うろうろとする日々

読書:音楽 地の塩となりて: 人生の嗜み、そして教養として(村上陽一郎著、平凡社)

音楽 地の塩となりて - 平凡社

村上陽一郎先生が最近書かれている音楽関係のエッセイをまとめたものです。

最後にまとめて1990年代に書かれたものも入ってます。

村上先生も80代後半に入られて、なにかこれまでの人生のまとめのような境地を感じる文章でした。

村上先生のブルーバックス『新しい科学論』は私にとって、それまで考えていたことを見事に説明してくれた本で、遅れた高校生であった私に科学の哲学というものを教えてくれた本当に感謝すべき本でした。おそらくこの本をもっと早くに読んでいたら進路にも考えたかもしれないと思うほどでした。残念ながら進路を変えるには遅すぎて、大学では科学史・科学哲学の授業に潜り込ませてもらい、入り口を学びはしましたが、あまり気合をいれたとは言えなかったところです。ちなみに当時村上先生が何かでいらっしゃった際に拝見したこともありました。

その後、楽器を始めようとおもい、村上先生がチェロを弾かれることを知っていましたので、やっぱりチェロだなあと思って始めたので、本当にいろいろなきっかけを作っていただいたかただと思っています。

という前置きはさておき、楽器について書かれても、メッソーリという製作者の方の楽器ということですが、因縁のようなことはあまり書かず、楽器について、即物的な情報だけを書く、わかる人にはわかればよい、というスタイルかと。歴史家らしいと感じました。

そのあとも本当に読んでいて、教養に欠けることを強く思われさることばかりで、自分は80代後半になった時にどれだけのことを書き残せるだろうか、というようなことも思いながら読みました。

また、チェロの音、演奏というのは村上先生の生き方自体を決定づけているようにも読めました。ほとんどは当然音楽の土台を作って、ある部分で浮き上がる。しかしそれは一瞬であとは潜るとか、歌うような音がする、とかですね。そういう生き方が村上先生のいう”嗜み”でもあるのかなと。

全然本自体の感想ではないのですが、小生としては、もう一度チェロを練習するモチベーションも得られてとてもよい本であったというところです。

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