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プライドとプライド 

マリア達、普通の心の者たちと、
クトール軍団達、よこしまな心にとらわれし者たちとの地球を含めての空間争奪戦だ!!

プライドとプライド 改

2013年06月06日 07時57分35秒 | Weblog

   ((残念なお知らせ。))5月中旬から体調が不安定で、精神的にも、

      肉体的にもきつい状態ですので、断腸の思いながら、一時、ブログを

    閉鎖させていただきます。本当に済みません。又、快方に向かった時は、

    再開したいと思いますので、その時はよろしくお願いいたします。ご迷惑

    をおかけしてごめんなさい。治療に専念して、1日も早く、復帰できるように

    頑張りますので、お待ち下さい。それでは又。その時まで。皆さんも、

    これからは暑い季節ですので、お身体に気をつけて下さいね。ではでは。

    

プライドとプライド 改

2013年04月27日 22時38分53秒 | Weblog

      第9章 新たなる脅威。それでも前を向いて進め!(4)

         マリアは異変を感じて、別れたばかりのセゾン達の安否はもちろん、

   死んでしまっている、マルルの両親、父親、リザ族(高体温族)のブルーノと、

   母親イユエラの遺体の行方も心配だった。だから、まだ疲れの取れていない

   身体に、ムチを打つような覚悟で、さっきの場所へと跳んだのだった。

   生死ギリギリの危険な所だと承知の上で。マリアの後を追って、銀色の毛の

   愛馬・アヌエールの背中に乗って駆け出したのは、女ながら、元?クトール・

   アンティーヌ隊の副隊長ヘミュ族(変化髪族)のルチリアであり、その後ろ

   からは元同隊、第1班長のマロ族(白色角族)のセプテムが、その巨体を

   大きく揺らしながら、吹き出る汗もお構いなしで、徒歩で精一杯走っていた。

   その頭の中には、会ったばかりのマリアの顔が。何故か、生き別れたままの

   妹、ユジャーヌの面影を重ねて思い浮かべていた。だから、マリアの生死が、

   ユジャーヌの運命を握っているかのように、思えてならなかったのだ。(俺が

   行くまで、生き延びていてくれ。姫様!)と、心の中で、激しく叫んでいた

   のだった。

      パロダムス診療院本部の中。傷ついて収容されていたラース族(透明化

   族)のファルガー。男性専用室の中で、その長く伸びた銀色の髪にひげ。紫色

   の眼で、薄緑色の着物を着せられていた。広い木の板の上、その隣に座って

   いる同じく収容されていて、同じ着物を着た義弟のヨーグ族(両性子族)の

   ミノメを視ながら、呟いた。「ミノメ。ここはもう危ないみたいだな。これ以上

   は迷惑を掛けられまい。ここを出よう。どうだ?」と。白い髪に白い肌。青い瞳

   のミノメに問い掛けたのだった。(彼は雌雄同体で、青い眼の時は男性。赤い

   眼の時には、女性の身体になっているが、本人の強い希望で、兄、ファルガー

   と同室に居たのだ。)「そうですね。確かにここに居ては危ないし。何より

   我々はここでは足手まといですからね。」と答えたのだった。言葉を続ける

   ミノメ。「それにしても、昨日まで一緒に居た、トートさんは何処に行かれた

   のでしょうね。あの容態では心配です」と。だが、ファルガーは知っていた。

   昨夜遅くに、急に起き出して、この部屋を出ようとするトートを呼び止めた

   ファルガーは、その表情にある意志を感じた。決死の覚悟を。「短い間では

   あったが、世話になったファルガー殿。弟殿と末永く仲良くな。わしのことは

   このまま見逃してくれ。これがこの国を救う、わしができうる最後のご奉公

   なのだ。黙って行かせてくれ。頼む」と。この大部屋の中。弟ミノメをはじめ、

   他の男たちは誰もが熟睡しているようであった。ファルガーは深くお辞儀

   をして、出て行くトートを見送ったのだった。「今は騒然として、ここには、

   誰の眼も行き届いていない。出て行くなら、今が好機だ。行くぞミノメ」と、

   急に立ち上がって、ミノメの手を引っ張るファルガー。戸惑いと未練がある

   ミノメだった。そして、その未練とは、かいがいしく働き、ここにも見に来て

   くれる看護係の女の子、ガッシュ族(鉄犬歯族)のエルメーターのことだった。

   出会ってすぐに2人とも、心に密かな恋心が芽生えていたのだった。

   オレンジ色の髪の毛で、黒い瞳に褐色の肌。すらりとした身体に、薄桃色の

   上下の服を着ていたエルメーター。女性ながら、身長175センチくらいの

   長身のエルメーターと、160センチに満たない小柄なミノメ。見た目は正に

   男女逆転だったが、2人にはどうでもいいことだった。エルメーターは母親の

   セーナとともに、クトールから、命からがら逃げて来ていた。夫であり、父親で

   ある、ガッシュ・ハーケンは、兄のゲルケンともども、クトールの黒制服士団

   の先の団長、ガッシュ・ドールゴと、その息子で、今の団長のドールレイの

   2代に仕えていた。イリアスの裏部隊・イマージュの先の総帥・グミ族

   (黄金毛族)のキュエールの命(めい)で、若い内からクトールに潜伏していた

   のだ。イリアスのスパイだったが、手違いで、その魂を、ゴリラの身体に憑依

   させられたゲルケン、ハーケンの兄弟。2人は最近、非業の死を遂げた

   のだったが、セーナも、エルメーターも、肉親がそんなことになっている

   とは、夢にも知るよしがなかった。ファルガーはミノメの気持ちを知っては

   いたが、あえて黙殺しようとしていた。何故なら、彼女、エルメーターは

   申し分のない娘ではあったが、ファルガーの長年培ってきた感性が、危険な

   信号を、脳内に送って来ていた。(この娘は危険だ!)と。それにファルガー

   は焦っていた。自分の命が、残り少ないことを、感知していたからだった。

     ((いつもお待たせして済みません。まだまだ、精神的に不安定で、

        心配掛けてごめんなさい。なるべく、次は早く出来るように

        頑張りたいです。いつも、出来なくて済みません。それでは又。

         次回に続く。 ))

       

プライドとプライド 改

2013年04月13日 23時37分42秒 | Weblog

       第9章 新たなる脅威。それでも、前を向いて進め!(3)

          イリアスの裏部隊・イマージュの2代目総帥、グミ族(黄金毛族)

   のカミュエル。その直属の部下・オーゼ族(細胞変装族)のアクリア。彼女が、

   カミュエルを探しに来て、正に見つけた息を引き取った瞬間のイリアスの

   英雄、アル族(長眉族)のジャンテ・トートの身体。彼が最後の力を振り

   絞って、放出したテレパシーを、アクリアも、間一髪の差で、受け取ったの

   だった。それは、イリアスの紋章とされている、ツインドラゴン(2つの長い

   首がついている、翼も生えている竜)の映像が、アクリアの脳内に映し出されて

   いた。その昔にも、クトールの前に現れた、アクロイド(超人)連合軍に、

   絶滅させられそうになった時、現れた神獣・ツインドラゴン、エリアーラが、

   イリアスの守護神、マリウスの命で、祖国の存亡の危機を救いに現れて、

   アクロイド連合軍を蹴散らして、イリアスの平和が戻ったと伝えられていて、

   アクリアももちろん、幼い頃に、その伝記物語を、長老たちから、何度も

   聞かされていて、身分的にはあまり高くないアクリアでさえも、そらんじて

   語れる程であった。物語の最後に、平和が戻ったイリアスを見届けてから、

   強い怒りのためか、肌が赤褐色で出現したツインドラゴン・エリアーラは、

   心が穏やかになったかのように、その肌の色を、透き通るような白色に

   変えて、イリアスの国境を越えた遠い北の山、氷に覆われた山脈の中へと

   消えていったのだった。そして、氷の塊りの中に入って、静かに悠久の眠りに

   ついていったのだ。しかし、不老不死のエリアーラは死んだわけではない。

   平和な時には、お役御免で、その間、休息のために、永い冬眠?についた

   だけだった。又、イリアス・オレオ王国が、危機に瀕した時は、エリアーラは

   何度でも氷の中から、甦ってくるが、マリウスは全世界の神だから、イリアス

   ためだけでは動けない時もある。だから、そういう時は、選ばれた勇者が、

   エリアーラを起こしに行かなければならないとも、聞かされていた。自分が

   勇者とも思わないし、エリアーラを起こす呪文もまったく知らないアクリア

   だったが、自分でも不思議だったが、英雄トートに、後を託されたと、信じて

   疑わなかった。今、自分がするべきことは、行方も生死もわからない、総帥・

   カミュエルに代わって、エリアーラを起こしに行くのが、自分の使命だと思えた

   のだった。アクリアは用心深く、ショート・テレポートを繰り返しながら、北へと

   急いだ。だが、彼女はまだ知らないでいた。イリアスを包囲しようと、クトール

   大帝国の大部隊が、密かに北へと大移動していることを。そこにマリウス教

   ミーザ派宗団で、アクロイドのテトラの配下たちも、動いていて、その衝突

   の中を、潜り抜けるのは、相当な至難の技であるということを。

      トートの最後の渾身のテレパシーを受け取ったのは、アクリアだけでは

   なかった。実の父親、アル・タイ・フォーデも感じていたのだ。(トート。

   済まん。わしもすぐに行くからな。北の山には、他の者に行ってもらう。わしは

   喜んで捨て駒になろう。待っておれよ。トート。)と。「皆よ。話がある。

   近くに寄ってきてくれ」と、自分の乗っている栗毛色の愛馬・アレイオンの周り

   に、同じくその後ろを、馬で続いている、6人の女兵士たちと、1人のヨーグ族

   (中間子族)のフェンリルが、フォーデに寄ってきた。8人と8頭が、半径

   2メートル程の円の中に入れるくらいに、密着したその瞬間、フォーデも渾身

   の力を出して、自慢の念動移動力(サイコ・テレポート)を発動させたの

   だった。凄い風が起こって、一瞬で、7人と7頭が跳んで、その場から消えて

   いった。彼女たちを北の山のふもとまで、運んだのだった。後に残ったのは、

   もちろん、フォーデと、アレイオンだけだった。力を使い果たした老雄・

   フォーデは、アレイオンから落馬して、地面の上に倒れ込んでいた。

   虫の息の中、テレポートでアレイオンにささやいたのだった。(アレイオン。

   長い間、本当に世話になったな。ありがとよ。さあ、もう、お前は自由だ。

   何処へでも行くがいい・・・。)そのままで、ピクリとも動かなくなった

   フォーデ。それを視て、悲しげないななきを上げた、アレイオンは、すぐに

   駆け出していった。まるで誰かに助けを求めるかにように、北西の方、

   パロダムス診療院のある方角を、目指していたのだった。


    ((本当にお待たせして、済みませんでした。3月下旬に急遽、体調不良で、

      短期入院しました。すぐに退院しましたが、その後も精神的にしんどくて、

      もう、ブログもやめようかと思いましたが、1人の方でも応援してくれる

      限り、又、頑張ろうと思い直しました。身体には本当に気をつけて、

      何とか、やり続けていけたらと思いますので、間が空くことも、多々

      ありましょうが、何とか続けますので、よろしくお願いいたします。

      それでは又。次回に続く。))

プライドとプライド 改

2013年03月16日 22時50分21秒 | Weblog

       第9章 新たなる脅威。それでも、前を向いて進め!(2)

          セゾンが絶命寸前に跳ばした、テレパシーを、マロ族(1本角族)

   のセプテムは感知していた。(大変です。何者かが襲ってきて・・)セプテムは

   セゾンやローリオ達、その他全員が死んでしまったことを知った。しかもほんの

   一瞬で。そして、その恐ろしい力の持ち主・ミーザ族(花紋族)のマッセナ)が

   迫りつつあることを。なんとか、回避させなければならない。「これはいけない。

   わしとしたことが。今すぐ、セゾンに渡しておかなければならないものがある

   ことを、つい、失念していました。早速、渡してきます。なにすぐに追いつき

   ますから、お先にどうぞ。それでは、ルチリア様。皆様。又、後ほど」そう

   言い添えると、一礼して、反転して、集団に背を向けると、セプテムは、その

   巨体に似つかわしくないほどのハイスピードで、駆け出していって、あっという

   間に姿が見えなくなっていた。ヘミュ族(変化髪族)のルチリアは、乗っている

   愛馬・アヌエールを止めて、1つ大きく溜め息をついた。(まったく、嘘が

   下手な奴だ。セゾン達に何かあったな。残念ながら、わたしには、感知

   出来なかったが。仕方がない。)ルチリアが、エヴィータ姫と、マルルの乗った

   荷台車を引く犬達を、先に行かさそうと、視た瞬間。グッタリとしていた筈の

   エヴィータ姫が消えていた。(クソッ。あの娘、いつの間に。)動物と話が少し

   出来るルチリアは、(お前達。その子を連れて、安全な所まで、先に行って

   おけ。すぐに戻るから。)そうテレパシーを送ると、ルチリアも又、アヌエールの

   手綱を引っ張って、反転させ、2人の後を追うために、人馬一体で駆け抜けて

   いったのだった。ディエス2世をリーダーとする犬3頭も、猛然と反対方向に、

   駆け出していた。全速力で。

     「アル・ジャンテ・トート様。おられますか?トート様!」と、パロダムス

   診療院に跳んできて、イリアスの裏部隊・イマージュの総帥、グミ族(黄金

   毛族)のカミュエルの右腕で、彼を探し続けている、オーゼ族(細胞変装族)

   のアクリアだった。彼女は、トートなら、カミュエルの行方、もしくは、その

   手がかりを知っているかと思って、わざわざやって来たのだった。広い診療院

   の中を、駆け回っていた。が、この診療院が、敵・クトールの標的になっている

   とわかって、院内は騒然としていた。病人や怪我人を運び出すのに、残った

   非戦闘員の看護師たちが、気ぜわしく動いていたからだった。その中には、

   クトールの黒制服士団に潜入していたガッシュ族(鉄犬歯族)のハーケンの

   妻・セーナと、娘のエルメーターもかいがいしく動いていた。その中を潜り

   抜けて進むアクリア。すぐ先に氷の厚い壁が出現していた。アクリアはピンと

   きた。確か、トート様は凄腕の水媒体師だった筈と。「アル・ジャンテ・

   トート様!そこにおいででございまするか。わたくし、カミュエル様、配下の

   オーゼ・アクリアと申す者でございます。緊急時ですので、ご無礼の段は、

   後ほどにて、いくらでも責めを負いまするので、お許し下さいませ。お聞き

   したいことがございまする。わたくしめの願いは、ただひとつ。わが主、

   カミュエルの行方をご存知ないかとのことでございまする。なにか心当たりが

   ございまするなら、どうぞ、このわたくしのお教え下さいませ」と、訴えたが、

   氷の壁の向こう側からは、何の反応もなかった。アクリアは腹を決めた。

   無礼を承知で、その壁の向こう側に跳んだのだった。彼女はその足元に、

   男が倒れているのを発見した。抱き起こしてみると、その顔には、全体を覆う

   ように、白い布が被せられていた。生前、面識はもちろんなかったが、感じる

   風格に、確信した。息絶えているこの人が、その昔、イリアスの英雄と称え

   られたアル族(長眉族)のジャンテ・トートその人だろうと。アクリアは、

   心の中で、マリウスの呪文を唱えながら、その布を取って、その素顔を

   視たのだった。ひどい火傷を負ったみたいなケロイドのような顔。だが、

   その表情は満足気で、満ち足りたものに、アクリアは感じられた。そっと、

   布を顔に掛け直して、その身体を床に水平に置き、もう一度、手を合わせて、

   マリウスの呪文を唱えて、立ち去ろうとして、アクリアの脳内に、ある映像が

   浮んだのだった。(トート様が、最後にここに引きこもったのには、生き残って

   いる者達に、これを知らせるためだったのですね。さすがです。あなた様は、

   未来永劫に、イリアスの英雄でございます)トートの遺体に、一礼すると、

   ある場所に跳んだアクリアだった。

     ((長い間、お待たせしました。済みません。やっと、身体の調子も戻って

    きましたので、又、頑張りたいので、応援をよろしくお願いいたします。

    花粉症もありますが、負けないようにします。それでは又。次回に続く。))

プライドとプライド 改

2013年03月02日 21時22分50秒 | Weblog

  済みません。2月半ばに、インフルエンザをうつされまして、治りが遅くて、

  長引いてしまいました。まだ少し熱がありますが、4~5日で再開したいと

  思います。お待たせして御免なさい。ですから、しばし、お待ち下さい。

  皆さんも、まだ、インフルエンザが流行っていますし、

  寒い日が続きますので、お気をつけて下さい。それでは又。近いうちに。

  玉子酒を飲んで、もう寝ます。ではおやすみなさい。

プライドとプライド 改

2013年02月09日 12時50分36秒 | Weblog

    第9章 新たなる脅威。それでも、前を向いて進め!(1)

        小高い丘の上に広がる霊廟クトレアン。森の中の森という感じで、

   そこを円形に切り開いて出来た薄暗い中、石を四角形に形成して並ぶ複数の

   墓たち。それを10人くらいの少人数で、交代で見回りしている、クトールの

   墓守のグループ。通称、グリーバル。そのグリーバルをまとめている長が、

   ヤーク族(逆進成長族)のアンダールだった。白く長い髪を無造作に後ろに

   流していて、頭頂部が少し禿げ上がっていた。茶色の顔のあちこちに深い

   しわが刻まれていて、白い長い眉毛の下、大きく見開いた桃色の瞳。

   ガッシュ族(鉄犬歯族)のドールレイの気配を感じて、口を開いてしわがれた

   声を上げた。「これはこれは。黒制服師団の団長のドールレイ様。わざわざ、

   こんな所にみずからお越しになるとは。いかがされましたかな?」と、

   ドールレイは内心、(こいつ、俺がやって来るのを、うすうす感づいて

   いたな。)と、思ったが、そんな気持ちはおくびにも出さないで、「俺のこと

   を知っていてくれるのは、話が早くてありがたい。長(おさ)よ。率直に

   言おう。この身体はもういいのだ。さっさと殺してくれ。そして、俺の魂を

   別の肉体に移して欲しいのだ」と。そう言われても、驚いた様子もなく、

   すぐに答えるアンダール。「それならば、ちょうど今、新しい死体を回収した

   ばかりでございます。え~と、確か生存中の名前は・・」すると、いつの間にか、

   背後の控えているまだ若そうな男。白い頭巾、白い服、紫色の髪の毛で、

   オレンジ色の瞳の長耳族(エム族)のランマースで、アンダールの補佐をして

   いた。白い頭巾でその長い耳を隠し、この霊廟クトレアンにひっそりと身を置く

   ランマース。生まれた者が男の子ならば、即、殺すという恐ろしい掟のエム族。

   それをわけ?あってアンダールに救われて、ここで生き延びているのが、

   ランマースだった。彼にとっては、アンダールこそが絶対主だった。「おそらく、

   クトールの裏切り者とされていたリザ・ブルーノだと思われます。長様」と、

   答えた。「よしっ。そのブルーノとかいう死体に、この魂を移し換えてくれ。

   よもや、この俺をドールレイと知っていて、騙す心算はないだろうな。長よ」

   「まさか。滅相もございません。では支度を整えますので、しばしお待ちを。

   ランマースよ。その間、お茶を煎れ、お相手をいたしておれ」見た目が

   老人とは思えぬ、軽く速い足取りで、さらに奥の方にと消えてゆくアンダール。

   「しばし、お待ちをすぐにお茶を用意いたしますゆえ」「毒入りのをか」

   「さすがはお察しが早い。ではすぐにお持ちいたします」と、深く一礼して、

   これも又、奥に消えるランマース。隠していても隠し切れない、女とみまがう

   ほどの美しさを放つランマースを見つめていたドールレイ。(なんとも、

   一癖も二癖もありそうな油断ができぬ相手だ。それにあの男?もしかしたら、

   女なのかもな。まあ、どちらでもいい。俺には関係ない。裏切り者のブルーノ

   の身体をもらって、イリアスに潜り込んで、マリウスの像の秘密を探り出して、

   像をこの手にすれさえ出来れば、世界はこの俺様の物だ。)と。

      2頭の馬を連ねて先頭を行く兵士2人。その後に、徒歩で続く50人程

   の群れ。最後尾も、2頭の馬の乗る兵士がいて、歩兵の集団の前後を、

   護衛しながら、用心深く、自分達の領地へと進んでいた。「それにしても、

   まったく、セプテムの奴には、いつも驚かされるな」と、それに対して

   「その通りだな。だが、我々、アンティーヌ隊は、クトールに忠誠を誓って

    いるが、本当は違うものな。びっくりするなよ。セゾン。俺はクトールなんか、

   クソくらえだ。ただ、アンティーヌ様、ルチリア様に従っているだけだ」と、

   ローリオ。先頭を行く、2人が幼馴染らしい、腹蔵のない会話をしていた。

   「おいおい、そういうことをあまり、大声で言うものではないぞ。ローリオ。

   気をつけなければ、俺達はもう、裏切り者だからな。おそらく、触れが

   回っているかもしれないし」「まさか。考え過ぎだぞ。セゾン。今はそれどころ

   ではない筈。クトールとイリアスの総力戦が始まろうと・・」と、そこで

   ローリオの言葉は途切れてしまった。何故なら、急に風が吹いて、彼の首が、

   胴体から離れて、宙に舞い上がったからだった。「何者!みんな、気をつけ・・」

   セゾンも言葉が続かなかった。彼の場合は、身体を縦に真っ二つに、一瞬で

   切り裂かれて、すぐに絶命して、地面に落ちたのだった。急に乗り手が

   消えて、興奮する馬2頭は逃げ出して、後の歩兵たちも、まるでかまいたちに

   会ったかのように、次々と身体のあちこちを切り裂かれて、その場に倒れて

   いった。少し離れた所で、冷たい赤い眼で見つめる男、ミーザ族(花紋族)の

   マッセナの姿があったのだった。

    ((又、長く空きました。済みません。いいわけはしません。自分が悪いの

   ですから。なんとか、今度こそは詰めていきたいので、又、応援をよろしく

   お願いいたします。それでは又。次回に続く。)) 

プライドとプライド 改

2013年01月19日 17時09分35秒 | Weblog

    第8章 大乱戦2。生か死か?それぞれの選択(20)(終わり)

         ミーザ族(花紋族)のテトラは、冷たい眼で遠くを眺めていた。

   その近寄りがたい雰囲気にも、同じ背格好の女性が、恐れ気もなく接近して

   いた。「副法主(ふくほっす)様。これから後、いかがいたしましょう?」と

   尋ねてきた。ピンク色の髪を男の子のように、短く切っていた。黒い眼に白い

   肌で、マリウス教ミーザ派の巡礼の正装、焦げ茶色の大きなストールの下に、

   白色の上下の服に、足元には素足に、黒色の草鞋を履いていた。そして、

   右手には赤色の仕込み杖を持っていた。「クトールは少々やり過ぎだな。少し

   懲らしめてやらないとな。そうだろう?クリミア」と、急にいたずらを思いついた

   悪ガキのような微笑を浮かべて、その名を呼んだテトラ。それに応じて、

   「まあ、その通りかと思いますが、くれぐれもやり過ぎませぬように。後で

   法主様に叱られませぬ様にです。副法主様」とやんわりとやり返すクリミア。

   「わかっているよ。そのためのお前は監視役だろうが」と。2人は笑い合うと、

   後ろの20人ほどの壮年、青年の男たちの集団に振りむいて、「では、

   それぞれが、この間、決めた手筈を間違いなく遂行してくれ。ただし、クトール

   の方はいいが、イリアスの方は、まだ、手を貸す機は熟してはいない。

   その時がくれば、わたしが、イリアス担当の長、ザクセンに念を送るから、

   それまでは、しばし見ているだけにしていてくれ。辛いかもしれないが、固く

   申しつけておく。ザクセン。クトール担当のマッセナ。そしてみんな。頼むぞ。

   では行こう!」「はっ!」「はっ!」と、一斉に返答の声が。それに合わせるか

   のように、それぞれが俊敏に四方に散っていった。「遅れるな。クリミア」

   「大丈夫です。それより、もう一つの任務も忘れないで下さいね」「わかって

   いるさ。お前の叔母様、リリイヤ様のご消息。かならず、捜し出してくれる。

   任せておけ」「はい」2人は、常人をはるかに凌ぐ猛スピードで、生い繁った

   木々の間を、器用に駆け抜けていたのだった。

       オレンジ色の髪を黒色のバンダナを巻いていて、ナイルブルーの眼に、

   やや黒褐色の肌。身体には黒色の7つボタンの制服に、ワインレッドの

   ズボン。黒色のロングブーツを履いていた。左の頬には縦長の深い斬り傷が、

   くっきりと浮かび上がっていた。それは少年の頃、父、ドールゴに付けられた

   もので、今でも亡き父を憎んでいるのが、ガッシュ族(鉄犬歯族)の

   ドールレイだった。ドールレイは、心が踊るのを抑えながら、イリアスの王妃、

   エウロヴァに重傷を負わせて(その傷が元で、彼女は崩御したが。)奪った

   緑色に輝くブレスレッド、秘道具のマドナーを、その右手首にはめて、ながめて

   いた。少しきつめだったが、押し込んでみると、すぐに手首にぴったりと

   入った。ドールレイはもちろん、マドナーを我が物にする心算で、イリアスに

   返す気などさらさらなかった。ここはドールレイの私邸。その奥の自室に

   こもって、じっとマドナーを見つめていた。しかし、右手を振ってみても、

   マドナーを左手で握ってみても、何も起こらないでいた。(しまった。何か、

   この秘道具が発動する特別なやり方があるみたいだ。あの女に聞いておく

   べきだったな。)と、後悔するドールレイ。しかし、さすがのドールレイも、

   今混戦が始まろうとしている、イリアスのエウロヴァ王妃の元に、単身、

   潜り込むのは躊躇された。それでも、触れば、無敵の力を手にすることが

   できるという、マリウス像のありかは、このままではわからずじまいだ。

   あきらめるのはあまりに残念だ。どうするか、思案の結果、ある結論に

   達した。(これしかあるまい。無敵になれるなら、この身体なぞ、あのくそ親父

   の血が流れていると思えば、ヘドが出る。惜しくもないわ。)そう決意すると、

   ドールレイはテレポートして消えた。クトールの身分が高い軍人たちが葬られ

   ている、霊廟・クトレアンに跳んだのだった。そこの墓守の長、魂交換師

   (たましいこうかんし)のヤーク族(逆進成長族)のアンダールに会いに。

      北部のイリアスと、南部のクトール。その国境ぞいの北部戦線の

   指揮を、任されたまだ若いマロ族(黒角族)のルフォンス、クトール軍少将

   (黒い大きな角が頭頂にあり、白い髪に、赤い眼。白い肌に両の手の指は、

   何故か6本ずつだった。やや大きめな黒い軍帽に軍服の上下。赤色のショート

   ブーツを足元に履いていたが、少将という、割合地位の高い軍人らしからぬ

   初々しさ?があった。)は、あまりの緊張のために、唇がひどく乾くのを、

   何度も舌で舐めて、抑えながら、右手に高く上げた、黒地に赤い眼で白色

   の身体の3匹の大蛇がからみあっている、(ティンガ・スネークス)クトール

   の紋章入りの旗を、力強く振り下ろしながら、整然と並んだ赤マントを付けた、

   騎馬隊・レッド・サンダーに号令を発していた。「行け!祖国クトールの

   ために!」と。自分たちが捨て駒なぞとは、露とも思わないルフォンスと、

   レッドサンダーの面々だった。しかも、早くも、テトラの命の下、ミーザ・

   マッセナが忍び寄っていることも知らないルフォンスたちだった。

      ((この章、終わり。遅ればせながら、去年はありがとうございました。

   2013年明けましておめでとうございます。実はこのブログを閉鎖しようかと

   去年の暮れから、悩み苦しんでいました。プライベートでも、又、辛いことが

   起こって、精神的に追い込まれていました。しかしながら、こうやって、

   私の拙いものを視ていただけるのも、本当にしあわせなことだと思い直し、

   なんとか、再開できました。ありがとうございます。又、間が空くかもしれ

   ませんが、今年こそは心を入れ替えて、少しでも詰めていけれたらと思い

   ますので、見捨てないで、見守っていただけたらと、願っております。

   厚かましくて本当に済みません。なるべく、早目に又会いましょう。

   では、皆様にとって、2013年が、良い年でありますように、お祈り

   いたします。それでは。次章に続く。))
       

   

プライドとプライド 改

2012年12月22日 01時01分39秒 | Weblog

       第8章 大乱戦2。生か死か?それぞれの選択(19)
 
          再会を祝してといっても、今25歳のグミ族(黄金毛族)の

   カミュエルは、23年前からずっと、この異空間に閉じ込められたままのアル族

   (長眉族)のタイ・ビビンデに会ったのは、カミュエルはまだ2歳の時だった

   ので、もちろん、覚えているはずもなかった。「済みませんな。つい、あまりに

   父親のキュエール様に面影が似ておられたので、23年もの時が流れたことを

   失念していました。ところで、総帥様、お父上様は今どうされておられます

   か?」と訊いてきたビビンデ。カミュエルは一瞬、口ごもりながら、しかし、

   静かに答えたのだった。「残念ながら、3年前のクトールとの開戦時に、負傷

   して、その傷が元で、感染症にかかって他界しました」と。その返事に、絶句

   して、言葉を失くした空中に浮いたままのビビンデ。しかし、すぐに顔を上げ、

   唇を噛み締めながら、決意の表情で告げるビビンデ。「この無駄に生き

   長らえた老いぼれの命を、あなた様に捧げます。ドールレイの奴はこの私が、

   引き受けますから、どうぞ、この空間から脱出して下さいませ」と。だが、

   カミュエルは寂しそうに首を横に振った。「ビビンデ様。そのお気持ちだけ、

   ありがたく受け取らせて頂きます。が、あなたを犠牲には出来ません。それに、

   そもそも、私がここにやって来たには、私のせいでここに連れて来られた、

   別の世界の5人の人達を救出に来たのですから」と、事情をかいつまんで、

   ビビンデに説明した。聞き耳を立てていた城ヶ月修(じょうがづき・おさむ)

   が、聞き逃す筈もなかった。部下の辰神雄介(たつがみ・ゆうすけ)と、柏木

   操(かしわぎ・みさお)の名前を。「なんだって!辰神も、操もここに来ている

   のか!」と、2人の間に割り込んだ城ヶ月。カミュエルと、ビビンデと、

   カミュエルの横に寄り添ったままのマロ族(黒角族)のユジャーヌ。急に6つ

   の眼に凝視されて、ドギマギする城ヶ月だったが・・・。

    鈍い音がして、信じられないことが起こっていた。ササ族(動植物中間人族)

   のトーレカの黄金色に輝く、右の拳が、相対している、同じササ族のユグドラン

   の手にある武器、ロングシャークを粉々に砕いていたのだ。それでも、

   ユグドランも、その勢いで腹部にパンチを受けていたが、その激痛に負けず

   に、折れてしまったロングシャークを、その場に捨てて、すかさずトーレカの

   首元を両手の10本の指で掴んで、怪力にものをいわせて、トーレカの

   身体を、一気に天高く持ち上げていたのだった。このままでは、すぐにトーレカ

   が、窒息死するかのように思えた。が、逆にユグドランの方が、急に両膝を

   折り曲げて、その場に倒れ込んでしまっていた。だが、トーレカにも、トドメを

   刺す余力は残っていなかった。コマトーンとは、みずからの体のほんの一部

   に、全身のエネルギーを集中させる術で、パワーを集めてはいたが、トーレカ

   の右拳の骨も粉々砕ける、粉砕骨折という重傷を負ってしまっていた。

   あまりの激痛に、その場でのちうち回るトーレカ。ユグドランも、同じ所に

   2度も深いダメージを受けて、起き上がれなくなっていた。トーレカは這い

   ながらも、ユグドランが地面に突き立てたままの短槍・ルアーンを左手1本で

   引き抜いたが、手に握ったまま、気を失ってしまっていた。ユグドランも同じ

   で、まさに痛み分けだった。その時、大きな影が現れて、2人を覆うと、

   その影が消え、それとともに2人の姿も消えてしまっていた。後には、トーレカ

   が、破壊したロングシャークの残骸だけが、取り残されていたのだった。

     風雲急を告げるイリアスと、クトールの戦い。クトールの圧倒的力と術の

   前にイリアスは今度こそ滅びると、噂していて、息を潜めて成り行きを見守る

   だけの周辺国。だが、イリアスに加勢しようという集団があった。諸国を布教

   して回っているマリウス教ミーザ派の一族。(ユグドランの妻で、リオンの実の

   母親・リリイヤがかつていた集団で、旅の途中で、瀕死のユグドランを助けた

   のだった。それが縁で後に脱退したのだったが。)彼らは敬虔な信者で

   あったが、不思議な術を使う、勇者たちとしても恐れられていた。人々は彼ら

   のことを、アクロイド(人を超えた人、超人の意。)と言って、畏敬の念を持って

   いたのだった。当代の頭(かしら)は、グミ・カミュエルと同じ25歳の青年で、

   名前をミーザ族(花紋族)のテセラといった。しかし、見た目は集団の中で、

   美形ながら、一番の小柄で華奢な感じで、頭領らしくない風体だった。

      ((長らくお待たせしました。言い訳になりますが、身内の不幸や、

         ひどい風邪にもなり、ようやくだいぶ回復したところです。

        1度はもうやめようか思いましたが、皆さんの期待を感じて、

         頑張ります。次はもっとはやく投稿します。行動で示すのみです。

         それでは又。次回に続く。))

プライドとプライド 改

2012年11月24日 17時03分29秒 | Weblog

       第8章 大乱戦2。生か死か?それぞれの選択(18)

           トーレカの短槍は深々とユグドランの腹に突き刺さっていた。

   が、ユグドランの表情に変化はなかった。「劇的に変わったのはお前だけ

   ではないぞ。俺様もだいぶ変わったのだぞ」と。トーレカは短槍・ルアーンを

   引き抜こうと、全身の力を込めていたが、ユグドランの傷口は血も流れ

   ないで、ルアーンを挟み込んだまま、傷口が固く閉じられて、抜こうにも

   抜けなくなっていた。「短時間なら、身体の一部分を鋼鉄化できるのだ。」

   と、ロングシャークが唸りの声を上げて、トーレカの身体を分断しようと

   した。トーレカはルアーンを諦めて、瞬速で、バク転をしながら、後ろに

   跳び下がったのだった。ユグドランは腹の力を緩めて、皮膚を元に戻して、

   ルアーンをみずから引き抜いて、地面に突き刺したのだった。「俺様は

   ここ一歩も動かんぞ。自分の武器を取り返したいなら、俺様を倒して取り返し

   に来い!」ロングシャークを振り回すユグドランに、隙があるようには

   見えなかったが。ルアーンは、トーレカにとっては、特に愛着のある物

   だった。そう簡単に手放すつもりはない。トーレカは全身の力を右の拳に

   集めると、その部分だけが、黄金色になり、ユグドランに向かって、大声を

   上げながら、突進を始めたのだった。

     「副隊長殿!面会を希望する者たちがいますが?どうされますか?」と、

   クトールの北、西、南からの3方面同時総攻撃が始まる前、いままさに

   手薄と思われる、南方面に集中して突撃を開始しようとしたその時、イリアス

   副警備隊長で、銀色の短髪に褐色の肌。紫色の瞳で、全身白色の兜、鎧を

   着けていて、兜の真ん中に、イリアスの紋章、ツインドラゴンが象られて

   いる。それをかぶっている戦闘責任者ののラース族(透明化族)の

   ルーレックの元に、同じラース族の若い伝令が駆け寄ってきて、告げた

   のだった。「何?どんな風体の者どもか」「はっ、自分たちはクトールを

   裏切って、追われている者。どうせなら、イリアスに加勢して、そのまま、

   ぜひ、配下に加えていただきたいと。それと、投降するその証しとして、

   クトールの重要人物を捕らえたので、引き渡したいとのことです」その報告を

   聞いて、頭にひらめくものを感じたルーレックは、「よし。構わん。会うぞ。

   すぐ近くの宿舎・オレルアンに通せ!」と、返答したのだった。

      一方、パロダムス診療院の中でも、出陣の準備が始まっていた。

   グミ族(黄金毛族)で、黄金色の髪の毛と髭、白い肌、青い瞳のパロダムス

   は、自室でその身体に戦闘用の黒色の軍服を着ようとしていた。その時、

   ノックの音が3回して、イリアス警備隊長のユーコ族(調節眼族)のヴァーニ・

   ザレックスがその2メートルの痩身長躯を折り曲げるように、入って来た。

   紫色の軍服、ズボンに黒いロングブーツを身に着けていて、腰にサーベル

   を差していた。頭は禿げ上がっていたが、レモン色の髭を生やしていて、

   褐色の肌に決意の青緑色の瞳が光っていた。「どうしても、ご出陣される

   というのでしょう。それならば、わたくしも同行させていただきます」と。

   真っ直ぐにパロダムスを視て言った。パロダムスは困惑の表情を浮かべて

   答えた。「同行?何をいう。わしは囮部隊の一員として、戦場にて、

   すぐにでも死ぬ覚悟をしているのだぞ。イリアスの最高指令指揮官が、

   雑兵のように命を落としてどうするのだ。後の者たちを見殺しにする

   つもりか?お前の気持ちは嬉しくはあるが、きっぱりとお断りする」と。

   「後のことはルーレックたち、若いが優秀な者たちに任せてあります。

   どうか、わたしの願いをお聞き届け下さいませ」と、又、その長身を折り

   曲げて、懇願したのだった。2人の間に、しばしの沈黙が流れたのだった。

     「まったく。もう何が起こっても驚かないぞ」と、自問自答する城ヶ月修

   刑事(じょうがつき・おさむ)だった。ここは依然として、閉じた異空間の中

   だった。彼の周りには、両手・両足を失ったままで、宙に浮遊する、アル族

   (長眉族)のタイ・ビビンデ。頭はところどころ抜けていて、薄くなっている、

   茶色の髪の毛に長い茶色の無精髭。白い肌に右目が青、左目が銀色で、

   身体には薄汚れた白い?衣をまとっているだけだった。その彼が、反対側

   に立つ、黄金色の髪の毛、白い肌、青い瞳の若い男、グミ・カミュエルとの

   偶然の再会を祝っていた。カミュエルの横には、小柄で華奢な女の子、

   長い黒髪を無造作に後ろに流しただけで、褐色の肌にピンク色の瞳をした

   マロ族(黒角族)のユジャーヌが、震えながら寄り添っていた。可哀想に

   彼女の右腕は肩から先が欠損していた。あまりのことに、言葉を失う

   城ヶ月。しばらくは2人のやり取りを聞いていた。知らない地名?などが

   聴こえてきて、内容はよくわからなかったのだが・・・。

     ((済みません。精神的におかしくなって、投稿できませんでした。が、

       又、頑張る心算です。遅くなってごめんなさい。それでは、ごく近い

      内に又。次回に続く。))

   

プライドとプライド 改

2012年10月20日 13時02分44秒 | Weblog

       第8章 大乱戦2。生か死か?それぞれの選択(17)

         (兄者。いや、グミ・カミュエル総帥様。今まで、孤児のわたくし

   を、本当の兄弟のように、接していただいてありがとうございました。ずっと

   黙っていましたが、実は、自分の出生の秘密を、知っているのです。憎っくき

   敵国、クトールの者の生まれだということを。それでも、戦災孤児のわたくし

   を、あなた様の父上、キュエール様、母上様、セレジェイラ様ともども、

   家族同然に育てていただきまして、感謝の念に絶えません。この恩に報いる

   ため、わたくしは、3人様の前に、胸を張って、再会できるように、天上から

   見ていて下さいませ。)それは、カミュエルの弟、グミ族(黄金毛族)の

   ヒュージョンの固い覚悟のつぶやきだった。自室の鏡の間の縦2メートル半、

   横1メートル半くらいの巨大な鏡に、向かって言っていた。背後の窓から、

   夕刻の日が差し込んでいて、ヒュージョンの男にしては、ほっそりとした体型

   全体を写し出していたのだった。黄金色の髪の毛に白い肌、見えない筈の

   赤色の2つの眼で、白いマントに白い上着、白いズボン。靴だけ、茶色の

   イリアスの神木、セレジェイラの物を履いている自分自身を見つめていた。

   (今から、わたくしがグミ・カミュエル。出来るだけ多くの敵を引き寄せて、

   ともどもに果ててみせます。)ヒュージョンが念を発すると、一瞬で全身の

   服装が、白から黒に変わっていた。胸には、イリアス裏部隊、イマージュの

   総帥だけが着けることが許された、赤い色の2つ首の竜、ツインドラゴン

   の紋章が刺繍されてあった。(ツインドラゴンはイリアスの国を現す紋章でも

   ある。こちらは白地。イマージュは赤地だった。)複製創出師のヒュージョン

   が、先代の父、キュエールの死後、継承式で、カミュエルにこの服を手渡す

   役を仰せ付かって、1度だけ、その感触を味わうことが出来た。それだけで

   充分だった。記憶が薄れない間にと、密かに複製、具現化させて、隠し

   持っていたのだ。(済みません。兄者。わたくしが複製創出師であることも、

   打ち明けてはいませんでした。それともう1つの特殊能力があります)と。

   その服の手触りを確認すると、ヒュージョンは、巨大鏡にゆっりと突進した。

   するとなんと、彼の身体は鏡の中に消えてしまったのだった。その直後、

   鏡の間の扉をノックする音が響いた。続いて若い女性の声が。

   「ヒュージュン様。おられますか?私です。オーゼ・アクリアです。実はご報告

   があります」と。彼女はカミュエルの幼馴染ながら、ともに、学問、武芸を

   学んだ腹心筆頭のオーゼ族(細胞変装族)のアクリアだった。見た目は女性

   らしいラインの身体を、黒色の上着に同色のズボン。赤色のロングブーツで

   攻撃的な印象を他人に与えていた。ピンク色の眼に白い肌。紫色の長い

   髪を後ろで1つに束ねて紐でくくって、腰辺りまで垂らしていた。腰に細身の

   剣、レイピアを差し、背中の複数のポケットに、投擲用の短剣、ペシュカドを

   複数隠し持っていたのだった。すべては女ながらといって、敵に遅れを

   取られまいとする、アクリアの強い意志の表れであったが。しかし、いくら

   待っても、奥からは、何の返事もないので、アクリアはやむなく、

   「済みません。ご無礼ながら、緊急なので、失礼いたします」と、中に

   飛び込んだが、すでに何の気配も感じられなくなっていた。嫌な予感がして、

   珍しく全身に悪寒が走るアクリア。(まさか。カミュエル様だけでなく、

   ご兄弟様全員が、何者かにさらわれてしまったのか?私はどうすれば

   いい?)と。だが、その時、アル族(長眉族)の主、トートの顔が浮んできた。

   アクリアは、危険を顧みず、クトールに包囲され、今まさに風雲急を告げつつ

   ある、パロダムス診療院を目指して跳んで、その場から消えたのだった。

    赤い血が飛び散っていた。だが、それはササ族(動植物中間人族)の

   リオンでも、まして、実の父、ササ・ユグドランのものでもなかった。リオンの

   人生の師匠で、育ての親でもある、ササ・トーレカだった。彼が2人の間に

   割って入って、ユグドランのポールアックスのロングシャークの刃を左上腕部

   の手甲で受け止めて、右手の槍で、ユグドランの腹を刺していた。

   飛び散ったのは、トーレカの左腕の手甲の中から溢れ出した血だった。

   「師匠!生きておられたのですか?何故今まで・・」「話は後だ。いいから

   先に行け。俺はユグドランと決着をつけてからすぐ行くから。さあ、急げ!」
 
   と。切れた包帯を拾いながら、頭を下げながら、走り出すリオン。「おのれ。

   邪魔しやがって。やはり生きていたか。トーレカ。まあいい。リオンは後で

   始末してくれる。まずはお前を血祭りにしてくれる」ユグドランの緑色の眼と、

   トーレカの緑色から、黄金色に変わった眼が睨みあった。「ほう、面白い。

   伝説の力・コマトーンを手に入れたか。どれほどのものか。見せてみろ」

   燃え上がる闘志で、全身の毛が逆立つユグドランだった。

     ((済みません。いつもお待たせして。なるべく、空かないように頑張り

    ますので、又、よろしくお願いします。ではでは。次回に続く。))

プライドとプライド 改

2012年10月03日 01時15分26秒 | Weblog

      第8章 大乱戦2。生か死か?それぞれの選択(16)

            「大口を叩けるのも今の内だ。身内といえども、俺に容赦は

   ない。言った筈だ。今度会うときは殺すと」妖刀・ラヴァーニ。そして、

   三日月刀・シャントーゼを失って、ササ族(動植物中間人族)のユグドラン

   は、今は新しく、長柄のポールアックス・ロングシャークを持っていた。長柄の

   先端は金属製で鋭く尖っていて、相手を串刺しにするし、先端の少し後ろ

   には、打撃用の金槌、反対側には、斬撃用の鉄斧がついていて、正に殺人

   武器といえた。そのロングシャークをその大柄な体格をいかした、剛力で

   ブンブン振り回し始めていた。無論、グミ族(黄金毛族)のキュエールとの

   戦いで、顔面にⅩ字の深い傷を負い、危ういところを命を助けられた、

   ミーザ族(花紋族)のリリイヤという、娘との間にもうけた、実の息子の

   リオンの身体を切り裂くために。ユグドランの身体に似合わぬ、速い動きを

   眼で捉えようとする、ササ・ミーザ・リオン。(よせ!眼で捉えられる速さを

   とうに越しているぞ。全身でユグドランの動きを感じるんだ。リオン。)と、

   口のない、リオンの右腕に移植された、ゼーラの左腕が、テレパシーで

   アドヴァイスした。その時。「心配するな!一撃で決めてくれる」と、大股で、

   ユグドランが、ロングシャークを突き出してきた。超瞬速のスピードで。

   凄い音がして、赤い血が、辺りに飛び散っていたのだった。

     「誰だ!」と、叫んだグミ・カミュエルと、その背後のユジャーヌの2人の

   前に現れた影は、イリアスとは異空間の日本は、柴井田病院で、先に行方

   不明になっていた、城ヶ月修刑事(じょうがづき・おさむ)だった。もちろん、

   城ヶ月には、2人に面識はなかったが、カミュエルには、見覚えがあった。

   アメリカで生まれて、強大化した、謎の宗教集団・赤い迷宮(レッド・

   ラビリンス)が、次に日本の東京にまもなく上陸との情報を、部下のグミ・

   クレスキンから、テレパシーで受け取っていたカミュエルは、偶然にも、フリー

   のジャーナリスト、江藤亨(えとう・とおる)という偽の日本人に成り済ました

   後で、出会った、柴井田(しばいだ)病院に務める看護師、側野友里可

   (かわの・ゆりか)。彼女の恋人になりすまして、何度か病院にも顔を出し、

   マリア(エヴィータ姫)が入院してきた後で、捜査の指揮を執る城ヶ月を

   何度か見かけていたカミュエルだった。、彼女とのなれそめは、潜入して

   すぐのお正月に、エム族(長耳族)のシャルミ公女の率いる女だけの暗殺

   部隊、シャラーズ達から、襲われていた友里可を助けた縁で、成り行き上、

   付き合う?こととなったのだった。カミュエルは、後ろのマロ族(1本角族)の

   ユジャーヌにテレパシーを送った。(大丈夫。この人は悪い人じゃない。

   これから、僕は他人になりすますから、全部、僕に任せて。心配しないで、

   君はただ、見ていてくれ。)と。不審そうな城ヶ月の視線を感じながら、

   振り向きながら口を開くカミュエル。「僕は怪しい者じゃありません。

   江藤亨。新聞社や雑誌社の原稿を不定期に書く、ただのライターです。

   不思議な強い力のせいで、この空間に飛ばされてしまいました。柴井田病院

   の病室から。僕以外にも5人の方が一緒にです。確か、入院中の矢吹マリア

   (やぶき)さんと付き添いの叔母さんで、マリノフ・矢吹・結子(ゆいこ)さん

   と、友人の男の子の陣内大河(じんない・たいが)君。それと、看護師で僕の

   恋人の側野友里可と、確か、病室の見張り番をされていた、辰神雄介

   (たつがみ・ゆうすけ)さんという刑事さんら、5人とともに、ここに飛ばされて

   きたんですよ。彼ら全員とは、はぐれたままで、さっき、この場所でこの少女

   と出会いましたよ。刑事の城ヶ月さん」カミュエルの言葉をじっと聞いていた、

   城ヶ月の眼が険しくなった。ユジャーヌはユジャーヌで、カミュエルの

   発した恋人という言葉に、心臓が少しだけ波打ってしまっていた。「いろいろ

   と調べるのが、おたくらの仕事だろうが、あまりにも、内部事情に詳し過ぎ

   やしないか」という、城ヶ月の指摘にも、カミュエルは動じる様子も見せ

   ないで、言葉を続けた。「それはもう、なんせ、患者のマリアさんの担当は、

   友里可でしたから、いろいろと教えてもらいました。そうそう、実はマリアさん

   は急にいなくなって、あなたの部下の柏木操(かしわぎ・みさお)に摩り

   替わっていたらしいですね。刑事さん」と。そう仕向けたのは、カミュエル自身

   だったのだが、そんなことは知らない城ヶ月だった。が、急に顔色を

   変えて、「一体お前は何者だ。もしかしたら、貴様も化け物だな」と、

   勢いをつけて、カミュエルに飛びかかろうとする、城ヶ月だった。

     ((長らくお待たせしました。体調いまいちですが、なんとか、あまり、

    間隔を開かないように頑張りますので、応援をお願いいたします。

    それでは又。次回に続く。))

プライドとプライド 改

2012年09月12日 18時25分15秒 | Weblog

      第8章 大乱戦2。生か死か?それぞれの選択(15)

          グミ族(黄金毛族)のヒュージョンには、イリアスに対する忠義の

   心が厚い、アル族(長眉族)のジモンの忸怩たる思いが、痛いほど

   わかった。だが、よくわかるがゆえに、今すぐに、今居るこの場所、愛する

   故郷、イリアス(しかも、ジモンは、クトールとの国境ぞいのイリアス南部の

   リヨンドル地方の生まれで、現在、そこは、クトールとの戦いの最前線だと

   思われていた。ジモンも本当は、出来るなら、一刻も早く、戦いに参加して、

   クトール軍を退けたいと考えていたのだ。)から、去らそうと思っていた。

   何故なら、残念ながら、ジモンの救出も空しく、つい今しがた、イリアス

   王妃、エウロヴァ・デ・イリアスが、傷による、出血多量で息を引き取った

   のだった。もちろん、この崩御の報は、ヒュージョンと、王妃を看取った女性

   侍医のシャラ族(3つ目族)のシュリーヌと、数人の看護士のみ以外は、

   現時点で知るはずもなかった。だから、このことはしばらくの間は、絶対に

   ジモンだけは知られたくなかった。知れば、今度こそ、間違いなく、自分を

   責めて、自刃するだろう。今度は絶対に止められない。ジモンの死は、

   それ以上にイリアスには痛手になる。彼は多くの部下たちから、慕われて

   いて、ただそれだけで、士気に関わるのだった。だから、アメリスと、ヤッフェ

   のお目付け役として、2人とともに、1分ほど時間を置いて、ガガリース国に、

   ヒュージョンの力で、テレポートさせたのだった。3人が無事に生き延びて、

   いつの日か、イリアス国を復興させてもらえたら、祈るヒュージョンだった。

   彼自身は、イリアス裏部隊、イマージュの総帥名代として、兄、カミュエルと

   生死を共にする覚悟であった。が、いまだに兄の行方が、一向につかめ

   ないでいた。(兄上。どうされたのですか?すぐにどこへでも、参ります

   から、ぜひとも、連絡か、何か手がかりを下さいませ。)イリアスの民の心の

   支え、イリアスの守護神・マリウスの呪文を唱えるヒュージョンだった。

   (マリウス・レ・ポワールズ)と。

     ササ族(動植物中間人族)のリオンは、自身の相棒、右腕(本当の)部分

   のゼーラに、テレパシーでささやきかける。(ゼーラ。どうやら、クトールの

   奴らに囲まれたみたいだぞ。どうする?)と。すると、右腕から聴こえてきた

   テレパシー。もちろん、ゼーラだった。(どうするも何も、イリアス領内に、

   テレポートが出来ない以上、強行突破しかあるまい。それに、敵にそう簡単

   に遅れを取るリオンかな?)と、わざと挑発するゼーラ。長旅が2人の絆を、

   深いものにしていた。(チッ。わかってるって。聞いてみただけだよ。)

   腹が決まったリオンが、先に仕掛け始めたのだった。水媒体師の彼が、

   精神を集中させて、術を発動させた。「アイス・ヒュドラ・アタック!」と、

   大きな氷の塊、9つの首を持つ伝説の大蛇、ヒュドラが、リオンの頭上、

   木々の間から、空中高く出現していた。その9つの首が、それぞれの

   方向に、長く伸びていった。「ヘール・シャワー・ドロップ!」と、リオンの

   掛け声とともに、それぞれの口から吐き出される、冷たく硬い雹が、上から

   大量に、クトール軍に降りかかっていた。凄い衝撃に倒れるクトール軍。

   ただ、その攻撃を逃れた数人が、四方から、剣を抜いてリオンに襲い

   掛かった。(包帯をほどけ。リオン。今こそ、我が力の出すべき時。封印を

   解く。)ゼーラのテレパシーに、「おいおい、間際になって言うなよ。この

   クソ忙しい時に」と、文句を言いながらも、新たに具現化させたアイスクル・

   ソード(氷柱剣)を左手に持って、右手の包帯を斬った。しかし、すぐに迫って

   来た敵たちを、右に左に回って斬るリオン。得意の蹴りも使って、何とか、

   全員を倒した。しかし、「術を見て、もしかしたらと思ったが、やはりお前か。

   久し振りだな。リオン。どうやら、又、少し腕を上げたようだ。が、わしは

   そうはいかんぞ」と、背後の影。それは全身を炎に包まれたままの炎媒体師

   のササ・ユグドランが、燃える眼で、実の息子のリオンを睨みつけながら、

   立っていたのだった。「チッ。クソ親父か。まあいい。ここであったのも、

   切っても切れない腐れ縁だろうな。安心しな。迷わず地獄神・ハベスの元に

   送ってやるからな」と、氷柱剣を左手で頭上高く身構えるリオン。横風が急に

   吹いて、リオンの右腕の包帯が飛んでゆき、もう一つの左腕(エム・シャルミ

   公女、シャルーダ、シャループ姉妹の父、サージ・ゼラックスのもの)が

   あらわになっていたのだった。

     ((大変お待たせいたしました。済みません。又、再開いたしますが、

   体調と相談しながらなので、時々お休みいたしますが、ご容赦下さい。

   残暑が続きますので、皆さんもお体にお気をつけて下さい。それでは又。

    次回に続く。))

プライドとプライド 改

2012年07月20日 09時12分11秒 | Weblog
 
 誠に済みませんが、体調不調のため、しばらくの間、休載いたします。

 ご迷惑をお掛けして済みません。これから、本格的な暑い夏が始まり

 ます。皆様もご自愛下さい。それでは又、会う日まで。

プライドとプライド 改

2012年07月08日 23時24分49秒 | Weblog

     第8章 大乱戦2。生か死か?それぞれの選択(14)

        「そう言うとは思った。だが、わたしは亡き兄、イリアス・

   オレオ王国の総参謀で、イマージュの総帥、グミ・カミュエルの

   名代ぞ。それでもいうことを聞かぬか?アメリス?ヤッフェ?」盲目

   ながらも、2人の位置を、正確に把握しているみたいで、2人の顔の

   ある所に、交互に顔を向けるヒュージョンだった。その灰色の瞳は、

   まるで、あらゆる出来事の裏側を、見抜いているようにさえ、2人に

   は思えた。「わかりました。わたしは兄上。いえ、総帥名代に従いま

   する。ただ・・」と、悲しそうな眼で、訴えかけるアメリス。

   「本当に?長兄様。いえ、総帥様は、お亡くなりになられたの

   でしょうか?」と。「そんなこと。たとえ、この全世界の天と地が

   ひっくり返ってもある筈がねえよ。カミュ兄ちゃんが死んだなん

   て。違うと言ってよ。ねえ、ヒュー兄ちゃん!」と、今にも泣き出し

   そうな顔のヤッフェ。しかし、ヒュージュンは寂しげに、横に首を振

   るだけだった。「残念だが、今このイリアス存亡の危急の時。総帥様

   が、お姿を消される理由なぞ、まるで、考えつかぬ。このわたしが、

   全精力を傾けて、能力を全開にさせても、何の気配も感じられないこ

   となぞ、今まで、ただの1度もない。1度もな。だとしたら、導き出

   される答えは、ただ1つのみ。総帥様は何らかの事情で、命を落とさ

   れたと、考えるべきなのだ。それ以外は考えられない。ならば、残さ

   れた道もただ1つ。次男たるわたしが、その遺志を継ぐこと。ただそ

   れだけのこと。敵は我が身が引き受ける。お前達はさっさと行け。

   もしも、運があれば、イリアスを再興してくれ。たぶん、無理だろ

   う。だから、小さな幸せでいいから、見つけて、どこかで生き続けて

   くれ。総帥様が生きておられても、間違いなくそう言われるだろう。

   この戦いは敗北は必定だろうが、後には退けぬ戦いだ。冷酷非道な

   クトールの者どもに、イリアスの決して崩れはしない、誇りだけは覚

   えさせておきたいのだ。わかったら、覚悟して生き抜け。アメリス。

   ヤッフェ。達者でな。さらばだ」と。ヒュージョンの全力の念動移動

   力(サイコキネシス・テレポート)が、2人の身体を包んだ。「総帥

   名代様!」「ヒュー兄(にい)!」と、叫び声を上げながら、2人の

   姿は、ヒュージョンの私室の鏡の間から、ガガーリス国内へと、跳ば

   されたのだった。力を戦いに向けて、温存したかったヒュージョン

   だったが、アメリスはともかく、ヤッフェが得心するとは思えなかっ

   た。ならば、一応事情だけ説明して、その後はただちに跳ばす心算

   だった。2人がバラバラなら、ともかく、2人が一緒ならば、

   アメリスはヤッフェの、ヤッフェはアメリスの足枷になって、お互い

   同士が、勝手な行動は出来なくなる、絆の深い姉と弟だと、見抜いて

   の手荒な仕打ちではあった。(済まぬな。アメリス。ヤッフェ。

   ただ、お前達の命は、イリアスの、そして、兄や俺の希望でもある。

   クトールの魔の手から、絶対に逃れて、生き延びてくれよ。頼む。)

   と、マリウスの文句を唱えて、しばし祈るヒュージョンだった。

   ヒュージョンが力を発動させた刹那、アル族(長眉族)のジモンも

   吸い込まれるかのように、2人とともに、跳んで消えたのだった。

   イリアス王妃・エウロヴァを護衛出来ないで、重傷を負わせ、彼女が

   身に付けていたイリアスの秘宝、マリウスの像のありかにつながる、

   秘道具のブレスレッドのマドナーでさえも、クトールの四天王の

   1人、黒制服士団・団長のガッシュ族(鉄犬歯族)のドールレイに

   奪われてしまうという、大失態もしてしまい、迷った挙句、

   エウロヴァ妃を、ともかくも、この総帥邸の運んできたのだが、手当

   てが始まったのを確認して、屋敷の裏側で、自刃して果てようとした

   ジモン。それを人間レーダーと異名のヒュージョンが、見逃す筈も

   なく、すぐ近くの配下の者、3人の大男たち、セーガ3兄弟に命じ

   て、ジモンを取り押さえさせたのだった。生まれて初めてといっても

   いい、人前で涙を流しながら、ジモンは連れていかれた、鏡の間、

   グミ・ヒュージュンの前で、猛抗議をしたのだった。「何故?恥を

   そそぐための武人のけじめの儀を、邪魔されるのか?このまま、

   生き恥をさらしたままで、生き続けろというのですか?」

   「その通りです。率直に言います。あなた自身のためではなく、

   アメリスと、ヤッフェのために。2人の未来のために、恥を忍んで

   も、生きて欲しいのです」と、見えないながら、ヒュージョンの

   灰色の澄んだ瞳が、ジモンの顔を捉えていた。

    ((済みません。又、長くお待たせしました。なるべく、空けない

      で、アップ出来る様に頑張ります。持病の腰痛や、胃痛や、

       喉腫れにも負けずに、頑張ろうと思いますので、応援して

       下さいね。ずうずうしくて済みません。なんせ、病身の

      独り者はきついこともあります。次回に続く。))

    

プライドとプライド 改

2012年06月19日 14時45分42秒 | Weblog

      第8章 大乱戦2。生か死か?それぞれの選択(13)

        マリアとマルル。ルチリアと部下のセプテム達。これら一行の

   やり取りを遠目で、大きな木の枝から見つめている4つの眼があった。

   1人は昆虫放出師で、エム族(長耳族)のゼノビアだった。彼女は若いながら

   も、その腕を見込まれて、3年前から、エム・シャルミ公女の裏部隊・

   シャラーズの一員で、諜報や暗殺や破壊活動をしていた。(彼女は任命

   されてすぐに、シャルミ公女の私邸、エム・ブラッド屋敷の護衛中に、リオン

   や、ヘーメラーと、命のやり取りをした。彼らにとどめをさせなかったことを、

   今も悔しく思っている。)耳がピンク色で、まるでうさぎの様に、ピンと立って

   いる。オレンジ色の瞳に白い肌。腰まで伸ばしている長い紫色の髪。その

   髪の毛には、たくさんのリボンをくくりつけていた。首から下は上が茶色の

   軽量の胴当てを付け、その下に黄色のツーピース。足には焦げ茶色の

   ビギンスに、足元は黒色のブーツを履いていた。もう1人は同じシャラーズ

   で、先輩のエム・ラチェスタで、すらりとしたゼノビアとは、対称的に、彼女は

   子供の様に小柄だが、同じく白い肌にオレンジ色の瞳であるが、その瞳は、

   凄い眼力で、それだけで、内面の気性の激しさが感じられるのだった。

   金属抽出師のラチェスタはゼノビアとは正反対で、紫色の髪の毛をほとんど

   丸刈りで、男性のように短くしていて、その頭には、たくさんの角?が付いて

   いる黒色の軽量の兜をかぶっていた。赤色のマントに黒色の軽量の

   胴当て、肘当て、膝当て。身体には灰色の半袖シャツに短パンで、彼女も

   ブーツを履いていた。しかしブーツだけは銀色の光る派手な物であったが。

   「フン。全員揃って裏切り者か。面倒くさい。おい、ゼノビア。さっさと始末

   するか?」と、その睨みような目付きで、同意を求めるラチェスタ。しかし、

   ゼノビアは、ラチェスタが気分を害しないようにと、同僚に気を使いながら、

   「そうしたいのはやまやまなのですが、まずはシャルミ公女様のご意向を

   お伺いしましょう。指示なく勝手に動いては、後でひどい責めを負うことにも、

   なりかねませんから。ここはどうか辛抱して下さい。お願いします」と。

   なだめる役のゼノビア。3年の年月が、ゼノビアに処世術を身につけさせて

   いた。誰もが他人を蹴落として、這い上がろうとする過酷な環境の中、

   やんちゃなだけの少女から、めはしのきく大人の女性?へと成長させられて

   いたのだった。「チェ、わかったよ。なら、戻るぞ」「はい」2人は跳んで、

   その場から消えたのだった。(シャラーズはエム族の女性のみの集団

   だった。)その気配も知らないで、ルチリア達と別れた黒制服士団、

   アンテーィヌ隊の第1班の隊員達は、亡骸になってしまった、2つの遺体、

   マルルの父親、リザ族(高体温族)のブルーノと、母親のイユエラを、
  
   一時、全員で手を合わせて、イリアスの祈りの言葉を発してから、

   連れてきている黒馬の背に、2人一緒に載せて、白い布を掛けて、全員が

   反転して、来た道を戻り始め、自分達の領地へと移動していた。しかし、

   無事に戻れるという保障はどこにもない。今は、イリアスとの全面戦争が、

   まさに始まろうとしているその最中で、裏切りが発覚すれば、戦争に

   先がけて、他のクトールの部隊に総攻撃を受け、全滅させられ、残った

   家族達も、全員が処刑されるのは、火を見るよりも明らかだった。

   だが、それでも、行方知らずのアンティーヌ隊長や、副隊長ルチリアや、

   第1班長のセプテムに、従おうと決めたのは、クトール大帝国のあまりの

   冷血さに、恐れを抱きながらも、内心では、隊員の誰もが、嫌気がさして

   いたからだった。まだ若いながら、優秀で隊員思いのアンティーヌや、

   ルチリアを、隊員の誰もが、尊敬とその若さゆえの愛情を感じていたから

   だった。彼らの誰もが、自分たちのことより、アンティーヌやルチリアや

   セプテム。そして、好感がもてそうなマリアやマルルが、無事でいられること

   を祈っていたのだった。

    一方、イリアス内のグミ族(黄金毛族)のカミュエル宰相の私邸では、

   カミュエルのすぐ下の弟、盲目のヒュージョンが、妹のアメリスと、末弟の

   ヤッフェと3人だけで、ヒュージョンの部屋、鏡の間で対峙していた。

   「いいか。今は兄者が不在だから、暫定的には、僕がこの家の主だ。そこで

    申し渡す。2人とも、即刻、ここを立ち退け。そして、ガガーリス国に居る

    叔母さんの所に一時保護を受けろ。その後の身の振り方は、各々が

    みずからで決めろ。いいな!」ヒュージョンの一方的な言い分に、

    「お兄様。そんなの嫌です。絶対に!」「オイラも嫌だ!」抗議する

    アメリスと、ヤッフェだった。((お待たせして、誠に済みません。身体の

    状態が悪い時も多いのですが、なるべく頑張りますので、よろしくお願い

    いたします。それでは又。台風災害にご用心下さいね。次回に続く。))