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プライドとプライド 

マリア達、普通の心の者たちと、
クトール軍団達、よこしまな心にとらわれし者たちとの地球を含めての空間争奪戦だ!!

プライドとプライド 改

2011年12月18日 21時18分10秒 | Weblog

      第7章  大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のベール(5)

            「君らは2人とも死なないでもいい。今、この状況で、

   命が一番危ないのは、この俺だから」と、ファルガーと、ミノメの2人に声を

   掛けてきた、すぐ近くの壮年?の男がいた。両目が空いた白い布頭巾を

   かぶって、顔を隠している。彼は重傷のアル族(長眉族)のトートだった。

   身体に藍色の寝巻きを着ている。「失礼だが、顔もひどい傷で隠している

   のだ。おまけに身体の方も、もうボロボロだ。だから、俺はここに残る。

   だから、君達はここから逃げて、生き残るんだ」と。急に割り込んできた、

   トートに、思わず、顔を見合すファルガーと、ミノメ。無理もなかった。子供の

   時分に、イリアスを出てしまっていた、2人は、イリアスの英雄と言われて

   いた、トートのことを知る筈もなかった。「ご厚意はありがたいですが、

   これからどうするかは、2人で決めますので、ご遠慮下さい」と、自分達への

   干渉はやめて下さいと、きっぱりと言うファルガー。「それは済まなかった。

   なら、もし万が一、俺が死にそうな目になっていても、放っておいてくれ」

   トートにそう言われても、2人はただ、「まあ、それはたぶん、大丈夫です。

   おそらく、そんな余裕はないですから」と、訝しげに答えるファルガー。

   「そうか。ありがとう。済まなかった。邪魔をして。少し眠る」と、話を断ち切る

   合図のように、布団をかぶるトート。ファルガーと、ミノメは逆に、トートに興味が沸いてきたが、大きないびきが聴こえてきて、

プライドとプライド 改

2011年12月18日 21時18分10秒 | Weblog

      第7章  大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のベール(5)

            「君らは2人とも死なないでもいい。今、この状況で、

   命が一番危ないのは、この俺だから」と、ファルガーと、ミノメの2人に声を

   掛けてきた、すぐ近くの壮年?の男がいた。両目が空いた白い布頭巾を

   かぶって、顔を隠している。彼は重傷のアル族(長眉族)のトートだった。

   身体に藍色の寝巻きを着ている。「失礼だが、顔もひどい傷で隠している

   のだ。おまけに身体の方も、もうボロボロだ。だから、俺はここに残る。

   だから、君達はここから逃げて、生き残るんだ」と。急に割り込んできた、

   トートに、思わず、顔を見合すファルガーと、ミノメ。無理もなかった。子供の

   時分に、イリアスを出てしまっていた、2人は、イリアスの英雄と言われて

   いた、トートのことを知る筈もなかった。「ご厚意はありがたいですが、

   これからどうするかは、2人で決めますので、ご遠慮下さい」と、自分達への

   干渉はやめて下さいと、きっぱりと言うファルガー。「それは済まなかった。

   なら、もし万が一、俺が死にそうな目になっていても、放っておいてくれ」

   トートにそう言われても、2人はただ、「まあ、それはたぶん、大丈夫です。

   おそらく、そんな余裕はないですから」と、訝しげに答えるファルガー。

   「そうか。ありがとう。済まなかった。邪魔をして。少し眠る」と、話を断ち切る

   合図のように、布団をかぶるトート。ファルガーと、ミノメは逆に、トートに興味が沸いてきたが、大きないびきが聴こえてきて、

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2011年12月15日 14時22分54秒 | Weblog

      第7章  大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のベール(4)

        「お久し振りです。ゼラックス様」と、リオンと、機械人間?ゼーラ

   の会話を割り込むように、声を掛けてきたドクター・テオ。それを聞いて、

   リオンの表情が険しくなった。「何故?そのことを知っている。お前は一体

   何者だ?」と、詰め寄ろうとするリオンを、周りの男達が取り囲む。「お前らは

   全員グルだな。一体?」「グルとは少々心外ですな。我らは死をともにと、

   誓い合った仲間ですよ」と、テオの言葉に、周りの男達と、少女のメドルサが

   頷く。「だから、ここではなんですから、酒でも酌み交わしながら、詳しい話を

   しようと思っているんですよ。お尋ね者集団、盗賊ラックサップの2代目頭領

   さん」と、そう言いながら、みずからの顔の皮膚を触るテオ。すると、まだ

   若い顔に変わっていた。その変化に、リオンの右腕の包帯から、思わず、

   声が出た。「もしかして、オーゼ・ヘルモント。お前、生きていたのか?

   よくもまあ、あのエム・シャルミ公女の毒牙から、逃れられたな。信じられ

   ない」と。「まあ、ここでは、積もる話もなんですので、木を隠すなら、森の中

   にです。こいつらなら、口の堅さは、わたしが保証いたします。どうか、

   馴染みの居酒屋まで、ついて来て下さい。すぐそこですから。ゼラックス様。

   リオン様」リオンとゼーラは、お互いのテレパシーで、確認し合ったの

   だった。たとえ、これが罠であろうとも、話の真否を、この者達の正体を、

   暴かずにはいられないと。

     エヴィータは無理やり、この1つの身体に、宿っている2つの内の一つ

   の、マリアの魂を眠らせたのだった。ここからはおそらく凄惨な戦いになる。

   おそらくはマリアの身体はもとよりも、精神が持たないで、壊れてしまうのを

   恐れた、エヴィータの配慮だった。そして、この戦いにけりをつけて、ゴリラ達

   に定着させられた、クトール側の人間達の魂を、開放させてやり、安らか

   なる永遠の眠りに、つかせてやれたなら、みずからも、このマリアの身体

   から去って、地獄のハベスに、裁かれるかもしれないが、この世とおさらば

   しようと、決意したエヴィータ姫だった。大きく1つ、深呼吸して、心を

   落ち着かせると、猛ダッシュで、そびえ立つ黒光りのする、尖がり塔に

   向けて、一目散に駆け出したのだった。すぐに邪悪な気が、ビンビンと、

   全身に感じられてきた。だが、進む以外に無いと思うエヴィータ姫を

   見つめる、愛情に満ちた、別の2つの遠い眼があった。

     「よく生きていたな。ミノメ」「義兄(にい)さんこそ」と、ラース族

   (透明化族)のファルガーと、義弟のミノメは、人目も構わずに抱き合って、

   お互いの無事を喜び合っていた。無理もなかった。お互いの消息が

   わからず、もうすでに、死んでしまっていると、諦めていたからだった。

   ここは、パロダムス診療院本部の男子房・エンドレンと名づけられた大部屋

   の中だった。「せっかく再会できたのに、どうやら、今度ばかりは危ない

   かもな。俺らの命」「確かにクトールの大軍が、迫ってきているみたいだね。

   ここに」「そうだな。まあ、この診療院が、目障りなんだろうな。クトールに

   とって」「でも、何故わざわざ軍隊を送り込むんだろう?凄い使い手の

   術師、数人を、ここに跳ばせば、一気に片がつくと思うけど・・」と、疑問に

   思うミノメ。「確かに。何かあるのかもな。俺達の知らない裏事情が」「えっ?

   どんな・・」「いや、それは俺にもわからん。何しろ、イリアスの裏切り者の

   俺だからな。知るすべもない」そこで、言葉を切るファルガー。傷が

   癒えれば、いずれ、この国を裏切った重罪によって、処刑されるだろうとの

   予想を、言うのをやめたのだった。せっかく会えた、義弟を悲しませたく

   ない。父・アロエード。母・マリーナが亡き今は。だからこそ。このどさくさに

   紛れて、なんとか、ミノメを安全な場所に、逃してやりたいと思うファルガー

   だった。お互いに身体を離すと、まだ、痛む身体に、鞭打つように、薄緑色

   の寝巻きの上下を着たファルガーは、自分のベッドの下から、木箱を取り

   出して開けては、3つの指輪を出し、すぐ横の木のベッドの上に座り直した、

   薄茶色の寝巻きの上下を着ている、ミノメの右手を取って、「この

   シスドーワ・ピエール(6つの秘石)の指輪の半分、3つをいつ何時も、

   はめていてくれ。そうすれば、石同士が感応しあって、お互いの居場所が

   わかりやすくなる。まあ、1キロ以内だがな」と、ミノメの右手の人差し指に

   赤色(火、炎の石)、中指に茶色(土、風の石)、薬指に青色(水、氷の石)

   父、アロエードから譲り受けた、ラース家の一子相伝の6つの秘石の指輪の

   半分の3つを、はめてやるファルガー。本当は全部を譲りたいが、

   そうすれば、みずからの死の覚悟を、悟られてしまうので、今はやめたの

   だった。その心情を知ってか知らずか、義兄の愛に微笑むミノメ。彼もまた、

   シャルミ公女の手下の女達に、施された死のタトゥー、ブルースネーク

   (青蛇の文様)の呪いのことを話せずにいた。本当はオーゼ族(細胞変装

   族)のミノメは今、みずからの術で、細胞を一時拡長させていて、背を

   10センチ程、伸ばさせていた。いずれ元に戻るのは時間の問題

   だったが・・。    ((次回に続く。))

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2011年12月11日 22時11分29秒 | Weblog

      第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のベール(3)

         ふいに立ち止まるグミ・カミュエル。今彼は東京に跳んで、戻って

   いた。この世界では、フリージャーナリストの江藤亨(えとう・とおる)として。

   カミュエルは、グミ・パロダムスの心遣いを知っていた。祖父・ザクエルの頃

   から、3代に仕えてきてくれた、老雄の気持ちを。だから、心を鬼にして、

   何も気付かない振りをして、本部診療院を後にした。大変な危機が迫って

   きているのはわかっていたが、断腸の思いで、振り切ってきたのだった。

   パロダムスの見抜いたように、今、イリアス・オレオ王国には、不穏な空気

   が、あちこちで起こっていて、正に問題が山積していた。どれもがおざなりに

   出来ない問題で、カミュエルは確かに多忙で、身体がいくつも欲しいとは、

   思っていたが、もちろん、そうはいかないので、それぞれは、信頼の置ける

   部下たちに、任さざるを得ない状況ではある。だから、本部診療院の護衛

   は、パロダムスたち自身に、任せることにしたのだ。だが、万が一、危うく

   なれば、カミュエルみずからが、駆けつけるつもりではいた。今は、この東京

   に、アメリカ西海岸からやって来る、レッド・ラビリンスという、赤色の仮面を

   着けた謎の?パフォーマンス集団のことが、気掛かりだった。このレッド・

   ラビリンスの動向を、探りにわざわざアメリカに行かせた、グミ・クレスキン

   や、オーゼ・グレシャム、その他、数人の部下の連絡が、まるで取れなく

   なっていた。しかし、これ以上の人材をさく余裕はなかった。だから、向こう

   から、この東京にやって来てくれるのは、正に渡りに船で、自分自身で

   捜索、調査をしようと決めていた。部下を死地?に、おいやった責任も、

   痛感していたからだった。この異次元世界の東京にも、何故か、クトールの

   魔の手は、間違いなく伸びていた。シュリンド城で消えた、エヴィータ姫を

   捜し求めて、東京という未知の地に、行き着いたカミュエル。そこにも、

   クトールの影を感じた時は、あまりの驚愕で、身が震えた。だから、多忙の

   合間をぬって、たびたび、この地に跳んでいるカミュエルだった。クトールの

   真の狙いがわからず、ぜひ、掴みたいと思っていたのだ。

    「どうも、お待たせして、済みません。その上、多大なるご寄付を、

   ありがとうございます。で、その右腕を診てもらいたいのかな。え~と・・」

   「リンド・トーレカです。あなたは?」「わしは名乗るほどの者ではない。

   名前なぞ、とうに捨てた。ただ、ここではテイオニース(酒の神)を略して、

   ドクター・テオ。まあ、単純にテオという奴もいるがな。普段は、ただの

   飲んだくれのオヤジだがな」と、自嘲気味に言う、小柄で痩せこけた枯れ木

   のような老人。禿げ上がった頭に、申し訳ない程度に、残っている緑色の

   髪。白い肌で、正反対にボウボウな緑色のあごひげ。眼は赤い色で、リオン

   は内心ほっとした。髪も眼も緑色なら、自分と同じササ族(動植物中間

   人族)なら、身元がばれかねないと思ったからだ。「いえ、この腕はもう

   だいぶ良くなってきたので、診てもらうには及びません。ただ、この子が、

   引っ張ってくれたので、興味本位についてきました。済みません。これで

   失礼します」と、かたわらのガガリー族(2色肌族)のメドルサを、チラッと

   視て、足早に立ち去ろうとしたリオンだったが、「ここでお前を帰すわけには

   いかんな。知っているぞ。ササ・ミーザ・リオンよ」と、テオの不意な言葉に、

   おもわず振り向くリオン。「その右腕には隠れているな。シャルミ公女の元

   から、逃げて来た機械人間ゼーラが。違うかな?リオン」秘中の秘。

   我が師、ササ・リンド・トーレカしか知らぬ秘密を、みすぼらしい薄茶色の

   着物上下に、汚れた草履を履いた老人が、何故?知っているのか。

   あまりのことに、両目を大きく見開いて、テオを凝視するリオンだった。

   「お前の右腕の行方も、大体の見当はついている。どうだ。今から、お前に

   貰ったこの砂金で、飲みに行く。付き合うだろう?」「もちろんだ」フィガロス

   首長に頼まれた仕事も忘れて、小屋を出るテオやメドルサや、一緒に居た

   数人の男達。その後に続くリオン。(知っている男か?ゼーラ。)と、白い

   包帯をした右腕の中のゼーラに訊くが、(いや、視た事も無い男だ。リオン。

   お前はどうだ?)と、逆に聞き返されても、人の顔を憶えるのは得意だと、

   自負するリオンでさえも、ドクター・テオの風貌には、まるで覚えがなかった

   のだった。    ((次回に続く。))

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2011年12月07日 11時56分51秒 | Weblog

      第7章  大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のベール(2)

          「もうここでいいですから、ダヴィデを連れて、この辺りで待って

   いて下さい。そして、もし、危険を感じたら、わたしに構わずに、ダヴィデ

   ともども逃げて下さい。いいですね」と、振り返りながら、念を押すマリア。

   ゴリラのハーケンは、もちろん、テレパシーで反論する。(あなただけ、

   危険な目に会わせるわけにはいかない。ただの道案内ではない。あなたを

   見届けるのが、皆を代表して、連れて来たわたしの役目。ここで引き下がる

   わけにはいきません。)と。「あなたの気持ちは嬉しいですが、そうもいきま

   せん。だって、あなたには、帰りを首を長くして、待っていてくれる、愛する

   家族がいるじゃないですか。何もここで死ぬことはないのです」マリアの

   青い瞳が、まっすぐにいかついハーケンの眼を、見つめていた。少し

   ドギマギしながらも、さらに反論しようとしたハーケン。しかし、「グダグダ

   うるさいんだよ!わらわはイリアスの姫で、王位後継者のイリアス・ディーン・

   エヴィータぞ。お前たちは、元々は我が国の臣下であろう。臣下なら、

   わらわの命令は、絶対のはず。かならず、聞かなければならぬ。もし、

   本当に臣下を辞めて、野に下るというのなら、別だがな。そうなれば、

   家族には永遠に会えん。いや、会わさんぞ。セーナにも、エルメーターにも」

   と。マリアの瞳が青色から、右は金色、左は銀色に変わっていて、口調も、

   マリアのものから、エヴィータ姫のものに変わっていた。「何をおっしゃい

   ます。わたしは、ご覧のとおりのガッシュ族(鉄犬歯族)の者。クトールの

   臣下ではありますが、イリアスとは無縁の者です」と、背中に妙な汗をかき

   ながら、必死に否定するハーケン。「まあ、どっちでもいい。わらわには。

   ただ、さっきも言ったように、聞けぬというなら、隠れ場所も大体わかるぞ。

   すぐに家族は捕らえて、別の場所に幽閉する。死ぬまでな」と、尊大な態度

   のエヴィータに、ハーケンは折れるしかなかった。「すべて、お見通しです

   か。わかりました。従いましょう。しかし、何故?わかったのです。さっき

   会ったばっかりなのに?」と、舌を巻くハーケン。無理も無い。先程の

   ベガシス姿のダヴィデの乗馬?でマリアの肩に触れた、ハーケンの手から、

   サイコメトリーの能力で、ハーケンの情報を得ていたのだった。(噂はよく

   聞いていたが、この方があの鬼姫と恐れられた、エヴィータ姫。正にききしに

   まさる恐ろしさじゃ。底が知れぬ。)と、見た目は小娘なのに、畏怖の念さえ

   憶えるハーケン。その手に、黄色の小鳥姿のダヴィデを手渡しながら、

   「ダヴィデは疲れきっているのじゃ。大きな物に変身していたからの。その

   身体を優しくさすってやってくれ。大丈夫。生きて戻る。かならずな。だから、

   ここで大人しく待っておれ。いいな」と、怖い表情から、急にいたずらっぽく、

   愛らしい微笑みを見せると、前方にを向き直って、2度と振り返らずに、

   そのままで不気味な感じのする、黒い尖がり頭の高い塔の方へと、小走りに

   駆け出していた。エヴィータの武器は、腰の宝剣、ルジェーヌと、首に下げて

   ある少し大きめの鎖のネックレスと、さっき拾った(叔父アドラスの)時を操る

   懐中時計のエグザーレのみだった。(確かにわたしなぞの能力では、

   あしでまといになるだけ。それで姫様はそんなわたしを気遣って、わざと・・。

   姫様。どうか、ご無事で。)と、久方振りに、マリウスの祈りの言葉を捧げる

   ハーケンだった。エヴィータ姫の見抜いた通り、ハーケンはガッシュ族の

   中では、少数派のイリアスの臣下だった。そして、スパイとして、黒制服士団

   に潜入していた。そのことを知っているのは、家族と、そう命じたイマージュ

   の前総帥の故グミ・キュエールと、グミ・パロダムスだけだった。だから、

   家族である妻のセーナも、娘のエルメーターも、実はパロダムス本部

   診療院に、偽名で看護師として、働いていたのだった。

    「どうやら、カミュエル様は戻られたみたいです」と、そう、パロダムスに

   報告したのは、痩せぎすの2メートル近い長身で、紫色の軍服の上下に、

   黒色のブーツ。腰に長めのサーベルを差していて、禿げ上がった頭に、

   レモン色の髭を生やし、青緑色の瞳に、褐色の肌が特徴的なユーコ族

   (調節眼族)のヴァーニ・ザレックスだった。(ルペイジと、サヴォーヌの

   従兄弟である。)「しかし、よろしいのですか?カミュエル様に、今、ここに

   迫りつつある敵のことを、お知らせしないで?」「いいんだよ。ヴァーニ護衛

   隊長。よく、サイコ・ヴァーリア(心的防壁)を張ってくれた。さすがの

   カミュエル様も気付かないでおられた。礼を言うぞ。あのお方はただでさえ、

   ご多忙の身。その上、ご心痛も多い。ここは我らだけで守らねばならぬ。

   なんとしてもな」と、老齢の身ながら、気迫あふれるパロダムスだったが・・。

              ((次回に続く。))

   

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2011年12月03日 20時07分44秒 | Weblog

      第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のベール(1)

          「ここだよ。おいちゃん」と、ササ族(動植物中間人族)の

   ミーザ・リオンの左手を引っ張る少女・メドルサ。焦げ茶色のチュニックに、

   白い腰巻。黒い短パンに、薄緑色のロング・ブーツという、ここ、沿海の国、

   ガガーリスの港町・コーラルの男達の日常服を着て、ここの住人として、

   偽装しているリオン。しかも、本当の緑色の髪、瞳に白い肌を隠して、より、

   ガガーリス人になりすますために、両目に青色のカラーコンタクトをして、

   顔は左半分だけ、焦げ茶色の塗料を塗って、頭には、紫色のかつらを

   被ったのだった。ここ、コーラルに多い、紫色の髪の毛に、青色の眼。

   それに約90パーセント近く居る、ここの先住民、ガガーリ族(2色肌族。

   身体の右側が、白くて、左側が褐色の肌。)髪の毛や、瞳の色はいろいろ

   居たが、肌だけでなく、髪や瞳の緑の色を隠したのは、ササ族とは気付かれ

   たくないための2重の変装だった。何の疑いもなく、おまけに恩人の(ササ・)

   リンド・トレーカの偽名を名乗ったリオンを信じる、黒い髪の毛に黒い瞳。

   肌の色だけは、ガガーリ族特有の2色肌で、額に深い斬られ傷が残って

   いて、うす汚れた薄黄色のサリーを着て、裸足のままのメドルサ。彼女は

   ガガーリ族と何かのハーフと見えたし、その姿は、幼かったが、(6歳

   くらい?)この世に生を受けて以来、過酷な運命にさらされてきたのだろう

   とは、容易に想像が出来るのだった。だが、その微笑みは、とても、

   愛らしかった。しかも、彼女の好意で、名医を尋ねる途中、嫌な気配を、

   感じていたが、それもいつのまにか消えていた。(本当のトレーカのおかげ

   とは、知るよしもないリオンたちだったが。)(第4章の6と、16を参照。)

   (もちろん、クトール王、クコンラの親衛隊・ミリオーネの隊長のケレト族

   (たてがみ族)のヴァナヘイムと、副隊長のスバルトの姿も、消えていたが。)

   メドルサが指差すその眼前には、みすぼらしい、木組みのほったて小屋

   が、いくつも並んで建っていて、その1つを示したのだった。リオンは、

   何の期待もしないで、ただ興味本位で、言われるままに、メドルサの後に

   続いて、その小屋の木の扉を開けて、中に入っていった。すると、多くの

   眼がジロリと、無遠慮に2人の全身を、食い入るように見つめてきたの

   だった。異様な空気に、圧迫感を感じたが、メドルサの「おい!じじい!

   金づるを連れてきてやったぞ!」の声に、周りでどよめく声が、次々と

   上がったのだった。仕方なく、苦笑するリオン。だが、少女の一言が、

   周りの雰囲気を、一変させたみたいで、急に険しいものから、柔らかな

   視線が、2人に浴びせられた。「うるさいぞ!ちび。今、手が離せん。

   しばらく待て!」と。奥と仕切られた布切れの中から、しわがれた老人の声

   が聴こえてきた。リオンは懐に隠してあった砂金の小さな袋の1つを、

   メドルサに渡したのだった。「毎度あり!」と、大げさに恭しく、お辞儀をして、

   受け取るメドルサに、小さい頃、妹同然に育った、ササ・ヘーメラーのこと

   を、ふと思い出すリオンだった。(この仕事を早く終わらせて帰ろう。

   ヘーメラーの元に。)何故か胸騒ぎを覚えて、彼女の顔が思い浮かぶ

   リオンだった。

     そのヘーメラーは、イリアスの王の本城、シュリンド城近くのグミ族

   (黄金毛族)のパロダムス直属の本部の診療院の中、女性房・白欄の部屋

   で、治療を受けていた。織沢美姫(おりさわ・みき)と、人形のクークラと、

   同じ部屋に寝かされていた。そこには、エム族(長耳族)のシャルミ公女の

   すぐ下の妹のシャルーダも居た。(もう1人、末の妹は、悪童の噂の高い、

   シャループ。)「どうもヤバイな。たくさんの邪悪な気配が、ここに集まりつつ

   ある」と、緑色の長い髪と眼で、白い肌。薄茶色の着物の院服を着用して

   いる、ヘーメラーが呟いていた。もちろん、普通の日本人の美姫も、そして、

   紫色の髪の毛で、白い肌に、オレンジ色の瞳の(オレンジは女性の時。

   男性に変わる時には、眼の色が、青色に変わる。エム族とヨーグ族の

   合いの子。禁忌の子だった。もちろん、シャルミと、シャループとは本当の

   姉妹ではない。(2人は実の姉妹同士。)むしろ、彼女らから、いずれは排除

   される運命でさえいた。)そのシャルーダも、同じ院服を着せられていた

   こうしてはいられない」と、起き上がるヘーメラー。まだ、本調子ではないが、

   戦場や、脱走など、過酷な生い立ちが、戦いが迫っている危機感を、

   嗅ぎ取っていた。その時、「まだ、激しい運動は無理です。大人しくして

   いて下さい」と、声を掛けて来たのは、女性院の責任者で、副看護師長の

   オーゼ族(細胞変装族)で、長い赤毛の髪に青い眼で、白い肌。頭に白い

   バンダナを巻いて、薄いピンク色の上下の看護服に、黒いサンダルを

   履いた、(グミ・カミュエルの配下でもあり、イマージュの一員でもある。)

   アクリアで、悠然と立っていて、この部屋に居る、すべての女性患者?

   10数名を見つめていたのだった。((次回に続く。))

   

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2011年12月01日 17時51分29秒 | Weblog

   第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。

         (20)(終わり。)

          「いざ、参る」と、オーゼ・オレンズ(ダーリエ)が俊足で、

   ヘミュ・ルチリアに迫った。「いいな。誰も手を出すな。正真正銘の一騎打ち

   だからな」と、ルチリアも、背後の部下達に釘を刺しながら、手に持っている

   短槍を回して、迎え撃った。激しい金属音が数回した。剣と槍の刃がぶつか

   り合っていたからだ。「ほほう、男にしては華奢な身体つきと見たが、さすが

   は言うだけのことはあるな」と、感心するルチリア。「だが、こっちも別の用事

   があって、愚図愚図は出来ない。すぐに終わらせてくれる。俺の勝利でな」

   と、オレンズの剣を弾きながら、腰を落として、地面に手をつくルチリア。

   「グランド・キャッチ・ホール!」手の念動力が地面に干渉して、あちこちに

   小さな穴が空いて、オレンズの両足もめり込んで、膝まで地面の下に落ちて

   しまっていた。「正々堂々とはいかないが、こちとらも急いでいるんでな」と、

   ルチリアの愛用の短槍・ショーグルで、動けなくなったオレンズの胸に、

   とどめの一撃を突こうとした。その刹那、「アイス・ウォール・ミニ!」と、

   水媒体師のオレンズが、上半身の前に、氷の壁を具現化させて、ショーグル

   の切っ先が、壁の真ん中に突き刺さって、抜けなくなっていた。「お前が水

   媒体師なら、俺は土石媒体師だ。ストーン・スクリュー・アタック!」と、

   ショーグルから手を離して、少し下がると、両手をかざした。すると、両の

   手のひらから、石つぶてが具現化されて、氷の壁に次々と当たっていった。

   しかし、それは囮で、オレンズが防戦している隙に、ショート・テレポートで、

   オレンズの背後に回っていた。「誰も援護するな!」と、オレンズの声。

   その勢いに圧されてか、クレーレ軍の兵士の誰もが、援護の動きを止めた

   のだった。ルチリアが抜いた短剣を、見えぬ背中から、愛剣で受け止めて

   いた。しかし、ルチリアは自慢の腕力で、短剣をその場に捨て、オレンズの

   剣を持つ、右手首を、みずからの右手で押さえ、身体を背後から密着

   させて、左手で後ろから、オレンズの首を絞め上げた。そのままで、息の根

   を止められそうだったが、ルチリアはオレンズの正体に気付いて、ハッと

   すると、その手を急に離して、味方の居る方へと足を運び出していた。

   オレンズの失神で、氷の壁が消えて、地面に落ちたショーグルを拾い

   ながら。「我らの負けでよい。おい、引き上げるぞ!」と。ルチリアの号令で、

   アンティーヌ軍は退却を始めたのだった。何事もなかったかのように。

   クレーレ軍の兵士たちも、アドラスや、ミシャーニや、セダターンを助け起こ

   して、怪我人用の馬に括り付けていた。同じように、足が地に埋まったまま

   のオレンズも助け出そうとしたのを、「待ちなさい!彼はわたしが救う」と、

   いつの間に現れたのか、クレーレの妻で、ダーリエの母親のオーゼ・

   ハーズ・ペルーネが薄いピンクの長めのサリーを着て、出現して、兵士らの

   動きを制して、本当は我が娘のダーリエ(オレンズ)を、凄い念動力で地面

   から掘り起こすと、宙に浮かせて、連れていた馬の背に載せて、紐が勝手に

   オレンズの身体を、馬の背に括り付けたのだった。「彼は我等が一族の

   跡継ぎだ。わたしが手当てする。案ずるな」と。大将クレーレの奥方の言葉

   には、誰も逆らえず、黙って同意のうなづきを、誰もがしたのだった。

   武に優れていた、ペルーネは鋼鉄の女の異名があった。しかし、ペルーネは

   心で泣いていた。(済まぬ。ダーリエ。そなたにだけ、我が家の呪いの責めを

   その身、一身だけに背負わせて。出来るなら、代わってやりたいが。そうも

   いかぬ。許せよ。だが、母がついておる。お前だけの苦労にはさせぬ。

   かならず、マリウスの像は手に入れて、我が家と、お前の呪いはかならず

   解いてみせる。私の手で。)と。そこには他の者が知らない、オーゼ・ハーズ

   家の呪われた歴史があった。それを知るのは、クレーレと、ペルーネと、

   ダーリエの3人のみであったが。

     マリアと、ゴリラ姿のハーケンはある山の麓の立っていた。マリアの右肩

   には、黄色の羽根のインコのダヴィデが載っていた。エネルギーの消耗の

   激しいベガシス姿のままでは、長時間は居られないダヴィデだった。

   「ここがそのドールレイと言う者の棲むやかたですか?」と訊くマリアの問い

   に、「そうです。ここです」と答えるハーケン。2人と1羽の眼前には、三角錐

   の雲の上にまで聳え立つやかたがあった。薄暗い中、黒光りする頭部の

   尖ったやかたが。うす気味悪いくらいに、ひっそりと立っているのだった。

         ((この章、終わりです。次からは次章にて。))

プライドとプライド 改

2011年11月26日 21時45分41秒 | Weblog

  第6章  呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。

         (19)

         ベガシス(翼の生えた白い馬)姿のダヴィデの背中の上に、

   前側にマリア(エヴィータ姫)、後ろ側にゴリラ姿のガッシュ・ハーケンが

   乗っていた。ハーケンは感動に震えていた。ダヴィデがその重さをものとも

   せず、天空高く飛んで、深い森の木の上を、高速で浮遊していたからだ。

   あまりに信じられない展開に、マリアの肩に載せた手に、汗が滲む。マリア

   が気遣って、テレパシーを送ってきた。(大丈夫ですか?つい、気がせって、

   スピードを上げましたが、少し落としましょうか?)と。ハーケンも返す。

   (心配はご無用です。一刻も早く、この悪夢から開放されたいのです。

   そのためなら、微力ながら、わたくし、お手伝いさせていただきます。)と、

   (それこそ、大丈夫です。わたしが決着をつけますから。)それでテレパシー

   交流は終わって、急ごしらえの手綱の手を強めて、前方を見るマリア。

   ハーケンはつくづく自分は果報者だと思えた。そうはいっても、相手はあの

   同じ部族のガッシュ・ドールレイ。その恐ろしさは身に沁みてわかっては

   いたが、今は何故か恐怖心が消えていた。ただ、かつて、武に生きた者

   として、主(あるじ)と仰ぐ者のために死ねるのは、身に余る光栄だと。

   遅過ぎた春かもしれないが、これで、りっぱな最期を迎えられる。だが、

   この娘。いや、主の命だけは守るぞと心に誓うハーケンだった。

   その時、マリアが下方に、何か光る物が近くの木の枝に引っ掛かっている

   のを見つけ、そこに行くようにダヴィデにテレパシーを送った。マリアが

   右手を伸ばして、素早くそれを手にした。それは叔父・アドラスの鎖の切れた

   懐中時計のエグザーレだった。それに触れた瞬間、サイコメトリング(手に

   触れた生き物や、物質の思念や、過去の経歴を感知出来る)の能力

   (柏木操や、辰神雄介にもある)も発現しつつあるマリアは、森の下の戦闘を

   知り、叔父やユニ・ミシャーニの危機を感じたが、思いを断ち切るように

   首を振り、(時間がない。お願い。先を急いで。ダヴィデ)と、全速力を促し、

   猛スピードで眼下を遠ざかるマリアたちだった。

    その眼下では、クトール側の軍隊の統括者、ヘミュ族(変化髪族)ルチリア

   で、女性のような長い銀色の髪に、黒い瞳。小麦色の肌に、口元には

   うっすらと銀色の髭を生やしていた。青色のマントに、黒制服士団の象徴の

   長袖の黒いシャツに、黒い短パン。黒い肘当て、膝当てに、足だけ薄黄色の

   草履を履いていた。そのルチリアが馬を降りて、単身、前に出た。

   すぐそばに倒れているアドラス、ミシャーニ、セダターンを横目で視ただけ

   で、「この者たちも救いたろう。我は隊長代理のルチリアだ。唐突ながら、

   この場は、我との一騎打ちで、勝敗を決めたい。勝っても負けても、双方が

   恨みを一時捨てて、この場のみは、即時撤収ということで、ご承知願い

   たい。返答はいかが?」と。それにイリアス側の後方から声がした。一頭の

   大きなガゼール(大きな2本の角が立派な大型の牡鹿)に木製の馬車?を

   引かせている車上の人物から。青い短髪にレモン色の瞳に白い肌。その顔

   のあちこちには深い皺が。ルチリアとは、対照的に白い着物を着た老人

   だった。その両足はもう長い間動かなくなっていた。ビビンデとともに、

   ゴリラたちに、頭を痛打された後遺症で。それは、年老いたオーゼ族(細胞

   変装族)のクレーレの姿だった。「それでもよい。ただし、教えてくれたら。

   我が命の恩人、アル・ビビンデの消息を。頼む」と。しかし、ルチリアは寂しく

   首を振った。「アル・ビビンデ?申し訳ないが、我は知らぬ。他の部隊の動向

   は、残念ながら、我ら下士官ではわからぬ。それではご承知はしてもらえぬ

   か。我が軍は今は・・」ルチリアの弁解の声を遮るように、「わかった。

   すぐにこの場が収まるのは、こちらとしても、緊急の怪我人を収容したい

   ので、願ってもない申し出だ。お受けいたす。ご覧の通り、我が大将は、

   両の足が不自由だ。代わって、副将のこのわたし、オレンズがお相手

   いたす」と、名乗りを上げ、腰の剣を抜いたのは、オーゼ・オレンズ。本当の

   名前は、クレーレの娘で、白いマントに、紫色の長袖シャツ。黄色のベルト

   に、白いズボン。赤色のブーツを履いた、青い髪の毛に白い肌。右目が

   レモン色で、左目が銀色の男装のオーゼ・ハーズ・ダーリエだった。彼女は

   訳あって、女性であること、本名も隠していた。生まれてからずっと。

          ((次回に続く。))

プライドとプライド 改

2011年11月23日 22時49分26秒 | Weblog

   第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。

          (18)

             「もう大丈夫です。さすがはトート様。危うかったですが、

   なんとか一命はとりとめました。もちろん、まだ、予断を許さない状況には、

   変わりないのですが、しばらく動くのは無理ですが、徐々に回復されるとは

   思いまする」と、黄金の髪の毛も、色が薄くなっていて、無造作に伸びた長髪

   を後ろに黒い紐で、1つに括り付けていた。おまけに鼻下、顎にもうっそうと

   した髭が生えたままにされていた。青い眼に白い肌。額には深い皺が

   刻まれていた。自分よりも随分と若いグミ族(黄金毛族)のカミュエルに、
  
   ゆっくりと頭を下げる小柄な男。身にしている白い上下の衣服も、足元の

   黒いサンダルも、少し汚れている。イリアスの医の生き神と、称えられる

   グミ・パロダムス、その人だった。イリアス各地(分けられている支部ごと)

   に、その名を冠したパロダムス診療院のこの本部1つと、多くの支部分院が

   建てられていて、医のリーダーのみならず、診療院の総責任者という重責

   も担っているパロダムスだった。だが、そんな苦労は、顔には微塵も

   表わさないで、ただ、若いながらも、イリアスそのものを背負っていると

   いってもいい、青年総帥、カミュエルのかげりのある表情を気遣う

   のだった。「顔色が悪うございます。わたくしごときが、僭越ではありますが、

   問題は山積と見受けられまする。されど、なればこそ、どうか、しばらくは

   お身体を休ませなさいませ。カミュエル様」と。その気持ちはとても嬉し

   かったが、もちろん、そうはいかず、ただ、苦笑いを浮かべて、「心配を

   掛けて、済まぬな。だが、この身はまだ若い。少々のことでは、倒れは

   せぬ。また、そんな余裕もない。わたしより、ご老体こそ、無理をしては

   いかぬ。といっても、多くの怪我人、病人を、あちこちの診療院に送り込んで

   いる、張本人の1人のわたしが言うのは、正に矛盾しているがな」お互いの

   心、身体に、少しだけ暖かいものが流れ合うのだった。「すべてが終わった

   ら、釣りと湯入りに行こう。ご老体」「それはいいですな。かならず、お供

   いたしまする」だが、わかっていた。おそらくはそういう日は訪れはしないと

   いうことを。カミュエルの青い眼も、いたずらっぽく光っている。「そのため

   にも、さっさと終わらせるよ。イリアスの平穏な日々を取り戻すために」

   「そうでございまする。わたくしどもは、カミュエル様を信じておりまする。

   カミュエル様が、イリアスの武の大将軍でありますれば、わたくしは医の

   大将軍であります。後方のことはご心配なく、わたくしにお任せ下さいませ」

   その優しい瞳を、見返して頷くだけのカミュエルだった。その期待には、

   何がなんでも答えたいと、強く思った。この命に代えても。

    地面に倒れたままのアル族(長眉族)のセダターンと、ユニ族(一本角族)

   のミシャーニと、イリアス王、アンディスの実弟で、フイアナ公アドラスの

   3人。そこに、森の奥から、複数の影が迫ってくる気配が感じられた。

   (残念だが、もはや、ここまで。何とか最後の一振りの反撃でも出来れば・・)

   と、必死に起き上がろうとするセダターン。だが、オリハーンの具現化は、

   激しいエネルギーの消耗を生んでいた。無理もなかった、ササ族(動植物

   中間人族)のユグドランは、手加減出来ない強敵だったからだ。ビッグ

   ハンマーも、いつもと違って、あまりにも重く、手から離れてしまっていた。

   間違いなく、複数の音が、段々と大きくなっていて、身近に迫って来ている。

   しかし、セダターンは無様に大の字になったままで、身体がまるで動か

   なかった。悔しかったが、敵の餌食になって死ぬ運命のようだった。

   マリウスの祈りの言葉を唱えた、正にその時。「おい!大丈夫か!今、

   助けるぞ!」声がして、反対側からも、複数の影が現れていた。先頭の

   助けの声の主は、オーゼ族(細胞変装族)のクレーレと、ペルーネの娘で、

   男装の戦士、オーゼ・ダリーエで、反対側のクトール軍は、ヘミュ族(変化髪

   族)のアンティーヌが見捨てた、黒制服士団の1つの隊で、今は副隊長の

   ヘミュ・ルチリアが率いていた。だが、士気は下がり気味だった。隊長の

   アンティーヌの謎の失踪に、何よりも、ルチリア自身のテンションが下がり

   っぱなしだったからだ。(何処に居る?アンティーヌ。同じ隊の仲間という

   よりも、大親友といえるお前が、何故黙って消えたのだ?早く姿を現して

   くれ。頼む、アンティーヌ。もしかして・・)と。黒制服士団、団長で、

   冷酷非道のガッシュ族(鉄犬歯族)のドールレイに、不審の目を向け始めて

   いて、心が大きく動揺しているルチリアだった。((次回に続く。))

   

プライドとプライド 改

2011年11月20日 17時20分00秒 | Weblog

   第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。

          (17)

         「どうだ。動けまい。降参するなら・・」セダターンの言葉を無視

   するかのように、薄笑いを浮かべるユグドラン。身体中に巻きついた金属製

   の蛇?動ける筈も無い。ただ、左手のアドラスは離していなかった。だが、

   急にアドラスが地面に落下して、倒れ込み、金属製の蛇?を残して、一瞬で

   ユグドランの姿は消えていた。アドラスの元に駆け寄ろうとしたセダターン

   だったが、背後に殺気を感じて、姿勢を低くしながら、地面を転がった。

   しかし、後方から右肩を斬られてしまっていた。鈍い痛みが走る。「中々

   だな。しかし、おしい。一撃で仕留めてやろうと思ったのに」と、ユグドラン。

   「何故だ?何故ビンド・アップ・スネークから抜けられたのだ。そんな奴は

   今まで1人もいないぞ。たとえ、テレポートを使っても、抜けるはずがない」

   と、肩の傷以上に、心に痛手を負ったセダターンだった。「まあ、世界は広い

   ってことだな。イリアスの田舎ざむらい。後悔しながら死ね」三日月刀・

   シャントーゼが唸りながら、セダターンに迫る。右手は上がらなかった。

   仕方なく左手に持ち替えると、ビッグ・ハンマーを力一杯投げつけた。

   避けれる距離では無い。だが、ハンマーはユグドランの身体を透り抜けて、

   近くの木に当たって、弾け飛んだのだった。「目の前のお前は実体では

   ない。偽りの映像。まさか、ラース族(透明化族)でもあるまいし。何故?

   そんな術が使えるのだ」「知りたいか。だが、今すぐ死ぬ奴にはそんなこと、

   どうでも良かろう。お前らが信仰している、マリウスの祈りでも捧げな」

   (虚像の奴が、実体のある武器を操っている。間違いなく超一級の術者、

   戦士。本体を見つけない限り、確かに俺には死あるのみ。だが、そう簡単に

   やられてたまるか。)「フルメタル・オリハーン!」左手のひらから、丸い形

   の金属盤が具現化されて、徐々に大きくなり、直径2メートルほどの大型の

   円形の盾になっていた。シャントーゼの攻撃をことごとく跳ね返したの

   だった。(ばかめ。ここには居ない俺様なら、どの方向からも、攻撃が

   出来るぞ。眼の前のシャントーゼの攻撃を防いで、生き残れる心算か。

   たわけが。)ユグドランのテレパシーの声。その時、セダターンの背後に、

   どこからか、無数の毒を塗った矢が飛んできた。1本でも刺されば、命の

   保障はない。「やはり、後ろか」セダターンは伝説の盾・オリハーンを背後に

   向けると、みずからは捨て身で、虚像のユグドランから、シャントーゼを左手

   一本で奪い取った。すると、その瞬間、虚像のユグドランは消えてしまって

   いた。そして、オリハーンはまるで生き物のように、盾の中心に、大きな口が

   開いて、毒矢を一本残らず、飲み込んでしまっていた。しかし、そこまで

   だった。セダターンは高度な術を使い果たして、力なく足を滑らせて、その場

   にしゃがみ込んでしまっていた。オリハーンも又、セダターンの精神力、

   体力の枯渇によって、消えてしまったのだった。しばらくは動けそうも

   なかった。クトールとの激しい戦いで、先に戦死した父親、アル・コトーネの

   言葉を急に思い出していた。「いいか。我がせがれよ。お前の術の能力は

   ずば抜けている。じゃが、上には上がいる。出来るなら、伝説のなんでも

   飲み込む盾・オリハーン。その具現化の術は使うな。消耗が激し過ぎる。

   3分と持つまい。その後は、力を使い果たして、抜け殻のお前しか残らん。

   いいか絶対に使うなよ。その時は死ぬ時と思え」と。(御免な。おやじ殿。

   誓いを破って。でも、今がその時だったんだ。それほどの強敵だ。ユグドラン

   って奴は。)苦笑いのセダターン。しかし、(チッ。こっちもヤバくなってきた。

   だが、セダターンよ。お前の手の内はようくわかった。次はかならず、息の根

   を止めてくれる。マリウスの金の像も別ルートで今は捜す。しばし楽しめ。

   命の灯が消える日までな。)そう言い残して、ユグドランは風とともに消えた。

   愛用の武器、シャントーゼを、セダターンの手に残したまま。大きな息を

   吐いてから、セダターンは地面に腰掛けたまま、倒れたままのアドラス、

   ミシャーニに声を掛けたのだった。2人がかすかに動いていた。

   それを見て、胸に安堵の気持ちが広がる。(良かった。まだ、生きている

   みたいだ。それにしても、さすがはユグドラン。正に恐ろしい奴。だが、俺も

   このままじゃない。)左手に握っている、奪い取ったシャントーゼを見ながら、

   新たな闘志を燃やすセダターンだった。((次回に続く。))

プライドとプライド 改

2011年11月16日 20時02分49秒 | Weblog

   第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。

          (16)

          「済まぬな。レグルス」と、自分を看護してくれているヨーグ族

   (中性子族)のレグルス、(白い長い髪を赤い布1本で後ろに束ねていて、

   白い肌に赤い眼。(今は女性。青い眼の時は男性になる。)イリアスの象徴

   の7つの虹色の薄いマフラー、デュパングを首に巻き、下には薄茶色の

   長袖のシャツ、ロングズボンを着用し、足元には銀色の靴を履いていた。

   (王、アンディスから拝領した高貴な物だった。)若い看護人を気遣うベッドに

   寝たきりの王妃、エウロヴァだった。「まだ、熱が下がりませんね。まだまだ、

   お疲れが抜けられていないのでしょう。どうぞ、何もご心配なさらずに、

   ごゆっくりお休み下さいませ」との言葉を掛けるのが、精一杯なレグルス。

   しかし、無理もなかった。クトールとの長い戦いで、疲弊するイリアスの

   大地、建物、人民。現にイリアスの中心となっている、このシュリンド城も、

   クトールの襲撃を受け、3分の2以上が倒壊したが、今修復作業の真っ最中

   ではあった。しかし、修復完了の予定期日を、はるかに過ぎてしまって

   いた。無理もなかった。働けるほとんどの男達が、家にもほとんど帰らずに、

   ある者はイリアス各地の警備や戦い。ある者はイリアス領内はもとより、

   敵クトール領内や、周辺の小国のガガーリス(今、ササ・リオンがいる。)や、

   他の小国に諜報活動にいっているし、異次元の日本やアメリカにもいって

   いる。(その采配はイマージュの総帥、グミ・カミュエルが核となって行なって

   いる。)正に緊急の臨戦態勢で、おまけにイリアスの要、王アンディスが

   いまだ、敵、クトールの手に落ちたままという、由々しき事態。王というより、

   最愛の夫の安否不明が、王妃、エウロヴァの身にはこたえていた。重ねて、

   長男カルヴィスの死(マロ・ディオーニに殺された?)と、長女エヴィータ

   (マリア)の安否も。心が落ち着くいとまなど、皆無ともいえた。しかし、

   だからこそ、精神と肉体の調和こそ、健康の第一の事なりと、重々わかって

   いて、まだ若いながらも、将来はポスト、グミ・パロダムスと、俊英の名医の

   誉れも高いレグルスだったが、今度ばかりは自分の無力さに、嫌気が差して

   もいた。エウロヴァに優しい気遣いをする以外に、まずは手立てが

   なかった。「大丈夫ですよ。皆さんが一生懸命今、イリアスを盛り返そうと、

   頑張っています。直に、王様や、エヴィータ様の行方もわかると思います

   から、せめて、心お静かに横になられて下さいませ」と。レグルスの心情も

   わかるので、エウロヴァは厚い毛布を被って、木のベッドに仰向けになって、

   ゆっくりと眼をつぶった。「ありがとう。お言葉に甘えて、しばらく眠りまする。

   あなたの身体も心配です。他に怪我人や病人も急増していると、

   聞きました。わらわなら、言うとおりに休みますから、どうぞ、お下がり

   なさい」エウロヴァの臣下を慈しむ気持ちに、胸を熱くしながら、「それでは

   仰せの通りに。失礼いたします」と、頭を深々と下げて、扉を閉めて退室する

   レグルス。その足音が遠ざかり、消えるのを確認すると、(レグルスよ。

   わらわのわがままを許せよ。)と、心で詫びながら、また、新たに造って

   もらい、着け直したばかりのまだしっくりとこない右の義手。その手を

   見つめながら、(わたしも武の家、ツィン家の出。今までは、愛する夫や

   家族を見守るのが、わらわの役目。だが、これからは、ただ待つだけの女性

   でも、支えてもらうだけの存在でもなく、みずからの足で立って、みずからの

   頭で考えて、みずからの身の進退は、みずから動き、その身もみずからが

   守る。わが父上、母上。婚礼の時に誓った、夫の影に徹するの決め事を、

   今からは破りまする。マリウスの像のちからを借りまする。責めは死して

   のち、お受けいたしまする。今はただ、見守っていてくださりませ」胸の前で、

   両の手の指を組んで、マリウスの祈りの言葉を唱え、両の指の力を緩めて、

   金属製の右手で祈りの文字を空に描いた。大きく一つ息を吐いた。

   その時点で、心が安定し、不思議に、全身にちからが漲るように、

   感じられる。大きく両の青い眼を見開くと、念を集中させて、テレポートして

   姿を消したエウロヴァ。だが、その髪の中、その背にいくつかの小さな虫

   たちが、付着していることには、まるで気づいていなかった。カミュエルの

   配下、ヤッフェの師匠、アル族(長眉族)のジモンが透視していたことも。

           ((次回に続く。))

プライドとプライド 改

2011年11月12日 21時02分08秒 | Weblog

   第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。

         (15)

          ユニ族(1本角族)のミシャーニは、ササ族(動植物中間人族)

   のユグドランの巨体と、そのあまりの圧倒的迫力に、気圧されていた。

   今にもこの場から逃げ出したい衝動を、必死の思いでこらえていた。(ここで

   逃げては、死んでいった仲間たち、イーゴ、ロックス、ナーゼロらに申し訳

   ないし、俺は弱いけど、勇敢だったと、息子のレプリカには、せめて尊敬

   されたい。イルーネよ。後を頼む。敵わぬまでも、一太刀でも。)と、フォーデ

   らとはぐれて、フィアナ公アドラスと2人きりになってしまっていた。そこに急に

   現れたユグドランだった。ユグドランにも、ユグドランの思惑があった。

   それはガッシュ族(鉄犬歯族)のドールレイが、必死で捜している、イリアス

   ・オレオ王国の力の源、秘宝、マリウスの金の像を。その金の像には、

   生命力や、術の力を何倍に増幅させる力がある。その不思議な像のありか

   を、誰よりも先に手に入れたいユグドランだった。「その赤い服装は・・。

   確か王アンディスの弟のアドラスだな。おい!像の行方を教えろ。

   アドラス!」と、ミシャーニの存在を気にもしないで、倒れたままのアドラス

   に、近付こうするユグドランに、足の震えを抑えながら、腰のやや短めの剣

   を抜いた、頭に白い1本の角、薄茶色の髪、赤い眼に白い肌。肘先までの

   紫色の中袖シャツ(妻・イルーネの仕立て物)に、茶色のジャケット。腰には

   白いミニスカート、下に黒色のミドルパンツを履き、かかとには藁草履。

   そのいでたちで立ち塞がったミシャーニ。三日月の形の刃が付いた黒い兜

   に、黒い鎧、下半身には銀色のロングパンツに、焦げ茶色の先の尖った

   金属製の重い靴を履いている、緑色の髪の毛に、同色の眼に、褐色の肌。

   そして、今や、トレードマークの顔全体のⅩ字の大きな傷が。(グミ族(黄金

   毛色族)のキュエールに付けられたもの)まさに動く筋肉の塊りが、愛用の

   三日月刀・シャントーゼを一振り。ミシャーニの抵抗もむなしく、その首が

   まさに一瞬で、跳んでしまうはずだった。だが、そうはならなかった。

   ユグドランがシャントーゼを振り下ろそうとした刹那、その剛力、剛刀を

   受け止めた者がいた。それがアル族(長眉族)のセダターンだった。真ん中

   に赤いラインの入った深緑色の兜に、金色のマント(裏地は赤色)。しかし、

   服装は素早い動きを優先させて、鎧は着けないで、軽めの黒いシャツに、

   黒いロングパンツ。腰にも金色のベルト。そこにはミニハンマーを5本差して

   いる。先祖代々の鍛冶屋を誇りに思っていて、剣は持たずに、手にも黒い

   ビッグハンマーを持っていた。その柄で、シャントーゼの大きな刃を、

   がっちりと抑え込んでいたのだった。「俺もイリアス1のバカぢからと、

   称えられていたが、お前も相当なものだな。その顔の傷は・・。そうか。

   お前があの悪名高いササ・ユグドランか。こいつは面白い。ぜがひでも

   負けられねえな」と、力が入るセダターン。だが、それには答えず、うす笑い

   の表情のユグドラン。凄い念動力で、セダターンを弾き飛ばした。もちろん、

   その衝撃は、すぐ背後のミシャーニにも及んでいて、彼も吹き飛ばされて

   いた。ユグドランはそのまま、地面に倒れたままのアドラスの襟を、左手1つ

   で持ち上げて、「おい、教えろ。金の像はどこにある。お前なら、知っている

   筈だ。教えろ」と、容赦なく、その身体を揺さぶるユグドラン。その背中を

   めがけて飛んできた、ミニハンマー5本を、すべて、右手1本で持った

   シャントーゼで弾いたのだった。「ほう、くたばらなかったか?少しはやるな。

   だが、やられていた方が良かったと、すぐに後悔するぞ。お前、名前は

   なんだ?」「イリアスの誉れあるアル一族のセダターンだ」「セダターンか。

   少しはその無謀な勇気に敬意を表して、今そこに墓を造ってやろう。

   セダターンよ」ユグドランの無礼な言葉に、赤い眼に褐色の肌、黄色の髪

   の毛にひげのセダターンのすべての毛が、逆立っていた。激しい怒りの

   せいで。「お前こそ。その大口を叩いたことを、心底後悔させてくれる。

   わしにも使える術はあるぞ。くらえ。フルメタル・バー・フォーゼ!」

   金属形成師のセダターン。ビッグハンマーを左手に持ち替え、伸ばした

   右手。その手のひらから、鉄の棒が具現化され、急激に増長し続け、

   ユグドランの顔面に迫った。難なくその鉄の棒を、シャントーゼで弾いた

   心算が、まるで生きた蛇のようにひん曲がりながら、あっという間に、

   ユグドランの全身に巻きついたのだった。((次回に続く。))

   

プライドとプライド 改

2011年11月08日 13時14分24秒 | Weblog

   第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。  
      
           (14)

           思わぬ言葉に信じられずに、ゴリラたちはまじまじと視た。

    まだうら若い綺麗な少女、長い茶色の髪に、白い肌。青い瞳で、ほっそり

    とした身体に、黒い半袖の胴着に、白い短パン。赤いマントに、焦げ茶色

    のショートブーツを履いていた。腰には薄茶色のベルトに、イリアスの2つ

    の宝剣の1つ、ルジェーヌを差していた。(もう1つはノワーヌ。織沢美姫

   (おりさわ・みき)が今は持っていた。)身なりこそ勇ましいが、どう見ても、

   20歳にもまだなっていない、背こそ高いが、華奢な身体つきの女の子に、

   自分たちが陥れられた、恐るべき事態。(同じクトールの者同士だという

   のに、騙されて殺され、おまけに魂が休まることもなく、気がついたら、

   何故か、ゴリラの肉体に魂が憑依させられていて、言うことをきかなければ、

   ゴリラのままで、たとえ死んでも、又、別のゴリラか、猛獣に憑依させられる

   という悪魔の所業。黒幕はガッシュ・ドールレイだった。)そんな驚愕な

   出来事を、こういってはなんだが、小娘ごときに、自分らを解放させて、

   魂を安らかに眠りにつかさせてもらえるとは、誰も信じられるものでは

   なかった。「皆さんの気持ちはわかります。こんな小娘が、何言ってんだと。

   でも、今からのわたしの行動を見ていて下さい。これから、わたしと一緒に

   来る人いますか?」と、訊くマリア。いつの間にか、横には、ベガシス姿の

   ダヴィデがつき従うように、4本足で立っていた。再び、顔を見合すゴリラ

   たち。そして、1人?のゴリラが右手を上げて、テレパシーで返答した。

   (わかった。みんなを代表して、このわしが、お嬢さんの言うとおりにしよう。

   それでいいかな。ただし、もし、わしらを解放してくれなかったら、只では

   済まんぞ。それでもいいかな。お嬢さん。)と、どうやら、リーダー格らしい

   ゴリラが、何か言いたそうな、他のゴリラを制しながら、前に出た。「信じて

   もらえて、ありがとうございます。では、このダヴィデに一緒に乗って、

   あなたたちを、そんな酷い目に遭わせた者の所へ、わたしを連れていって

   下さい」と、リーダーのゴリラ(生前の名前は、ガッシュ族(鉄犬歯族)の

   ハーケン。ドールレイと同じ一族だった。アル族(長眉族)のビビンデを

   導いたのも彼だった。)の手を引いて、ダヴィデの背に乗せると、その後ろに

   同じく乗ったマリア。すぐさま、猛スピードで、彼らが現れた西の方に、

   駆け出していったダヴィデ。残されたゴリラたちは、ただ、茫然と見送って

   いた。(お嬢さん。あの恐ろしいドールレイに勝つおつもりか?)と、訊く

   ハーケンに、(もちろんです。)と、堂々と嘘をつくマリア。ドールレイなぞ、

   知るよしもなかったが、ただ、この戦いは、このゴリラたちを救うことが、

   勝利に導く、突破口になると、何故か思えるマリアだった。だから、さっき

   会ったばかりのシャラ族(3つ目族)のヴァレントにも、「アクシオンに乗って、

   先に行って下さい。わたしはやっておきたいことがあるので、後でダヴィデと

   ともに、かならず駆けつけますから。あなたは、自分が思っている以上に、

   強いですから、もっと自信をもっていいですよ」と、言葉を残して、不思議がる

   ヴァレントに、先を促したのだった。フォーデや、アドラスたちのことも、

   心配だったからだ。だが、何故か、ヴァレントのことも、信じられるマリア

   だった。すぐに追いつくためにも、まずは、ドールレイの力を抑えなければ

   と、思えて仕方がなかった。それが大いなるもの(イリアスの守り神)の導き

   とは、さすがのマリアも、気がつきもしなかったが。

       「アドラス様!大丈夫ですか?」と、悲鳴にも似た声を上げたのは、

   フィアナ公アドラス(イリアス王アンディスの実の弟)に、一緒につき従って

   いた、ユニ族(1本角族)のミシャーニだった。胸を切り裂かれ、首にして

   いた、時を司る懐中時計・エグザーレの金の鎖が切れて、宙に飛んで

   いった。それにはまるで気付かないで、倒れ込もうとするアドラスを必死で、

   抱きかかえたミシャーニ。その目の前に、悪夢の再来か。あのササ族

   (動植物中間人族)のユグドランが、その右手に愛用の三日月刀・

   シャントーゼを持って、悠然と立っていたのだった。((次回に続く。))

   

プライドとプライド 改

2011年11月06日 00時25分19秒 | Weblog

  第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。

       (13)

           「チッ、犬の次は大猿。いや、ゴリラかな?どっちでもいいが」

   そう愚痴っているのは、ヨーグ族(中性子族)のフィガーナで、今は赤い眼

   (女性)の状態だった。急に白い煙があちこちから噴出して、領兵たちは

   個々に分断されてしまっていた。フィガーナも、部下の赤い眼のヨーグ・

   イージスと2人だけになってしまっていた。その時、森の茂みから、続々と

   ゴリラが現れていた。フィガーナは知るすべもなかったが、怪力のゴリラの

   身体に、人の魂を移植して、操っているのは、ガッシュ・ドールレイだった。

   アル・タイ・ビビンデを拉致し、ユーコ・ルペイジらを今、襲撃しているのも、

   同じゴリラたちだった。(クソッ。なんで、よりに寄ってこんな重大な局面の

   時に、2人とも赤い眼、女なんだ。これじゃあ、力が半減してしまう。早く、

   青い眼、男に戻りたい。でも、この変化は自分たちでは制御できない。

   ちくしょう・・。)と、唇を噛むフィガーナ。ここから逃げ出すのも、1つの選択

   だが、仲間を見捨てては逃げたくなかった。この危機的状況のままでは。

   オレンジ色の髪の毛に、赤い眼に白い肌。フィガーナ以上に華奢で小柄な

   身体のイージス。グレイのマントに、紫色の半袖の胴着。腰にグレイの

   ベルトに、黒色と白色のツートンカラーの短パン。足元には、緑色のロング

   ソックスに、黒色のサンダルを履いていた。腰のベルトには、2本の小刀の

   青色の鞘を差していた。そのイージスも、同意らしく、眼だけで、フィガーナに

   訴えていた。フィガーナも同じく、オレンジ色の髪に、赤い眼に白い肌。

   衣装はイージスとまったく同じだった。ただ、胴着の左胸に、隊長のしるしの

   刺繍がしてあった。赤色の翼のある馬の刺繍が。翼のある馬、ベガシスは

   イリアスの象徴で、実在はしていない、想像上の動物だった。ただ、腰の物

   は違っていた。並みの男でも扱いきれない、重量級の剣、ファルシオーネを

   差していた。青い眼の時なら、大丈夫だが、赤い眼の時は、残念ながら、

   ファルシオーネを操りきれないフィガーナだった。2人の思いとは別に、

   ゴリラたちは、すぐ目の前に、迫ってきていた。フィガーナは腹を決めた。

   (セダターンよ。悪いが、先に逝く。イージスを頼む。)何とか囮になって、

   イージスを逃そうと決めたのだったが、そこに急に背後から、凄い風が

   吹いてきた。だが、それは風ではなかった。宙を飛ぶ翼のある馬だった。

   (なんだ?まさか、伝説の動物、ベガシス?)それはベガシスに変身した、

   ダヴィデだった。圧倒的馬力?で、次々とゴリラたちを、体当たりや、後ろ足

   で薙ぎ倒していた。すぐ後ろから、「早く!アクシオンの背中の上、彼の

   後ろに乗って!」と、若い女の声と、その後ろに大鹿ガゼール乗った男、

   ヴァレントの姿が。もちろん、声の主はマリアだった。「ここは、

   わたしとダヴィデで食い止めるから、あなたたちはさあ、先に行って!」と。

   マリアがまさか、あのイリアスの姫、エヴィータの変わり身とは、知らない2人

   は、何処の者かは知らないが、力強い味方がありがたかった。「済まぬ。

   この礼はかならずする。わたしはヨーグ・フィガーナ。アル・トート様の領地、

   コルギガ領の領兵で、1番隊隊長である。コルギガのフィガーナと言えば、

   皆が知っている。いずれ、尋ねて参れ。そういうそちの名は?」と、

   アクシオンに乗りながら、訊くフィガーナ。ヴァレントに、口止めの目配せ

   しながら、言った。「わたしはマリア。ヤブキ・マリア!」「ヤブキ?知らぬ

   家名だが、ヤブキ・マリアか。いい名だ。お互い生き抜いて、又、会おう!」

   アクシオンは、その背中に、ヴァレント、フィガーナ、イージスの3人を

   乗せて、隙間をぬって、駆け抜けていった。その姿が消えたのを確認して

   から、マリアは言った。「もういいのよ。戦わなくても。わたしがここ来たから

   には、あなたたちを、その大変な姿にさせた、悪の元凶を絶ちに、今から

   行くから」と。その言葉に、まだ、立って残っているゴリラたちは、動きを

   止めて、お互いの顔を見合うだけだった。「倒れた人たちも、死んではいない

   わよ。ちゃんと手加減しているものね。ダヴィデ」長い首を上下に振って、

   答えるベガシス姿のダヴィデ。ゴリラたちは、ゆっくりと取り囲んで、眩しげに

   マリアを視た。マリアは優しい瞳を返したのだった。

               ((次回に続く。))   

プライドとプライド 改

2011年11月02日 23時44分02秒 | Weblog

  第6章 呪われたイリアス・オレオ王国の歴史2。失われた時を求めて・・。

        (12)

          「それで、その後はどうなったのですか?」と、城ヶ月修

   (じょうがつき・おさむ)警部補が、話の続きを促したが、ビビンデは暗い表情

   で、首を横に振った。「済まんが、ここまでじゃ。何しろ、わしはそのまま、

   ゴリラたちの術で、殺されもせず、生きたまま、この空間に放り込まれたの

   じゃ。ユグドランとかいう若い暴れ者と、エキュールの戦いも、少し後から、

   同じく、放り込まれた領兵の1人、ハーズ族(変色眼族)のオレンズから

   聞いたのじゃ。クレーレの恋人、ペレーネの実の兄のオレンズからな。

   だから、クレーレや、ペレーネのことはもちろん、ユグドランや、リリイヤ

   とかいう者たちの消息さえも、今どうなっているのか、わしにはまったく

   わからん。わしの一族、部下たちもだが、それ以上に、イリアス・オレオ王国

   は、王様やお后様などの王族の方々が、今、どうなさっておられるのか?

   すべてを知りたいのじゃが、この空間内では、念動力や、仮死状態の術

   など、ほとんどの術は使えても、何故か、テレパシーや、テレポートは使え

   ないみたいなのじゃ。だから、外に出られないし、外部の情報が、まるで

   わからん。ただ、時刻調整師のわしには、正確な時間だけはわかる。

   もう、ここに拉致されて、23年も経過しているのはな」と、寂しげな微笑を

   見せたビビンデは、宙に浮くのを止めて、ゆっくりとお尻を地面につけると、

   「少し疲れたわい。わしはしばらく眠る。あんたも無理しないで、横になれ。

   わしはあんたに、ここを出られる機会を作ろう。たった1度だけの機会を。

   それまではゆっくりと休めよ」と、その言葉とともに、ビビンデは横たわり、

   動かなくなった。城ヶ月はもっと話が聞きたくて、ビビンデを起こすために、

   身体を動かそうとしたが、何故か急に強い眠気を感じて、その場に倒れ

   込んでしまっていた。すべてはビビンデのおかげ?だった。恐ろしい生体

   実験を、繰り返し行なっているガッシュ族(鉄犬歯族)のドールレイ。(悪魔の

   狂死ウィルスを培養、増幅させたのも、ドールレイだった。)ビビンデの

   両手、両足も、ドールレイの実験のために、もぎ取られていたのだ。元々

   強靭な肉体の持ち主だった、ビビンデ。大量出血しても、まだ生きていた。

   それは最後にもう一度だけ、愛する故郷、イリアスの山、川、空、人々の

   たたずまいを見たいという思いだけが、彼を生かしていたといえた。

   だが、それももう限界が近かった。次の実験が、自分の命の終わる時と、

   覚悟はしていたビビンデ。諦めの気持ちに覆われていたが、ここにきて、

   微かな光明が射した。それがまだ元気な城ヶ月の登場によって。それは

   危険な賭けではあったが、ここを出れるかも知れない、最初で最後の賭け

   だった。今は早く、次の実験を行なえと、マリウスに祈るビビンデだった。

     「エア・スパイラル・カッター!」大柄で、赤色に銀色の角の付いている

   兜に、赤色の胴着に着け、銀色のマントに、銀色のショート・ブーツを履いて

   いる、緑色の右目に、つぶれた左目は黒色の眼帯。日焼けした褐色の肌

   に、青鬼と恐れらた青色の無精ひげを生やしていた、ユーコ族(調節眼族)

   のルペイジは、ほとんど闇に近い、長く続く洞窟の中、大勢現れたゴリラたち

   を、得意のかまいたちの術で、(空気放出師でもあるルペイジ。)次々と、

   その身体を切り裂いていった。眼の能力を調節できるルペイジは、残された

   右の眼で、薄暗い闇さえも、明るく視るように、眼の筋肉を変化させることが

   出来るのだった。だから、眼の前に現れるすべての者を、敵とみなして、

   片っ端から倒していた。しかし、ルペイジの背後に続く、2つの影を

   除いては。1人は、黒い三角の形の帽子を被って、黒色のマントに、赤色

   と青色のまだら模様の着物に、腰に黒色の短パン、膝元に薄緑色のロング

   ソックスを履いて、足元には薄い黄色の草鞋。銀色のロングヘヤに紫色

   の目。肌の色はとても深みのある黒色で、正に黒人といえた。それが、

   ヘシュ族(変化髪族)のアンティーヌで、右手にナリゲグルの槍、左手に鎖を

   持っていた。そして、もう1人は、大柄な2人とは違って、小柄で、青色の

   短めの胴着に、金色のベルト。黒色のロングパンツに、つま先に鉄の入って

   いる、白色の牛革靴を履いていた。容貌は、白色の短髪に、眼は薄い

   ピンク色で、肌は緑色で、緑色人といえる、パーソ族(緑色肌族)のエドガー

   だった。彼は右手に、刃が湾曲している曲刀のハーパー。左手に同じく鎖を

   持っていた。「正に情け容赦なしだな」と、アンティーヌ。「だが、一応信頼

   されているようだな。俺たちに牙はむいていないみたいだし。無防備に、

   背中を向けている」と、エドガー。「わからんぞ。いつまでだか」「まあ、

   そうかもな。その時はその時だがな」と、苦笑し合う2人だったが・・。

        ((次回に続く。))