日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

お弁当外交。

2006年04月10日 | お仕事な日々
こういうのって、心の底から苦手だ。

     ★

仕事に行ったら、
今日から出勤予定だった、パートさんが、
風邪を引いてお休みだった。
妊婦さんだし、薬を使えないので、
明日も休む可能性大だという。

『ボ』(営業さんのことをこう呼ぶ)は、
お通夜のお仕事が入っていると言う。

ピヨピヨな私の仕事をどうする、ってことになった。

私はまぁ、いろいろ経験しておきたい気持ちがあったので、
お通夜についていく、と答えた。

     ★

お葬式会場に入る。

だからといって、私に出来ることは、ほとんどなく。

事務所に座って、眠りそうになった頃、
お昼ごはんの時間となった。

すると『ボ』が、
「俺の弁当食べるか?」と聞いてきた。

――あれ?さっき会社を出たとき、
  『お弁当持ってるか?』と私に聞いてきて、
  『今日は朝のうちにパンを買ってきました』って
  言ったのに???

と困惑していたにも関わらず、

「あー……、はい。まぁパンは明日の朝に食べたらいいし」

と、気遣いの反射神経が、勝手に答える。
私の自分の嫌いなところだ。

     ★

『ボ』のお弁当とは、晩ご飯用のお弁当だった。

『ボ』は去年離婚したらしく、
自分でお弁当を作って持ってきている。

私にくれたお弁当は、
ウインナーと玉子焼きだけのお弁当。
対して、
『ボ』のお昼用のお弁当は
それに加えて
冷凍のクリームコロッケが入っていた、
比較するとほんの少しだけ豪華になったお弁当。

『ボ』は再三、
そのクリームコロッケのお裾分けを、
私に提供してきたが、断った。
断り続けていたけれど、

だんだんうっとうしくなって、
欲しくないクリームコロッケを、貰ってしまった。

親しくない人との、おかずの交換……大っ嫌い。

また、他の人との雑談の中で、
決して晩ご飯が必要なくなった訳ではないこともわかり、
(むしろ、買いに行く暇がないので、めっちゃ必要!)
どうして、私にそれをくれたのか、
ますます困惑した。

     ★

親族の方々が会場入りするのは、3時とわかった。
待機状態は、ヒマである。

すると、『ボ』が、
「(ガソリン)スタンド行ってくる」と言って立ち上がった。
私にもついてくるように促した。『ボ』の車に同乗する。

「あの……」沈黙の中、私は話を切り出す。

「あの、私がお昼に用意してたパン、晩ご飯に食べますか?」
もらっておくれ、そのほうがチャラだ、と願ったが、
「ううん。いらない」と、あっけなく拒否される。

そして、玉子焼きの味付けとか、
そういう話になった時、

「……でも、野菜の足りないお弁当になっちゃってますよね」
と、私が言い、
サラダぐらいはコンビニで買ったほうがいいんじゃないですか?
と話を続けようとしたら、

「そう思うんだったら、今度作って持ってきて」

と押しの強い語気で言われ、
「しまった!!!」と一気に気が重くなった。

こういうの、大っ嫌いなのだ。

人によっては、なんでもないことかもしれない。
が、私は大っ嫌い。

お弁当外交。食べ物外交。だいだい、大っ嫌い!!

     ★

大学のクラブに入りたての頃、
クラブ同士の交流を図る、ソフトボール大会があって、
女子の新入部員だけに、
全員のお弁当を作って持ってくるように指示した
先輩がいて、むかついた。

男子の新入部員にそれを求めなかったことと、
お弁当屋さんもある今どきに、
遠方から大学に来ている女子もいるのに、
何考えているんだ、と思った。

でも、これを苦にせず出来る女の子もいたので、
しぶしぶおにぎりを握った。

それから、
以前、お姑さんからタッパに、
炊き込みご飯をもらったことがあって、
そこにたまたま居合わせた親戚に、

「今度、このタッパを帰す時は、
自分で作った料理を入れてお返しするのよ」

と、耳打ちされたことがあって、
私は、
「なんで料理やねん。なんでもええやん!あたしの自由や!」
と思いながら、へらへらと相槌を打ち、
でも、気が重くなって、なかなかタッパが返せなくなり、
そのうち忘れて(←アカンやろ……)、
数年たったついこの前、
ようやく、
いかなごの釘煮を入れて、郵送した。

そのくらい、食べ物外交は、ダメダメ。

一緒にお弁当を食べて、
おかずの交換をしあうなんて、
もってのほかで、

「どうかどうか、私のお弁当の中身は、見ないで下さい……」

と、祈るくらいなので、
お金が多少かかっても、
お弁当を複数で食べるとわかっていれば、
可能ならば、パン食や外食やほか弁で、
極力済ませたいと思っている人なのだ。

私のごはんが食べれる人は、
かなりの段階を踏んで、
親密になった人だけなのだ。
(今のところ、身内のみです……)

あぁ、それなのに、
角を立てたくない一心で、
私は『ボ』のお弁当を食べてしまった。
クリームコロッケまでもらってしまった。

「そう思うんだったら、今度作って持ってきて」

と、思惑通りのネタフリをしてしまった。

めちゃくちゃ気が重い……。

こういう、
「相手が別に必要と思ってないものを与え、
自分が欲しいものを要求する」というのは、
私には、不条理。

要求されたものが、「料理」だっただけに、
私には、不条理。

営業畑の人のやり方かな?とも思ったけれど、
子供の頃からの、
愛情の要求の仕方が、
こういう仕組みで得ているからかな?
(つまり、まわりクドイやり方をしないと、
大人から愛情をもらえない環境で育ったのかな?)
と、変なところまで想像してしまい、

理論と想像が、深みにはまって、さぁ大変。

「いいじゃん。お弁当を作るついでのあまり物を
あげるぐらいで、大袈裟な」

と思う人は思うんだろうけど。

     ★

「あなたにとって愛情とは?」と聞かれたら、
私は「手間です」と即答する。

恋愛の成就も、子育ても、
地球の環境保護も、みんな手間がかかるでしょ?

そして、そのどれもが多面体だ。

手間だとしか思えないところもあれば、
当然だと思って平気なこともある。

利害を超えて、無条件に惹かれるものにすら、
常にこれらの要素がせめぎあっているもので、

だけど、1%ほどのちょっとの差で、
「当然」が勝ち、
「手間」があっても、「嫌い」ではなく、
「愛情」とかろうじて呼べるんだと思っている。

料理だってそうだ。多面体だ。

で、私の場合、まだ、
「当然」が勝ちきれていないので、
「手間」を愛情とは呼びきれない。

トータルすれば、まだまだ「嫌い」の領域だ。

ようやく明石に来て、
手間を「自分に対する」愛情と、呼びきれたかな、
……ぐらいに変化しつつはあるのだけれど、

「外交手段」にするには、
「料理」とは、
まだまだ私には、手頃なアイテムではないのだ。

ましてや、
仕事をする上において、人間関係を円滑にするための、
「外交手段」だなんて。

恋愛レベルでの情熱でないと、使えないアイテムに、
なんで、『ボ』レベル(失礼……お仕事レベルってコトね)
に使わなあかんねんと思っている。

     ★

「なら、聞き流したらええやん」

と、あなたは言うかもしれない。

そうだと、私も思う。

が、気を使いぃーの私には、
あらゆることを考えると、
それなりの強靭な意志が必要で、

「外交」な訳だから
(口説かれてるわけじゃないだろう……ははは)、
北朝鮮との拉致問題や、
アメリカの牛肉の輸入問題が、
個人レベルで起きているという認識があるので、
角が立つ事はしたくない。

「当たり前」と「当たり前」がズレているということを、
互いに認識しあえれば、
感情的になるにしたって、最小限に抑えられる。

いろんな見方がある。

ホンネを言えば、もはや私にはセクハラレベルだけど(笑)、
それを胸に思っていることと、
そういう感情をあらわにする事には差がある。

こういう不条理が世の中だ、と、
腹に落とせるほどの年齢も重ねてきたし。

と、いう訳で、明日のお昼ごはんは、どうしよう(笑)

気が重い。気が重い。

気が重いけど、
今ここで必要なのは、一休さん。

相手の思うツボでもなく、私の激しい主張でもなく。

とりあえず、
とんちをきかせて、乗り越えたいのだ。

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2 コメント

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Unknown (沙久良湖)
2006-04-12 21:50:17
こんにちは。



>こういう、

「相手が別に必要と思ってないものを与え、

自分が欲しいものを要求する」というのは、

私には、不条理。



なんか分かリますね。

食べ物ではないけど、意に反するものを頂いて、

それが家の中にあると思っただけで、息が苦しくなることが何度かありました。

「もの」というより、その人に圧迫されてる感じがどうもダメです。



それ以来、自分もそうしているんじゃないかと用心するようになって、よほどの関係じゃないと「食べ物外交」には気をつけてます。



私もどちらかと言うと断りベタ、とっさの判断は苦手です。

夢の中に新衛門さんも出てくるといいですね。



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新衛門さん(^_^) (いなだっち)
2006-04-13 07:37:55
>「もの」というより、その人に圧迫されてる感じがどうもダメです。



そうそうそうそう



そういうことなんです。



食べ物の共有って、

意外と親密度を問うものだと思うんですよ。



「かたちから入って」親しくなっていく、

という手段としては、いいのかもしれないけれど、

それならせめて、外食からってもんです。



新衛門さん、笑っちゃいました



これからも、時々出てきて、

とんちを伝授して欲しいです
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