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風の自叙伝・・・横浜・寿町の日雇い労働者たち

2015年04月27日 12時16分52秒 | ハチパパのひとり言

是非読みたいとネット通販で届いた、野本三吉著「風の自叙伝」横浜・寿町の日雇い労働者たち293頁を一気に読む。

今月14日投稿のラジオ深夜便・・・43に書いた野本三吉氏のノンフィクション選集第3巻である。

この本と同じ寿町の家庭裁判所に勤めていて、町全体をぶらり歩いたことはあっても、今の寿町の人たちを私は知らない。この本の帯にはこう書かれている。『横浜のドヤ街・寿町に暮らし、ここで一生を終える日雇い労働者たち。彼らの人生を、彼ら自身の言葉で綴った、民衆の生活史。 

著者が実際に寿町に住み、市の生活相談員として勤務していた昭和47年から10年くらいの間の人間模様が、仮名、実名入りで書かれてもいる。正直ドヤ街というのは、映画やテレビのシーンでしか知らないが、外見では計り知れない、ここに辿り着くまでの様々な壮絶人生が語られていて、久しぶりに単行本を一気読みするほどの感動を覚えた。 

家庭、家族問題の調停という仕事をしていることもあってこの町への関心は高い。見かけはひっそりとしているが、時折り見かける住人たちの表情は、偏見で見ない限りごく普通の人と変わらない。 

この町の人々の主たる仕事となっていた港湾労働は、キリンの形をしたようなクレーンなどに取って代わり、日雇いの肉体労働を必要とする仕事が大幅に減ったことは容易に想像できる。寿町も高齢化が進み、老後の生活保障もされないまま人生の終末期をどう生きているのだろうかと気にかかる。

ここでの人たちに比べれば、私などは衣食住に不自由することなく、健康でいい暮らしをさせてもらっている。同じ年代の人間として、職場は違えど戦後の高度経済成長の一翼を担ってきた世代である。格差はある程度仕方がないとは思うが、最低限の生活が安心してできる社会を願うばかりである。



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