一元描写

私の日常の出来事をエッセイ風に記録して行きたい。

信天翁の名誉にかけて

2011-02-27 17:54:23 | Weblog
 最近ホットな話題として、中国から、雌雄一対の「番茶も出ばな」なる
5歳のパンダが、上野動物園に到着している。例の尖閣にまつわる日中の
ギクシャクに対する親善大使を意としたことならば、嬉しいのだが、実
は、地球上に生息する動物の絶滅を危惧されるパンダを、見守る関係者の
崇高な努力の一環であると言う。
さて、2・3年前だったろうか。伊豆諸島の活火山に棲む、あほうどり
を火山以外の聟島に移送する試みが紹介された。眉目秀麗な雌の偽鳥を、
目的の草叢に設置したところ、果たせるかな、雄の一羽がそれとも知らず
本気で、恋をしてしまい、偽造のメスの周りを激しく巡り求愛のダンスを
していたと言う哀れさが私の脳裏を離れない。そんな印象から、私は以来
「阿呆鳥」の先入観を持って仕舞ったのだが、最近別件の要があって、
漢和大辞典を紐解き、図らずも、”信天翁”なる字句に会い、これぞ
海鳥科の「あほうどり」の学名である事を知って、我が阿呆を恥る事頻り。

 その後絶滅の危惧に瀕する此の”信天翁”は熱心な関係者によって足輪
にNOを付けられ、鳥島から巣立った。所が、其の一羽が聟島(ムコジマ)
に生息している事が最近確認され、大成功!と、コラムに乗ったのを人事
とも思えず、嬉しく一瞥した。
 アッテンボローの著になる「鳥たちの私生活」に依れば、彼らは最も
広い行動圏を持つ鳥で、何カ月も海上を飛び続ける。海上で餌を取り、
眠りながら飛ぶと言う、スゴワザを持つまでに進化したのだ。ところが、
子育てともなれば、陸上の生活を余儀なくされ、最も苦手とする歩きと、
飛び立ちのモタモタが始まる。天敵の危険も高まる。そこで、
関係者の飽くなき保護が続く。移送の成功を願って止まない。