィム・ヴェンダース監督が作品に惹かれ、対話し、人物に惹かれた
写真家セバスチャン・サルガドの人生を辿るドキュメンタリー。

ヴィム・ヴェンダースが撮影したものだけでなく、セバスチャンの
息子ジュリアーノが各地に赴き写し取った父の映像が組み入れられ
ている。そしてセバスチャン・サルガド自身の作品と。
3人のクリエーションが交じり合い、セバスチャン・サルガド自身と、
地上の人々や自然の姿の美しさ・痛ましさが次々と視覚に飛び込んで
来る。

そこに現れるのは、サルガドが妻とともに切り開いていく人生であり、
思想であり、家族含め彼が目を向け、写し取る人々・そのくらしへの
愛情である。
20世紀、特に後半において、土地を逃れあるいは虐殺された人々を
みつめるサルガドが心に負う傷は、あまりにも痛い。

インスティチュート・テラの試みでは、驚きと希望を。

ヴィム・ヴェンダースが感受するサルガドの心を、観客もまた共有する。
セバスチャン・サルガドの視点が加わることで、より深みが出ている。

すばらしい手腕のドキュメンタリーであり、
同時に社会的なメッセージそのものでもある。

-----
公式サイト:http://salgado-movie.com/

(2015.8.1)


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【映画】進撃の巨人 ATTACK ON TITAN

2015-08-01 21:11:54 | 映画

二部作の前編。

ワタシ的にはけっこう満足。
巨人は、人のかたちをしてるけど人/生物でない、という設定と、
CGのツクリモノ感が、いい塩梅にマッチしてました。

大魔神やゴジラの系譜に連なる作品になるかも。

主要キャラのイメージはかなり大切にしてると思う。
壁に囲まれた光景は、原作にはないスケールの実感があってgood。
あの広大な農地が失われたら…飢え・失業・困窮に納得感。
立体機動装置を使っている兵士たちのモーションもオリジナリティが
あふれてる。うまい。
軍艦島のロケハンも奏功。

一部原作と大幅に変えてることあり。
キャストにリヴァイ兵長がいなかったので「なんでかな後編かな」と
思っていたのだけれど、謎が解けた(多分)。

原作に入れ込んでるファンの方には議論が分かれるところかも。

シキシマとミカサとリンゴ、ゴシック。作り手が遊んでる感(笑)。

そこそこ長くて未完結の原作をどう映画にするのか、という大課題に
少なくとも前編はうまい答えを提示していると思う。

水原希子がいいね。

-----
公式サイト:http://www.shingeki-seyo.com/

(2015.8.1)


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