落穂拾い

Gleanings in my life

三洋電機の中期計画

2005年11月18日 18時51分58秒 | News
三洋電、総合家電撤退し環境企業へ 2330億円赤字 (共同通信) - goo ニュース

日本のメーカーの中では、ブランド力がいまいち低いような気がするけど、いろいろな家電分野で活躍している三洋電機ですが、その経営がかなりヤバイ状態になっているようだ。

三洋電機は、井植家が創業したメーカーであり、創業者は今でも代表取締役兼取締役議長として健在である。そして、その息子である井植敏氏は社長をやっているという状態であるから、創業家の支配が今も続いていることが明かである。

もちろん、新潟中越地震の影響などにより業績が悪化してしまったことも否めないのだが、それだけではここまで酷い状態にはならなかったことだろう。きっと経営手腕的にも問題があったに違いがないと想像するのだが、ここでは細かい推察はしないでおこう。

三洋電機の現状で気になるのは、情報の交錯である。

たとえば11月3日の産経新聞の記事では、社長の井植氏がインタビューに答える形で下記のように述べている。


 --金融子会社の三洋電機クレジットの株式の3売却交渉は

 「個別交渉にはお答えできないが、小手先の財務向上策を講じるつもりはない。有利子負債を圧縮する意味合いはもちろんあるが、上場会社として、三洋電機クレジットにはもっと強い金融会社に育ってほしい」

 --洗濯機など白物家電事業の売却観測も浮上している

 「それは違う。事業や品目の取捨選択をするつもりはない。営業や生産、流通などあらゆるファンクション(機能)を含めて総合的に判断する。もちろん、今のビジネスモデルで生き残れないと理解しているが、(事業を)やめないで済む新しいビジネスモデルを模索している」


この時点で社長は「三洋電機クレジットは売却しない」、「総合家電メーカーとしてやっていく」という方針を表している。

ところが11月16日の日経の記事では


三洋電機は15日、上場金融子会社の三洋電機クレジットの株式を三井物産に売却する方針を固めた


となっている。要は社長のインタビューから10日もしたら、子会社のクレジット会社を売却する方針に転換したということだ。

一方、昨日には

三洋電機 歴代2社長も退任へ 近藤氏・桑野氏 経営悪化で引責 (産経新聞) - goo ニュース

という記事が出ている。この記事の要点は「取引先金融機関は、社長経験者三人(創業者を含む)の更迭を条件に増資に応じる模様である」ということだ。

ここまでの流れを見ると、井植家の影響がジリジリと追い出されていく様子が伺われる。現状維持を叫ぶ社長、ところが、それに反する方針が進められ、ついに創業家が経営の第一線から引くことになる、という流れだ。

そんな中で、今日18日、三洋電機から中期経営計画が発表された(ニュースリリース)。そして、その発表を受けての記事が以下のものである。

三洋電、総合家電撤退し環境企業へ 2330億円赤字 (共同通信) - goo ニュース

三洋クレ売却“破談” 三井物産と条件合わず (産経新聞) - goo ニュース

これらの記事で、注目する点は三点ある。

  • 総合家電を撤退
  • 三洋クレジットの売却話は破談
  • 過去の2社長は更迭、井植家は二人とも現役職に留まる


最初の一つは井植社長の意図が挫かれたことになる。他の二つは井植家の意思通りの結果である。

おそらく、創業家と経営改革派の間で激しい応戦があったのであろう。それが流れてきたニュースと今日の発表の違いにあらわれているのに違いない。しかし、これで三洋電機は復活できるのであろうか?

少くとも話の流れとしては、

  1. 経営悪化の責任明確化(創業者を含む過去の社長たちの更迭)
  2. 有利子負債圧縮のために本業以外の切売り(金融子会社の売却)
  3. 得意分野に経営資源を集中(総合家電からの撤退)

をすることにより、三洋の復活を目指そうというものではなかっただろうか。もちろん、金融子会社はこれからもっと条件のいいところに売却できるかもしれないし、経営責任は明確化しようとしまいと業績とは直接結びつくわけではない。しかし、上のストーリーのうち少くとも2つは頓挫したわけで、それには創業家系の反対力が働いたと考えないわけにはいかない。要するに、11月3日の産経の記事にあるような井植社長の考えをもった人間が中にいて、力を持っているに違いないということだ。

この危機的な状況の中で、改革反対派を経営陣に抱えながら三洋は無事復活できるのであろうか?

ニュースリリースを注意深く読むと「総合家電からの撤退」とはどこにも書いておらず、


白物家電事業に関しましては、国際戦略に基づいた大幅再編に着手する


となっているわけであり、反対派が力を増せば「大幅再編した総合家電メーカー」を目指したとしても、この中期計画案とは矛盾しない。

果たして、井植家が呼んできたと言われる野中ともよ会長は、どのような考えをもっているのだろうか?この混乱を乗り切るには、改革派、反対派のいずれであろうとも、強力なリーダーシップを発揮することが必要であるように感じる。

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