お役に立ちましたのね。

昨日の仕事のお給料と、来週の仕事をとりに、試食販売の登録元へ行く。

仕事を探していると、
某メーカーさんが来訪された。

どうやら、どのような流れで、
試食販売の仕事をさせているのか、というのを、
見学させてもらおう、ということのようだった。

メーカーさんと登録元が、
名刺を交換し合ったり、紹介しあったりしている。

気にすることなく、仕事を探す。

　　　　　★

仕事のカードを見ながら、物色していると、
ある社員さんが、
「お仕事探しているの？」と声をかけてきた。

「○○ってジュース飲んだことある？」
「はい。あります（不味かったので、二度と飲んでいないけど）」
「じゃ、この仕事をしてもらうってことで、どうかな」

と、取り上げられたカードの派遣先は、
膳所（ぜぜ）。滋賀県。……はぁ？

昔、歌会で行ったことあるけれど、
行くのに、三時間はかかったぞ！！

膳所におののいている横で、
社員さんは、あれこれと、他にも探している。

「これは……」と、またある仕事のカードを取り上げた社員さん。
おなじ、ジュースのお仕事。

「あ、その日は、旅行に行く予定で……」と、
言ったのだが、聞いちゃいない。

「ごめんね。また、あとで呼ぶから。
その間、自分のお仕事探してね」
と、言って、
結局、膳所のカードだけを取り上げて、
社員さんは去っていった。

……？？

　　　　　★

しばらくして、
またあの社員さんに呼ばれた。

「じゃ、このマニュアル読んで待っていて」
「はぁ……」

見ると、あのジュースのマニュアル。
膳所の某スーパーまでの地図。

ほどなく、社員さんが、
来訪していた某メーカーさんを連れて現れた。

そういうことか。

どうやら、私を使って、
どのように、デモンストレーションを指導しているのか、
やってみせる、ということらしい。

わかりましたわかりました。あー、膳所には行かなくていいのね。

某メーカーさんを私の背後に座らせて、
社員さんは、私と向き合った。

「ではでは。マニュアルと交通手段のプリントは、
ＰＣから出してくれた？」

なんて、社員さんが言う。
はいはい。出してないけれど「はい。出力しました。これです」
なんて、机に広げてみる。

そこからは、ニコニコと社員さんとふたり女優さん。
ツウな質問までしたりして。

「いらっしゃいませ～！このたびペットボトルになりました○○でございます～」

なんて、いつもよりやけに念入りに、
唱和をしあったりして（普段から、練習させられるけど）。

あぁ、こういうのって、悪乗りしちゃう。

　　　　　★

一通り終わって、私は席を立ち、
再び仕事を物色し始めた。

向こうで社員さんと某メーカーさんたちが、
話をしている。

聞き耳を立てていると、
「彼女はもう、だいぶなれたデモンストレーターさんですから。
初めてのお仕事の子なんかは、なかなか声も出ないし、
言い方も、あんなにアレンジしてしてくれませんけどね……」
なんて、話をしているようだった。

おほほほほ。デモンストレーターというより、
女優と言っていただきたいわ（笑）

しばらくして、
今度は自分で選んだ仕事に関するデータを、
ＰＣから出力していた。
すると、先ほどの社員さんが、

「さっきはありがとね～！！助かったわ～」と、やってきた。

いえいえ。お役に立てて、何よりでしたわ、と、
ちょっと苦笑いで返す。

「これ、お礼。もらってって」と、
社員さんは、棚に飾ってあった、あられの袋をくれた。

「あぁ、ありがとうございます」と、
いただいたのはいいけれど、かばんが小さくて入らない。

結局、家まで、あられを素っ裸で持ち歩いて帰った。

恥ずかしかったけれど、まぁいいか、と思う。

誰かのお役に立てたという実感を、
久しぶりにかみ締められたことでの、ご褒美だったから。