記忘庵日誌2019・1・30 荻野源吾
ユーロ消滅?
イギリスは紳士・淑女の国として大方の日本人は捉えている。なるほど大英帝国の歴史を誇ってきた国、そのマナーなど個人的には優れた教養を身に着けてきた民族と言えるかもしれない。
しかし国際政治ではその「狡猾さ」はつとに知られている。石油利権巡るイランでの王室傀儡化や第一次世界大戦で日本に対独戦を促したりなどはその一例にすぎない。イギリスに留学した人たちはその「狡猾さ」は賢さからくるのでなく、案外行き当たりばったりの行動様式があると分析している。
今回のブレグジット(Brexit-ユーロ離脱のこと)でもこの行動様式を示している。
このユーロ離脱騒ぎ。一体イギリスは何がしたいのかよくからないというのが世界の受けとであろう。そこにはユーロ圏を揺さぶりにかけてあわよくばイギリスの金融センターの地位を堅持しようとするイギリスの魂胆が見えているというのが世界の経済界の受け止めである。これがイギリス流の狡猾さである。
イギリスがユーロを離脱するのか。すぐ前にはギリシャの財政危機がユーロの足を引っ張るということでひと騒ぎしてきた。いよいよイギリスの離脱が第二の引き金となってユーロは消滅するのか。
ぶり返す歴史とはいえまずこれはあり得ない。折角築かれた「ヨーロッパの一体感」は損なわれない。なぜなら当初11カ国で始まった欧州連合(欧州石炭鉄鋼共同体→欧州経済共同体EECを経て)が今やヨーロッパ諸国28カ国余りを包含するに至っている。国境の壁を除き、ユーロの共通貨幣(\euro―19カ国使用)の共同体としての意識、その便宜が各国の連帯を余儀なくして来ているといえる。これはすでに今後の国際社会のモデルとして活きている。いずれイギリスもそのことを悟るであろう。
問題は今このユーロ圏をリードするドイツの「メルキァヴェッリ」(マキァヴェッリ主義に対してドイツのメルケル首相の手法をもじっている)がどう動くか。単に権力論ではなく、世界リスク社会への挑戦となり、かつ緊縮政策による締め付けでなく債務国への理解と南北格差の解消などによる民主主義の進展がなされるかに期待が寄せられている。(参考・ウルリッヒ・ベック著・島村訳「ユーロ消滅―ドイツ化するヨーロッパへの警告」岩波書店2013)
ドイツ人は勤勉なだけにギリシャ国民が怠惰に映るのかも知れない。しかしドイツは移民を最も受け入れたりして今メルケルは奮闘しているとも思われる。
ドイツはどこまで忍耐できるか。イギリスの狡猾さとドイツの忍耐力の対峙。完
ユーロ消滅?
イギリスは紳士・淑女の国として大方の日本人は捉えている。なるほど大英帝国の歴史を誇ってきた国、そのマナーなど個人的には優れた教養を身に着けてきた民族と言えるかもしれない。
しかし国際政治ではその「狡猾さ」はつとに知られている。石油利権巡るイランでの王室傀儡化や第一次世界大戦で日本に対独戦を促したりなどはその一例にすぎない。イギリスに留学した人たちはその「狡猾さ」は賢さからくるのでなく、案外行き当たりばったりの行動様式があると分析している。
今回のブレグジット(Brexit-ユーロ離脱のこと)でもこの行動様式を示している。
このユーロ離脱騒ぎ。一体イギリスは何がしたいのかよくからないというのが世界の受けとであろう。そこにはユーロ圏を揺さぶりにかけてあわよくばイギリスの金融センターの地位を堅持しようとするイギリスの魂胆が見えているというのが世界の経済界の受け止めである。これがイギリス流の狡猾さである。
イギリスがユーロを離脱するのか。すぐ前にはギリシャの財政危機がユーロの足を引っ張るということでひと騒ぎしてきた。いよいよイギリスの離脱が第二の引き金となってユーロは消滅するのか。
ぶり返す歴史とはいえまずこれはあり得ない。折角築かれた「ヨーロッパの一体感」は損なわれない。なぜなら当初11カ国で始まった欧州連合(欧州石炭鉄鋼共同体→欧州経済共同体EECを経て)が今やヨーロッパ諸国28カ国余りを包含するに至っている。国境の壁を除き、ユーロの共通貨幣(\euro―19カ国使用)の共同体としての意識、その便宜が各国の連帯を余儀なくして来ているといえる。これはすでに今後の国際社会のモデルとして活きている。いずれイギリスもそのことを悟るであろう。
問題は今このユーロ圏をリードするドイツの「メルキァヴェッリ」(マキァヴェッリ主義に対してドイツのメルケル首相の手法をもじっている)がどう動くか。単に権力論ではなく、世界リスク社会への挑戦となり、かつ緊縮政策による締め付けでなく債務国への理解と南北格差の解消などによる民主主義の進展がなされるかに期待が寄せられている。(参考・ウルリッヒ・ベック著・島村訳「ユーロ消滅―ドイツ化するヨーロッパへの警告」岩波書店2013)
ドイツ人は勤勉なだけにギリシャ国民が怠惰に映るのかも知れない。しかしドイツは移民を最も受け入れたりして今メルケルは奮闘しているとも思われる。
ドイツはどこまで忍耐できるか。イギリスの狡猾さとドイツの忍耐力の対峙。完