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プライドとプライド 

マリア達、普通の心の者たちと、
クトール軍団達、よこしまな心にとらわれし者たちとの地球を含めての空間争奪戦だ!!

プライドとプライド 改

2012年02月09日 22時41分41秒 | Weblog

     第7章  大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(17)

         (やったぞ。マリウスの像を呼び寄せるという、秘道具のマドナー

   を手に入れたぞ。王妃のとどめを刺せなかったのは、少し残念だが、この

   鎌の刃には、猛毒で有名なポレズンという木の樹液が、たっぷりと塗って

   ある。これさえ手に入れれば、王妃に用はない。まあ、もって、1時間の命

   だろうよ。お気の毒に。さあ、帰って、王の奴を締め上げて、この秘道具の

   使い方を吐かせてくれる。そうなれば、もう、同じく用なしだから、後を

   追わせてやる。)と、手にかざしたブレスレッド、マドナーを見ながら、歪んだ

   表情で微笑する、ガッシュ・ドールレイ。彼の澱んでしまった性格には、幼い

   頃の衝撃的な出来事が、あったせいだった。しかし、それは、ドールレイが、

   父、ドールゴに対する、大いなる勘違いも、含んでいたのだが。

   それについては、又、後日の話に譲るとしょう。

    「やあ、ロコロ。どうだ?今日はいい魚は上がっているか?」と、

   すぐ近所の居酒屋にでも行くのかと、思っていた、ササ・リオンとゼーラの

   思惑を裏切って、小船を使って、眼の前の海、カシュラ海に乗り出すと、

   すぐ1キロ程先に浮かぶ、小さな島、オーランド島。この島に上陸したのは、

   酔いどれ医者?のドクター・テオに、少女、ガガリー族(2色肌族)のメドルサ

   と、その仲間らしい?5人の男たちと、リオンと、リオンの包帯を巻いた

   右手の中の?ゼーラだった。船が波に流されないように、岩に紐を掛けて、

   きつく固定させてから、全員で船を降りて、しばらく、ぞろぞろと、続いて

   歩いてゆくと、すぐそばに現れた、深いしわに、オレンジ色の短髪に、

   白い髭を生やした2メートルを少し超えたくらいの筋肉質の初老の大型の

   男に、テオが顔見知りのようで、気楽に声を掛けていた。名前を呼ばれた

   空色の半袖シャツに、白い短パンに、草鞋の男は、ふと、その大きな精悍な

   顔を、こちらに向けると、テオを視て、急に柔和になって、「な~んだ。

   どうしたんだい。テオじゃないか?みんなで揃って、こんな辺鄙な島に

   わざわざお出ましとは。又、何かのお祝いの宴会か?いい魚ならあるぜ。

   もちろん、俺も混ぜてくれるんだろうな?」と、親しげな目をしたロコロ。

   「そりゃあ、訊くまでもないことだ。今日は何が上がったんだい?鮫か?

   それとも・・」その時、テオの表情が、急に険しくなった。「悪い。ちょっと

   待っててくれ。こんな所で、一体何が起こったんだ?おい、ティーチと、

   ローガン。俺と一緒に来てくれ。エヴィリ、ハッセー、ダンビーラ、メドルサと、

   客人はここにいてくれ。後を頼む。ロコロ」と、真剣な表情で、テオは、

   ティーチとローガンという名前の男たちとともに、足早に、うっそうと生える

   亜熱帯の茂みの中へと消えていった。(なんだ?どうしたんだ。血相を

   変えて。何か、感じるか?ゼーラ。)と、テレパシーを右手に送るリオン。

   すると、(ああ、風に乗って、血の匂いが流れてきた。だいぶ、出血している

   みたいだ。助からないかもな。まだ、死ぬには早過ぎる、中年の女性だな。)

   (何!事故か。それとも、何かの戦闘か?)(さすがに、そこまではわから

   ない。知るためには・・)(もちろん、調べに行く。)後に続こうとする、

   リオンとゼーラの前方を、いつの間に、接近してきたのか、巨大な

   人間の壁、ロコロの身体が、行く手を阻んだのだった。「おい!何をする。

   邪魔をしないで、道を開けてくれないか。確か、ロコロさんとやら」と、叫ぶ

   リオンに、まるで、いたずらをしようとする子供を、叱るような目で視ながら、

   「あれっ?さっきのテオの言葉を聞かなかったのか。客人。あんたらは、

   俺がここで守ることになったんだよ。わかったら、ここで大人しくしていろ!」

   と、言い返すロコロ。素直にきくリオンではなかった。「今までも、最後は

   自分の身は、自分で守ってきた。これからもずっとだ。誰にも、俺の行く手を

   遮らす心算はない」と、そう言い放つと、「スーパー・バキューム・キャノン!」

   と、拘束しようと、迫って来たロコロの巨体に向かって、左手のひらを

   かざしたのだった。すると、空気媒体師のリオンの手のひらから、

   圧縮された空気のボール状の塊りの弾丸が、連続で発射され、地面に

   しっかりと、張り付いているかのような、ロコロの巨体が、まるで、巨大

   バルーンのように、空高く、吹っ飛んでいた。「まあ、手加減はしておいた

   から。あんたなら、それだけの身体だ。地面に落ちても、たいした怪我も、

   しないだろうよ」と、苦笑しながら、背中を向けたリオン、ゼーラだった。

         (( 次回に続く。))

プライドとプライド 改

2012年02月05日 22時38分51秒 | Weblog

     第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(16)

        「チェ。3対1じゃあ、さすがの俺でも危ない、危ない」と、

   ジェロモは舌打ちしながら、一息ついていた。部下の黒制服士団の下級

   兵士たちを使って、その攻撃の隙に、1人だけ逃げ出していたのだった。

   それでも、胸くそが悪くて、このままでは、悔しい気持ちが収まりそうも

   なかった。跳ぶことの出来ないジェロモだったが、足はとても早かった。

   大きな身体に似合わず、軽快なフットワークで、自分の部屋に戻っていた。

   腹いせに、テーブルの上の飲みかけの強い酒、ヴォトカを一気に呷った。

   「あらっ、どうしたの?機嫌悪そうね。又、お父様に嫌味を言われたの?

   それとも、あの馬鹿兄貴のデュークスと、喧嘩でもしたの?」と、ノックも

   無しに、急に入って来たのは、ジェロモの実の母親のザクースカだった。

   大きな顔に肥満した身体で、それを隠すかのように、厚化粧に、派手な

   赤いドレスを着ていた。黒い髪を金色に染め、黒目に、赤色のカラー

   コンタクトを嵌めていた。腕や首や耳元に貴金属をちりばめらせてもいた。

   足元には、背の低さ、短い足をごまかすために、厚底の銀色のロングブーツ

   を、履いていた。「あなたは大丈夫よ。なんせ、我がレード族の誇り。

   次期皇帝になる人だもの。はい、あなたの好きな鹿肉の燻製よ」と、ジェロモ

   の大好物の載った大皿を持って来ていた。「ママ。今はそれより、3人の男に

   挑まれて逃げて来てしまった。それが悔しい」と、大の男が、小さな中年の

   女に、擦り寄って甘えていた。「そう。それは悔しいわね。なら、あれを解放

   したらいいわね」と、デイマーネ皇帝に、固く禁じられている化け物を、

   解き放そうと提案した。「いいのかな?ママ」「大丈夫よ。すべてはママに

   任せて」と、大見得を切るザクースカだったが・・・。

     エウロヴァ王妃は、光る波の中に、左手を入れて、何かを取り出して

   いた。それは、マリウスの像ではなく、緑色のブレスレッドだった。(これは

   マリウスの像を引き寄せる秘道具のブレスレッド、マドナー。これを持って

   いれば、かならず、マリウスの像は向こうから近付いてくれると、あなたは

   言っていたけど、どういう意味?教えてアンディス。)届くとも思えなかった

   が、思いのたけを、精一杯のテレパシーにして、周りに放出した。

   気づかれないように、遠隔透視で見張っているアル・ジモンには、その思い

   が、心の中に、ビンビン伝わってきたのだった。出来れば、今すぐここに、

   愛しい夫のイリアス王、アンディスを連れて来てあげたいと、切に思った

   が、今、単身で、部下もそばに1人もいないジモンには、どうすることも

   出来なかった。しかし、その思いはすぐに絶ち切られた。不穏な動きを

   感知したからだ。やむを得ないと思い、王妃の直前まで、跳んだ。その時、

   多くの銃声が轟いた。金属形成師のジモンは、大きな合金の盾を、具現化

   させて、それらの弾丸を防いだ。だが、それは囮だった。驚いたままで、

   一瞬、動きを止めたままのエウロヴァ王妃の背後から、大きな鎌が振り

   下ろされて、背中をパックリと斬られて、激痛に左手に持ったままのマドナー

   を、足元の浅瀬に落としてしまっていた。黒い手袋をしたままの手が、

   その中を捜して、マドナーを掴みながら、波を弾いていた。その顔は、

   黒制服士団・団長のガッシュ族(鉄犬歯族)のドールレイだった。波に倒れた

   エウロヴァ王妃に、とどめを刺そうとしたが、一瞬早く、「フルメタル・ナイフ・

   シャワー!」と、ジモンの具現化した、合金の二等辺三角形の物体が多く

   飛んできて、ドールレイの全身を襲った。しかし、すべてを弾き返した後、

   テレポートをして、姿を消してしまっていた。マリウスの像を呼ぶという、

   秘道具のブレスレッド、マドナーを持ったままで。「王妃!大丈夫でござい

   ますか?」と、急いで、その身体を抱き起こすジモン。青ざめた顔の

   エウロヴァ王妃は、苦しい息の中で、「ありがとうは言いません。ジモン。

   わらわを尾けていたのね。マリウスの像を守るために。なら、わらわのこと

   なぞ、放っておいて、何故、マドナーを死守しなかったの?わらわの命

   よりも、大事な、大事なマリウスの像を捜し当てるための秘道具を、敵に

   奪われてしまっては、王様に申し開きが出来ません。恨みますよ。ジモン」

   と、それだけ言うと、グッタリとしたエウロヴァ王妃。その背を支えたジモンの

   両の手は、その血で、赤く染まっていたのだった。((次回に続く。))

プライドとプライド 改

2012年01月31日 23時13分52秒 | Weblog

     第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(15)

           「おい、お前ら。そいつをそこに置いておけ。心配するな。

   お前らに今は用はない。下がっていな!」と、ずっと続く地下道の中で、

   傷付いて、グッタリとしたデュークスを担いでいるゴリラたち。そこでバッタリ

   と、皇帝クトー・ディマーネの配下、ヤーフ族(逆進成長族)のイマンジーロの

   命令で、デュークスを捕らえに来た、黒制服士団の下級兵士たち。その

   リーダーらしい、大柄で筋肉質の男が、ゴリラたちを威嚇してきたの

   だった。それに反発したかのように、3つ目の大とかげ、ディーガイルが、

   後ろから、前に出てきて、黒い鎧、ズボンの兵士たちに、「ウォー!」と、

   咆哮1つして、襲い掛かった。が、一瞬でバラバラに斬り刻まれたの

   だった。「チッ。おいおい、何手間取っているんだよ。こんな小汚い奴等。

   仕方ない。俺が後始末してやる」ディーガイルの反撃に戸惑った兵士たちを

   尻目に、ディーガイルを葬ったのが、ディマーネの次男(つまり、デュークス

   の実の弟。)の、クトー・ジェロモだった。やや小柄な身体だが、がっちりと

   していて、黒い髪、茶色の肌、黒い瞳で、何故か首から下は厚い甲羅に

   覆われていた。その大きな身体を、赤い着物で包んでいた。足には茶色の

   草履を履いていた。手には針金のように細長い刃がついた、ロングレイピア

   を持っていた。それをハイスピードで、何回も旋回させて、ディーガイルを

   刻んだのだった。恐るべきことに、ジェロモの身体には、始めから、亀の

   遺伝子が合成されて、埋め込まれていた。(ディマーネや、イマンジーロなど

   上層部の数人しか知らないことだったが。)あっと言う間もなく、デュークスを

   支えていた、前方のゴリラが、全身から血を流しながら、前のめりに倒れて

   しまっていた。ジェロモのロングレイピア・スネファイガーの餌食になって

   いたのだ。その反動で、デュークスも、地面に落ちてしまっていた。

   あわてて、起こそうとする、残りのゴリラたち。「フン。そんなクソ兄貴に、

   なんで、肩入れするんだ?胸くそ悪いぜ」そう言うと、唸るスネファイガー。

   又、2人?のゴリラが、血を出しながら、倒れていった。「面倒くせえ。兄貴

   ともども、まとめて処理してくれる」(この方は、我らには優しい時もあった。

   悪魔のような、あんたとは違う。)と、ゴリラからのテレパシーに、「言って

   くれるな。絶対に許さんぞ。後方の奴。苦しみながら、死ね!」と、又、

   スネファイガー唸ろうとしたその刹那。「エア・スパイラル・カッター!」との

   声が。それとともに、スネファイガーの方が、ばらばらに切れて、宙に

   飛び散ったのだった。「フン。誰だ?俺の今一番のお気に入りだった

   おもちゃを壊したのは?」と、不敵に振り返るジェロモ。そこには、ユーコ族

   (調節眼族)のルペイジ。その背後には、ヘミュ族(変化髪族)のアンティーヌ

   と、パーソ族(緑色肌族)のエドガーも従っていた。「おやっ?これはこれは、

   お前らは裏切り者のお三方ではないか。お揃いとは都合がいい。おい、

   こいつらを生け捕れば、大手柄になるぞ」と、周りの下級兵士を扇動する

   ジェロモ。「俺がついているから、大丈夫だ。それとも、命令が聞けんという

   のかな?」と、兵士らを見つめるジェロモ。兵士たちも腹を決めて、ルペイジ

   らに掛かっていった。隊長級の腕前の3人も怖かったが、切れたジェロモ

   は、もっと手がつけられなかったからだ。ジェロモは薄笑いをすると、着物の

   内側に右手を入れて、素早く出していた。高速で多くの手裏剣が投げられて

   いた。味方にお構いなしに。だから、背中を、毒塗りの手裏剣でやられる

   兵士もいた。「そんなことに引く俺ではない」と、ルペイジも手加減なく、

   両のこぶしにオーラを貯めて、兵士たちを殴り倒していった。そして、

   ルペイジを援護するかのように、アンティーヌのナリゲグルの槍と、エドガー

   のサーベル、リューガが、毒手裏剣を弾き返していた。3人は、ジェロモの

   反撃に備えたが、いつの間にか、ジェロモは消えてしまっていた。たくさんの

   血が、辺り一面を染めていた。「逃げたか」「さすがに我ら3人が相手では、

   分が悪いと悟ったのだろう」と、アンティーヌと、エドガー。「どうする?

   クトールの御曹司を?」「どうやら、皇帝様に見捨てられたみたいだな。

   さっきのが、悪童の名が知れ渡っていた、ジェロモだな。あんなのが、

   次期皇帝なら、クトールは正に生き地獄だな」「とにかく、見捨ててもおけ

   まい」「まあ、しようがないよな」と、アンティーヌと、エドガーは、生き残り

   のゴリラ2人?と、デュ-クスに近寄っていった。ルペイジは茫然として

   いた。グミ族(黄金毛族)のキュエールと、その息子のカミュエルに、

   復讐を誓ったあの日。愛しい妹のサヴォーヌ以外の命なぞ、どうでもいいと

   思っていたのに、何故助けてしまったのか?完全な悪に染まりきれない

   自分の甘さに、困惑するルペイジだった。((次回に続く。))

プライドとプライド 改

2012年01月26日 20時05分44秒 | Weblog

      第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(14)

         「我々の正体を明かしたのは、今まさに、あなた方が命の危機に

   瀕しているからだ」と、喫茶「カルタゴ」のマスターも、白色の髪の毛のかつら

   と、白色の付け髭を外し、両目の黒色のカラーコンタクトも取った。

   そこには、禿げ上がった頭に少しある、青色の髪の毛と、赤色の2つの

   瞳が、露になった。鰐淵も、葛原も身体の震えが止まらぬまま、縛られて

   いた紐も解かれて、自由になったが、動く気力がなかった。2人とも、視た事

   も無い人種、出来事の連続に、ただただ、驚愕するばかりで、信じられない

   思いだった。「そう、かしこまらなくてもいいわよ。少なくても、このわたしは、

   この世界の人間だから」と、魅惑的な視線を送るローサだったが、2人を

   落ち着かせる効果はいまいちみたいだった。「調べはほぼついている。

   あなた方は最早、表向き宗教集団で、実は裏社会を牛耳ろうとしている、

   暗殺集団のレッド・ラビリンスのお尋ね者だ。いつ殺されてもおかしくは

   ない。我々に協力して、生き延びる以外に手は無い。どうするかね?

   このまま、お別れしてもいいが・・」と、突き放した眼で、2人を視る、オーゼ族

   (細胞変装族)のハンザック。鰐淵も、葛原も、まるで振り子のように、

   首を縦に振って、「お願いいたします。すべてお話ししますから、なにとぞ、

   お助け下さい」と、日の本テレビ内では、傲慢な態度で知られていた、何事も

   強引に推し進める、ワンマンプロデューサーで、正に名前のように、

   クロコダイル(鰐)と、影であだ名され、恐れられた鰐淵だったが、今、眼の

   前では、幼児のように、床に頭をつけて、命乞いを頼む鰐淵だった。横目で

   視る葛原も気持ちは同じだったが、内心は、同情よりは、少しおかし

   かったし、溜飲が下がる思いだった。何故なら、これほどまでも、動揺して

   いる鰐淵を、見たことがなかったからだ。自分などは、顎でこき使われて

   いた。部下のスタッフのイジメの現場を抑えられて、逆に弱みに付け

   込まれていたからだった。この光景を別の思いで見ていたのは、

   ローサだった。自分でも信じられないくらいに、得体の知れない?ハンザック

   たちに協力してきたが、本当に信じていいのか?と、不安な気分もある。

   ただ、自分の自慢の勘が、(この人たちは信頼できる、協力することが、

   今回の自分の任務にも繋がる。)と、教えていた。(マズイ。そろそろ、

   副長官に、定期連絡を入れなければならない時刻だわ。それに、携帯が

   繋がらないし、メールも返信の無い、親友の柏木操の安否も、心配だわ。)

   と、落ち着かない気分のローサ。すると、「いいですよ。ひとまず、彼らの

   ことは、我々に任せて、あなたは自由にして下さい。なんなら、これで、

   お別れしてもいいですよ。ただし、このことは、公には他言無用に願います

   が」と、まるで、ローサの心を読んだみたいな、バツグンのタイミングの

   ハンザックの言葉に、「わかりました。でも、又、連絡します。これからも

   協力させて下さい。では又後ほど」「そうですか。いいでしょう。では、

   明朝9時に、こちらから連絡いたします。朝食は済ませておいて下さい」との

   ハンザックの返答に、頷くローサ。その横で、「心配いらないよ。本物の

   小栗優も、我々がきちんと保護しているから」と、話す渡辺久里人(くりと)。

   (正体はグミ族(黄金毛族)のクピト。)(正に常人離れした凄い奴等だわ。)

   と、感心しきりのローサだった。

     「おのれ。ブルーノの奴め。裏切りおったな。おい、家族ともども、

   ひっとらえて、我が前に連れて来い!半死状態でもいいから、かならず、

   生かしてな。トドメは我が手で仕留めねば、この怒りは収まらんぞ。いいな。

   厳命だぞ!」と、顔を真っ赤に上気させて、怒鳴り散らす大男。彼はクトール

   大帝国の大部隊の1つ、ギガール隊(銀の大鷲隊)の大隊長のケレト族

   (たてがみ族)のクレラ・ナンディーラだった。ナンディーラにしてみれば、

   激怒するのも、無理もなかったのだ。ブルーノはクレラ家に3代にわたって

   仕えてきた、重臣の家。それなりの待遇、昇進を、与えて来たつもりだし、

   いろいろと、最高機密の話も、打ち明けてきたからだった。愛用の大きな

   葉巻を、腹いせに、銀色の大鷲の彫刻が施してある、大灰皿にこすり

   つけながら、(まあ、それでも、我が家の秘密は知るまいが。万が一のことも

   あるな。)思い直すと、「おい、命令変更だ。見つけ次第。ブルーノと、

   その家族は、ことごとく、ただちに始末しろ。いいな!」と。紫色の眼を

   らんらんと光らせ、赤色の自慢の髭を、ピクピクと動かすナンディーラ。

   その背後から、(ひどい失態だな。飼い犬に手を噛まれたな。どうだ?

   そいつらの探索を、手伝ってやろうか?)と、低い重量感のあるバスの声

   が、ナンディーラの心の中に、飛び込んできたのだった。

       ((まだ、風邪が治っていません。寒い日が続きます。皆さん。

     気をつけて下さいね。以下、次回に続く。))

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2012年01月21日 12時10分17秒 | Weblog

      第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(13)

         頭の芯がまるで、二日酔いのように痛みを感じて、葛原修(

   くずはら・おさむ)は眼を覚ましたのだった。気がつくと、口に布切れを

   巻かされていて、両手にも後ろに回されていて、手首を合わさせられて、

   ガムテープでグルグル巻きにされていたのだった。目の前には、あの

   セクシーなウェイトレスが立っていた。「ごめんね。あなたは筋肉モリモリ

   で、暴れられたら、少し面倒になると思って、眠り薬で動かないようにして

   もらったの」と。横には同じ格好にさせられている鰐淵義光(わにぶち・

   よしみつ)が居た。先に気がついていたみたいで、苦虫を潰した顔をして

   いた。「最近又、芸能界では、麻薬が蔓延しているようですね。その一端を、

   あなたがたが担っているのではないのですか?もちろん、小栗優(おぐり・

   ゆう)も、その1人に入っているのでしょうが」と、ウェイトレスは、自分の横に

   立っている、小栗優本人をチラッと視たのだった。言われた優は、気にも

   しないで、「済みません。手荒なことをして」言いながら、2人の口元の布切れ

   を外したのだった。周りを見渡して、いつの間にか、1階の喫茶店「カルタゴ」

   から、マンション3階の元の部屋に戻っていた。「やめてくれ。お前らが

   何者かは知らんが、このままでは、俺は間違いなく殺される。もちろん、

   お前らも」と、だいの大人が急に幼子のように、身体をブルブル震わせて

   いた。本当に恐れているみたいだった。「大丈夫。僕たちがあんたらを、

   かならず守るから。正直に全部話してくれたらだけど。なんせ、僕は普通の

   人間じゃないんだからね」と、いたずらっぽく微笑むと、小栗優の顔が変化

   した。信じられないものを視たという思いで、鰐淵も、葛原も、「あっ!」と、

   声を上げていた。イケメンながら、骨太な感じの優から、線の細い、少し細目

   の肌の白いイケメンに。そして、髪の毛も、黒色から、赤色に。眼も茶色

   から、青色になっていた。服装も見たことも無い、黒っぽい軍服のようなもの

   を着ていた。彼はオーゼ族のイシュットだった。「かさねがさねの騙しを、

   済みませんね」と、謝るイシュット。「わたしも、カルタゴのウェイトレスじゃ

   ないの」と、黒い髪を引っ張ると、下からブロンドの髪が現れ、両目からも

   カラーコンタクトレンズを外した。彼女も黒い瞳が青色になっていた。彼女

   の正体は、浜口・ベリー・ローサだった。その時、後ろから、凄い音がした。

   「妖しい奴らがいたので、捕まえてきた」と、まるで軽い荷物のように、

   ぶん投げられた大男2人が、転がって入ってきた。その背後から、小柄な

   少年の渡辺久里人(グミ・クピト)と、大柄で喫茶「カルタゴ」の老マスター

   (実は、オーゼ・ハンモックで、イシュットの祖父。)も続いて入ってきて、

   この部屋の居間は、大勢の人間で、狭く感じられていた。鰐淵の顔がさらに

   青ざめていた。この2人は鰐淵の行動を監視する役目の男たちで、

   もちろん、鰐淵も知っていたからだった。「大丈夫だよ。この世界では強い

   方の男たちなんだろうけど、僕らに掛かれば、幼児同然なんだから」と、

   鼻たかだかなクピトだった。「アクションスターとはほんと名ばかりで、

   ほとんどが、スタントマン吹き替えの優だったから、油断して、当身を

   受けて、気絶させられた。クソッ、そっくりな偽者とはやられた。が、こいつら

   は下っ端だぞ。いくら強いっていっても、生身の人間が、飛び道具に敵う

   筈もない。凶器を持って踏み込まれたら、それまでだ」と、ヤケクソになった

   感じの鰐淵が、構わず怒鳴り散らしていた。「大丈夫だ・・」久里人が、

   言葉を続けようとしたその刹那、倒れていた男の1人が、最後のちからを

   振り絞るかのように、上着から小型拳銃を取り出して、正に近距離で、

   久里人に、3発続けて発砲したのだった。渇いた音がして、鰐淵も、葛原

   も、久里人が倒れたので、間違いなく射殺されたと、思ったのだった。だが、

   そうではなかったのだ。男の拳銃を取り上げて、発射口を押し曲げる、

   馬鹿ぢからのマスター。そして、何事もなかったかのように、起き上がる

   久里人。「ヤバイ。油断した。でも、大丈夫だよ。あっ、マズイな」と、口を

   モグモグさせて、何かを吐き出していた。それは、さっき、男が撃ったばかり

   の弾丸3個だった。3つとも、歯で止めていたみたいだった。正に神業としか

   思えない。今、眼の前で見たばかりだったが、あまりの凄い出来事に、

   鰐淵も、葛原も声を出すのさえ、忘れるくらいだった。「だから言ったで

   しょう。僕らに任させれば、大丈夫だって。さあ、悪いようにはしないから、

   すべて話してみて。あれ?なんか、勉強のために観た、テレビの時代劇

   みたいだ」と、言う久里人は、まるで無邪気な幼子のようであった。


       (( 年始早々に、ひどい風邪を引きました。だいぶよくは

          なりましたが。皆さんも気をつけて下さい。それでは又。

             次回に続く。 ))

プライドとプライド 改

2012年01月17日 21時12分15秒 | Weblog

     第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(12)

           遊撃隊のアル・タイ・フォーデの下に、ケレト族(たてがみ族)

   のロットラナーがついていたが、他の3部隊も、それぞれのリーダー、アル・

   トート、アル・セダターン、ヨーグ・フィガーナが戦線離脱していたので、

   いつの間にか、一つに集結していて、フォーデたちを見つけて、寄って来て

   いたのだった。フォーデも、エヴィータ姫と、アドラスと、ミシャーニの3人と

   はぐれてしまっていた。そこに別行動をとっていた、3部隊が一つになって、

   しかも、みんなどう動いていいのかわからず、元大将軍のフォーデを頼って

   きたのだった。内心苦笑するしかないフォーデだった。(まあ、情けない

   奴等だ。頼られるのは、嬉しいがな。)しかし、そうも言っていられない。

   普通の軍事作戦が通用しない、化け物?集団のクトールが相手では、

   どう動くかは、微妙で難しいことだった。すると、ロットラナーが、フォーデに

   近寄ってきて、腰を曲げて、耳打ちしてきた。「今では恥ずかしい話ですが。

   これでも、クトールでは、監獄の所長をしていましたので。ある程度の統率は

   出来ます。わたくしめに何人か任せていただければ、ありがたいのですが」

   と。フォーデはまだ、新参者のロットラナーに、不安はあったが、任せること

   に決めた。領兵の中に、ラース族(透明化族)のヴァルーダがいたから

   だった。銀色の髪に紫の眼に褐色の肌。白色の鎧を着けていた。彼は

   ファルガーの従兄弟に当たっていた。小柄で見た目は非力な少年の

   ヴァルーダには、驚くべき凄い能力があったのだ。それはテレパシーでは

   ないが、それと間違えられやすい、超聴覚で、その場でも、半径1キロ内の

   音も聴けるし、それ以上に一分前くらいの音も、追体験で聴けるので、

   これ程、監視に適任の人材はないといえた。フォーデがギリギリの小さな声

   で、ひとりごとを言った。「ロットラナーをみていてくれ」と。彼から10

   メートル離れていたヴェルーダには、むろん聴こえていた。無言で頷いて

   いた。ロットラナーが領兵たちに歩み寄りながら、大声で聞いていた。

   「どうだろう?わたしについてきてくれる者はいるかな」と。みんな、顔を

   見合わるだけで、誰も手を上げなかった。気まずい雰囲気になりかけた

   その時、「はい!ぜひ、お願いします」と、手を上げるヴァルーダ。すると、

   次々と続いて手を上げる者が。27人いる領兵の内、20人が手を上げて

   いた。「済みませんね。フォーデ様。彼らをお借りします」照れながら、

   志願の領兵たちを連れて、この場から離れようとするロットラナーに、

   フォーデが、声を掛けた。「健闘を祈る。ただ、無理はするな。もし、危うく

   なったら、この笛を吹いてくれ。すぐに助けにゆく。どこにいてもな」と、

   木製の茶色の小さな縦笛、クホーンを、フォーデはロットラナーに、手渡した

   のだった。「ありがとうございます。一応いただいておきます。でもまあ、

   たぶん、使うことはないと思います。素晴らしい戦果を期待していて下さい」

   と、恭しく頭を下げると、「もうすぐ、クトール領内だが、わたしの縄張り

   みたいなものだ。みんな、信頼してついて来てくれ!」「おう!」「おう!」と、

   歓声を上げて、後に続く領兵たち。本当は、ロットラナーではなく、フォーデ

   と、ヴァルーダに抜群の信頼を置いていることを。森の奥に消えた彼らを、

   見送ったフォーデは、振り返って、残った7人の領兵たちを見た。7人とも

   うら若い女性たちだった。「やはりな。女性なのに、お前達、志願したのか」

   と、フォーデ。一番大柄な女性が言った。「他の人はそうですが。わたしは

   半分は、男ですから」と、それはヨーグ族(中性子族)のフェンリルだった。

   しかも、亡き夫との間には、子供が出来ていた。パロダムス本部診療院に

   務める、看護師で、ヨーグ・レグルスという名の子どもが。(今更だが、

   お前と、トートの仲を引き裂いたのに、わしも一枚噛んでいる。恨めしくは

   ないのか?)と、周りを気にして、テレパシーで訊くフォーデ。それに対して、

   フェンリルはきっぱりと、肉声で答えた。「その時は正直、恨みましたが。

   後から思えば、素敵な初恋で良かったのではと思います。何故なら、

   カルヴィス様の子を生めましたから」もし、生きていたなら、イリアスの次の

   王になられたであろう、カルヴィス。(イリアス王アンディスと、王妃エウロヴァ

   の息子。エヴィータ姫の兄。)しかし、ほとんどの者は知らないが、禁止

   されているヨーグ族と関係を持ったとして、カルヴィスは生前に、王位継承権

   を剥奪させられていた。だから、もし、生きていても王には、なれなかった

   のだ。他の女性兵たちは、カルヴィスと、フェンリルの関係は知らなかった

   から、驚きの声が上がって、ざわついていた。「静かにして!ここで

   そのことをばらしたのは、わたしが、ここで死ぬ決意をしているからなの。

   フォーデ様の盾になって死ぬ覚悟なの。その気持ちがある人だけ、ついて

   来て。嫌なら、早く、この場から逃げて。そして、一生わたしのことは他言

   しないで欲しいの。イリアスの。いえ、カルヴィス様の妻として、最後を迎え

   たいの」と、真剣に訴えるフェンリルに、周りの女性兵たちは、ただ、静かに

   沈黙するのみだった。(( 次回に続く。 ))

プライドとプライド 改

2012年01月12日 23時02分27秒 | Weblog

     第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(11)

         ゴリラたちは、エヴィータ姫によって倒された、クトール大帝国の

   皇帝のクトー・ディマーネの跡取り候補の1人、長男、デュークスの身体を

   抱えて逃げ出すように、自分達の棲家に戻ろうとしていた。もちろん、そこは

   恐ろしいガッシュ族(鉄犬歯族)のドールレイが支配する場所ではあった

   が。彼らの後に、3つ目の恐竜モンスター、ディーガイルも続いていた。

   一度、デュークスを地面に降ろして、ゴリラ全員で、床の石を動かした。

   すると、塔の地下に大きなトンネルの石の階段が続いていた。又、

   デュークスを担いで降り、その後ろから、ディーガイルも下に降りると、

   ゴリラたちは又、デュークスを一旦降ろしてから、上の石を動かして、

   隠すと、薄暗いトンネルの中を、奥へ奥へと駆け出していた。もちろん、

   ディーガイルも続いていた。「皇帝様。どうやら、ご長男様は、お負けに

   なられたようです」と、大きな緑色の玉の中に映った映像を視ながら、

   眼の前の皇帝に、報告する痩せこけた小柄な身体で、白髪、白い髭で、

   白い肌、長く高い鼻で、眼は両方ともつぶれていた。つまり、盲目だったが、

   紫のガウンを着て、骨ギスの手で、ゾルビ(動く死体)の動力となった緑色の

   液体・エグリードと、同じ成分でできた玉を触って?中に現れた動画を視て

   いたのだ。「フン。いつも、俺様は無敵だ。連戦連勝で、皇帝の跡継ぎになる

   などと、大口を叩いていたが、なんという見苦しさぞ。もういい。デュークスの

   顔なぞ、見たくもない。奴の処置は任せるぞ。イマンジーロ」こちらも皇帝と

   いうには、あまりに貧弱な小柄で太った初老の男、茶色に混ざった白いもの

   が見える薄い髪の毛に、澱んだ青い眼。茶色の髭だけはたくましく、長く

   伸ばしていた。身体には金色の細工の施された、きらびやかなガウン

   の下に、赤いシャツ、黄色のズボンに、銀色のロングブーツを履いていた。

   腰にも、金細工の鞘の大剣が差してあった。だが、一度もその大剣を抜いた

   ことはなかった。元々はイリアス・オレオ王国の家臣の出で、本名はアル・

   クトー・ディマーレンといい、アル・タイ・フォーデとは同じアル族で、先祖代々

   からの忠義な家臣の家系であったが、数々の武功で、どんどん昇進する

   フォーデに嫉妬して、彼を陥れようとして、逆にアンディス王にたしなめられ、

   逆恨みして、一家で祖国を捨てた反逆者といえた。その後、磊落した

   ディマーレンたちがある峠で、こちらも落ちぶれた汚いガウンの男、

   イマンジーロに、「あなたには大王の相がある。かならず、大王になれ

   まする。ただし、このわたくしを召抱えてくださればという、条件つきですが。

   いかがでしょうか?大王様」と。ある意味、単なるみずからの売り込みで

   しかなかったが。「本当にわしは大王というか、巨大な国のあるじになれる

   のか?」「はい。このわたくしめが付いておりますならば」と、その時から、

   盲目で、白目を向けるイマンジーロ。じっと、見返すディマーレン。「いい

   だろう。だが、3年だ。3年以内にそうならなければ、お前の首はなくなると

   思え。この家宝の剣で、斬り飛ばしてくれる」と。「ありがとうございます。

   もちろん、その時はお好きになさいませ」と、恭しくお辞儀をしたイマンジーロ

   だった。それからはいろんな凄い奴等が、下について、2年と少しで、建国

   したクトール大帝国の初代皇帝、クトー・ディマーネとなったのだった。ただ、

   憎んでも余りある、イリアス王国がいまだに滅ぼせないでいるのが、我慢

   ならないことであったが。それについて、イマンジーロを問い質したことが

   あるが、「わたくしはあなた様を大王、皇帝にする約束はいたしましたが、

   その他のことは、約束していません。イリアスは案外と手強い国。そう簡単

   には、事は運びません。気にいらないなら、わたくしを殺すか、追放します

   か?まあ、その時は、あなた様の地位なぞ、砂上の楼閣。すぐに潰えて

   しまうでしょうがね」と、薄笑いを浮かべるイマンジーロ。さすがのディマーネ

   も、恐ろしくて手が出せないでいた。そして、「わかった。わしが悪かった。

   これからも良しなに頼むぞ」と、言うのが精一杯のディマーネだった。「残念

   ですが、デュークス様には、実験体になっていただきます。いいですね」と、

   回答を求めるイマンジーロに、成人してから特に、親の自分をばかにして、

   ないがしろにする息子、デュークスを煙たいと思っていた、皇帝・ディマーネ

   は、「いいぞ。跡取りなら、他にもたくさんいるしな。実験体でも、いけにえ

   でも好きにするがいい」と、わざと威厳をつけて答えた。ヤーク族(逆進成長

   族)のイマンジーロの口元が、笑っているのには気付くはずもなかった。

   イマンジーロの深慮遠謀が、いよいよ、その牙をむく時が迫っていた。

   彼は時が来たと感じていた。この眼の前のさえない老人のディマーネに

   取って代わって、みずからが、この大帝国を従える日が、来たのだと

   いうことを。   (( 次回に続く。 ))

プライドとプライド  改

2012年01月08日 23時01分12秒 | Weblog

     第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(10)

       グミ族(黄金毛族)のカミュエルが病室に入る少し前、マリアの扮装

   が解けた柏木操(かしわぎ・みさお)の横たわるベッドに、又、同じ警視庁の

   同僚刑事の辰神雄介(たつがみ・ゆうすけ)と、マリアの叔母のマリノフ・

   矢吹・結子(やぶき・ゆいこ)と、マリアと同じG・D(グレート・ドリーム、

   大いなる夢の意)高校で、1年先輩の3年の陣内大河(じんない・たいが)

   の3人が集まっていた。お互いに良い思案が思い浮かばないが、マリアや、

   操、雄介の上司の城ヶ月修(じょうがつき・おさむ)の2人の安否が

   わからないままで、もしかして、未知の他の世界?に連れ去られたのでは

   と、とてつもなく不安で、どうするわけでもなく、知らない間に、それぞれが、

   この部屋に来ていてしまっていたのだった。そこへ、検温のために、宿直の

   看護師の側野友里可(かわの・ゆりか)がドアを開けて入って来た。友里可

   の心も揺れていた。正月の夜勤明けの寒い朝、自分の眼の前に現れた、

   不可解な姿の突然の襲撃者たち。それを助けてくれた、江藤亨(えとう・

   とおる)と名乗った男。いや、たぶん、偽名だろう、信じがたい超能力?の

   持ち主の謎の人物。まあ、仮にTとしておこう。そのTという者が、一体何者

   なのか?見た目はやや、女性ぽいが、気質は割と男らしい感じで、草食系

   とは思えないTに少しずつ惹かれ始めていた友里可は、自分の心の整理が

   つけられないでいた。ただ、もう一度、Tに会って、話を聞きたいと願う

   友里可だった。その思いを振り払うかのように、操の左手を取って、脈を

   計り、体温計を渡そうとした、その瞬間、突然、辺りが暗闇に包まれた

   のだった。何か凄く強いちからに、身体ごと引っ張られるような

   感覚で、自分でも吃驚するほどの悲鳴を上げたが、やがて、気を失った

   友里可。他の3人も変わらぬ状況であった。外から一瞬遅く、侵入してきた、

   カミュエルは、ついさっきまで、人の温もりが感じられたばかりの病室が、

   一瞬で空っぽになったのを感じて、「バキューム・サイコ・テレポート

   (吸引念動移動力)だな。止めろ!この人たちは無関係だ。巻き添えに

   するな!卑怯だぞ。シュヴァール!」と、恐るべき能力を持つ、ササ・

   ユグドランの手下のユニ族(一角族)のシュヴァールの名を、叫んだの

   だった。ブラックホール魔人という異名の男の名前を。すると、「さすがは

   イマージュの総帥のカミュエルだな。よく、俺様の仕業と見破ったな。ならば、

   どうする?今なら、さっきの4人の元にすぐに送ってやれるが。まあ、イリアス

   オレオ・王国の重鎮のお前が、そんな軽はずみな行動が、出来る筈も

   なかろうがな」と、うそぶくシヴァールの声。だが、意に反して、即決の

   カミュエル。「彼らを巻き込んだは、わたしにも責任がある。いいだろう。

   どこへでも連れてゆけ。たとえどんな地獄でも。そのハベスの地から、

   全員を連れ戻して、ともに生還してみせる」と。「ほざいたな。面白い。

   そうまで言うなら、招待してくれるわ。戻れるものなら、戻ってみな。いまだ

   かつて誰人も、自力で戻ったことがない、我が陣地へ」カミュエルはみずから

   のサイコ・シールド(心的障壁)を解いて、心身ともに無防備になった。

   すると、4人に続いて、凄いちからで跳ばされたカミュエル。心で詫びて

   いた。(済まぬ。ジモン。アクリア。済まぬ。フュージョン。アメリス。

   ヤッフェ。しばしの間。家を。イマージュを。イリアスを。王、王妃のことを

   頼む。)と。そして、病室には誰も居なくなってしまっていた。ただ、すぐ前の

   窓ガラスの表面に、細かいひびがあちこち走っていた。それだけが凄い

   ちからが伝わっていた痕跡を、示していたのだった。

    ガゼール(大鹿)のアクシオンは、エヴィータの命令で、3人の者を、背に

   乗せて、まるで飛ぶ様に、高速で走り抜けていた。乗っているのは、シャラ族

   (3つ目族)のヴァレントと、ヨーグ族(両性子族)のフィガーナ、イージスの

   3人だった。彼らが向かっているのは、イリアス国内の病気や怪我の治療の

   中心拠点、パロダムス診療院本部だった。フィガーナと、イージスの眼は、

   今は赤色で、女性になっていた。(青色の眼の時は、男性になる。)

   ヴァレントも、行方不明になっていた兄のシャラ・ヴァルティンが、ゾルビ

   (動く死体)となって再会し、戦って倒して、疲労困憊状態で、つまり、3人とも

   戦力が低下していて、とてもまともには戦えない状況であった。それなのに、

   今まさに、クトールの大部隊が迫る、危険な診療院本部に向かっていた。

   アクシオンには懐かしい場所だった。親にはぐれて、飢え死にしかけていた

   幼い子鹿のアクシオンは、偶然、エヴィータに拾われて、診療院本部中庭

   で、よくエヴィータと遊んでいたのだった。だが、そんな感傷の気分も、一瞬

   で消えた。アクシオンの優れた嗅覚、聴覚が異変を察知したのだ。彼は躊躇

   なく踏みとどまると、診療院本部とは反対の方向に、向きを変えて、新たに

   走り出していた。疲れが激しい3人は、まるで気付く様子もなかったの

   だった。((次回に続く。))

     

   

プライドとプライド 改

2012年01月04日 22時03分12秒 | Weblog

      第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(9)

          (お前はよく頑張ってくれた。もういい。この身体をお前に返す時

   が来たみたいだ。もう、お前は自由だ。自分の世界に帰って、平和な一生を

   送れ。)マリアは夢?を見ているみたいで、今や、もう1人の自分といえる、

   イリアス・オレオ王国の姫、エヴィータが、その姿を、眼の前に現していて、

   マリアにささやきかけていた。マリアは瞬時に覚った。自分の身体の中の

   もう一つの魂、エヴィータが消滅してゆく様を。寂しそうな微笑を残して、

   白いサリーを着たエヴィータのその像が、徐々に薄くなって消えたのだった。

   あわてて、駆け寄ったマリアの手には、何の感触も残らなかった。

   取り残された絶望感だけが、全身を駆け巡り、マリアの意識は、つい

   この間、避暑のために、軽井沢の別荘に、家の車、プリウスに乗って、父、

   健三の運転で、母、カレンと、弟の虎之輔ともども、家族4人で、出かけて

   いる途中に戻っていた。マリアは思い出していた。いつになく、父と母の笑顔

   が、どこかぎこちなく感じられたのを。それを問い質す間もなく、車が急に

   発火して、あっという赤い炎に囲まれて、気を失ったのだった。健三やカレン

   の声が聴こえてきた。「悪い。とうとう、追い込まれてしまったよ」「仕方ない

   わよ。あなたはやるだけのことをやったんだもの」「済まん。信じていた

   んだ。ブライアンのこと。まさか、あんな奴とは知らなかった。結子には

   知られたくない。このまま・・」「あなた1人では行かせないわ。わたしも。

   この子らも」「そうだな。みんな一緒に・・」そこで声は途切れた。マリアは

   真実を知った。父たちは避暑に行くためではなく、死ぬことを、一家心中を

   考えていたのだ。みずから行なっていた、貴金属商売の損失を、義弟の

   ブライアン・ハロルド・マリノフ(妹・結子の夫)に援助してもらっていた。

   が、実はそれは罠だった。経済的に行き詰まってしまった健三が選んだ道

   が、愛する家族ともども、死ぬことだった。愕然とするマリア。どっちみち、

   家族全員が命を落とす運命だったとは・・。(だが、わらわもディオーニの魔

   のちからで、すぐに焼死するさだめだった。お前のおかげで、少しだけ

   生き延びれた。礼を言うぞ。矢吹マリア。さあ、元の世界で、新たに人生を

   やり直せ。さらばじゃ。)その言葉を最後に、本当にエヴィータは消えて

   しまったみたいだった。急に覚醒するマリア。すぐ眼の前に、優しい青い瞳の

   小柄な女性と、オレンジ色の髪、黄金の瞳の痩せこけた少年が、心配そうに

   マリアを覗き込んでいた。マリアは身体を起こそうとして、鈍い痛みが全身を

   走って、つい、呻き声が出た。「駄目ですよ。まだ、動いては。ひどい怪我と、

   重疲労で、身体が悲鳴を上げているのですから」と。その言葉に、少し心が

   落ち着いたのか、マリアは又、深い眠りに落ちていった。

    ブライアンは落ち着かない気分でいた。来日前のことを思い出していた。

   妻、結子の兄夫婦と、その子供らが、もしかしたら、全員死んだかもしれない

   と聞いて、ジュネーブから、ロサンゼルスに出張に来ていた、ブライアンは

   急いで仕事を切り上げて、成田空港で、妻、結子と娘のティアと合流して、

   そのまま、警察署と柴井田病院を回ったのだった。だが、生前の健三から、

   不可解なメールが多く来て、メールや電話で問い返しても、「しらばっくれる

   なよ。わかっている。後少しだけ、待ってくれ。大丈夫だ。妹には言って

   いないから」と、まったく、食い違ったままで、居たたまれないでいた。

   ブライアンは結子には内緒で、今、居候をしている健三の家を、捜索し

   始めた。幸い、結子は病院のマリアの所に行ったきりだったし、娘のティアも

   遊び疲れて眠っていた。窓から西日が入っていた。もうすぐ、日が暮れる。

   晩夏の季節だったが、まだまだ、外の暑さは厳しかった。ドアの鍵が、

   掛かっていないままの健三の部屋に入った。きちんと整理整頓された部屋

   で、大きな書棚の本や、ショーケースのたくさんのDVDが、整然と並べ

   られていた。几帳面な性格がそこに表れていた。ブライアンはそれらよりも

   まず、すぐ前のデスクトップのパソコンに眼をやり、直前の椅子に座ると、

   すぐにパソコンを起動させたのだった。ブライアンは結子には秘密にして

   いたが、一時ハッカーまがいのことに熱中したことがあった。封印していた

   その技を、久し振りに行使しようと決めた。真実を突き止めるために。

   (一体、義兄さんの身に何があったんだ?ともかく、まず、メールチェック

   だ。)と。ブライアンを視ている者がいた。レドン族(頭部外殻・とうぶがいかく

   族)の長(おさ)、ケルテーカが透視していた。人や動物の心を操る悪魔だと

   いえた。今までも、健三とのやり取りで、ケルテーカに操られたことのある

   ブライアンだった。もちろん、そんなことがあったことなぞ、露ほどにも知ら

   ないし、記憶にもないブライアンだった。

    マリア(実は柏木操・かしわぎ・みさおの変装)の病室をノックする

   カミュエル。(この世界では江藤亨・えとう・とおる)急に胸騒ぎを覚えて、

   いくらノブを回しても開かない扉を、蹴って開けると、妙な気配を感じた

   のだった。(( 2012年。明けましておめでとうございます。今年もどうぞ

   よろしくお願いいたします。少し、風邪を引きました。皆さんも、気をつけて

   下さいね。それではまた。次回に続く。 ))

プライドとプライド 改

2011年12月30日 21時25分42秒 | Weblog

      第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(8)

          リザ族(高体温族)のブルーノは、気を失ったままのエヴィータ姫

   を、左肩に載せて、跳んでいた。その場所は、妻・イユエラと10歳息子・

   マルルが待つ隠れ家にだった。険しい岩場の洞窟の中に、2人は潜んで

   いて、ブルーノは、辺りに注意を払いながら、凄い怪力で、大きな岩を、

   空いている右手1本で押しのけて、中に入っていった。もちろん、すぐに大岩

   は元の位置に戻したのは、言うまでも無かったが。「2人とも大事無いか?」

   と、トーンを落とした声を掛けるブルーノ。すると、「あなたこそ。よくご無事

   で」「大丈夫です。父上」と、いつもの2人の声が返ってきて、ほっとする

   ブルーノ。黄金色の髪の毛に、青い眼に白い肌。小柄でほっそりとした身体

   で、薄茶色の帽子に、垂らした長い髪。同じく薄茶色のサリーを上に、

   下には白いズボンに、黒色のサンダルを履いたイユエラと、ブルーノと同じ、

   オレンジ色の短髪に、黄金色の眼。少し赤味がかった白い肌で、男の子と

   いうには、あまりにも華奢な少年。青色のノースリーブのブレザーの下に、

   白色の半袖シャツ。下半身も青色の短パンに、珍しい白色のゴム靴を

   履いているのが、跡取りのマルルだった。ブルーノ以上に、高体温?体質

   で、年がら年中、夏モードの服装のマルルだった。しかし、ブルーノはまだ、

   心を開放してはいなかった。あらかじめ決めておいた合言葉を発した。

   「シュヴァル(牡馬)」すると、イユエラが、「シュボレー(雌馬)」マルルが、

   「シュニー(仔馬)」と答えた。やっと、落ち着くブルーノ。無理もなかった。

   用心には用心ということで、3つの合言葉を決めていたのだ。クトールの

   中にも、本物そっくりに化ける、オーゼ族(細胞変装族)の輩もいる。いつも

   一緒に居たブルーノも、イユエラも、マルルも。家族とはいえ、お互いの

   本人認識に自信はない。それゆえの合言葉だった。「イユエラ。疲れたろう。

   心のヴァリアはわたしが張るから、お前はこの子を、そのヒーリング能力で、

   癒してくれないか。もう手遅れかもしれないが、やれるだけ、やってみて

   欲しいんだが?」「でもあれ?息してないよ。この綺麗なおねえちゃん」と、

   マルル。「ほんと。危険な状態だわ。ご主人様。やるだけやってみますが、

   難しいかも。ところで、どちらのお嬢さんですか?」と、結婚して、11年余り

   にもなるのに、いまだにご主人様と、みずからの卑しい身分を恥じて、

   へりくだるイユエラ。ご主人様はやめて、あなたでいいと、何度注意しても、

   直してはくれないイユエラに、もう諦めているブルーノが答える。「正にハベス

   の神の思し召しだろう。実はイリアスの姫。エヴィータなのだ」と。あまりの

   ことに、その青い瞳を大きく見開いて、夫のブルーノと、その肩に載って

   いる、ぐったりとしているエヴィータ姫を見つめるイユエラだった。

    一方、無断?で本部のパロダムス診療院を抜け出したエウロヴァ王妃は、

   焦る気持ちを抑えながら、ある場所に急いでいた。自分の髪の毛の中や、

   背中のあちこちに、追尾用のたくさんの小さな虫たちがくっついている

   とは、まるで気付いていなかった。それは白色で、見た目は透明に近くて、

   体長0.5ミリくらいの蛍で、一般にライテックと呼ばれていた。常に超低周波

   の音波を発していたし、夜間は若干光っていた。(しかし、通常の視覚、聴覚

   の持ち主には、認識は不可能といえた。超視覚、超聴覚を備えたアル族

   (長眉族)のジモンだから、認識、追跡が出来るのだった。)実は今、ササ族

   (動植物中間人族)のリオンがいるガガリース国の港町・コーラルの前の

   カシュラ海に浮ぶ小さな島に来ていた。その浜辺で、暮れかけのまばゆい

   太陽の光を、じっと見つめているエウロヴァ。青い長い髪に金色の瞳に

   やや有色の肌。ほっそりとした肢体を、着替えた白色のサリーと、縁あって、

   夫になったイリアスの王・アンディスから頂いた、小さな鍵の付いた金色の

   ネックレスをしていて、足元は赤色のゴム靴を履いていた。ただ、その右腕

   は、無残にも根元から無くて、代わりに、精密な合金の義手をはめて

   もらっていた。それでも、あのひどい痛みは、今でも感覚として覚えていた。

   (ガッシュ族(鉄犬歯族)のゲルケンの)ドレクーワという大剣に、一気に

   右腕を切り裂かれた痛みを。(いけない。今は一刻も早く、マリウスの像を

   取り戻して、その秘められたちからで、愛しい夫であり、王でもある

   アンディスを救い出さなければ)と、意識を現実に戻して、波を凝視する

   エウロヴァ。徐々に干潮が始まって、大きく後退する波。その中から、

   小さな光が現れていた。その場所に、足早に近付くエウロヴァ。警戒して、

   遠い眼で透視する小柄だががっちりとした身体で、青い髪、青い長い眉に

   青いひげ。浅黒い肌にレモン色の瞳。身体に薄緑の鎧を着け、足先には、

   茶色の草鞋のジモン。もちろん、見失わないのは、ジモンの能力もさること

   ながら、ライテックのおかげだった。イリアスの裏部隊・イマージュの総帥・

   グミ族(黄金毛族)のカミュエルの独白が、頭をよぎるジモン。「本当に

   済まない。ジモン。本来なら、せめて数人の配下を付けてやりたいが。

   あちこちに緊急課題が続出で、人員の当てがまるでない。悪いがお前

   単独で、王妃をかならず守ってくれ。その命に代えても」と、カミュエルの

   血の出るような声から出た言葉が。((今年、2011年もお世話に

   なりました。入院したり、2重投稿したり、間が長く空いたりと、いろいろと、

   ご迷惑もお掛けして、本当に済みませんでした。来年、2012年はより精進

   して、ミスなく、短い間隔で投稿したいと思いますので、今年と同じく、

   変わりなくよろしくお願いいたします。それでは良いお年を。

    来年、次回に続く。))

プライドとプライド 改

2011年12月25日 21時49分09秒 | Weblog

      第7章  大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(7)

        大剣・ドレクーワが、ダヴィデともども、エヴィータ姫の身体に

   突き刺さろうとした刹那。2人?の姿は消えて、地面に剣は突き刺さった

   のだった。わずか横、30センチのところにショート・テレポートした

   エヴィータ姫。両の眼は能力全開の金色になっていた。「両手が塞がって

   いるのに、剣を投げるとは、無礼にもほどがあるぞ」と、銀尽くめの鎧・兜

   で、顔だけ黒い仮面に、黒いマントのデュークスを睨み返した。それに

   高笑いで返すデュークス。「こりゃあ、いい。さすがは、鬼姫と呼ばれただけ

   のことはある。中々威勢がよくていいねえ。だが、いつまで持つかな?」と、

   余裕の表情を浮かべながら、速足で駆け出してきた。重い鎧兜を、まるで

   意に返さないような、素早い動きで、エヴィータ姫に迫る。エヴィータ姫も、

   無論じっとはしていなかった。重傷のダヴィデを、エネルギーの消耗も

   省みず、記憶にある本部のパロダムス診療院に跳ばしたのだった。

   パロダムスにお願いのテレパシーを飛ばしながら。今、本部の診療院が、

   クトールの総攻撃を受ける直前で、危ない状況であることなぞ、エヴィータ姫

   はまるで知りもしなかったが。「なめられたものだ。それは余裕の心算か!」

   と、やや、怒気を含んだ表情になった、デュークスが、重い剣を振り回して

   きた。エヴィータ姫も、地面に突き立ったままの大剣・ドレクーワを、

   引き抜こうとしたが、どうしても抜けないで、デュークスの剣をかわすように、

   地面を転がった。それを見て、加勢に入ろうとする、ゴリラたちや、3つ目の

   モンスター・ディーガイル。「要らん手出しをするな。こんなガキ相手に。

   すぐにケリをつけてくれる」と、恫喝の声を上げるデュークス。誰もが動きを

   止める。「スパイラル・チェーン・アタック!」と、エヴィータの念動力で、

   ディーガイルの顔面に張り付いて、動きを制限していた、8方に分かれた鎖

   が取れて、回転しながら、デュークスの背後から、襲い掛かった。振り向き

   ざま、「十六方陣斬り!」と、なんと、エヴィータ姫の技で、鎖を難なくバラバラ

   に切断したのだった。さすがに驚くエヴィータ姫。動きを止めて、ニヤける

   デュークス。「悪いな。俺って、超天才の武道家だ。一度見たものは、すぐに

   憶えてしまう。あんたの技も、実はこっそり見ていたんでね。なんなら、高速

   回転突きもお見せしようかな?お望みならだけど」と。予想以上の強敵。

   だが、負けず嫌いのエヴィータ姫の闘志は、逆に燃え上がったのだった。

   「なるほど。確かに凄い。天才だな。ならば、その天才でさえ、真似できない

   ものを見せてやろう」と、転がったままの宝剣・ルジェーヌを、拾い上げる

   エヴィータ姫。「いいだろう。待ってやる。掛かって来い。だが、言ったはず

   だ。その刃こぼれした剣では、すぐに折れてしまうとな。それでいいなら、

   参れ!」わざと、大剣を、右手で下手に構えて、隙を作るデュークス。

   エヴィータ姫からの攻撃を待った。エヴィータ姫は命を捨てる覚悟を決めた。

   人は皆所詮、遅かれ早かれ誰もが死ぬ運命にあるのだから。多少の未練

   はあったが。自分の残りの全エネルギーを、宝剣・ルジェーヌに蓄えた。

   「ライフ・エネルギー・アタック!」と、渾身のちからで、振り下ろした

   ルジェーヌの刃から、エヴィータ姫の生命エネルギーが、ほとばしるように、

   光速で放出された。光速では避けきれないデュークス。まともにその

   エネルギーのすべてを浴びたのだった。銀色の頑丈な鎧・兜が、一瞬で

   バラバラに砕け散ったのだった。下に着ていた、黒い上下の着物があらわ

   になるデュークス。そのまま、後ろ向きに倒れてしまっていた。しかし、

   エヴィータ姫も、すべてのエネルギーを使い果たして、その場に前のめりに

   倒れ込んだのだった。しばしの間、あまりの展開に、静かに息を呑むゴリラ

   たちや、ディーガイル。しかし、すぐに我に返った彼らは、動かないエヴィータ

   姫に、とどめを刺そうとした。その時、別の影が跳んできて、やがて、実体化

   して、1人の男が現れた。オレンジ色の髪、茶色の眼に白い肌。焦げ茶色の

   着物を着たその男は、なんと、クトールはギガール(銀の大鷲)将軍・

   ケレト族(たてがみ族)のクレラ・ナンディーラの部下のリザ族(高体温族)の

   ブルーノで、祖父の代からお世話になっている、クレラ家を裏切ろうとして

   いたのだった。それはあまりに冷血なクトールや、直属のあるじ、将軍

   ナンディーラに絶望しての苦渋の決断だった。もちろん、復讐に備えて、妻・

   イユエラや、1人息子のマルルも、密かに逃がしてはいたが。「彼女とこの剣

   2つは預からさせていただく」そう言い残して、大剣・ドレクーワを、左手一本

   で軽く引き抜き、倒れたままながら、ルジェーヌを離さないエヴィータ姫を、

   右手で抱き上げ、跳んでいったブルーノ。偶然、エヴィータ姫を透視して、

   しばらく遠目で視ていたブルーノは、エヴィータ姫のすがすがしいまでの

   生き様に感動していたのだった。後には動かない、ゲルケン、ハーケン

   兄弟と、デュークス。その周りのゴリラたちと、ディーガイルが残されたの

   だった。ゴリラたちは、数匹でデュークスを抱え上げると、雄たけびを

   上げて、一斉に行進していった。後に続くディーガイルだった。

      ((時々、2重3重投稿になって、ご迷惑をお掛けしました。本当に

        済みませんでした。これからもよろしくお願いいたします。

            次回に続く。))

プライドとプライド 改

2011年12月21日 20時25分35秒 | Weblog

      第7章 大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のヴェール(6)

        十六方陣斬りの威力で、金属製の鎧の胸の部分がひび割れて、

   地面に飛び散ったのだった。人にしては、あまりに毛深い筋肉隆々の裸の

   胸があらわになった。うっすらと血が滲んでいた。それを視て、エヴィータ姫

   の胸も、精神的に痛んだ。ここにも、魂をゴリラに転送された人がいる。

   その時、(どうした?情けなぞは、無用ぞ。我は戦いのみに生きる者。遠慮

   なく掛かって参れ。凄腕のむすめごよ。)と、面倒くさそうに、上半身の兜、

   鎧を取り外すゴリラ。首、肩、上腕、背中、腹に見事な筋肉が躍動して

   いた。エグザーレで止められた時間は、わずか、2、3秒くらい。身軽に

   なって、さらに速度が増したみたいの筋肉ゴリラ。振り回す大刀の刃先は、

   肉眼では捉えらそうもない。エヴィータ姫は唇を噛んだ。負けを悟っていた

   のだ。(おいおい。そちらがそうでは、こちらの興が冷めてしまう。久々に

   骨のある獲物なのに。仕方ない。)ゴリラの方も動きを止めると、術の

   ちから、吸引念動力で、何かをここに呼び寄せていた。すぐに形になった、

   2つの物体。それは案内役のゴリラのハーケンと、その手の中で眠る黄色の

   小鳥のダヴィデ。(お前が動かねば、先にこの者どもを始末する。

   どうする?)と、大刀の刃先を、ハーケンの首に当てる筋肉ゴリラ。

   (やめろ!同じ境遇の味方だろう。何故?殺すのだ。)と、問い詰める

   エヴィータ姫。どうやら、相手は勘違いしているみたいだ。動かないのでは

   ない。動けないのだ。力量に差があり過ぎて。その瞬間、みずから、その

   刃先に飛び込むハーケン。そうしておいて、相手の巨体を抱え込んで、

   動きを封じる。首からは、致死量の赤い血が噴き出していた。(今です!

   私ごと斬りなさい。イリアスの姫。エヴィータ様。)ハーケンの合図に、腹を

   決めたエヴィータ姫の宝剣・ルジェーヌの刃が再び走った。「高速回転

   突き!」と。超高速回転のルジェーヌが、ハーケンの左腕を貫いて、

   そのまま、その背後のゴリラの利き手の右腕をも貫いた。高速ですぐに、

   ルジェーヌはエヴィータ姫の手に戻った。傷付いたままのダヴィデも。左腕を

   押さえて倒れるハーケン。もちろん、背後のゴリラも苦痛の表情で、右腕を

   押さえていた。(やるな。むすめご。油断した。さあ、殺れ!負けた我に

   生きる資格はない。)(ありがとうございます。エヴィータ様。これで安心

   して・・)地面に横たわったハーケンは、優しく微笑みながら、息を引き

   取った。(ガッシュ・ハーケン。済まぬ。巻き添えにして・・)流れそうになる

   涙を、必死でこらえるエヴィータ姫。ルジェーヌを赤鞘に納めて、ダヴィデを

   両の手のひらで抱え込んで、そのまま歩き出すエヴィータ姫。(待て!

   むすめごよ。せめて、名を教えてくれ!我名はゲルケン。ガッシュ・

   ゲルケン。こいつ、ハーケンの実の兄だ。頼む。教えてくれ。)(イリアス・

   オレオ王国のエヴィータだ。)(ほほう。お前があの鬼姫と恐れられた姫か。

   見た目は美しいおなごだな。いいみやげが出来た。)そう言うと、残った左手

   に持ち換えた大刀で、みずからの首を斬るゲルケン。その巨体が、ハーケン

   の上に、重なるように倒れ込んだ。そして、やがて、動かなくなった。

   そうすると、ゲルケンが造った亜空間が消えて、元の場所?に戻っていた。

   (ゲルケンはわざと亜空間を作って、わらわたちを招き入れた。何故?)

   薄暗い中、顔の部分に、8方向に分かれた鎖が絡みついたままの3つ目の

   モンスター?の咆哮が響く。その周りを、別のゴリラたちが取り囲む。

   (やめろ!やめてくれ!このモンスターはともかく、わらわはおぬしらと戦い

   たくはないのだ。手を引いてくれ。頼む。)だが、その願いも空しく、

   モンスターの周りから、剣や槍を構えたゴリラたちが、今にも、一斉に襲い

   掛かろうとしていた。その時、(待て!お前らが束になっても、姫には

   かなわぬ。わしみずからお相手する。)そのテレパシーとともに、別の巨大な

   影が、突然出現した。黒色のマントに黒色の鉄仮面をつけ、さっきの

   ゲルケンと同じような、しかし、鉄ではなく、高価な銀で出来た鎧、籠手、

   膝当て、靴と。全身をくまなく防護している、ゲルケンとほぼ同じ体格の男。

   彼はクトール大帝国の皇帝・クトー・ディマーネの跡取り候補の1人で、

   長男のデュークス。その人だった。「まあ、最も、俺とエヴィータ姫でも、

   ちからの差があり過ぎるな。いいだろう。ハンディーをくれてやる。

   この大バカ野郎のグルケンの刀を使いな。その自慢の宝剣も、刃こぼれ

   しちまってているからな」と、グルケンの愛刀、大振りの剣のドレクーワ。

   その刃についた血を、その重量をものともせず、右腕1本で、1度軽く振り

   下ろして、その血を床に飛ばすと、「ほらっ。受け取れ」と、じっとしている

   ダヴィデを両手で抱えたままのエヴィータ姫にめがけて、容赦なく放った

   のだった。       ((次回に続く。))

プライドとプライド 改

2011年12月18日 22時51分59秒 | Weblog

      第7章  大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のベール(5)

            「君らは2人とも死なないでもいい。今、この状況で、

   命が一番危ないのは、この俺だから」と、ファルガーと、ミノメの2人に声を

   掛けてきた、すぐ近くの壮年?の男がいた。両目が空いた白い布頭巾を

   かぶって、顔を隠している。彼は重傷のアル族(長眉族)のトートだった。

   身体に藍色の寝巻きを着ている。「失礼だが、顔もひどい傷で隠している

   のだ。おまけに身体の方も、もうボロボロだ。だから、俺はここに残る。

   だから、君達はここから逃げて、生き残るんだ」と。急に割り込んできた、

   トートに、思わず、顔を見合すファルガーと、ミノメ。無理もなかった。子供の

   時分に、イリアスを出てしまっていた、2人は、イリアスの英雄と言われて

   いた、トートのことを知る筈もなかった。「ご厚意はありがたいですが、

   これからどうするかは、2人で決めますので、ご遠慮下さい」と、自分達への

   干渉はやめて下さいと、きっぱりと言うファルガー。「それは済まなかった。

   なら、もし万が一、俺が死にそうな目になっていても、放っておいてくれ」

   トートにそう言われても、2人はただ、「まあ、それはたぶん、大丈夫です。

   おそらく、そんな余裕はないですから」と、訝しげに答えるファルガー。

   「そうか。ありがとう。済まなかった。邪魔をして。少し眠る」と、話を断ち切る

   合図のように、布団をかぶるトート。ファルガーと、ミノメは逆に、トートに興味

   が沸いてきたが、大きないびきが聴こえてきて、本当に眠ったみたいで、

   何かはぐらかされた感じで、(変なおっさん)と、頷き合う2人だった。

     茶色の髪に青い眼。白い肌にスラリとした肢体。赤いマントに黒色の

   半袖胴着。白い短パンに、焦げ茶色のロングブーツ。腰に差した赤い鞘の

   宝剣・ルジェーヌ。左手首に巻いた鎖付き懐中時計のエグザーレ。首には

   大きめの鎖のネックレスをした、矢吹マリアの姿の、今は魂がエヴィータ姫

   が、1人猛然と、妖しげな尖がりの黒い塔の直前まで、走り込んでいた。

   それでも、辺りを充分に警戒しながら、進んでいた。だが、直前まで、不気味

   なほどに、静かで、難なくエヴィータ姫は、塔の5メートルほど前まで来て

   いた。五感をフル活動させて、なんらかの気配を探ろうとしたが、何も感じ

   られないままで、さらに2メートル前まで来た。その時、「扉は開けてあるぞ。

   中に入るがいい。むすめごよ。その勇気があるならな」と、野太い声が

   聴こえてきた。怖くないと言えば、鬼姫と恐れられたエヴィータ姫でも、

   例外ではない。まるでつかめぬ、敵の正体に、全身が震えて、逃げ出したい

   衝動に襲われそうだったが、危うく踏みとどまった。それは、もう1つの魂、

   マリアの視線を感じたからだった。さすがに入れ替わった、マリアに無様な

   格好は見せられない。思い切って、大きな扉を蹴り上げて、中に飛び

   込んでいった。薄暗い闇の中、大きな3つの光があった。どうやら、3つは

   眼の光のように感じられたエヴィータ姫は、首のネックレスを外すと、その

   3つ目に向けて投げ付けた。「スパイダー・スレッド・キャッチャー!」

   ネックレスは回転しながら、巨大化して、真ん中を中心にして、8方向に

   伸びた鎖が、大きな影を捕まえたみたいだった。急に聴こえる、ギャーという

   咆哮。エヴィータ姫の足元の床が、急になくなったのか、どこかに堕ちて行く

   感覚に襲われた。凄いスピードで、なんとか着地したが、両のかかとに、

   激痛が走って倒れてしまったエヴィータ姫。それでも、素早く転がった。

   殺気を感じたのだ。髪の毛がサラサラと切られて、落ちていった。何か

   大きな刃物のようで、半身(はんみ)になりながら、なんとか、ルジェーヌを

   抜いて、受け止めた。が、凄いちからで、弾き飛ばされそうになるのを、

   堪えるのが精一杯で、反撃する余裕は無い。ブンブン振り回して、襲い

   掛かる刃を、数回受け止めるエヴィータ姫。だが、剛力でエヴィータ姫の

   ルジェーヌを持つ右手でさえ、段々重くなって、手が下がりそうになる。最早

   猶予はない。その時、左手のエグザーレに気付く。頭にアドラス叔父さんの

   像が浮かぶ。自信はないが、やるしかない。「タイム・ナヴィゲーション・

   ストップ・マックス!」初めてエグザーレを使用するエヴィータ姫。どれくらい、

   時を止めておけるかは未知数だったが、賭けてみるしかない。だが、重い刃

   の動きが一瞬止まった。この隙に乗ずるのみだった。「十六方陣斬り!」

   やっと視界に捉えた、全身、鉄の鎧の巨人に向けて、ルジェーヌが、

   その刃を走らせたのだった。((次回に続く。))

  

プライドとプライド 改

2011年12月18日 21時18分10秒 | Weblog

      第7章  大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のベール(5)

            「君らは2人とも死なないでもいい。今、この状況で、

   命が一番危ないのは、この俺だから」と、ファルガーと、ミノメの2人に声を

   掛けてきた、すぐ近くの壮年?の男がいた。両目が空いた白い布頭巾を

   かぶって、顔を隠している。彼は重傷のアル族(長眉族)のトートだった。

   身体に藍色の寝巻きを着ている。「失礼だが、顔もひどい傷で隠している

   のだ。おまけに身体の方も、もうボロボロだ。だから、俺はここに残る。

   だから、君達はここから逃げて、生き残るんだ」と。急に割り込んできた、

   トートに、思わず、顔を見合すファルガーと、ミノメ。無理もなかった。子供の

   時分に、イリアスを出てしまっていた、2人は、イリアスの英雄と言われて

   いた、トートのことを知る筈もなかった。「ご厚意はありがたいですが、

   これからどうするかは、2人で決めますので、ご遠慮下さい」と、自分達への

   干渉はやめて下さいと、きっぱりと言うファルガー。「それは済まなかった。

   なら、もし万が一、俺が死にそうな目になっていても、放っておいてくれ」

   トートにそう言われても、2人はただ、「まあ、それはたぶん、大丈夫です。

   おそらく、そんな余裕はないですから」と、訝しげに答えるファルガー。

   「そうか。ありがとう。済まなかった。邪魔をして。少し眠る」と、話を断ち切る

   合図のように、布団をかぶるトート。ファルガーと、ミノメは逆に、トートに興味が沸いてきたが、大きないびきが聴こえてきて、

プライドとプライド 改

2011年12月18日 21時18分10秒 | Weblog

      第7章  大乱戦。次第に剥がされてゆく真実のベール(5)

            「君らは2人とも死なないでもいい。今、この状況で、

   命が一番危ないのは、この俺だから」と、ファルガーと、ミノメの2人に声を

   掛けてきた、すぐ近くの壮年?の男がいた。両目が空いた白い布頭巾を

   かぶって、顔を隠している。彼は重傷のアル族(長眉族)のトートだった。

   身体に藍色の寝巻きを着ている。「失礼だが、顔もひどい傷で隠している

   のだ。おまけに身体の方も、もうボロボロだ。だから、俺はここに残る。

   だから、君達はここから逃げて、生き残るんだ」と。急に割り込んできた、

   トートに、思わず、顔を見合すファルガーと、ミノメ。無理もなかった。子供の

   時分に、イリアスを出てしまっていた、2人は、イリアスの英雄と言われて

   いた、トートのことを知る筈もなかった。「ご厚意はありがたいですが、

   これからどうするかは、2人で決めますので、ご遠慮下さい」と、自分達への

   干渉はやめて下さいと、きっぱりと言うファルガー。「それは済まなかった。

   なら、もし万が一、俺が死にそうな目になっていても、放っておいてくれ」

   トートにそう言われても、2人はただ、「まあ、それはたぶん、大丈夫です。

   おそらく、そんな余裕はないですから」と、訝しげに答えるファルガー。

   「そうか。ありがとう。済まなかった。邪魔をして。少し眠る」と、話を断ち切る

   合図のように、布団をかぶるトート。ファルガーと、ミノメは逆に、トートに興味が沸いてきたが、大きないびきが聴こえてきて、