実は私はプロ野球を見るならば二軍の試合が面白いと思っています。
以前は年に数回ドラゴンズの二軍公式戦を、すけや太郎と見に行ったものでした。
もちろん、当日でも入場しやすいということや入場料が安い、昼間であるため、日帰りしやすいということもありますが、そこにはいろいろな選手たちがいます。
入ったばかりの新人もいれば、ドラフト1位で入団したが長年芽の出ないままの選手、一軍で活躍していたが不振やケガなどから復活にかける元レギュラーもいます。厳しい世界です。
まだ、ルーキーだった頃の中日・吉見、藤井やチェンなども見れましたし、最後に見た二軍戦では中日・井上(現二軍監督)や今岡(現千葉ロッテ)のベテラン選手が出場していました。
プロ野球 二軍監督--男たちの誇り 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2011-04-26 |
さて、この本の中で印象に残ったこととして、元広島・ロッテでショートとして活躍し、今も破られていない33試合連続安打の日本記録を所持し、ベストナイン5回、盗塁王3回という成績を残している高橋慶彦現千葉ロッテ二軍監督の話です。
私も何度か行ったことがありますが、鹿児島県知覧という町は静かで綺麗な町並みです。
今の子どもたちは知らないでしょうけど、ここから太平洋戦の終わり頃に“特攻”といって、爆弾を積んだ飛行機に乗って、相手の船に体当たりするための基地がありました。そこに知覧特攻平和会館があります。
ここ1、036柱の隊員の遺影が出撃戦死した月日順に掲示されています。そして、家族・知人に残した遺書・手紙・辞世・絶筆・遺品など約4、500点が展示されています。その中には“学徒出陣”といって、今の高校生くらいの年齢の方もいます。
高橋監督は二軍監督に配点される前、鹿児島キャンプの休日に知覧特攻平和会館へ見学に行きました。
「ぼくも一緒に行かせてください」
と願い出たのは入団数年後の西岡剛選手(現; MLBミネソタ・ツインズ)でした。
高橋監督は西岡選手にこう言ったそうです。
「なあ、ツヨシ。おれたちは明日も明後日も野球が出来る。この人たちは、死んで来いって言われて、自分のやりたいことも出来ずに死んでいったんだ。おれたちは幸せだぞ」
今はこんな時代ではないですし、こんなことを言われても判らないと思います。
ですが、こういうことを知っているか、知らないでいるかの違いで、その人のこれからの人生観に少なからずとも影響を与えることだと考えます。
こうした心の在り方は身体能力の差を凌駕するという。
人それぞれの能力には個人差があるが当然んことです。優れた選手は自信を持ち、劣っている選手は不安になります。目の前に自分より上がいると、ますますやっていけないのではないかと思ってしまう。だけど、高橋監督はそうではないのです。
「下手は上手になるんですよ。上手は、それ以上の上手にはなかなかなりません。下手が上手になれば、喜びも大きい。上手はちょっと上手になっても、大して喜びを感じない。それで、上手と下手が同じレベルに並んだとします。当然、モチベーションは下手の方が高い。逆に並ばれたところで、上手のほうはモチベーションが下がるんです。そうなれば追い抜かれるのはすぐですよ」
そして、こう付け加えていました。
「野球選手には確かに筋力も必要です。でもね、その筋力を使うのは心なんですよ。まず心から動かないと、身体も動き出しません。身体は心について来るんだから」