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プライドとプライド 

マリア達、普通の心の者たちと、
クトール軍団達、よこしまな心にとらわれし者たちとの地球を含めての空間争奪戦だ!!

プライドとプライド 改

2011年10月29日 12時05分40秒 | Weblog

  第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。

      (11)

         グミ族(黄金毛族)のキュエールの持っていた、小剣2刀、ダブル・

   シーザーが光の速さ、「シューティング・スター・スピード・ソード」の術で、

   ササ族(動植物中間人族)のユグドランの顔面を、Ⅹ状に交差しつつ、通過

   したのだった。もちろん、通常ならば、光の速さなぞ、かわせるはずも無く、

   ユグドランは顔面をズタズタに切り裂かれて、大量出血で絶命した筈

   だった。だが、顔面に深手を負ったが、ユグドランは生きていた。正に野生

   動物のような鋭い勘で、危険を察知して、わずかレイコンマ何秒の差で、

   攻撃を止めて、防御体制に入ろうとしていて、それが、ユグドランの命を

   救ったのだった。しかし、ダブル・シーザーを天空の彼方に失い、エネルギー

   を使い果たして、倒れ込んだままのキュエールと、致命傷は免れたが、顔面

   に深手を負って、激痛にのた打ち回るユグドラン。相討ちといえたが、

   このままでは、ユグドランの命はなかっただろう。辺りには、ユグドランや、

   キュエールの他に、ユグドランに倒されたフィアーナ領兵達の死体があった

   が、近くで大勢の声が聴こえてきた。新たなるフィアーナ領兵の増援部隊

   だった。ユグドランがとどめを刺される可能性は、大であり、正にその命は

   風前の灯(ともしび)といえたが、彼は死ななかった。邪神ハベスの申し子

   なのかも知れなかった。「おい、みんながやられているぞ。あっ、リコードル

   さんとこのキュエールじゃないか。おい、見慣れぬ奴がいる。まだ、生きて

   いるみたいだ。よし、生け捕りにしよう。手に余るようなら、みんなの仇だ。

   斬ってしまおう」と、リーダー格の男の声で、集結した領兵20数人が、

   一斉に腰の剣を抜いて、身構えると、ゆっくりと、ユグドランに近寄り始めた

   のだった。倒れている領兵の生死を確かめつつ、進んでいたが、誰も息を

   している風になかった。「これだけの人数を、たった1人で殺めるとは、

   恐ろしい奴。何者か知らんが、ここで殺しておいた方が、ゆくゆくイリアス

   のためになるのではないか?」と、リーダーの言葉に、あまりに急な戦闘

   状態に、興奮している領兵達の誰もが、「そうだ、そうだ。こんな強敵は、

   今ここで、始末しておいた方が、我らイリアスのためだ。殺ってしまおう」

   「そうだ!」「その通り!」と、口々に応じる声。一瞬で、ユグドランを、

   生け捕りから、とどめを刺す方針に決まってしまっていた。殺気を感じて、

   何とか血みどろの顔を上げるユグドラン。だが、激痛で身体の制御がきか

   ないでいた。(クソッ。ここまでか。)心で舌打ちするユグドラン。しかし、

   まだ、天は見放してはいなかった。正に飛びかかろうとしたその時、「止めて

   下さい!いくら、国のための戦いとはいえ、もう、戦う力のない人を大勢で

   殺すなんて、卑怯な真似は止めて下さい!この人は私が連れて行きます

   から」と、血まなぐさい戦場に、突然現れた可憐な花のような、少女。それが

   後に、ユグドランの正妻になり、リオンを産むことになる、ミーザ族(花紋族。

   身体のどこかに1つか、数ヶ所、生まれつき、花の形のあざがある種族

   だった。)のリリイヤ達数人が、マリウス教、布教のための旅で偶然、

   おおぜいの血が流れているのを発見して、リリイヤが仲間の忠告を無視

   して、単身、白い毛並みの愛馬・シジュールとともに、割って入ったの

   だった。根が優しい者が多いイリアスの兵達。ピンク色の髪の毛に、黒い瞳

   に白い肌。その小柄で、華奢な身体を、マリウス教の女性信者の特有の

   焦げ茶色の大きなストールの下に、白色の着物に、足首が完全に見える、

   少し短めの白いズボンを履いていた。足元には、少しくたびれた黒色の

   サンダルがあった。リリイヤの大きな瞳に、誰もが惑わかされたのか、

   彼女の両の眼が、光を失っているのを、気付く者は1人もいなかった。

   「異存がなければ、この人は、わたしが連れて行きます。それでは、失礼

   します」と、強い口調でそう言うと、リリイヤは念動力で、ユグドランを宙に

   圧し上げて、シジュールの背にゆっくりと乗せたのだった。そして、繊維放出

   師のリリイヤが、その巨体を具現化させた縄で、シジュールの背中の後ろの

   上部にあっという間に括りつけたのだった。領兵達が唖然とする中を、

   リリイヤ達は悠然と、去っていった。ユグドランがみすみす逃れてゆくのを、

   もし、キュエールが正気なら、なんとしても止めていただろう。正に運命の

   転換点だった。だが、気絶したままのキュエールが、止められるわけもなく、

   この展開を詳しく知ったのは、ずっと後になってのことだった。「おい、女・・

   俺を助けたことを・・後悔するぞ・・」「怪我人は静かにしておいて下さい」

   と、ユグドランの途切れ気味の言葉を、恐れなく遮る、リリイヤだった。

      ((お蔭様で、なんとか退院できました。声帯の腫瘍の切除手術でした。

         癌でなくて良かったです。これからもよろしくお願いいたします。

         ご心配、ご迷惑をお掛けして、本当に済みませんでした。

         次回に続きます。))

プライドとプライド 改

2011年10月17日 22時06分46秒 | Weblog

  第6章  呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。

       (10)

          ササ族(動植物中間人族)のユグドランは、ササ族の中でも、

   身分の低い下層階級の家で、クトール大帝国が勃興する前の国、オクルス

   (リザ・ヴェーダと同じ。)に生まれて差別され続けた、幼少、子供時代を

   送っていた。のし上がるために、ユグドランは力が欲しかった。すべての者を

   統べる力が。その手段として、今まさに誕生しようとしている、新生クトール

   大帝国の勢いを借りて、まずは武を持って、クトール内の地位を上げようと、

   企んでいた。だからこそ、イリアスの中枢の人間を、血祭りに上げたいと

   思っていた。もちろん、血を好む性向もあったが。ユグドランは妖剣・

   ラヴァーニを振り回しながら、大声で叫んでいた。「イリアスには、文武両道

   に優れた者が多いと聞いたが、ただの噂でしかなく、腰抜けばかりか。

   情けないぞ」と。その時、それを聞いて、現れた男がいた。グミ族(黄金毛

   族)のキュエール(後のイリアス、裏部隊のイマージュの初代総帥。2代目

   カミュエルの実の父親。)だった。長い黄金の髪の毛を、緑色のカチューシャ

   で無造作で束ね、銀色の瞳に、白い肌。首から下は、空色の短めの着物を

   着ていて、黒いショートパンツに、ベージュの膝当て。足元には、黒色の

   サンダルを外れにくい様に、植物の蔓で、グルグルに巻き付けて履いて

   いた。その背中には短めの剣2本を、交差させて、紐で結んで括り付けて

   いた。「拙者がお相手いたす」と。「フン。なんだ小僧か。しかも小剣2刀流。

   小賢しいおもちゃだな。まあいい、可哀想だが、俺様に手加減は一切無い。

   一瞬で葬ってくれるわ」と、余裕の笑みを浮かべるユグドランは、瞬速で

   間合いを詰めると、ラヴァーニで何度も突いてきた。全身から血を流して、

   キュエールは、地面に倒れている筈だった。しかし、キュエールは、

   妖剣・ラヴァーニの動きを、完全に見切っていた。2つの小剣が、交互に

   流れるように、ラヴァーニを受け流していたのだ。「成る程。言うだけのこと

   はあるな。だが、所詮はそれだけのこと」と、スピードが急激にアップして、

   ユグドランの姿は、あまりの速さで、視界からは消えていた。だが、

   キュエールも負けてはいなかった。その姿も視界から消えていて、金属の

   触れ合う音だけが、周りに響き渡っていた。「ほほう。小僧のくせに、中々

   やるな。まあ、8割は出してやるか」と、まだ、余裕のユグドラン。ショート・

   テレポートを発動させて、正に神出鬼没で、動きが読める筈もない。しかし、

   キュエールもアップしていた。同じように、ショート・テレポートで、ユグドラン

   の動きに、付いて来ていた。身体も、剣も大きくて、そのため、重量もだいぶ

   ある、ユグドランの方が、さすがに少し疲れてきていた。(チッ。この小僧、

   侮れん。仕方が無い、全力でいく。)と。ユグドランは急に静止すると、

   ラヴァーニを力任せに、ブンブンと右回りに振り回したのだった。「ブラッド・

   ブリザード・ライト・ローリング!」なんと、ラヴァーニの太刀から、多くの

   血の粒が噴出していて、右回りに、辺り一面に飛び散っていた。それは

   正にラヴァーニが、今まで吸ってきた多くの人間の血だった。その血が、

   右足の膝のすぐ下辺りに、飛び散ったエキュールは、あまりの激痛に動け

   なくなって、その場にしゃがみ込んでしまっていた。2つの小剣は、地面に

   突き立てたままで、顔面を蒼白しながらも、痛みに耐えていた。「まあ、

   若すぎる小僧は知るまい。体内に他人の血が混ざると、命の危険さえ、

   あるということを」(今では常識である、輸血の場合の血液の型の照合の

   一致の大切さを。)「し、知っているさ。それぐらい。剣や体術や異能の術

   以外にも、医学、薬学、気象学、天文学、動物学、植物学。ありとあらゆる

   学問を、イリアスでは学ぶのだ」と、声を振り絞って、答えるキュエール。

   だが、今は、痛みのために動けず、隙だらけに見えた。「それは凄いな。

   正に文武両道だな。だが、残念だな。せっかく、精進した日々も、ここで

   すべてが無駄に終わるぞ。俺様の手でな」と、舌なめずりするユグドラン。

   その時、いつの間にか、遅れて駆けつけてきたフィアナ領兵たち10数名

   が、たった1人のユグドランの周りを、取り囲んでいた。「あわてるな!

   お前たちも、すぐに後を追わせてやる。小僧の息の根を止めたらな!」

   その言葉がまるで合図のように、一斉に飛びかかる領兵たち。だが、

   血飛沫を上げたのは領兵たちだった。「チッ。順番が狂った。まず、

   小僧からだったが。まあいい。後を追え!小僧」重傷の領兵たちを、

   蹴散らせて、ラヴァーニを振り上げて、降ろそうとしたユグドラン。その

   刹那、顔面をⅩ字に斬り刻まれていた。そう、今や、ユグドランのトレード

   マークの顔のⅩ字の傷は、この時に出来た傷だった。「シューティング・

   スター・スピード・ソード。いくら、お前が速く動けても、流れ星、光の速さは

   かわせまい。拙者も、世界中の誰でもな」と言いながら、気を失った

   キュエール。地面に突き立てた2つの小剣、ダブル・シーザーが、キュエール

   の渾身の念動力で、ユグドランの顔面を、光速の速さで、通過しつつ、

   天空に消えていた。正に流れ星の如くで、みずからの武器は失ってしまう、

   捨て身の術ではあった。((誠に済みませんが、明日から、入院することに

   なりました。ごめんなさい。7日から、10日くらいの間、休みますが、

   再開したら、又、よろしくお願いいたします。それまでは、しばし、お別れ

   です。皆さんはお元気で。又、このブログ上で、お会いしましょう。

    次回に続く。))

プライドとプライド 改

2011年10月13日 21時46分54秒 | Weblog

 第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2.失われた時を求めて・・。(9)

         オーゼ・クレーレの怪我の具合が、気掛かりだったが、それを

   確認する余裕は、アル・ビビンデにはなかった。ゴリラのリーダー格らしき

   1人?から、テレパシーが送られて来たからだ。(大人しく我々について

   来い。そうすれば、そいつにとどめは刺さないで、見逃してやる。どうする

   ね?大将さん。)と。ビビンデは残念で仕方がなかったが、選択の余地は

   なさそうだった。テレパシーで返事を返す。(わかった。言う通りにするから、

   クレーレはこのままにしておいてくれ。頼む。)ビビンデはクレーレの婚約者

   の茶色の髪、右眼青色、左眼銀色で、ビビンデと同じ色合いの美しい娘、

   ハーズ族(変色眼族)のペルーネの顔が浮んだ。ビビンデと不思議な縁の

   ある子で、イケメンながら、おくてなクレーレに業を煮やしたビビンデが、

   紹介したのだった。やがて、2人の交際は順調にいって、このたび目出度く、

   この年末に結婚式を挙げる運びになっていた。2人をこのまま、引き離したく

   はない。(いいだろう。その代わり、武器は捨ててもらおう。)その心の交信に

   対して、ビビンデは腰の剣、両足首の隠し短剣を、鞘ごとその場に置いたの

   だった。すると、(よし。おいっ!)と、その合図のテレパシーを受信した

   のか、周りのゴリラたちが、ビビンデの両手、両足を、それぞれが掴み、

   背中も他のゴリラが持って、そのまま、ビビンデは担ぎ上げられて、リーダー

   格を先頭にして、その後に続いて、ゴリラたちは猛スピードで、駆け出して

   いった。(なんとか、生き延びて、ペルーネの元に戻れ。クレーレ。)と、

   自分のことをさしおいて、願わずにはいられないビビンデだった。

    ビビンデやクレーレの後方では、あちこちで悲鳴が上がっていた。軽装な

   武装しかしていない、イリアス・フィアナ領兵たち。突然の奇襲に、なすすべも

   なかった。あちこちで黒づくめの集団に、蹂躙されていく領兵、農民、商人

   たち。黒い服装の男たち。そう、黒制服士団だった。(この時の団長は、

   ガッシュ・ドールゴで、ドールレイの父親だった。)何よりも彼らはその異能の

   力、術で、地面に炎を、氷柱を、高圧電流を具現化させて、そういう力の

   ない、武力だけのフィアナ領兵たちは、次々に倒されていった。

   「ファルガー!ミノメ!何処だ?何処にいる!」ラース・アロエードは、大混乱

   の中、はぐれてしまった、2人の息子たちを、妻のマリーナとともに、捜し

   回っていた。その時、「おい。お前たち!何している?早く、避難しろ。

   ほとんどの農民や商人たちは、バラバラながら、逃げおおせているぞ。

   危ないから、さっさと行け。ここは我らの場。もうまもなく、敵が押し寄せる

   ぞ。さあ・・」そう擁護しようとした、若い領兵が、背中一面に大きな木の杭

   が、複数突き刺さって、その場に倒れた。「マリーナ!走れ!」妻を押し

   のけて、わざと前に出るアロエード。しかし、長くは持たなかった。木の杭の

   次に、金属製の周りが刃になっている円盤が、多数飛んできた。なすすべも

   なく、アロエードは全身をズタズタに切られ、その場に倒れて絶命した。

   最後に瞳の裏に、ファルガーと、ミノメの姿を、思い浮かべながら。マリーナ

   も泣きながら、必死で駆け出していた。ただ、見てはいなかったが、夫が

   間違いなく死んだことは、確信できた。ある意味、寂しさは一瞬だった。

   マリーナは、大刀の一太刀に、喉を切り裂かれて、声も出せずに、胸を

   みずからの血で染めて、後方に倒れて、息絶えたのだった。彼女を斬り

   殺したのは、妖剣・ラヴァーニ。この時、所持していたのは、まだ20代の

   若きササ・ユグドランだった。緑色の眼に、緑色の髪、褐色の肌。半月形の

   銀の造りの黒い兜に、黒い鎧。銀色のズボンに、黒色の先が尖った

   ショート・ブーツを履いている。ユグドランは後に、エム・シャルミ公女に

   奪われる羽目になる、この血を好む吸血の妖剣を、自在に操っていた。

   「つまらん。ただの女か。それにしても、血を吸えば吸うほど、切れ味が

   冴え渡る刀なんてのは、正に妖剣の名にふさわしい。ラヴァーニは伝説の

   吸血鬼女の名前。俺にはぴったりの相棒だな。しかし、物足らねえな。

   もっと、つぶしがいのある相手はいないのか。畜生め」と、まだまだ、暴れ

   足りない猛犬のような、狂気のユグドランが、今、ここにいたのだった。

              ((次回に続く。))   

プライドとプライド 改

2011年10月11日 21時02分45秒 | Weblog

 第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。(8)

        「驚かせて、済まんな。だが、残念ながら、事実だ。ここは安住の地

   ではない。地獄、ハベスの入り口といえる。お主には仮死状態の術は使え

   まい。ならば、自害するか。せめて、介錯ならさせてもらうが」ビビンデの

   言葉に、さらに驚く城ヶ月。「そんな覚悟はありません。最後の最後まで、

   生き延びる方法を諦めずに、模索していきたいです。敵がどんな奴かは、

   知りませんが、やられっぱなしは、性に合いません。やられたら、少しは

   やり返さないと・・」城ヶ月の言葉を遮るように、ビビンデの笑い声が、辺りに

   響いた。「いや、済まん。その強がりをわしは好きだぞ。何故か、トートを

   思い出す。あやつも、成長するにつれて、徐々にやせ我慢する、頑固者に

   なりおった。りっぱな頑固者に。ところで、お主の名前をまだ聞いていな

   かったが・・」城ヶ月が名乗って、自分の世界では、警察いや、治安を維持

   するための仕事をしていると、自己紹介すると、「なるほど」と、空中浮遊

   から、地面に降りて、その大柄の身体を折り曲げて、親しげな瞳で、城ヶ月

   を見下ろしながら、近い位置で、不思議な話をし始めた。ただ、そうしない

   と、周りの足元には、たくさんの仮死状態の身体が、横たわっていて、

   踏んづけかねなかったからだ。

    「敵襲!敵襲!」部下の突然の声に、ビビンデは我が耳を疑った。時は

   イリアス暦1038年、西暦1988年。今から23年前の真夏のことだった。

   イシアス王、アンディスの実弟、フィアナ公アドラスの善意で、フィアナ領内の

   稲刈りなどの重労働を終えたばかりの農民や、日頃、熱心に商売に励んで

   いる商人の苦労をねぎらうために、イリアスの北部地方で、避暑地の

   イーダレに、3年前から消えた戦渦のため、形ばかりの領兵を、護衛に

   引き連れて、泊り掛けの小旅行を行なっていた。その最中に、急に何者か

   が、襲撃してきたのだった。「おのれ。どこの者どもだ?問い詰めてくれる」

   と、まさか、何も起こるまいと、みずからの油断に、歯噛みする思いで、

   黒い毛並みの愛馬・フーレオにムチを入れながら、単騎で敵陣に侵入しよう

   としていた。「お待ち下さい!フィアナ親衛隊長様(アル・ビビンデのこと。)

   おひとりでは危のうございます。お待ち下さい!」そう、背後から声を掛けて

   きたのは、ビビンデの配下の1番隊、隊長のオーゼ・クレーレが、同じく単騎

   で、後を追いかけてきていた。「バカ者!誰が持ち場を離れていいと言った。

   戻れ!戻るんだ、クレーレ!」と、我が身を案じて、追いかけてきてくれた、

   クレーレの思いは嬉しかったが、可愛い部下を未知の相手と対峙させる

   危険だけは、どうしても避けたかったのだ。「いえ、戻りません。隊長は責任

   を感じて、おひとりで、敵陣に突っ込もうとされている。可愛がっていただ

   いた部下の1人としては、どうしてもお供させていただきまする」と、首を振る

   クレーレ。空色の長髪を緑のバンダナに包み。褐色の肌に、レモン色の瞳。

   男としてはやや小柄で、華奢な身体を、首から下は、アイボリー色の鎧に、

   黄色のズボン。ベージュ色の木靴を履いていて、愛馬はフーレオと兄弟馬の

   ジューナに乗っていた。(ともにとてつもなく速く走る駿馬で、それで追い

   つくことが出来たのだった。)「お前も言い出したら、てこでも動かん頑固者。

   仕方ない、ついて参れ。ただし、自分の身は、自分で守れよ」と、胸が熱く

   なり、涙が出そうになるのをこらえるように、フーレオを急がすビビンデ。

   その後を、おくれをとるまいと続くクレーレだった。その時、頭上から、2人、

   2頭を標的にするように、真夏の中、たくさんのとがった氷柱(つらら)が降り

   注いだ。「ローリング・ファイヤー・ディスク!」炎媒体師のクレーレが、

   咄嗟にジューナの背に立って、両手を広げて、円盤形の炎を空中に発生

   させて、それに回転を加えて、氷柱を瞬時に溶かし続けた。その隙を

   狙って、多くの影が前面からなだれ込んできた。その影は人間ではなく、

   大型のゴリラの集団だった。しかも、体格に似合わず、瞬敏な動きで、

   二手に分かれると、フーレオと、ジューナの2頭の大きな馬を、押し倒して

   しまっていた。地面に叩きつけられたビビンデと、クレーレ。1匹のゴリラが、

   すぐ近くの大岩を掴むと、それを持って、起き上がろうとした、クレーレの頭

   にぶつけた。凄い音がして、粉々になる岩。たまらず、額から大量の血を

   流して倒れるクレーレ。ビビンデに援護する間はなかった。みずからも、

   ゴリラたちに囲まれていたからだ。だが、何故だか、ゴリラたちは威嚇した

   ままで、ビビンデに対して、すぐには襲ってこようとはしなかったのだった。

               ((次回に続く。))

    

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2011年10月09日 21時54分38秒 | Weblog

 第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2.失われた時を求めて・・。(7)

         「一体、俺はどこに居るのか?」城ヶ月修(じょうがつき・おさむ)

   は徐々に覚醒した頭を振りながら、辺りを見渡してみる。警視庁捜査1課の

   班長の城ヶ月は、同じ班の辰神雄介(たつがみ・ゆうすけ)、柏木操(かしわ

   ぎ・みさお)を、捜査で指導、指揮するリーダーの立場にある。だが、自分

   自身が状況もわからずに、拉致監禁させられたみたいで、正に面目丸

   つぶれである。無理も無かった。ササ・ユグドランの部下のユニ・

   シュヴァールが、強力な遠隔操作の念動移動力で、城ヶ月をさらったの

   だった。今現在、世界中で知らず知らずの内に、数多くの人間が、突然、

   行方不明になっていることを、まだ、多くの人たちはまるで知らないでいた。

   「気がついたか。つかなければいいいものを」と、すぐ近くで、しわがれた声

   が聴こえてきた。ほとんど光が無く、それでも闇の中、何人もの気配が感じ

   られた。「どこの人間は知らないが、ここに捕らえられたのは、不運としか

   いいようがない。残念だろうが、あきらめろ。2度と生きて、明るいところには

   出られん」城ヶ月は足をゆっくりと動かして、手探りで移動した。足元は固い

   岩盤のような感じで、ひんやりとしていた。「あなたたちは誰ですか?そして、

   ここは何処ですか?教えて下さい」と。「どうやら、あんたは術は使えない

   みたいだな。しかも、ここら辺では見かけない顔立ちだ。この世界の人間

   ではないな。なら、じっとしておきなさい。動くとそれだけ、消耗が激しく

   なる。この場ですぐに死にたいのなら別だが・・」少し慣れてきた眼で、

   よく視ると、足元に多くの人間が、倒れて?いた。「心配するな。誰も死んで

   はおらん。ただ、それぞれが術で、みずからを仮死状態にしておるのじゃ。

   恥ずかしい話だが、皆が万に一つの救いの手を、待っておるのじゃよ。

   はかない希望だと、あんたは笑うかも知れんがのう」と、大柄だが、痩せ

   こけた老人の姿が、急に見えてきた。薄汚れた着物をただ、その骨と皮

   ばかりの身体に巻き付けているだけで、足も裸足のままだった。それよりも

   驚いたのは、その老人が、空中浮遊で、こちらに近付いて来ていること

   だった。でもそれはある意味、当たり前だった。なにしろ、辺りは仮死状態の

   人間がたくさん転がっていて、動いていたのは、小さなとかげのような生き物

   たちだった。「そいつらは、わしらの貴重な食料だ。嫌でも食べるんだな。

   他に食べる物なぞないぞ」と、説教じみたことを言う老人。実は、その昔は

   イリアスの豪の者と、名をはせた、アル・タイ・ビビンデのなれの果て

   だった。(ビビンデはフォーデの弟で、トートの叔父。トートの武芸と術師の

   師匠であった。)頭は若い時のままで、禿げ上がっていて、しわだらけの

   白い肌に、右目が青色で、左目が銀色。顎には伸び放題に、茶色の髭が

   生えていた。「驚かす心算は毛頭なかったが、わしはもう歩けないのじゃ。

   ほれ、この通り」と、ビビンデの両手、両足がとれて、地面に落ちたの

   だった。思わず、言葉を失う城ヶ月。「済まん、済まん。本当に驚かす心算は

   ないのじゃが、先に事情を説明しておくべきかと、思ったのじゃ。わしはもう

   かれこれ、ここに閉じ込められて、そうだな・・20年くらいか。もう寿命の

   尽きるのも、近いだろうが、もう一度、ほんの少しでいいから、外の世界を

   見てみたいものじゃ。イリアスの行く末を。フォーデあにいや、トートに

   会いたいものじゃ。王様や、お妃様にも。まあ、この通り、両手や両足が

   無い分、身体が軽いから、空中浮遊もさほど辛くは無いのじゃ。普段は

   わしも、寝ているからの」と、ビビンデは念動力で、両手、両足を元どおりに

   くっつけたのだった。「ただ、こいつらはもうだいぶ古くて、動かしにくいのが、

   難点だがな」「あの、何故、そんな身体になられたのですか?」と、やっと、

   声を出した城ヶ月。「あんたに辛いことだが、わしのこの身体は、無理やり

   切り取られたのじゃ。悪魔の男、ユグドランの奴に。いずれ、あんたの身体

   も、切り取られるかも知れん。あやつの気分しだいだろうがのう」憎しみに

   燃える、青色の右眼と、銀色の左眼。それ以上に、ビビンデの言葉に、

   背筋が凍るほどの戦慄を覚えた城ヶ月だった。((次回に続く。))

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2011年10月05日 21時13分22秒 | Weblog

 第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。(6)

        「なるほど。やはり、ユグドランのガキどもに、我がギガール隊(銀の

   大鷲隊)の副部隊長のフェイガンはやられたのか?」と、胸に銀色の大鷲の

   刺繍の入った長袖の青色の着物に、下は黒いズボンに、焦げ茶色の木の

   靴を履いた部下、リザ族(高体温族)のブルーノが、ギガール隊、部隊長の

   ケレト族(たて髪族)のナンディーラに報告をしていた。ここはギガール隊の

   本陣ともいえる、ギガール・ハベス宮殿。クトールの領地の南側、海に近い

   所の宮殿で、クトールの北側になるイリアス・オレオ王国とは一番離れて

   いて、今の最前線から遠いことが、少々不満なナンディーラだった。だが、

   その派手好きな性格は、格好、服装にも現れていた。副部隊長で小柄な

   フェイガンとは、正反対のがっちりした大柄な身体を、頭には赤い毛を中央

   に集めたモヒカン刈りのような髪型で、金属性で銀色に染められている兜を

   かぶっていて、額から少し赤い髪の毛が見えていた。褐色の肌に、紫色

   の目。顎にも赤い髭を生やしていた。そして、骨太、筋肉質の身体には、

   首から背中にかけて、銀色で裏地が金色のマント。赤いシャツの胸の

   真ん中に、銀色の大鷲の刺繍。下は腰に赤いベルトに、黒色の短パン。

   足元には銀色のショートブーツを履いていたのだった。いやでも目立つ

   デカさなのに、その派手さがより存在を際出させていた。おまけに口に

   大きな葉巻を吸ったままで、話を聞いていたのだ。「絶対とはいえませんが、

   日頃から、ユグドラン様や、そのお子様たちに、何かと言いがかりを、

   つけられていた節がある、フェイガン様。衝突されて、殺されたのは、状況

   からいって、まず間違いないかと」言いにくそうに頭を下げながら、説明した

   ブルーノ。聞き終わると、ナンディーラは葉巻を離して、大きく煙を吐くと、

   眼が大きく見開かれていて、まるで、憎い敵のように、ブルーノを睨み

   ながら、声を出した。「いまいましい親子だ。だが、ユグドランはともかく、3人

   の子供は、ユグドランみずからによって、殺されたのは、間違いないのない

   ことなんだな?」と。「はっ!わたくしの手の者から、そう報告を受けて

   おりまする。これも間違いないかと」「チッ。それが本当なら、詰まらんな。

   そのガキどもは、わしみずから葬ってやりたかったが。仕方が無い。だが、

   何かユグドランを追い詰めるいい手はないかのう?ブルーノ」「今すぐは無理

   かと。ただ・・」「ただ、なんだ?」「ガッシュ・ドールレイ様、エム・シャルミ

   公女様も、ユグドラン様を排除しようと、手を結ばれたご様子で。いずれ、

   ユグドラン様も、危うくなるのではと。これはわたくしの推測に過ぎませんが」

   それを聞いて、膝を打つナンディーラ。「それはいい。何者かに殺された

   フォーゼス大僧正。次に目障りなのがユグドラン。よし。わしらも手を貸そう。

   だが、その次はそうはいかん。ブルーノよ。ドールレイと、シャルミに、

   それぞれ、精鋭の者を監視につけよ。何とか、それぞれの弱みを見つけて、

   どっちにつけばよいか?早急に決めねば。わしらもうかうかしていたら、

   喰われるぞ。抜かりなく、見張らせてくれ。よし。もういいぞ。下がれ!」

   その言葉に、一礼して跳んで消えたブルーノ。ただ、その表情は冴えないで

   いた。祖父の代から、ケレト・クレラ家(ナンディーラの家系)に仕えている

   ブルーノだったが、最近徐々に、クトール内の権力闘争、身内の足の引っ

   張り合いに、心が沈んでしまうリザ・ブルーノ。妻のイユエラや一人息子の

   マルルも、最近、暗い表情を時々見せる、夫、父親を心配していた。

   ブルーノの家は武の家。諜報や調略で手柄を立てることに、少々嫌気が

   差してきているブルーノ。もちろん、勉学にも励んではきたが、幼い頃から、

   亡き父・マルケスと鍛えてきた武の力。優秀な頭脳だけ、ナンディーラに

   見込まれて、ギガールの諜報部隊の長に任命されたブルーノ。いずれは

   戦いの最前線で、武で功を上げたいと、常々願っていたが、このままでは、

   その願いも終生叶えられそうもない。みずからの心に、どうしょうもない

   澱みが、溜まってきているのを、自覚するブルーノ。クトールでは、絶対に

   禁止されているある行為に及ぼうと、決意を固めて、近々、密かに行なう

   心算だった。勝手に、主(あるじ)を変えることを。((次回に続く。))

プライドとプライド 改

2011年10月01日 20時38分53秒 | Weblog

 第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。(5)

           ユーコ族(調節眼族)のルペイジの年の離れた妹のサヴォーヌ

   が、両肩から先に付けられている、金属の2本の腕を、胸の前に出して、

   両方の5本の指を絡めて、一心不乱に祈っていた。兄、ルペイジや、愛しい

   グミ・カミュエル。住み込みで屋敷に働きに来てくれていた、下男やお手伝い

   さんや、近くに住む近隣の友の無事。イリアス国はむろん、世界の平和を

   願って、必死にマリウスに祈りを捧げていた。サヴォーヌは女性専用の

   薄暗い牢屋の中に、囚われの身になっていた。何か武器は所持していない

   かと、入る前に女性のクトール兵に調べられたが、服装はそのままで、牢に

   入れられたのだった。時を知るすべもなく、どれくらいたったか、時間が

   わからず、ただ、着ていた白色のブラウスや薄緑色のスカートが汚れて

   きて、数日は経過したのではと思われた。サヴォーヌは知るよしもなかった

   が、食事は1日1回、飲み水も1日3回で、トイレは牢の隅の地面の掘った

   ところでするみたいで、そこに糞尿が溜まっていた。サヴォーヌもさすが、

   我慢できないで、凄い悪臭の中、そこで用を足していた。精神的にきつ

   かったが、それ以上に、サヴォーヌは、体力を消耗していた。同じ牢屋の

   女たちのイジワルで、ここに入ってから、食べ物どころか、水さえも、一口も

   口に入っていなかったからだ。この牢屋の女たち全員にこづかれ、

   倒されて、サヴォーヌの分の食べ物や飲み水を、奪われてしまっていた

   からだ。だが、彼女たちを恨む気はさらさらなかった。見れば、全員長い間、

   この牢に閉じ込められているみたいで、その顔、身体に生気がなく、

   ひからびていて、全員が痩せこけていた。クトールのひどい仕打ちに、胸を

   痛めていたからだ。サヴォーヌは最早、死を覚悟していた。兄、ルペイジは

   必死になって、自分を助けにきてくれるだろう。しかし、イリアスを裏切り、

   今また、クトールを裏切ろうとしている兄は孤独の身。いくらなんでも、

   たった1人で敵地に来れば、いくら兄が剛の者でも、命がいくつあっても、

   足りはしない。イリアス神マリウスの教えでは、自殺は固く禁じられている。

   神から賜った肉体は、最後の最後まで生き切ってこそ、初めて、神に返上
  
   される資格があるとされていた。だからこそ、サヴォーヌは喜んで、断食し、

   水も絶ち、死を迎えようとしていた。生きていては兄の重荷でしかないと、

   よくわかっていたからだ。少しでも早く、自分の死が、兄の耳に届いて、

   一刻も早く、安全地帯に逃げ込んで欲しいと、願っていた。ただ、心残りは、

   幼い頃から、一緒によく遊び、いつしか、恋しい人になっていた、

   カミュエルに、最後にひと目会って、「あなた様を、ずっとお慕いして

   おりました。お幸せを祈っています」と、別れの挨拶をしたかった。

   それだけが残念なサヴォーヌだった。「ええ~い。気持ち悪い女だ。みんな、

   構うことはねえ。こんなしんきくさい女は、さっさと殺って(やって)

   しまおうぜ」1人の女の声が合図のように、周りの女たちも、「そうだ、そうだ」

   の大合唱で、堰を切ったように、その声にも、動かず、祈り続けるサヴォーヌ

   の周囲を、あっという間に取り囲んだのだった。今にも一斉に飛び掛ろう

   とした、その時、牢の奥の大きい黒い影が、むんずと立ち上がって、

   大声で怒鳴っていた。埃まみれの長いオレンジ色の髪、茶色の瞳。大柄

   ながら、美景の顔があちこち、切り傷だらけで、薄汚れた元は白色のサリー

   だったろう。それでなんとか、その骨と皮だけに近い裸体を隠していた。足は

   素足で、右足を引き摺って歩いている。「馬鹿野郎。鬱憤晴らしに、多少は

   かわいがってやれとは言ったが、誰が勝手に、殺していいと言った。俺の

   命令が聞けない奴は、誰でも容赦はしねえ。前に出ろ。掛かってきな。

   まずは俺を殺ってからにしな。どうだ?」と。その凄い迫力の声に、圧倒

   されてか、誰もが、動きを止め、しばらくしてから、サヴォーヌを睨みつけ

   ながらも、後ずさりを全員がした。といっても、狭い牢屋の中、30人近くいる

   女たちは、奥の壁際に、詰めて座っただけだったが。「俺達は高貴な女性と

   して、又、国を愛する者として、突如数年で生まれた新生クトール国家を

   認めない、元のオクルス国こそが、我が国、我が故郷。その誇りを、皆は

   忘れたのか!」と、大声を続けるのは、クトール反体制派の女性リーダー、

   リザ・ヴェーダーその人だった。(それにしても、何故?彼女はその凄い力

   を、行使しないのか?そうすれば、こっちの方がヤバイのに・・。)不思議そう

   に、チラッ、チラッと、サヴォーヌの方を視る、ヴェーダーだった。

              ((次回に続く。))

プライドとプライド 改

2011年09月28日 23時53分35秒 | Weblog

 第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。(4)

       シャラ族(3つ目族)のヴァレントが投げ付けた細長の複数の手裏剣

   が、ゾルビ(動く死体)となった、12歳年上の兄、シャラ・ヴァルティンの

   身体に突き刺さったかのように見えた。が、そうではなかった。ギリギリ

   まで、手裏剣を引き付けたヴァルティンは、間一髪で、ショート・テレポートで

   かわして、ヴァレントの目の前に現れると、容赦ない凄い両腕の力で、

   ヴァレントの首の両側を掴んで、持ち上げて、締め上げた。体格差が

   大きく、まるで大人が子供を持ち上げているみたいだった。すぐに窒息死

   するかのように思えた。(あ、あにじゃ・・)遠のきそうな意識を振り絞って、

   ヴァレントは腹を決めた。兄者ではない、この眼の前の悪魔を滅すると。

   足のつま先に力を込めて、思いっきり、ヴァルティンの喉を、突くように

   蹴ったのだった。さすがのヴァルティンも、腕を離して、喉を押さえて、

   苦しがった。地面に叩きつけられたヴァレント。喉の痛みと、打ちつけた

   背中の激痛で、しばらくは動けそうもない。少し楽になったヴァルティン。

   額の金色の眼と、通常の黒い2つの眼を、怒りに燃えさせて、ヴァレントを

   視た。なんとか、反撃したかったが、まだ、身体が動かないヴァレント。

   ヴァルティンは大振りの剛刀・ハイベールを、腰の鞘から抜くと、大きく振り

   かぶった。(兄者の力で、ハイベールによって、串刺しにされれば、

   ひとたまりもない。)と、足元に落ちたままの愛用のムチ・ソーディアンを

   見ながら、死を意識した。その刹那、ソーディアンがまるで生き物のように、

   起き上がると、瞬く間にヴァルティンの全身に巻き付いて、最大値の電流

   が、流れたのだった。肉が焼ける、ひどい悪臭がしたが、(ゾルビになった

   兄者は、これくらいではくたばらない。何が起こったかは知らないが、死は

   免れえない。)と。ヴァレントの諦めの気持ちに、変わりはなかった。が、

   そうではなかった。凄い地響きを起こして、ヴァルティンは、その場に倒れた

   のだった。無残に、両腕、両足がちぎれて、地面に、動くための原動力の

   緑色の液体、エグリードが流れ出していた。ようやく、起き上がれた

   ヴァレント。生き延びた嬉しさよりも、愛しい兄を失ったという悲しみの方

   が、深かった。自然と涙が溢れ出していた。ゆっくりと、その亡骸に歩み

   寄ろうとした。その時、「触るな!気持ちはわかるが、エグリードは有害だ。

   触らない方がいいぞ。ヴァレント」その声に振り向いた。すると、さっき

   分かれたばかりの姫、エヴィータ(マリア)がそこに立っていた。右肩に大鷲

   姿のダヴィデを載せたままで。「姫様。危ないところ、命を助けていただき、

   誠にありがとうございます。ただ、お言葉を返すようですが、兄者を丁重に

   葬ってやりたいのです。「そうか。今はまだ戦いの最中。イリアス大寺院に、

   転送しておこう。今はこれで勘弁してくれ」そう言うと、エヴィータはみずから

   の念動移動力で、ヴァルティンの巨体を、消してしまっていた。イリアス

   大寺院の中央の館に、跳ばしたのだった。あまりのことに、驚愕して、

   ヴァレントは言葉を失っていた。(凄いお方だ。まだうら若い乙女で

   ありながら、これほどの術者になられたのか。これほどの者は、イリアスでも

   そうはおるまい。やはり、エヴィータ姫様は、我がイリアスの希望だ。)と。

   ヴァレントが驚くのも無理はない。顔、姿が少し変わったエヴィータ姫。

   矢吹マリアの1つの身体に、マリア、エヴィータ2つの魂がリンクしている。

   それが身体の総能力に、いい方向に作用して、能力が急激に上がっている

   などとは、知るよしもない、ヴァレントだった。「わらわは元の部隊に戻る。

   お前はどうする?ひどい負傷だな。跳ばしてやろうか。パロダムス診療院

   に」と、今はエヴィータの魂が覚醒しているマリアが言った。ヴァレントは

   ソーディアンを拾うと、すかさず答えた。「わたくしは、姫様の臣下でござい

   ます。お邪魔でなければ、お供させていただきます」と。にっこり笑うマリア。

   「無理はするな。なら、わらわとともに乗り物で行こう」そう言って、指笛を

   鳴らすと、大きな音とともに、一匹の頭の角がりっぱなガゼール(大鹿)が、

   森の奥から、駆け出してきて、マリアの前で止まったのだった。「皆と

   はぐれてしまっている。急いで追いかけるぞ。さあ、遠慮なくお前も、こいつ

   の背中に乗れ」かがみ込んだガゼールの背に飛び乗るマリアと、ダヴィデ。

   ヴァレントも、恐れ多いと思いながらも、そのすぐ後ろ側に乗ったのだった。

   「よし。行け、アクシオン!」マリアにそう呼ばれたガゼールは、疾風の

   ごとく、駆け出していた。まわりの景色を、超高速で、後ろに追いやり

   ながら。  ((次回に続く。))

プライドとプライド 改

2011年09月24日 11時30分42秒 | Weblog

第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて..。(3)

       ADの葛原修(くずはら・おさむ)は、渡辺久里人(わたなべ・くりと)

   (グミ・クピトのこの世界での名前)を、このマンションの1階の喫茶店

   「カルタゴ」に先導した。実は修は、鰐淵義光(わにぶち・よしみつ)から、

   素性のよくわからない、胡散臭い久里人をよく監視しておくようにと、厳命

   されていた。頭の方はともかく、元柔道部の副主将の修は、腕力だけは自信

   がある。急に逃げ出そうとするならば、力づくで、取り押さえる心算だった。

   1階に降りて、一旦、外に回ってすぐのところに扉があり、修が、内側に

   小さな鐘の付いたその木製の扉を開けた。カラン、カランと鐘が鳴って、

   「お先にどうぞ」と、修が久里人に先を促して、その後ろに自分も続いた。

   店内に入ると、初老のマスターと、若いウェイトレスが、「いらっしゃい

   ませ!」と、愛想のいい笑顔で出迎えてくれた。しかし、修は気がつか

   なかった。さりげなく、マスターとウェイトレスが、アイコンタクトを、久里人と

   取ったのを。2人は窓際の席に座って、修が、「俺、ホットを。渡辺君は?」

   「同じものでいいです」と、久里人。(小生意気なガキだな。)と、思いつつ、

   顔には出さないで、お盆に2つの水の入ったグラスと、おしぼりを持って、

   近付いてきたウェイトレス(茶色の長い髪を赤い紐で、1つに束ねて後ろに

   流していて、女性にしては大柄で、グラマラスな感じで、薄緑色のエプロン

   を、白い半袖シャツに、紺色のズボン、こげ茶色の革靴を履いている。)

   その大きな膨らみの胸あたりを、チラッと見て、悟られないように、咳払い

   してから、「ホット、2つ」と、注文した。ウェイトレスは元気よく、さっと

   振り向くと、痩せて、長身で薄い頭に白い口ひげ、長いあごひげを生やした、

   珍しい赤色の蝶ネクタイで、白い長袖のYシャツの袖をまくっていて、下は

   黒いスラックスに、黒の革靴を履いているマスターの方を向いて、大きな声

   で、復唱したのだった。

    操が寝ているベッドの下から、手が伸びてきて、すぐに床に落ちて、

   動かなくなった。(何故?俺もケルテーカも、ベッドの下に、トートさんが居る

   事に気がつかなかったのか?そうか。トートさん自身で、敵に悟られないよう

   にと、残された力で、シールドを張って、自身の存在を消していたんだな。

   まだ急げば、命を助けられるかも知れない。よし。)グミ・カミュエルは、

   どう動いていいか、わからない5人に、ベッドで変身していたマリアから、

   元の姿に戻った操を見ながら言った。「身体の大きさ、骨格がよく似ている、

   こちらの女刑事さんに、しばらくの間だけ、マリアさんに化けてもらっていま

   した。騙していて済みません。ただ、今は一刻の猶予もありません。こちらの

   男の人の命と、抜き取られた彼女の魂を、早急に取り返さないと危ないん

   です。そこで、ついでと言ったら、厚かましいのですが、今しばらくは、

   このまま、彼女をマリアさんとして、ここに寝かせて上げて欲しいのです。

   彼を連れ出したらすぐに戻りますから、お願いします。看護師長さん」と、

   真っ直ぐに陣内真弓(じんない・まゆみ)見つめるカミュエル。(この世界では

   江藤亨・えとうとおる)真弓は少しドギマギしながら、部下の側野友里可

   (かわの・ゆりか)の訊いた。「私はこの人を知らないけど、側野は知り合い

   よね?信用しても、大丈夫なの?」友里可ははっきりと答えた。「はい、

   大丈夫です。わたしの彼氏ですから」と。友里可の赤らめた顔を見て、真弓

   は決断した。「わたしたちの職場は、信頼しあうことが一番に大事なこと

   なの。そうでなければ、人の命は預かれないから。いいわ。今回だけは

   側野を信用して、あなたの申し出を受けましょう。ただし、長い時間は無理

   よ。わかった」と。「本当にありがとうございます。すぐに戻りますから」

   そう言うと、カミュエルは、じっとしたままのトートを抱えて、真弓、息子の大河

   (たいが)、友里可、辰神雄介(たつがみ・ゆうすけ)、マリノフ・矢吹・結子

   (やぶき・ゆいこ)たち、5人の目の前で、急に姿を消してしまっていた。

   カミュエルはトートともども、イリアスの世界に跳んだのだった。何も知らない

   5人はただ、唖然として、小さな叫び声を上げていた。あまりに驚愕なこと

   で、誰もしばらくは、その場を動けないでいたのだった。((次回に続く。))

   

プライドとプライド 改

2011年09月20日 22時51分28秒 | Weblog

 第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2 失われた時を求めて・・。(2)

         カミュエルの早口の言葉で、結子と、大河の動きが、一瞬で

   止まった。右手には黒皮の本、グラドークの儀書が。「汝らの魂よ。

   今こそ、汝自身の元に返れ!さすれば、永遠のやすらぎを得られよう」と。

   (なるほど、そいつが有名なグラドークの儀書による、言霊発動か。面白い。

   わたくしの偉大なる力と、どちらが上かな。)と、レドン・ケルテーカの挑戦

   的な声が。だが、しばらくすると、結子と、大河は全身に痙攣を起こすと、

   床に倒れてしまっていた。(中々やりまするな。まあいいでしょう。小手調べ

   はこれくらいにしておきましょう。ここには、エヴィータ姫様も、おられないよう

   ですし。しかし、お気の毒に。わたくしはみずからの身体で、術を発動でき

   ますが、あなた様は、その本が無くなれば、力を永遠に失ってしまわれる。

   いずれ、その本は頂くといたしましょう。それでは又の機会に。ご機嫌

   よう。)言葉使いは丁寧だったが、強力な邪悪な念は、凄まじいものが

   あった。深い闇が、急に開けて、光が現れたように、カミュエル、雄介、

   真弓、友里可の心にも現れつつあった、澱んだ気持ちが、晴れたの

   だった。頭をおさえたままの結子、大河も、起き上がってきていた。

   カミュエルの視線は、ベッドに移っていた。急いで、布団をはがした。

   そこには、意識を失ったままの操が、よこたわっていた。「しまった。彼女の

   魂を、ケルテーカに奪われてしまった。なんたる失態だ」と、唇を噛む

   カミュエル。その時、「カミュエル様。ご勇気がありますなら、近く来日する、

   レッド・ラビリンスに、ご自身で接触なされませ。そこに欲しい物がありま

   する」と、大河の口から、ケルテーカ?の伝言が伝えられた。次の瞬間、

   正気に戻った、結子と、大河は、辺りを見渡して、不思議そうな顔をするだけ

   だった。結子が、真弓に訊いてきた。「いつの間に、わたしたちは、病院に

   来たのでしょうか?それにあなた方は、どちら様ですか?」と。

    「何故?今まで隠れていたんだ。心配したぞ。小栗君」と、オーゼ・

   イシュットが変身した、若手人気俳優の小栗優(おぐり・ゆう)を気遣う

   ように、その左肩に、2,3度手を置いた小柄ながら、がっちりした男。

   彼は、日の本テレビのプロデューサー、鰐淵義光(わにぶち・よしみつ)

   だった。ここは都内のマンションの一室。渡辺久里人(わたなべ・くりと)

   (本当はグミ・クピトの変装である。)「久里人君。ありがとう。彼がハリウッド

   の映画の撮影中に、右腕、右肩に重傷を負って、極秘に帰国したことは

   聞いていたが、何処に潜伏したのか、ずっとわからなくて、困っていたん

   だよ。無事でなによりだ。もう、傷はいいのか?」「ご心配をおかけして

   済みません。この通り、もう、大丈夫です」「そうか。それはよかった。早速で

   悪いんだが、時間があまり無い。重大な企画の打ち合わせを、今すぐ

   したい。済まないが、少しだけ、席を外してくれないか。まだ、進行中の企画

   で、漏れたら困るんだ。済まん」と、一緒に来ていた、久里人と、ADの葛原

   修(くずはら・おさむ)に、振り向いて言った。「わかりました。じゃあ、僕達

   は、しばらくの間、表で待っています。そういえば、1階に喫茶店があり

   ましたね。なら、そこでコーヒーでも、飲んでのんびり待たさせてもらいます

   から」と、修に先導されて、久里人も一緒に、表に出た。2人の姿が消える

   と、義光の表情、声色が急に変わった。眼に憤怒の色が浮んでいる。

   「おい、どういう心算だ。お前をハリウッドに売り出すために、どれだけの金

   が、動いたと思っているんだ。馬鹿野郎!」と、拳を握り締めると、優の腹に

   数発ぶち込んだのだった。商売道具の美顔は、わざと避けていた。「少年院

   帰りの行く当ての無いガキのお前を、経歴も詐称して、ここまでにしたのは

   誰だ?俺と山縣(やまがた)だろうが。恩返しを忘れるな。優。それと・・」

   義光がもう一度、辺りを確認してから訊いた。「ブツはどうした?あれが無い

   と、俺も山縣も、ヤバイことになる。一体、どこにやったんだ?」と、問い

   詰めてくる義光。何の話か、まるでわからない、優に化けているイシュット。

   「あっ、アレだね。大丈夫だよ。ちゃんと、ある場所に保管してあるから」と、

   あわてて、口からでまかせを言ったが、それがマズかった。「ブツが心配だ。

   そこに今すぐ案内しろ」と、凄い剣幕で、イシュットの服の襟元を掴む義光

   だった。その眼が血走っていた。((次回に続く。))

   

プライドとプライド 改

2011年09月17日 11時37分42秒 | Weblog

 第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。(1)

        「そうか。まあ、王様を救いだせなかったのは、至極残念だが、

   それ以外は満点だな。よくやったよ。ジモン。ありがとう。シャルーダについて

   はアクリアに任せておいてくれ。後は頼むぞ。何か、問題が起こったら、

   すぐに報告してくれ。それじゃあ、頼む」そう言うと、グミ・カミュエル(江藤

   亨・えとうとおる)の1人言?は終わったみたいだった。固唾を呑んで、

   じっと、カミュエルの言動を視ていた2人、刑事の辰神雄介(たつがみ・

   ゆうすけ)と、この柴井田(しばいだ)病院の看護師の側野友里可(かわの・

   ゆりか)の方を振り向くと、「これで一応、こっちの方に集中できる。さあ、

   部屋に急ごう」そう促すカミュエル。(グラドークの儀書の中の言葉、「汝が

   真剣に祈りさえすれば、成りたい者にかならず成れる。」「見知らぬ土地

   では、そこが生まれた場所と思い定めよ。」の文句を唱えて、カミュエルの

   髪の毛も、黄金色から、黒色に。瞳の色も、青色から黒色に。肌の色も白い

   ものから、やや、褐色のアジア人らしい色に、変化していた。しかし、その

   変身も、わずか3時間くらいしか持たなくて、それを過ぎると、元の姿に

   戻ってしまう。グミ家だけに、代々に受け継がれた、摩訶不思議な本、

   グラドークの儀書。もちろん、クトールでは、イリアスの力の源泉といわれる、

   王冠とともに、この儀書も狙っていたが。2人は、人間離れした怪物?の

   ような、カミュエルの後に、続いたのだった。恐れもあったが、悪人とは

   到底思えず、怖い物見たさの好奇心も、おおいにあったからだ。

     「元気だった?マリアちゃん。ちょっと、寄り道していて、来るのが遅く

   なちゃって、御免なさいね。その代わり、あなたのお友達の陣内大河

   (じんない・たいが)さんにも、来てもらったのよ。さあ、顔を見せて。マリア

   ちゃん」と、布団を被ったままのマリア(実は操の変身)の耳元で、ささやく

   ように優しくつぶやく叔母のマリノフ・矢吹・結子(やぶき・ゆいこ)。これ以上

   は時間を稼げないと、観念した操は、恐る恐る布団を下げて、ゆっくりと顔を

   上げて、2人を視たのだった。不自然ではない笑顔を作りながら。だが、

   結子も、大河も、その顔を、醜くゆがめていた。「おや?お前は何者だ?

   マリアちゃんではないね」「本当だ。誰だお前は?」と言いながら、大河が

   どこから持ってきたのか?手鏡を取り出して、操の顔を映していた。

   そこには、ハーフで白人顔のマリアではなく、正に日本人顔の柏木操

   (かしわぎ・みさお)の姿が、映っていた。(えっ?大変。元に戻ってしまって

   いる。あの人(カミュエル)の魔法が、解けてしまったんだわ。でも、早過ぎ

   ないかな?確か、7日間くらいは・・)操はそこで思考を、停止させられて

   しまっていた。結子が、小柄な女性とは、信じられない程の凄い力で、操の

   顎を、右手1本で掴んだままで、持ち上げようとしたからだった。操はあまり

   の激痛に、叫び声も上げられず、意識が飛びそうになりかけた。その時、

   「何をしているんですか?」と、物音を聞きつけてか、看護師長の陣内真弓

   (じんない・まゆみ)が1人で、入って来たのだった。「なんだ、バアア。

   残念だな。要らない所にしゃしゃり出て来て。その口をきけないようにして

   やる」「大河!なんていい草。親に向かって」と、言いながらも、その邪悪に

   満ちた、爛々と燃えている瞳に、真弓は身震いを覚えながら、呟いていた。

   「どうしたの?大河。口答えなど、したことのないあなたが。まるで別人

   みたい・・」と。大河が俊敏な動きで、まるで獲物を狙う獣のように、実の母親

   の真弓に、襲いかかろうとした。その刹那、一閃したレイピア(細身の剣)。

   しかし、大河もしなやかに身を翻して、間一髪、かわしていた。剣の主は

   もちろん、カミュエルだった。「人の心を操るは、レドン族(頭部外殻族)の

   得意技。だが、マルドックは、シャルミ公女に処刑されたときいたが。誰だ?

   お前は?」と。(これはこれは、イリアスの重鎮のグミ・カミュエル司祭様。

   ご高名はよく存じておりまする。申し遅れました。わたくしは、ご明察の通り、

   レドン・ケルテーカ。今はレドン族の長(おさ)を、務めさせていただいて

   おりまする。以後、お見知りおきを。)と。言葉使いは丁寧ながら、その邪悪

   な念が、部屋中に満ちていて、カミュエルも、雄介も、友里可も、気分が悪く

   なっていた。だが、視線は外せない。操の顎から、ようやく、手を離した

   結子と、大河が、獣のような唸り声を上げて、まずは2人同時で、

   カミュエルに、襲いかかろうとしていたからだった。((次回に続く。))

   

    

   

プライドとプライド 改

2011年09月13日 23時22分24秒 | Weblog

 第5章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史。王、王妃の行方は?(20)

    (終わり)

         トリケトーラの大きく開いた腹の傷は、いつの間にか、塞がって

   いて、赤い血もすでに固まり始めていた。「悪いな。身体が若いので、細胞

   分裂、代謝がすごくて、傷の治りも早いのだ」と、うすら笑いのマロ・

   トリケトーラ。そして、「まあ、ファルガーが思ったよりも、弱っちいので、

   不完全燃焼だから、俺も相手してやるぜ」と、ガッシュ・ミッシングも、余裕の

   ニヤけた笑いで、グミ・ヤッフェを視た。だが、ヤッフェの方も、余裕の表情

   に変わりはなかった。「フン。いいねえ、怖い知らずは。ガキよ。絶望しな」

   と、トリケトーラは、巨体をものともしない、ハイスピードで、そのとげだらけの

   身体で、遠慮なく、ヤッフェに体当たりしようとした。ヤッフェは又、2本の

   短剣、グラディウスを両手で1本ずつ持って、2人に投げつけた。「ばかめ。

   同じ手が、2度通じるものか。やはり、ガキだな」「まさにな」と、トリケトーラ

   と、ミッシング。だが、そうではなかった。2本のグラディウスは今度は巨大化

   はしないで、2人は難なく、それぞれ弾き飛ばしていた。実はその一瞬の

   隙が、狙い目だった。ヤッフェは続けて、黒皮のバンドを外して、

   トリケトーラの足元に投げつけていた。足にバンドが絡み付いて、身体が

   ぐらつくトリケトーラ。安定を保とうと前かがみになったその両肩に、ヤッフェ

   が両足を掛けて、宙高く飛んで、両手をかざした。すると、不思議にも、

   弾き飛ばされた筈の2本のグラディウスが、その両手に戻ってきた。そこに

   飛んできた、ミッシングの鎖。だが、空中で身体を錐揉み状に、身体を

   横回転させて、鎖をかわすと、そのまま、前回転して、ミッシングの背後に、

   着地すると、少し長めになった2本のグラディウスで、X字形にミッシングの

   背中、そして、シッポ、右腕を切り裂いたのだった。背中に傷。それから、

   シッポと、超合金の右腕は、斬り離されてしまっていた。激痛に倒れる

   ミッシング。その時、バンドを外してやっと起き上がったトリケトーラ。

   ヤッフェは、長めのグラディウスを、交差させると、「エレクト・ボール・

   ランニング!」交差させた所で、高圧の電気の球を発生させて、2本の剣を

   左右に分けながら、振り下ろしたのだった。その勢いで、電気ボールは、

   トリケトーラの全身を包み込んで、感電して、その場に倒れ込んだ。2人が

   完全に失神したのを、今度はしばらく視て、確信してから、バンドを拾って、

   腰に巻き直し、2本のグラディウスを、元の大きさにもどして、それぞれの

   鞘に入れてから、腰に差し戻した。そうしておいてから、ファルガーを

   抱き起こしたヤッフェ。「済まん。ヤッフェ。だが、俺なんかよりも、王様

   を・・」そう言って、又、気を失うファルガー。ファルガーを背負って歩き始めた

   ヤッフェ。そこに急に現れた影。「誰だ?」と、警戒するヤッフェ。無理も

   なかった。所詮はまだ10歳の子供。さっきの戦闘で、半分以上の体力
   
   を、使ってしまっていたからだ。よく視ると、兄、カミュエルの配下で、

   イマージュ所属のアル・ジモンだった。短く刈り上げた銀色の髪に、アル族

   (長眉族)特有の20センチはある左右の蒼い眼の上、両側の長い銀色の

   眉。小柄ながら、がっちりとした身体。その首から下に、薄紫色の着物と、

   白い腰帯。その腰帯に、物干し竿と揶揄させる長めの剣、ロックスペアを

   差していた。足元にはベージュ色の軽量の木の靴を履いて、スピードを重視

   していた。「なんだ。ジモンか。驚ろかすなよ」と、ホッとするヤッフェ。実は

   ジモンは、ヤッフェの武術の師匠であった。「本来なら、わたくしがファルガー

   を救い出すべきところを、代わりにしていただいて、ありがとうございます」

   と、頭を下げるジモン。「いや、たいしたことはないよ。それより、王様は?」

   「残念ながら、王、アンディス様はすでに敵によって、素早く移動させられた

   みたいで、もう、このルルイエ牢獄の中、どこにも居ない模様です」と、言葉

   に悔しさをにじませるジモン。「ですから、ここは一旦、引き上げましょう。

   しかしながら、王妃、エウロヴァ様だけは、生きて救出できたのですから。

   敵どもが、ここに目指して、終結しつつあります。凄い数です。だから・・」

   「そうみたいだな。なら、頼むジモン」体力が残り少ないヤッフェは、ジモンの

   念動移動力で、ファルガーとともに、跳んで消えたのだった。ミッシングと、

   トリケトーラの2人と、アル・スパイサーら4人が倒れていて、おまけに、アル・

   フォーゼスの無残な死体が転がっている床の調理場の部屋に、ドカドカと、

   大勢のクトール兵が、入って来たのだった。

          ((この章、終わり。以下、次章に続く。))

プライドとプライド 改

2011年09月10日 22時12分11秒 | Weblog

   第5章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史。王、王妃の行方は?(19)

        「誰だ?このクソガキ。5秒だけ待ってやるから、さっさと消えな。

   今回だけは見逃してやる。さっさと行け」と、手でおいやろうとする、

   ガッシュ・ミッシング。だが、マロ・トリケトーラは違った。「フン、お前はいい

   だろうが、俺様は詰まらん。退屈だ。坊主よ。いいぜ。俺様が遊んでやる」

   と、大層な口をきいてきた少年の全身をなめるように視ながら、ゆっくりと

   近付き始めたのだった。黄金色の短髪に、まだ幼さが残る顔で、白い肌に

   グレイの瞳。その小柄な身体に、白いマント、イリアスの民族衣装の虹色の

   マフラーのデュパング。その下に薄い赤色の半袖シャツに、茶色の半

   ズボン。足元にはこれまた、イリアス特産の水牛・ミノタロスの皮のサンダル

   を履いていた。腰の黒色の皮バンドには、グラディウスという片手用の短剣

   を2本差していた。「まあ、遊んでやれ。トリケトーラ。俺はファルガーの

   とどめを刺しておく」と、少年に背を向けようとした。すると、「だから、言った

   ろう。2人がかりで掛かってこいって」ミッシングの顔色が変わった。「クソ

   ガキが。おい、そこまで言うなら、望みを叶えてやろう。いいな、トリケトーラ

   よ」「詰まらんがいいぜ。大人の怖さをとくと教えてやろう。まあ、せめて、

   素手で相手してやろうぜ。全力でするのは、あまりに大人気ないからな」と、

   トリケトーラ。と言っても、その鍛え上げられた大きな拳で、1発殴られても、

   致命傷になりかねないほどだ。一方、ミッシングは、「俺は手加減なんて、

   面倒くさいことは御免だ。クソ生意気な奴は、子供だろうと、ブチ殺す」と、

   左手のひらの穴から、鎖が飛び出していた。少年を絡めとるために。

   少年は、唯一の武器、2本の短剣のグラディウスを、抜いて両手で1本

   ずつ、2人に向かって投げつけた。「そんな物で俺の攻撃が防げるものか。

   やはり、ガキだな」と、ミッシング。トリケトーラも苦笑しただけで、2人とも、

   グラディウスを弾こうとした。その瞬間、信じられないことが起こった。急に

   グラディウスが巨大化したのだった。1本はトリケトーラの腹を貫いた。もう、

   1本は、鎖をからみ取っていた。その隙に、少年は宙を飛んで、前転して、

   ミッシングの頭上に来ると、右足で、頭にかかと落としをくらわせていた。

   鈍い音がして、倒れるミッシング。少年が手をかざすと、2本のグラディウス

   は、元の大きさに戻って、生き物のように、少年の手に返ってきた。2本を

   それぞれ鞘に戻してから、2人の男が動かなくなったのを確認してから、

   動かないままのラース・ファルガーのそばに寄った。「大丈夫?ファルガー

   さん。起きて下さい」と、軽くその身体を揺するが、動く気配さえも無い。

   「おいおい、まだ、終わっていないぞ。ガキ」「そうだ。少し手加減してやろうと

   思ったが、面白い。存分にやってやる。ところで、最後に名前くらいは聞いて

   おいてやろう。ガキめ。名乗りな」と、いつの間にか、2人は起き上がって

   来ていた。涼しい顔をして。「いいだろう。わたしはグミ・ヤッフェ。グミ・

   カミュエルの弟だ。こっちこそ、手加減しないぞ」と、爛々と燃えるグレイの

   瞳。少年はその名の通り、イリアスの国教のマリウス教の司祭であり、

   イリアスの軍事、諜報裏部隊、イマージュの総帥・カミュエルの末の弟の

   ヤッフェ10歳だった。

     (何?ヤッフェの奴が・・。)遠隔テレパシーで、報告を受けたカミュエル

   は、驚きはしたが、舌打ちしながらも、(うかつだった。が、あいつなら、

   やりかねん。)と、むしろ、そこまで考えていなかった。気持ちは優しいが、

   少々手荒な暴れん坊のヤッフェの動きを読めなかった自分を恥もした。

   が、どちらにしても、猶予は無い。(あれの腕は、身びいきではなく、中々の

   ものだ。ギリギリまで、見ていてくれ。こっちも手が離せない。頼むぞ。

   ジモン。)と、部下に弟を任せて、雄介と友里可の方に、振り返った

   カミュエル。その蒼い瞳で2人を視た。「済まん。今、遠隔テレパシーで、

   部下の報告を受けていた。さあ、2階に行こう。あの人達にも、事情を説明

   して、協力を願おう。マリノフ・矢吹・結子さんと、陣内大河君に」カミュエル

   の言葉に、2人は衝撃を受けて、顔を見合わせたのだった。まるで、人では

   ない。神か悪魔のしわざにも等しい、恐ろしい能力であるといえる。2人も、

   自分達のことを、カミュエルに、すべて知られているのではないか?と、

   身震いする思いが、してきたのだった。((次回に続く。))

   

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2011年09月07日 23時45分04秒 | Weblog

     このたびはわたくしのブログの操作ミスで、皆様にご迷惑をお掛けして、

     誠に申し訳ございませんでした。3重投稿の上に、最後の3つ目は、

     文字が乱れたままの掲載になりまして、本当に済みませんでした。

     2度とこのようなことが起きないように、充分に配慮いたしますので、

     何とぞ、ご容赦下さいませ。それでは、第5章の18の再掲載を

     お楽しみ下さいませ。


   第5章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史。王、王妃の行方は?(18)
       
                           (再掲載です。)

            しかし、グミ族(黄金毛族)のカミュエルの方も、まんざら

   ではなかった。師匠であり、実の父親でもある、グミ・キュエールの同じ弟子

   で、親友でもあった、ユーコ族(調節眼族)のルペイジの妹のユーコ・

   サヴォーヌのことを、密かに想っていたが、キュエールによる、特訓のため

   に、ルペイジの左眼失明事件が発生して、そのせいで、ルペイジと絶縁状態

   になり、むろん、サヴォーヌとも会えなくなっていた。(その直後に、なんと、

   サヴォーヌがクトールの襲撃に会い、間一髪、兄、ルペイジによって、

   なんとか命は救われたが、敵のせいで、優れたヒーリング能力を持つ両腕

   が、切断されてしまい、危うく、死にかけたのだった。が、その事実を、残念

   ながら、カミュエルは知るよしもなかったのだった。)もちろん、サヴォーヌ

   と、友里可は見た目はまるで似ていないが、何故か、サヴォーヌの面影を、

   友里可の中に見る思いのカミュエルだった。そして、つい、出来上がった

   ばかりの偽造の名刺、江藤亨(えとう・とおる)という偽名入りで。おまけに

   電話番号無し、住所無しで、ソール企画という偽の社名と、メールアドレス

   だけが記載してあるだけの名刺を、手渡したのだった。「しがない、フリーの

   記者だけど、何か困ったことがあったら、いつでも、このアドレスにメールして

   くれ」と、言い残して、友里可の前から消えたのだった。彼女からすれば、

   得体の知れない妖しい奴と不信がられて、自分になぞ、絶対に連絡をしては

   こないだろうと、確信しながら。だが、数日後、友里可の方から、連絡の

   メールが届いたのだった。「わたし、今日は仕事休みなんです。もし、

   良かったら、どこかでお茶でも飲みませんか?まだ、お礼もしていませんし。

   連絡をお待ちしています」と。この世界で、潜伏するために、彼女を利用

   出来ると、無理に言い聞かせながら。内心では、とても喜んだカミュエル

   だった。やがて、友里可と、男女の仲になるのも、自然の流れだった。しかも

   何度も会い、そのたびに友里可を抱いたカミュエル。無理もなかった。

   マリウス教、教会本部の司祭と、イリアスの裏部隊、イマージュの総帥の

   2重生活。責任、任務の重さ、そして、あまりに多忙な日々が、知らず知らず

   の内に、カミュエルの心を、蝕んでいた。そのアンバランスを治してくれた、

   オアシスが、側野友里可(かわの・ゆりか)だったといえる。が、わかって

   いた。もう、終わりにしないといけないことを。だから、カミュエルはあえて、

   そのひとときの幸せを、葬り去る決意をしたのだった。刻々と移り変わる、

   緊迫した情勢の中。何も知らずに、ほとんど、無防備な彼女、友里可。

   これ以上の係わり合いは、友里可の命さえ、危険にさらしてしまう。(事実、

   カミュエルと出会ってしまったために、この後、黒服士団、団長のガッシュ族

   (鉄犬歯族)のドールレイのせいで、狂死ウィルスに感染してしまい、危なく、

   死にかけたのだから。)だからこそ、友里可が、この世界の住人だからという

   、表向きの理由で、協力をお願いするというよりは、むしろ、あまりの怖い

   事実に、恐れられて、煙たがられて、自分と距離を取るように、なることを

   祈って、今起きていることのある程度、話せる範囲内で、話そうと決めた

   カミュエルだった。辛い決断ではあったが、その苦しい胸の内は、微塵も

   見せなかった。カミュエルは我に返ると、友里可と雄介に言った。「行こう。

   2階の矢吹マリア、いや、柏木操の病室に。トートの匿われている病室に」

   そう言われて、友里可、雄介の2人の間で、緊張が走った。凄い衝撃

   だった。(この人はすべて、お見通しだ。この場にいなくても。一体何故?)

   と、空恐ろしささえ覚える、2人だった。

     「さてと、いい加減終わりにするか」「そうだな。さて、どっちがとどめを

   刺すかな?俺か。お前か」と、倒れたままで、動かなくなっているラース族

   (透明化族)のファルガーを視て、相談する、ガッシュ・ミッシングと、

   マロ族(3本角族)のトリケトーラ。「最後まで俺にやらせてくれ。俺の

   獲物だ」と、主張するミッシング。その時、「お前らの相手は、このわたしだ」

   と、背後から、大きな声が聴こえてきたのだった。振り返るミッシングと、

   トリケトーラが視たものは、小柄な影だった。((次回に続く。))

  

プライドとプライド 改

2011年09月06日 21時45分23秒 | Weblog

  

    第5章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史。王、王妃の行方は?(18)        

   しかし、グミ族(黄金毛族)のカミュエルの方もまんざらではなかった。    師匠であり、実の父親でもある、グミ・キュエールの同じ弟子で、親友でも    あった、ユーコ族(調節眼族)のルペイジの妹のユーコ・サヴォーヌを、    密かに想っていたが、キュエールによる、ルペイジの左眼失明事件のため    に、もちろん、絶縁状態になり、サヴォーヌとも会えなくなっていた。(その    直後に、サヴォーヌがクトールの襲撃に会い、間一髪、ルペイジによって、    命は救われたが、両腕を切断されて、危うく死にかけたことは、知りもしな    かったが。)もちろん、サヴォーヌと、友里可は見た目は全然似ていないが、    何故か、サヴォーヌの面影を、友里可の中に見る思いのカミュエルだった。    そして、つい、出来上がったばかりの偽造の名刺、江藤亨という偽名入り    で、おまけに電話番号無し、住所なし、偽名のソール企画の社名と、メール    アドレスだけが、記載してあるのを渡しながら、「しがない、フリーの記者    だけど、何か困ったことがあったら、このアドレスにメールして」と、言い    残して、友里可の前から消えたのだった。彼女からすれば、得体の知れない    自分になぞ、連絡はくれないだろうと、確信しながら。だが、数日後、彼女の    方から連絡のメールが、届いたのだった。「わたし、今日は仕事休みです。    もし、良かったら、どこかでお茶でも、飲みませんか?」と。この世界に潜伏    するために、彼女を利用できると、言い聞かせながら、内心では嬉しかった    カミュエルだった。彼女を抱くのに、あまり時間はかからなかった。しかも    何度も。過酷な任務の心の支えだったといえた。が、カミュエルはその幸せ    を、あえて、自分から葬り去る決意をしたのだった。あまりに緊迫した情勢    の中、ほとんど、無防備な彼女、友里可。(1度は、何も知らずに狂死    ウィルスに感染させられて、危うく死にかけたのだ。)だから、友里可の    協力いうよりは、むしろ、嫌われて、遠ざけるつもりで、正体を明かしたの    だった。