こんにちは。実行委員の原田朱美です。
早いもので、「ご縁玉」上映会からもう1週間ですね。
私は未だに会場の空気を思い出しては、余韻に浸っています。
今日は、私があの日出会った、ある女性について。
7月中旬。
事務局に、こんなメールが届きました。
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このイベント、凄く楽しみにしています。
「ご縁玉」の映画が上映された時(注:以前劇場公開された時)、凄く迷いました。
観たいという気持ちは強い。
でも字幕が無いからと諦めていました。
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聴覚障害をお持ちの方だったのです。
メールは続きます。
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でも、感動の声を聴くたび、見に行けば良かったと後悔していました。
この機会があることに、本当に感謝しています。
このイベントを知り、早速申込をしました。
映画に、字幕は付きませんが、勘で流れを掴みたいと思っています。
聴覚障害を持っていることもあって、目からの 情報しか得ることができないのですが、勘を掴むのは人一倍強いので、この映画もきっと掴めると信じています。
映画だけじゃなく、 トークショー、ライブ、楽しみにしています。
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「なんとかならないものか」。
あるスタッフが切り出し、また別のスタッフが「手話通訳を知り合いに紹介してもらえるかも」と動き、幸いすぐに手話通訳さんを見つけることができました。
ただ、スタッフのほぼ全員は、イベントに関して素人です。
まして、手話通訳は初めて。
どこに立ってもらえばいいのか?
そもそも、上映中は暗いけれど、見えるのか?
不安を抱えたまま、準備をすすめました。
当日。会場に現れた女性は、可愛らしい方でした。
小柄で色白で、白いシャツがよく似合う。
「緊張しています」と、はにかむように笑っていました。
映画の上映が終わり、エリックの演奏中、私は目の前で響くチェロの音に浸りながら、ふと、女性が気になりました。
彼女に、今この瞬間の空気は、どう届いているのだろう。
映画を見て、どう思ったかな。
ちゃんと通訳が見えたかな。
あの席に案内して良かったのかな・・・。
トークに入った時でした。
江口監督がふと、「エリックがなんで頭を刈ったか、わかる方います?」と、会場に質問を投げました。
一瞬の沈黙の後、手を挙げたのは彼女でした。
ぱっとはじかれたように、手話通訳さんは、女性の手話を声に出し始めました。
月並みな言い方しかできませんが、私はあの時、とても嬉しかったです。
楽しんでくれたからこそ、すすんで発言までしてくれたのだろうかと。
イベント終了後、彼女の席に向かいました。
来てもらったお礼を言うためです。
女性は、満面の笑みでした。
最初に会った時の、シャイな笑顔ではなく、花が咲いたような。
興奮さめやらぬ、という感じで小さくぴょんぴょんと弾みながら、「ありがとうございました」と伝えてくれました。
本当に本当に、可愛らしく笑う人でした。
私はなぜか、彼女とハグしてしまいました。
「こちらこそありがとうございました。
そう言ってもらえて嬉しい」と、手話通訳さんの手を借りてようやく言えました。
手話を何も知らない自分をちょっと恥じつつ。
でも何か、彼女と同じことを共有できたことも感じつつ。
そして翌日、彼女から、またメールが届きました。
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月島のイベントに関わっていた皆様、昨日の月島のイベントでは、本当に色々とありがとうございました。情報保障、叶ったら良いなと思って書いたとはいえ、無理だろうなと諦めていました
。それだけに、熱心に受け止めてくれ、思いがけないメールを頂いた時は、言葉にならない位、凄く嬉しかったです。
昨日のイベント、受付担当の方、原田さん、手話通訳の方、スタッフの皆さんから、色々と手話で、ゆっくりと声掛けて頂き、凄く嬉しかったです。
映画の内容まで、手話通訳してくださるとは思いもしませんでした。
映画の内容もしっかりと知ることができて本当に良かったです。
映画、ライブ、トークショーと心から最初から最後まで、笑って泣いて、感動して、と過ごすことができました。
今夏の最高の思い出になりました。
本当にありがとうございました。
ご縁玉のイベントで頂いた5円玉しっかりと財布の中に入れてあります。
いつか、どこかで、スタッフの皆さんや、原田さんや手話通訳の方と、またご縁があると良いなと思っています。
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ちなみに私は、バタバタオロオロと動き回っただけです。
見事に伝えてくださった手話通訳さんの仕事の素晴らしさは言うまでもなく、山ちゃんの力ってすごいなと、改めて思いました。
この映画とエリックが放つ力も。
そう。
あとひとつ書きたいことが。
手話通訳さんのことです。
当日、わずかながら謝礼を準備していました。
イベント終了後、渡そうとすると固辞されました。
「私も楽しかったです。ありがとうございました」と。
今回、私もたくさんのあたたかい「ご縁」をいただきました。
もちろん五円玉は、財布に入れています。