ちょうど半年前、たしか1月の終わり頃のこと。
その日は冬の朝の強烈な睡魔に負けて、寝坊してしまった。
急いで準備をして、朝食もろくに食べずに家を出て、自転車に乗り、駅へと向かった。
小さな雪の粒を顔面に受け、顔を真っ赤にしながら自転車をこぐ。
手が痛い。手袋してくればよかったと後悔するが、そんな余裕はなかった。
駅に着くと、自転車を止めるところが無かった。
いつもなら自転車置き場はガラガラなのに、たった1時間違うだけで、
自転車置き場は隙間なくギッシリ詰まってた。
仕方なく近くのコンビニに止める。
撤去されたら、それはそれで仕方が無い。
外と空気が違う駅の中へ入り、冷たい指で
券売機のボタンをぎこちなく押して、券を買う。
券を買う必要はなかった。定期がある。
今までこんなミスをしたことは無い。
寝ぼけているせいか。それともいつもと駅に来る時間が
違ったせいで、リズムが狂ったのか。
返金するのも面倒なので、泣き寝入りする。そもそも自分が悪い。
改札を通り、ホームに出る。電車が来るまであと30分。
通勤ラッシュの時間帯を過ぎていたので、電車の本数も少なかった。
それを根拠付けるように、ホームには自分を除いて3人しかいない。
いや、こんな寒い中で30分も前からホームで待ってる人の方が珍しいのかもしれない。
暖房の効いた待合室で待てばいいのに、極寒のホームで待つのは、自虐行為だ。
この人達は、いったい何を考えてこんな自虐行為に至ったのだろう。
よくよく考えてみれば、自分もその一人だ。
自分はいったい何を考えてこんな自虐行為に至ったのだろう。
何も考えていなかったからこうなった。そうとしか言いようが無い。
他の人達もそうだろうか。
問いかけるわけでもないが、ふと隣の男の人に目を送る。
どうやら、そうらしい。
質問したわけでもそれに答えたわけでもないが、顔を見れば分かる。
失敗したな、という顔だ。他の人もそんな顔をしている。妙な親近感が沸いた。
一方的な自分の妄想だけど、ここの人達と心が一つになった気がする。
理不尽な寒さに耐える運命共同体。
そうこう考えているうちに、電車が向かってくる音が聞こえた。
ついにきたか。長かったような短かったような30分。
これでこの場所も卒業だ。
電車の姿がついに見えてきた。
さっき隣にいた男の人が、早足で前に出た。
やっぱり1秒でも早く暖房の効いた電車の中に入りたいのかな、
、、、と思ったが、違った。
男の人は、黄色い線が見えないのか如く、
足を止めることなくそのまま線路へと飛び込んだ。
ちょうど同じタイミングで、電車が通る。
黒板を引っかくような強烈なブレーキ音にまぎれて、
「ドム」と鈍い音が聞こえたような気がした。
その音が、今も鼓膜にベットリとへばり付いて離れない。
その日は冬の朝の強烈な睡魔に負けて、寝坊してしまった。
急いで準備をして、朝食もろくに食べずに家を出て、自転車に乗り、駅へと向かった。
小さな雪の粒を顔面に受け、顔を真っ赤にしながら自転車をこぐ。
手が痛い。手袋してくればよかったと後悔するが、そんな余裕はなかった。
駅に着くと、自転車を止めるところが無かった。
いつもなら自転車置き場はガラガラなのに、たった1時間違うだけで、
自転車置き場は隙間なくギッシリ詰まってた。
仕方なく近くのコンビニに止める。
撤去されたら、それはそれで仕方が無い。
外と空気が違う駅の中へ入り、冷たい指で
券売機のボタンをぎこちなく押して、券を買う。
券を買う必要はなかった。定期がある。
今までこんなミスをしたことは無い。
寝ぼけているせいか。それともいつもと駅に来る時間が
違ったせいで、リズムが狂ったのか。
返金するのも面倒なので、泣き寝入りする。そもそも自分が悪い。
改札を通り、ホームに出る。電車が来るまであと30分。
通勤ラッシュの時間帯を過ぎていたので、電車の本数も少なかった。
それを根拠付けるように、ホームには自分を除いて3人しかいない。
いや、こんな寒い中で30分も前からホームで待ってる人の方が珍しいのかもしれない。
暖房の効いた待合室で待てばいいのに、極寒のホームで待つのは、自虐行為だ。
この人達は、いったい何を考えてこんな自虐行為に至ったのだろう。
よくよく考えてみれば、自分もその一人だ。
自分はいったい何を考えてこんな自虐行為に至ったのだろう。
何も考えていなかったからこうなった。そうとしか言いようが無い。
他の人達もそうだろうか。
問いかけるわけでもないが、ふと隣の男の人に目を送る。
どうやら、そうらしい。
質問したわけでもそれに答えたわけでもないが、顔を見れば分かる。
失敗したな、という顔だ。他の人もそんな顔をしている。妙な親近感が沸いた。
一方的な自分の妄想だけど、ここの人達と心が一つになった気がする。
理不尽な寒さに耐える運命共同体。
そうこう考えているうちに、電車が向かってくる音が聞こえた。
ついにきたか。長かったような短かったような30分。
これでこの場所も卒業だ。
電車の姿がついに見えてきた。
さっき隣にいた男の人が、早足で前に出た。
やっぱり1秒でも早く暖房の効いた電車の中に入りたいのかな、
、、、と思ったが、違った。
男の人は、黄色い線が見えないのか如く、
足を止めることなくそのまま線路へと飛び込んだ。
ちょうど同じタイミングで、電車が通る。
黒板を引っかくような強烈なブレーキ音にまぎれて、
「ドム」と鈍い音が聞こえたような気がした。
その音が、今も鼓膜にベットリとへばり付いて離れない。