1960年代にグループサウンズのザ・スパイダースの元メンバーでギタリストの井上堯之さんが2018年5月2日に亡くなっていたことが5月4日に分かりました。77歳でした。
井上さんは1995年に初期の胃ガンを手術し、元気にカムバックしましたが、2009年には肺気腫と診断され、「今後の活動が困難になる」との理由で第一線から引退を宣言していました。それでも、病と闘いながらソロライブや楽曲制作、講演などの活動を行って、生涯現役であり続けました。
井上さんは16歳でギターを始めました。オーディション番組を契機に音楽の世界に入り、1962年に「井上孝之」として、ザ・スパイダースに加入。リードギタリストとして海外公演も行いました。スパイダースの解散後、1971年に元ザ・タイガースの沢田研二さん、元スパイダースの萩原健一さんのツインボーカルによるロックバンド「PYG(ピッグ)」を結成しました。そして、1972年に萩原さん出演のTVドラマ「太陽にほえろ!」がヒットし、萩原さんの俳優としての活動が多くなると、萩原さんが参加できるときはPYGとして、参加できないときには「沢田研二と井上堯之バンド」または「井上堯之グループ」として活動します。なお、井上堯之バンドの代表曲と言えるほど有名な「太陽にほえろ!メインテーマ」などのドラマのサウンドトラックも、レコーディング時はPYGとしてレコーディングされていました。
その後、沢田さんのソロデビュー後は、萩原さんを除くメンバーで「井上堯之バンド」として活動します。「時の過ぎゆくままに」「勝手にしやがれ」などでヒットを飛ばした沢田さんを、1980年の解散までバックバンドとして支えました。沢田さんのヒット曲「危険なふたり」のイントロを演奏したのも井上さんです。
ちなみに1972年に沢田さんがNHK紅白歌合戦に初出場した際も、専属バンドとして演奏していますが、現在では当たり前のようになっている「歌手が専属バンドを率いる」ことの先駆けでした。
俳優として独立した萩原さんとの信頼関係も深く、出演ドラマ「太陽にほえろ!」のテーマ曲とドラマ中音楽の演奏を担当するほか、萩原さん主演の「傷だらけの天使」「前略おふくろ様」、映画「青春の蹉跌」などTVドラマ、映画の劇中音楽でも才能を発揮し、主演作を音楽で支えました。
他にクリエーターとしては、作曲した近藤真彦さんの「愚か者」が1987年の日本レコード大賞を受賞。同時期に萩原との競作で「愚か者よ」も手掛け、中島みゆきさんの名曲「ファイト!」の編曲も手掛けています。
1990年代以降はミュージカルの音楽監督にも挑戦し、新たなバンドでも活動。ギターサウンドの追究をし続けた職人肌のギタリストでした。
私的には「太陽にほえろ!」のテーマ曲などです。当時、亡くなった母親が石原裕次郎さんのファンでTVを観ており、子ども時代の意識に刷り込まれたのでしょう。当時はインターネット何てものはありませんので、井上さんが他にどのような楽曲を作っていたかなんて詳しくは知りませんでした。
今でも「太陽にほえろ!」のテーマ曲を聞きますと、スタン・ハンセンさんの入場テーマ「サンライズ」とともに「さて、いっちょやるか」という感じになります。
ご冥福をお祈ります。