日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

やっぱり天敵かもしれない(中編)

2009年09月13日 | お仕事な日々
「10:30になったんで、チーフが来たんよ。
それで聞いてみたら、野菜の冷蔵庫に置いてるんだって。
でも、探したんだけどねぇ……」

「そうですよね……」

一緒に野菜の冷蔵庫へ向かいながら、
担当者さんは言った。

一通り、ざっと見渡すが、やっぱりない。

「ひょっとして、重なってて、見えなくなっているとか?」

私と担当者さんは、
だんだん冷えてくる寒さを感じながら、
まるまるのキャベツがいくつか入ったダンボールだとか、
いろんな重い野菜のダンボールを移動させながら、
重なって、何が入っているかわかりにくいダンボールを、
つぶさに調べ上げた。

結果、見つけた……というか、
掘り起こした、とでもいうような実感。

「これは……隠すつもりでこんな風に置いたんですかねぇ……」

明らかに数日後には使う分にしては、
わかりにくい形で置かれていた、サンプル。何故に?

とりあえず、外へ出て、
担当者さんにお礼を言って別れ、
私は極細ポッキーを探す。

私が開けてしまった極細ポッキーと入れ替えるために。
が、グリ○コめ。

こういう時に限って、
なんで、バーコードのところに、
「非売品」と印刷を重ねているかな!
普段のフェアの時は、してないのに!!いじわる!!

オマケに、紙皿やウェッティーまで、
サンプル品と一緒に入れてくれている。すでに買ったがな!!

請求できるのか、確認の意味も込めて、
派遣会社へ連絡する。

派遣会社の人は、見つかったことに安堵し、
大丈夫だから請求して、と言ってくれた。ほっ……。

「と、いうわけで、発注されてない、○○○○のところのお菓子だけが、
極端に少ないという以外は、問題はクリアされました」
なんて、報告しながら。

すべての問題は、
この「チーフ」っていう人から始まっているんだな、
と、シンプルにまとまって。

「チーフ」って、一体どんな人なんだ?と思う。

     ★

通常通りのデモンストレーションが始まって、
お客さんも多くなってきたところで、
担当者さんが、「お昼休憩は1時に行ってね」と、
声をかけてきた。

「何時まで仕事?」「6時です」
「じゃあ、私はその時間までいないから、
(勤務証明の)サインは、チーフにもらってね」

と、担当者さんは、横で、
特売のカレールーの品出しをせっせとしている、
20前後の女性……というより、女の子を指差した。

え!?この人がチーフ?バイトの子かと思ってた!
……っていうか、あ!?この人知ってる!!
そうだそうだ、この人社員さんだった。
……でもでも、チーフなの!?そのおぼこさで(←失礼……)!?

私は、ご挨拶もかねて、声をかけた。

すると、「よろしくお願いします」の返しに、
「今回はすいませんでしたねぇ」と、
まるで『今しか謝るタイミングはねぇ』とでもいうような、
焦った口調で、私に謝った。

多分、カレールーを品出ししながら、
どういうタイミングで、声をかけ、
どういう風に謝ろうかと、
ぐるぐる頭で考えていたんだろうな、と推し量る。

あぁ、この人も、私のこと、覚えてるんだ、と思った。

この人、あの後、
自分の態度に、きっと後悔なり、反省なりを、したんだろうな、と。

     ★

このチーフと初めて会ったのも秋だった。
多分1年前で、確かやっぱりお菓子の仕事だったと思う。

報告書には、販売数を書かなければならない欄があって、
大概は、自分で数えたり、
入荷数を調べておいて、自分が帰る時の在庫数をチェックして、
その引き算で概算を割り出すのだけど、

お菓子は種類が多かったり、在庫数が多かったりで、
なかなか数えにくいので、
販売数を担当者さんに言って、
CPで出してもらうことをお願いしたりしている。

お店の人も忙しいので、
とても申し訳なく思うのだが、
お店の人側も、事情はわかっているので、
大人の態度で、黙って協力してくれる。

が、去年、この女の子に、
販売数を出して欲しいと願い出た時、
「えぇっっ!!」と、露骨に嫌な顔をされて。

その露骨さは、ダイレクトすぎて、
「『えぇっっ!!』っていうかさ、そこに大人の態度はないの!?」
と、そっちのほうに、驚いた。

で、
しばらくの間、
依頼した、お菓子の倉庫で、
そのままつっ立っていたが、なかなか来なく、
「事務所の方へ行ったほうがいいのかも……」と、
変に気を回して、CPのある事務所へ行ったけど、

「さっき、資料を持って、出て行ったよ」

と、入れ違ってしまい、おろおろ。

また、入れ違いになるかもしれないしなぁ……と、
事務所の入り口付近で、これまたつっ立っていたら、
ようやく女の子が現れて、

「バックまで行ったんですよ!どこ行ってたんですか!
じっとしとけばいいものを、うろうろせんといてください!!」

と、これまたいきなり怒鳴られ、粛々。
小さくなりながら、販売数を書き写し。

「では、あの……サインを頂きたいんで……」

と、小さくなって、またまたお願いの声を出すと、

「え?私?私が書かんとアカンの?」

と、言われてしまい、
『えっ!?この人見た目どおり、バイトさんなの?社員さんだよね!?』
と、困惑していると、
横で見ていた何処かの担当の人が、
「お菓子売ってた子やん。お前がサインせんとあかんやろ」
と、注意され、イヤイヤそうにサインした。

……推測するに。

社員さんになったのが、最近だったのか、
チーフという立場になったのが、最近だったのか、
とにかく、「マネキンとの遭遇」が、
初めてだったのだろう。

だから、販売数を求められる場合があることも知らなければ、
マネキンの勤務証明をすることもしらなかったのね。

それでいて、今、めちゃくちゃいっぱいいっぱいで、
マネキンどころではない忙しさの中だったのね……。

と、思って。

仕方がないかぁ~、なんと運の悪いこと~、と、
その日のツキのなさを嘆いて、
家に帰る頃には、切り替えた。

多分、あの時の態度を、
自分で反省したんだろう。このチーフさんは。

     ★

焦った口調で私に謝った後、
「言うだけのことは言った」とばかりに、
チーフは立ち去ろうとした。

私のことを、覚えているから、
逃げたいんでしょうけれど、待って!待って!

「あの……、どうしても数え切れないんで、
仕事終わりの時に、販売数を出していただきたいんですが……。
いえいえ、その……、6時ジャストじゃなくていいんです。
都合のつく、その時間前後でかまわないんで……」

と、あくまで平身低頭でお願いする。

「あ、いいですよ。わかりました」

そこのところの、経験値は上げましたから。
……とでもいうような、どんと来いさで。

ほっと胸をなでおろし、仕事に戻る。

                     時間切れ。つづく。

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