日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

真の元凶を思い出す③

2008年04月12日 | お仕事な日々
最初の仕事の時は、
げーさんの言ってることに対して、
ツーカーで出来ない自分の至らなさが、
自分の中でメインになっていたけれど、

今回は、そういう真っ白さがないので、
注意されたとき、
すでに出来上がっているイメージを
押さえつけてる手に、
針を刺されたような感じがあって、
反射的に、

「あぁ、すいません」

と、いかにもムスっとした感じで、言い返してしまった。
へこむどころか、とんがってしまった。

喜怒哀楽、なんでもそうなんだけれど、
私は、
ある激しい感情を必死で抑えているところに、
一刺しの刺激を受けると、
もうアホみたいに反り返ってしまう。

そんな私をしっかり受け止めたげーさん。
でもまだ、ぐっとこらえて、指示を出す。

「△△シリーズも、
つぶあん、こしあん、しろあん、いちご、クリーム、ブルーベリーの
順で置いて。
それで、つぶあんは3列分、ブルーベリーは1列分、
それ以外は2列にして」

と、いわれ、
最初に言われたことを覚え切れられなくて、


「えーっと、覚えられたかなぁ。まぁいいや。やってみます」

と、
これまた
ひとこと多い、返事をしてしまう。

面白いかけ合い漫才の逆バージョン。
もうひとりのマネキンさん、笑えない。ひく。

自分で突っ込むけど、
げーさんのタイプに、この接し方はないやろ。

頭でわかってても、感情で動いちゃう。
あぁ未然に防げない自分って、情けねー。

そして、予想外な展開になった。

指示のような注意は、それ以降、
もうひとりのマネキンさん経由で、
来るようになった。

「このパン、もうちょっと向こうに置いて欲しいんですって」
みたいな感じで。

もうひとりのマネキンさんだって、
出さなければならない多くのパンを抱えているのに、
またひと仕事、いや、ひと気苦労を、
増やしてしまった。

……申し訳なく思う。
もうひとりのマネキンさんに、
気苦労を作ってしまった元凶は、
不本意にも、私。

     ★

開店すると、げーさんは、
「私の仕事は、パンばかりじゃないので」
ということで、
やっとどこかへ行ってくれた(失礼な・笑)。

売れ筋商品を、売れやすい場所に置くことを求めるのなら、
デキのよさそうなマネキンを指名して、
何回も仕事をさせて、育ててからでないと、無理。

げーさんの本心の望むところは、
わかっていても、無視しないと、萎縮し動けない。

私らの仕事は、
陳列台を限りなく常に、パンで埋めておくこと、
夕方までに在庫をすべて出し切ること。

あぁ、ようやく、その2点だけに集中して、
仕事をしていける、と、私は内心ほっとした。

私ともうひとりのマネキンさんは、
役割分担を決めて、
自分のしやすいように、品出し・陳列の仕事をこなしていく。

時々、げーさんは仕事の様子をチェックしてくる。
そして相変わらず、
もうひとりのマネキンさん経由で注意をしてくる。

ムカツク暇もなく、忙しいのがありがたかった。

が、
「自分で言いに来たらいいのにね」と、
相変わらずひとことが多く、
もうひとりのマネキンさんを困惑させた。

私のほうが、もうひとりのマネキンさんだったら、
『どっちもどっち』と思っただろうな(笑)

     ★

お客さんは多かった。

品出ししても、品出ししても、
ジュッと蒸発する水のように、
パンは陳列台から消えていった。

12時~1時、1時~2時で、
分担して、休憩を取るように言われたが、
12時になった時、もうひとりのマネキンさんが、

「この状態でひとりで品出しするのは、無理ですよ」

ってことで、1時~3時の間で、
交代ごうたいで休憩が取れるように、
げーさんに言って、承諾をもらった。

仕事の区切りがついたので、私の方が先に休憩をとった。

休憩室で、
スーパーの人たちの会話の中で、ひとり、
ご飯を食べていたら、
喫煙のパーテーションの隙間から、
2,3人のパートの女の人の声が聞こえた。

話の内容は、ある人に対する負の内容だった。

「ジコチューやねん。なんでもかんでも」
みたいに、
「ジコチュー」という言葉がキーワードの、
話の内容だった。

ジコチュー……。
げーさんのことを言っているのか?と思ったが、
「それは安易な連想だ」と、自分をたしなめる。

げーさんは、ジコチューではないと思う。

では、げーさんの中心にあるのは何で、
どうして、こういう鋭角な行動に繋がっているんだろう。

不意に、前に仕事をしたとき、

「さっき、こっちのパンを、あっちに置きなおしてって、
あたし言ったよね、聞いてたよね。
でもなんで、未だに、あそこにあるの?
言ったよね。あたし、言ったよね」

という感じの注意のされ方をしたのを思い出す。

どうして言われたとおりに私がしなかったのか、
今となってはもう忘れたけれど(そういうもんです。人間は・笑)、
この場面を思い出しても、
私はどうして、
ジコチューという印象を持たないのか。

げーさんの行動の源が、
ジコチューではないのなら、
一体なんなのだろうと、ふと思う。

     ★

私が休憩に行っている間、
交代するみたいに、
げーさんが品出しの手伝いをしていたようだった。

いや……、『手伝い』じゃなかったようだった。

私ともうひとりのマネキンさんの役割分担は、
げーさんが提案してくれたように、
メーカー別で分けての、品出し。

なので、私が分担した、メーカーのパンのことは、
もうひとりのマネキンさんは、一切わからない状態だった。

だけど、げーさんは、
「自分がわかっているものは、相手もわかっている」が、
前提な人なので、
陳列台の開いている状態を見て、

「○○○○のパンと、××××のパン持ってきて。
それと、△△と……」

という感じで、
私しか置き場所のわからないパンの名前を言い、
それまで自主的に、
自分が分担していた範囲を、
自分なりに工夫をし、品出しをしていた、
もうひとりのマネキンさんのプライドを、
軽く踏みつけるかたちで、仕事をさせていたようで、
私が休憩から戻ってきたときは、
私のように嫌そうな顔はしていなかったが、
笑顔は消えていた。

(ちなみに私が交代で仕事に戻ってきたら、
げーさんは違う仕事を始めました。
そんなに一緒に仕事をするのは嫌かい!!……嫌だ!!・笑)

結局、私も、もうひとりのマネキンさんも、
休憩を1時間もとる気になれず、
早々に切り上げて、
激しい仕事の続きを始めた。

     ★

しばらくして、エレベーターに、
私、もうひとりのマネキンさん、げーさんの3人が、
一緒に乗った。

げーさんは、特売のティッシュやトイレットペーパーを、
大きなワゴン(?)で運ぶ途中のようだった。

げーさんが、話しかけてきた。
もちろん、私ではないほうのマネキンさんに(笑)

「これな、昨日、大きなダンボールの中に、
大量にあってな。
そこから出しておくの、ひとりでやってん。
もう信じられへんぐらいの量やってんで」

すでに笑顔じゃなくなってた、
もうひとりのマネキンさんは、
少し距離を置いた感じで、
「そうなんですか。大変だったんですね」と、
受け流していた。

あぁわかった。やっぱり、げーさんは、ジコチューじゃない。

一見そう見えるけれど、根っこはそうじゃない。
ジコチューなら、もうちょっと無責任な側面が出るはずだ。

逆だ。この人は。

むしろ仕事に対する責任感が、
強すぎるくらい強いのだ。

明るいし、元気だし、店長さんやメーカーさんとかから
頼りにされているし、文句を言いながらも、
多分他のパートさんより、きっちりと仕事をこなしている。

だけど、
責任感が強すぎるから、
不本意な仕事をされるのが、
嫌で嫌で仕方が無いのだ。

大きくみれば、
目指すゴールは同じなのに、
その道のりまでも、きっちりしてもらわなければ、
不安でたまらなくなるのだ。

その不安解消が、鋭角な注意だ。
そこに、相手の動機や背景に、気を配る余裕など生まれない。

ここまでわかってくると、
げーさんは私の一部になっていく。

     ★

私が学校や会社などで、
変にリーダーシップを
取らなくてはならないポジションを、
任された様な時のことが、
カタマリになって思い出されてきた。

真面目なので、変に周囲に持ち上げられるけど、
『~長』というポジションが、
必要以上の責任感を引き出してしまい、
暴君と化したことだとか(笑)。

あぁ……自分の嫌な部分を具現化しているようだから、
余計にげーさんが嫌なんだ。

なんとなく気がついていたけれど、やっぱりやっぱり、
そういう意味でも、この人が嫌なんだ。

やっぱりやっぱり、嫌なんだぁぁぁぁぁ~!!……あぁすっきり。

すっきりしたところで、つづく(のかよ、おい……)。

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