パトリシア・コーンウェル著
相原 真理子訳
講談社刊
「検屍官」シリーズの作家として有名な
パトリシア・コーンウェルが、
7億円を投じて得た克明な調査記録。
著者は、バージニア州リッチモンドの
検屍局で、6年間の勤務経験があるそうです。
オープニングから、真犯人が
名指しされたのは、意外でした。
ヴィクトリア朝後期の、著名な
印象派の画家ウォルター・シッカートに
注目し、様々な観点から、
犯人になりうる、可能性について
書かれています。
かなり長編ですが、最期の章に描かれている、
晩年の、シッカートの病気の妻に対する接し方を見ると、
彼のひととなりが判るでしょう。
読んでいると、 とても、113年前に
起きた事件とは思えません。
まるで、ニュースのように詳細な内容です。
2歳・9歳・20歳24歳、その他5枚ある、
シッカート本人の美貌の顔写真には、
驚きを隠せません。
4ヶ国語を話し、ラテン語・ギリシャ語
デンマーク語・スペン語
ポルトガル語の素養があり、
シェークスピアにも出演していた
シッカートは、どこから見ても紳士の風貌・・・。
切り裂きジャックのイメージとは、
かけ離れています。
現場の近くで、警官とすれ違っても、
誰からも疑われないでしょう。
事件よりも、当時の人々の暮らしぶりや、
シッカートの生い立ちが、多く描かれています。