日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

「親御さん」と言えてよかった。

2009年04月26日 | お仕事な日々
本当は、4月11日(日)のことだけど、
うっかり書き忘れていた。

このまま別に記さなくてもいいんだけど、
最近になって、不意に思い出すようになって、
「あぁこれは、書き残しておかなければ」
という気になったので。

     ★

突然ですが、
明らかに男性という人が、女性になっている姿を、
TV以外の街中で、
生で見たことありますか?

いや、客観的に見るとね、
「女性」というより「女装」なんですが。

その人にとって、
「中身から女性になって」なのか「外見だけ女性になりたくて」なのか、
よくわからないけど。

私はこれで二度目でした。

一度目は、おそらく2004年のある日。
御堂筋線のなんばの駅で、電車を待っている人の中に。

まぁ、でも、どちらかといえば、
難波でなんて、
『あると思いますっっ!』だと思うんですよ。
(私にとっては)不自然ながらも、
そういう場所で、見かけるというのは。

だけどこの日見かけたのは、
中心地からはちと離れた、
仕事先のスーパーの中でだし、

しかも、厳密に言えば、
「見かける」ではなく、
初めて「コンタクト」をとったんですよ。

だから、そのインパクトに気圧されたことは、
ちょっと許してほしいな、っていう気がしている訳でして。

他でもない、真面目すぎる奥底の自分に対して。

     ★

おせんべいの試食販売をしているときに、
その男性(?)は現れた。

その人に気がついたとき、
自分の顔が一瞬、
「ハニワ顔」のようになった気がした。

明らかに、
いわゆる『お仕事』へ行く途中という感じではなかった。
だって、女性の格好はしているものの、
スーパーのカートには、
かわいらしい女の子が乗っていたから。

女の子と同じ、ピンク系の服を着た、
その男性(?)は、
そのピンクゆえに、剃り上がりのお髭の濃さが目立っていた。

ごつい「林家パー子」という感じで想像してもらうと近いかも。

私は、ビヨヨヨヨンと、
ブレた自分を収めて、
普通にお客さんと接するように、
「いかがですか?」と、
4等分したおせんべいのかけらを、
その男性(?)に差し出した。

「まぁありがとう。ほら、もらったよ」
男性(?)は、女の子におせんべいのかけらを渡した。

おせんべいに興味がなさそうだったので、
そのまま行き過ぎるかと思いきや、
女の子がそれを食べ終えるのを待つために、
男性(?)は、私の前で、
一旦カートを止めた。

細かいことはもう忘れたが、
その男性(?)と女の子のコミュニケーションは、
親子そのものだった。

女の子は、その男性(?)を、
私よりも自然に受け入れている様子で、
微笑ましくさえあった。

女の子は、ゆっくりとおせんべいを食べていたので、
男性(?)は私を気にしていなかったようだが、
私は、その妙な間が、なんともいえず居心地が悪かった
(男性のその姿のせいではなく、あくまで間が、です)。

買ってもらおうとするには、
余りにも、興味がなさそうだったので、
商品説明は諦めて、
食べてもらおうと思い立つ。

私は、また、一枚のおせんべいを、4等分し、
男性(?)に声をかけようとした。

が、一瞬、空気の玉が、喉を圧迫したかのように、
言葉が出なかった。

お父さんも食べてみてください」
お母さんも食べてみてください」

……一体どっちで声をかけたらいいんだ?

からだは、フリーズしかけた。
が、緊急用の電気のスイッチが入ったかのように、
私ではないような、私が、
かろうじて口先だけ動かして、声をかけていた。

親御さんも、どうぞ、ご試食なさってください」

自分には長い間でも、
相手にしてみれば、それほどでもなかったらしく、
その声かけに
不自然さはなかったようで、

「あら、ありがと」

と、男性(?)はとてもにこやかにほほ笑み返して、
おせんべいのかけらを受け取ってくれた。

おせんべいを食べ終えて、
買うこともなく、その親子は立ち去った。

それはまるで、
結果的には点数には結びつかなかったものの、
とりあえず、ヒットは出せた、
先頭打者の気分だった。

『役割』だけは、果たせたかのような。

差別ではなく、慣れてないだけ。

もう一度、自己確認をして、
私はひきつづき、少なくなっていた
試食用のおせんべいを、割り続けた。

真っ二つに割ることの、難しさを思いながら。

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