

あの感動作「映画ドラえもん のび太の恐竜2006」から続く、スタッフ・声優リニューアル後の新生・劇場版ドラえもんも、もう今回で6作品目。2007年の2作目「映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 ~7人の魔法使い~」以降、正直ここ数年の映画ドラえもんには残念な感想しかなかったので、昨年に「のび太と鉄人兵団(1986年公開)」のリメイクと聞いた時には不安だけが膨らんでいたのです。
しかし!なんと今回の作品「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~」は、久々に純粋に楽しめる良作となっておりました!
<以下ネタバレ含む管理人の感想です。映画をこれから観る方は読まないでください。来年の映画についての情報も含みます。知りたくない方は注意!>
いつものようにスネ夫にロボット型のラジコン・ミクロスを自慢され悔しがるのび太。早速ドラえもんに大きなロボットをねだるも断られるのび太だったが、不思議な事に空から落ちてくる巨大なロボットの部品を手に入れる。
ドラえもんの道具を使って、鏡の中の世界で巨大ロボットを組み立ててしまうのび太達だったが、そのロボットを捜しに、一人の不思議な少女・リルルがのび太の前に現れるのだった。
リメイク作と言う事で、どうしても原作&旧映画と比べられてしまうのですが、新作・のび太と鉄人兵団は原作が伝えようとしていたメッセージを咀嚼しつつ、物語に新しい説得力を与えようとしていました。リルルが心変わりするその訳に。
大きな新しい要素として登場したのは、地球人捕獲作戦遂行の為に派遣された巨大ロボット・ザンダクロスの電子頭脳・ジュド…だったのに、ドラえもんにヒヨコの姿に改造されてしまうピッポ。可愛い外見に毒舌という、キャラクターとしてはかなり目立つ新キャラに、予告編を見た旧作ファンは大きな不安も持っていたのですが、まさか今作の物語に、こんな重要な役割を果たすキャラクターだったとは誰も予想しなかったのではないでしょうか?
リルルやピッポの祖国・メカトピア星において、2人が奴隷とされていた労働階級のロボットであったという設定は、原作・旧作では描かれていない点です。支配する側である貴族・金持ちロボットと違い、虐げられ、苦しんできた側であるリルルとピッポが、地球人を奴隷にしようとする作戦に疑問を持ち始める…。この新しい設定こそが、原作の物語に新しい説得力を与えた大きな改変点であり、今回の素晴らしいリメイク脚本の肝であったのです。
原作と違い、物語の導入冒頭でいきなりヒロイン・リルルの正体を明かしてしまう脚本部分は賛否別れそうな所です。しかし、意外と状況設定が複雑なストーリーである藤子・F・不二雄先生の原作漫画「大長編ドラえもん のび太と鉄人兵団」を、小さな子供達にも理解させつつ、飽きさせずに物語を進める為の手段としては納得しました。原作や旧作映画で強調されていた、ミステリアスな少女・リルルのイメージは少し弱まりましたが、今作のリメイク版脚本の狙いであるその後の展開、リルルとしずか、ピッポとのび太、リルルとピッポのそれぞれの友情と互いへの思いやりを描くストーリーには、人間的感情が強調された今作のリルルのキャラクター造形は巧くハマっていたと思うのです。
また旧作ファンはみんな驚いたであろう、前半のミュージカルばりの歌の数々。一作品の中でこんなに沢山の歌曲が挿入されたのは、映画ドラえもんでは初めてでした。そもそも小学生をターゲットに描かれていた原作・大長編ドラえもんは、確かに幼児には難しい物語も多く、今作も異世界(鏡面世界)と現実世界の二重構造、過去と現代を行き来して展開する複雑なSF物語で、小さな子供達には難しいであろう展開もあるのですが、途中に挿入される歌曲の数々が、上手くテンポを作り、映画全体としては良いバランスを作っていた事にはとても感心したのです。
メインのモチーフであるロボット達の作画・演出も良かったですね~。のび太が憧れる巨大ロボット・百式…ザンダクロスの巨大感!リアルに描き込まれた街やビル街の中、絶妙な見上げるカメラワークと動きで、大きさ・重量感を演出しつつ、素早い動きもこなす、ヱヴァンゲリヲンを思わせる気持ちの良いロボットアクションを見せてくれました。そして気持ちの悪い鉄人兵団の昆虫型ロボット達も旧作より精巧に、よりリアルなロボット兵として物語を盛り上げていましたね。
背景も良かった。ザンダクロスが動きまわった街(首都高をジャンプ!)は赤坂見附のあたり。そしてしずちゃんが爆破してしまった高層ビルはグランドプリンスホテル赤坂(旧赤坂プリンスホテル)。リルルが鉄人兵団の総司令官に「何をしていた!」と責められる場所(地下鉄入り口横・34番出口)が池袋駅東口LOFT前だったりと、実在の場所を積極的に取り入れたリアルな背景美術も画面に説得力を与えていましたね。


もちろん最も今作に大きな成功をもたらしたのは、やはり緩急のある良いテンポで映画を盛り上げた寺本幸代監督と、原作のテーマを尊重しつつ、新しい要素で説得力のある物語を紡いだ脚本の清水東さんでしょう。
寺本幸代さんにとっては2007年の「映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 ~7人の魔法使い~」に続く2作目の監督作品でしたが、やはりキャラクターの心情や、それに合わせて存在するべき身体の動きを表現するのが巧い監督さんなんだと再確認しました。そこに整理された清水東さんの脚本が加わり、「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~」はリメイク作品としては久々に大成功の映画となったのだと思うのです。
新キャラクター・ピッポのせいで、旧作では重要な役割を持っていたスネ夫のラジコンロボ・ミクロスの出番はあまりありませんでしたが、映画終わりのエンドロールに紛れて「アカンベー」を見せていたのは旧作ファンへのサービスでしょうね。
映画のテロップ終了後には毎年恒例の、来年の映画を予告するおまけ映像。数百年前に絶滅した巨鳥「モア」がドラえもんをパクリと…。これは短編「モアよドードーよ、永遠に」(てんコミ第17巻・原題=絶滅した動物の楽園を作ろう)を膨らましたオリジナルなのか? それとも「映画ドラえもん のび太と雲の王国(1992年公開)」のリメイクなのか…。来年も期待してますよ!
映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 はばたけ 天使たち・公式サイト
http://doraeiga.com/2011/
映画ドラえもん30周年オフィシャルサイト
http://www.dora-movie.com/
●関連記事
ちょっと気になるドラえもん最新情報(2010年03月21日)
物語を簡略化?「映画ドラえもん のび太の人魚大海戦」の感想!
http://blog.goo.ne.jp/fujiko_f_toshio/
e/f699a6a0279ebaaa66714a7e7cb8ae28
ちょっと気になるドラえもん最新情報(2009年03月11日)
映画とTVアニメは違うはず!「映画ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史」の感想!
http://blog.goo.ne.jp/fujiko_f_toshio/
e/811438d92e8fdac240536f5c48dba4bc
ちょっと気になるドラえもん最新情報(2008年03月12日)
賛否両論!?「映画ドラえもん のび太と緑の巨人伝」を観た!
http://blog.goo.ne.jp/fujiko_f_toshio/
e/2eeea4053873dc367a3e7804f04f8823
ちょっと気になるドラえもん最新情報(2007年03月12日)
立派に恐竜を飛び越えた完成度!「映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険」
http://blog.goo.ne.jp/fujiko_f_toshio/
e/4dc1afaa56657cc6e816eb9595c45248
ちょっと気になるドラえもん最新情報(2006年03月05日)
本気で作られたエンターテインメント作「映画ドラえもん のび太の恐竜2006」
http://blog.goo.ne.jp/fujiko_f_toshio/
e/24cb5f1b488470c4ed416bad3ad1d20b
映画ドラえもん のび太と鉄人兵団【映画ドラえもん30周年記念・期間限定生産商品】 [DVD]
![映画ドラえもん のび太と鉄人兵団【映画ドラえもん30周年記念・期間限定生産商品】 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/61ZniK9ejWL._SL160_.jpg)
大長編ドラえもん (Vol.7) のび太と鉄人兵団 (てんとう虫コミックス)

大長編ドラえもん (Vol.12) (てんとう虫コミックス)

本日発売の月刊コロコロコミック7月号を確認したところ、次号の予告ページに「映画ドラえもん2012 完全新作プロジェクト始動!!」との情報がありました。よって雲の王国のリメイクの可能性は無くなったと思われます。タイトル・イメージボード等は全く掲載されていないため、詳細は次号明らかにされると思います。
予告ページ画像
http://livedoor.2.blogimg.jp/doraeiga2012/imgs/7/d/7df778a4.jpg
ちなみに、これに関連して自分のサイトで奇妙なプロジェクトを進めています。良かったらご覧ください。
http://doraeiga2012.client.jp/
貴重な情報ありがとうございます!
完全新作とは意外でした。でも凄く楽しみにもなりました。
勝手自作シナリオ、楽しそうですね~!
こちらも楽しみに覗かせていただきます!