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さよなら、ムッシュ / 片岡 翔

2024年06月19日 | 読んだ小説
                    

☆☆
主人公の青年が幼い頃に病気で亡くなった母親が、生前に作った縫いぐるみのムッシュは、
母親が亡くなったその日から突然に喋り出し動き始める。 そんな事あるわけないやないかーっ。 
あったらなかなかのホラーだと思うが、本作はホラー要素は皆無で、絵本を小説にしたような
優しく温かく悲しいファンタジー作品だ。 

青年は、かれこれ20年もムッシュと共に生活してきたが、亡くなった母親と同じ病気に犯され余命半年と
知る事になる。 本作は、青年にとって親友であり、兄弟であり、家族であるムッシュとさよならする
までの日々を綴った物語である。

普通この手の作品って感動的で泣けるはずなのに、そこまで感動も涙も私は覚えなかった。
何でそうなのか理由を考えてみたが、
①絵本ではなく小説の中で縫いぐるみのコアラが喋り、自由に動く事にやはり違和感があった。
②主人公とムッシュの主観が何度も変わるが、主人公主観だけの方が良かった気がする。
③死ぬ前に、やりたい事をいくつか書き上げ実行するが、つまらないものが多い。
④最初から泣かそうという魂胆を隠さずに来るから逆にシラけてしまう。
⑤装丁の絵にもあるように、少年とも青年ともつかない男が、コアラの縫いぐるみを大事そうに
 抱えているのは流石に気色悪い。

この物語は、例えば母親がロボット工学の権威で、母親が生前に作った超高性能コアラ型AIロボットと
青年との友情と別れの話だったら、そこまで違和感や抵抗を感じずに読めたのかもしれないが・・・。
でも、ラストは青年とムッシュの別れが、切なくて、優しくて、美しくて、なかなか良かったのが救い。


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