野球小僧

フェースガード / C-FLAP(シー・フラップ)

昨年のプロ野球くらいから流行りだしたフェースガード付のヘルメット。キャンプ中では多くの球団の選手が試し、読売ジャイアンツでは原辰徳監督の指令で打席に立つピッチャー陣に着用を義務づけするなど、今シーズンは、さらに試合で見ることが多くなりそうです。

フェースガードと言えば、昔、近鉄バファローズ時代のチャーリー・マニエルさんが、アメリカンフットボール式のフェイスガード付きヘルメットをかぶっていましたが、それとは違うスマートなものです。

フェースガードの正式名称は「C-FLAP(シー・フラップ)」。米国セントルイスのマークワート社製で、ポリカーボネードで作られています。長さ約20センチ、幅約10センチで、ヘルメットにネジで取り付けて使用し、デッドボールでの顔面骨折などから身を守るのが目的です。もともとはMLBで2014年にジャンカルロ・スタントン選手(当時;シアトル・マーリンズ、現;ニューヨーク・ヤンキース)が着用したことで脚光を浴び、一気に広がった。

現在、日本でC-FLAPを扱っているのは東京都台東区にあるカシマヤ製作所です。同社は打撃用手袋のフランクリン、バットのマルッチといったメジャーリーガーが使用する用具を扱っています。「最初はある大学リーグでプレーする学生から相談を受けて、取り寄せたんです」。試合中に顔面にデッドボールを受け陥没骨折した大学生がCーFLAPを扱っていないか相談したそうです。その選手は骨折した箇所にプレートが埋まっていて、その場所にもう1度デッドボールを受ければ、命の危険もあると医師から言われているとのことです。

野球を続けたいと訴える選手のために、社長は個人的に取り寄せて、選手にプレゼントしました。しかし、その選手が昨秋のリーグ戦で「CーFLAP」を付けたヘルメットを使用しようとしたところ、試合前の用具チェックで規則外ということで使用不可となったとそうです。

現在、野球規則ではヘルメットの着用について「プレーヤーは打撃時間中およびランナーとして塁に出ている時は、必ず野球用ヘルメットをかぶらなければならない」とあり、「アマチュア野球では、所属する連盟、協会の規定に従う」と注記があります。

高校野球、大学野球を統括する日本学生野球協会、社会人野球の日本野球連盟ではともにSGマーク(製品安全協会が認証)が付いたものを使用すると定めていおり、C-FLAPを付けるとヘルメットの改造と見なされ使用が出来なくなるのが、その理由です。

C-FLAPの必要性を実感していた社長は今年1月に同商品の日本総代理店となりました。製品安全協会がヘルメットの検査を行っている委託検査機関に持ち込んで、SG基準と同様の衝撃吸収性試験を行った結果、CーFLAPを取り付けたヘルメットは、通常のヘルメットよりも、衝撃加速度の数値が低くなり(より衝撃を吸収している)、また当然SG基準内に収まったことを確認しました。その結果をもとに、当該連盟などに問い合わせたが、規則を理由に使用は認められませんでした。

そもそも、SGマークとは、製品安全協会が定めた消費生活用製品の安全性を認証する制度で、SG基準に適合した製品に与えられます。SGマーク付き製品の欠陥で人身事故が発生し、当該欠陥と人身事故との間に因果関係があると認められた場合には、同協会が被害者1人につき最高1億円の損害賠償を行うとされています。ただ、プロ野球で使用した場合には損害賠償の適用外となっています。

また、硬式野球用のヘルメットは形や重さにも決まりがありますが、衝撃吸収性試験では、速度30m/s(時速108km/h)の硬式ボールを人頭模型に装着したヘルメットに衝突させた時の最大衝撃加速度を測ります。頭の部分と耳あての部分にそれぞれボールを当て、規定値は2500m/s^2(メートル毎秒毎秒)以下とされています(2500m/s^2はほぼ250G)。この規定値については製品安全協会の担当者が「頭の骨が陥没せずに傷害が残らない数字」と説明しています。

野球ヘルメットのSG基準は1974年に制定され、検査方法などは度々改正されていますが、なんと硬式ボールを当てる速度は変更されていません。時速108km/hのボールは実情に即していないのでは?の疑問もありますが、担当者は「(実験方法の見直しは)検討はしているが色々な理由から変更はしていない」と言っています。

社長は、SG基準だけでは安全性が担保されないと考え、同じ検査機関で速度40m/s(時速144km/h)で同様の検査を行いました。C-FLAP付きヘルメットの耳あて部分は2023m/s^2と基準内の数値を記録、C-FLAPに直接当てても破損がないことを確認しています。

現状ではフェースガード付きのヘルメットがSG基準として認められるためには、取り付けなどをしない一体型を作り、検査を通過する必要があります。そのためには新たに金型を作成するなど時間も費用も要します。また、同社長は「プロの選手の取り付けに立ち会ったが、10人いれば10人、付ける角度が違う。一体型は無理がある」と説明します。

昨年は高校生が練習試合中に頭部死球を受けて亡くなるという痛ましい事件が起こりました。社長は「これ以上、けが人を出したくない」と訴えます。そもそも、アマチュア球界が「SGマーク」のヘルメット着用を義務づけたのも、選手の安全を守るためだったはず。選手ファーストとして、規則の見直しなど迅速でなおかつ積極的な議論が進むことを望みます。

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