第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のベール(5)
「君らは2人とも死なないでもいい。今、この状況で、
命が一番危ないのは、この俺だから」と、ファルガーと、ミノメの2人に声を
掛けてきた、すぐ近くの壮年?の男がいた。両目が空いた白い布頭巾を
かぶって、顔を隠している。彼は重傷のアル族(長眉族)のトートだった。
身体に藍色の寝巻きを着ている。「失礼だが、顔もひどい傷で隠している
のだ。おまけに身体の方も、もうボロボロだ。だから、俺はここに残る。
だから、君達はここから逃げて、生き残るんだ」と。急に割り込んできた、
トートに、思わず、顔を見合すファルガーと、ミノメ。無理もなかった。子供の
時分に、イリアスを出てしまっていた、2人は、イリアスの英雄と言われて
いた、トートのことを知る筈もなかった。「ご厚意はありがたいですが、
これからどうするかは、2人で決めますので、ご遠慮下さい」と、自分達への
干渉はやめて下さいと、きっぱりと言うファルガー。「それは済まなかった。
なら、もし万が一、俺が死にそうな目になっていても、放っておいてくれ」
トートにそう言われても、2人はただ、「まあ、それはたぶん、大丈夫です。
おそらく、そんな余裕はないですから」と、訝しげに答えるファルガー。
「そうか。ありがとう。済まなかった。邪魔をして。少し眠る」と、話を断ち切る
合図のように、布団をかぶるトート。ファルガーと、ミノメは逆に、トートに興味が沸いてきたが、大きないびきが聴こえてきて、