スタッフ・声優リニューアル後、今回でもう5作目になる新生劇場版ドラえもん。しかも今回の作品はドラえもん映画化30周年記念作品。リニューアル後「映画ドラえもん のび太の恐竜2006」、「映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険~7人の魔法使い~」と、原作有り作品のリメイクが2本続き、「映画ドラえもん のび太と緑の巨人伝」は、リニューアルドラえもん初のオリジナル長編映画として製作。そして昨年はまた原作有り作品である「映画ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史」が公開されました。そして今年、30周年記念作品として制作されたのが「映画ドラえもん のび太の人魚大海戦(にんぎょだいかいせん)」です。
また久々のオリジナル。原作の無いお話なので、なるべく前知識を入れずに、白紙の状態で物語が楽しめる!と、楽しみにして観に行ったのでした。が…
<以下ネタバレ含む管理人の感想です。映画をこれから観る方は読まないでください。来年の映画についての情報も含みます。知りたくない方は注意!>
南洋・パラオの海でダイビングをしたスネ夫は、いつもの空き地でのび太やジャイアン、しずかに自慢話を繰り広げる。悔しがるのび太はドラえもんにお願いして、ひみつ道具「架空水面シミュレーターポンプ」を使って、専用メガネを掛けた人だけが体感できるバーチャルな架空水で町を海の底に!
そこでダイビングを楽しむ為に、ドラえもんとのび太は本物の魚達を「おざしき釣り堀」と「架空水まきぞえガス」を使って太平洋の海から連れてきたのだが、その中には大きなサメと人魚の女の子が紛れていたのだった。
物語の導入は原作漫画「ドラえもん」の単行本・てんとう虫コミックス第41巻の「深夜の町は海の底」がベースになっていますが、人魚族の姫・ソフィアが登場してから以降、本編の物語としてはオリジナル長編作となっています。
2本目の新オリジナル長編映画を監督したのは、2005年にリニューアルした新シリーズ・ドラえもんのTV・映画版の総監督を務めてきた楠葉宏三さん。脚本は「映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険~7人の魔法使い~」で、緻密でありながら大胆なアレンジを楽しませてくれた、小説家・真保裕一さんが担当。
前回の「映画ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史」でも脚本を担当した真保裕一さん。小説家として「連鎖」で江戸川乱歩賞、「ホワイトアウト」で吉川英治文学新人賞、「奪取」で山本周五郎賞や日本推理作家協会賞などを受賞しているベストセラー小説家である真保さんが、ドラえもん30周年作品にあたる今作を旧作リメイクで進めようとしたプロデューサーに「何を言ってるんだ! 新しいものでいこう!」と説得し、自ら製作委員会を納得させるシナリオを書いた(※参考記事)というのが今回の「のび太の人魚大海戦」だというのですが、結果的には真保さんが書いたとは思えない物語上の破綻があちらこちらに目立つ映画となってしまいました。
これが、脚本のせいなのか、演出・監督の責任なのかは、今となっては解らないのですが、そのヒントは映画公開と同時期に発売されているコミック版「映画ストーリー ドラえもん のび太の人魚大海戦(てんとう虫コミックススペシャル・作/岡田康則・エピソード/真保裕一)」に隠されているようなのです。この漫画、映画と同じ真保裕一さんの脚本を元に描かれているはずなのですが、特に後半からは映画と違う驚きの展開を見せていきます。ある意味、映画版より解りやすく、物語上で広げた伏線もきっちりと回収している事から、元の脚本にかなり近い物語なのではないか?と、個人的には予想しています。
それでは、今回の映画のどこに問題点があったのか? 個人的に気になって映画を楽しめなかった点を、コミックス版との違いを考えながら、順に挙げていきましょう。
○なぜのび太達はキャンプまで張って、時間をかけてソフィアの住む海底の都に向かうのか?
ご存じ藤子・F・不二雄先生の名作原作漫画「大長編ドラえもん のび太の海底鬼岩城」。今回の「のび太の人魚大海戦」は、明らかに「のび太の海底鬼岩城」がベースになっており、多くの設定や物語の構造が同じです。でも「海底鬼岩城」でドラとのび太達が海底をキャンプを張りながら進んでいたのは、そもそも海底キャンプが目的だったから。今回の映画「人魚大海戦」では、あまり理由が語られないまま、一晩かけて海の底の都に向かうのですが、前半に夜空を観る為に日本の裏側まで「どこでもドア」を使って行っている彼らが、なぜ太平洋にあるらしいソフィアの都に行くのに一晩も掛かるのか?そもそも「おざしきつり堀」で前日ソフィアが居た場所まで戻ってからスタートするのだから、どんなに掛かっても数時間で海底の都には着けるはず。映画では水中でキャンプを張れる「テントアパート」(コミック版では「キャンピングカプセル」を使用。)を、わざわざ「水よけロープ」で水を避けながら使用してキャンプを張りますが、まるで後半のストーリー展開の「水よけロープ」での反撃の為だけに作られた、無理矢理な伏線の様で納得いきませんでした。
○伏線を張って、それを回収するという物語の構造を拒んだ理由は?
「ドラえ本」に掲載された楠葉宏三監督の話によると、今回の映画で心がけたのは、小さな子供にも解りやすい映画にする事。その為なのか、コミック版には存在する多くの物語上の仕掛けがカットされています。人魚族の故郷・惑星アクアの勇者マナティアと、それを守る5人の仲間の伝説、その伝説に登場する人魚の剣をどのように見つけ出すのか?という部分の謎解き。ソフィアの父と母の、そして故郷・惑星アクアの悲劇のストーリー。人類最古の文明「シュメール文明」の、半人半魚の神から人類が知識を授かったという伝説から、アクアの場所がシリウスであるという答えが導かれるという物語の結末。地球の文明はアクアの民から授かったのかもしれない…という驚きのラストへ。という様な、元の真保裕一さんの脚本にはあったのであろう藤子F作品的な要素が全てカットされているのです。これは非常に残念に思いましたね。個人的には。
○名ゼリフ?だけに頼ろうとしてる?
今回、のび太が自ら行動し、何かを成し遂げようとする物語では無かった(映画版は特に)ですね。多くの決めゼリフ(一見名言風)を吐くのび太ですが、口先の言葉だけなら誰にでも言える。コミック版では多少行動で自身の意志を示すのび太ですが、映画では口先だけに感じたな~。「諦めちゃダメだよ!」ってのび太が言うには、その前によっぽど説得力のある行動をのび太がしてからでないと誰も納得しませんよね?(宇宙開拓史での勇敢なのび太はエライ!) これらも実は映画のみのセリフで、コミック版には登場しません。そして映画に登場する決めゼリフはどれも唐突。ハリ坊、ドラえもんにあんな風に言われる程、一人きりで頑張っていたかな~?
他にも、怪魚族との決戦直前というタイミングに、まだ元気そうな女王オンディーヌ(笑)が突然ソフィアに全てを任せると言い出したり(全権移譲?)、ソフィアがティアラ着けて祈ったとたん、ティアラと鎧が消えて、それが伝説の剣になったり(どんな設定?)、ジャイアンとドラえもんが突然サーフィンの達人(しかも2人乗り?)になっていたりと、もう何の説明も整合性も無い出来事が次から次へと…。
今回の映画、実は3回観たのですが(笑)、2回・3回目はかなり辛かった。物語的にも演出的にも、楽しめるのは冒頭、ソフィアが登場するまで。だってその後はドキドキ・ワクワク出来ないんだもの。ソフィアの正体も、敵の存在も冒頭で早々と説明されちゃって、その後の物語はゆるゆると進んで行く。小さな子供達が飽きないように小さなギャグが定期的に出てくるのですが、それも同じようなダジャレとドラの変顔。伝説の話はよく分からないまま解決しちゃうし、突然悪役の怪魚族との決戦が始まり、戦いの最前線で姫であるソフィアが戦うという唐突な展開。そして一番の驚きは、映画ドラえもんの定番である、ゲストキャラとの感動の別れのシーンが全てカット!という驚愕のエンディング! ああ、どこで感動しろというの?
エンディングテロップで藤子・F・不二雄先生のドラえもん原画を沢山見せられても、どうにもいまさら感とモヤモヤだけが残るという終幕。これが映画化30周年記念・原作漫画40周年記念作品と言われてもな~。
以下は良かった部分を少し…。
14年ぶりに映画ドラえもんの歌を歌った武田鉄矢さん。挿入歌「遠い海から来たあなた」は、往年の映画ドラえもんを思い起こさせる、懐かしく歌謡ちっくな温かい歌でした。それなのに今回の映画でのぞんざいな使われ方(短っ!)はちょっと残念でしたね。正直言うと、個人的にはこちらがエンディング主題歌でも全然オッケーでした。
レギュラー声優陣の好演と、ゲスト声優陣の熱演には大変好感を持ちました。というか、唯一救われました。心配していた怪魚族・トラギス役のお笑い芸人・ケンドーコバヤシさんも違和感なく好演。人魚族の女王・オンディーヌ役の女優・真矢みきさん、古代アクア語の研究者・メジーナ博士役の俳優・温水洋一さんも良かった。メジーナ博士の助手・サッカーナ役の東京海洋大学客員准教授・お魚らいふコーディネーターのさかなクンも、意外にキャラクターに馴染んでいてビックリ。その他の声優陣もハマリ役で、安心して最後まで各キャラクターの芝居を楽しむ事ができました。物語以外は。
個人的な採点としては、今回の「映画ドラえもん のび太の人魚大海戦(にんぎょだいかいせん)」は、昨年の「新・のび太の宇宙開拓史」よりも、「のび太と緑の巨人伝」よりも下だったりします。無難な作品を目指した訳では無いのでしょうが、過去の長編ドラのプロットを上手く組み合わせようとした制作意図が見え隠れしてしまっていたのが残念。また、やはり映像・演出共に、昨年も感じた「映画ではない、TVアニメっぽさ」を感じてしまいました。アップ多用でロング少なめ、画面はテンポ早く切り替わって子供を飽きさせない様に!とチャカチャカ進むので物語に緩急が無いという…。
映画のテロップ終了後には毎年恒例の、来年の映画を予告するおまけ映像。おざしき釣り堀と、そこを横切る丸い〈頭脳回路〉から「のび太と鉄人兵団(1986年公開)」のリニューアルと分かります! ああ、ツンデレなリルル! あの感動の名作がどのようにリニューアルされるのか? 監督は今回のおまけ映像を担当した寺本幸代さんなのか? 今から既に来年が大変楽しみなのでした!
●情報元リンク
映画ドラえもん のび太の人魚大海戦・公式サイト
http://doraeiga.com/2010/
としおさんのtwitterを見る限り、としおさんが一度目に見に行った時は、自分と入れ違いの形になったみたいです。
いろいろ理由があるとは思いますが、、今年は例年に比べ、感想を書いている人が少なく感じられ、少しさびしい気持ちです。
ちなみに来年の映画は、あの脳みそでようやく気付きましたw
架空海水まきぞえガスを直接海に行かずに、おざしきつりぼりを使ってまいたのは、来年の映画とリンクさせるためなのか、そうでないのか、どちらなんでしょうね。
でも、後日改めて観ても残念ながら褒められる点が無い。これならまだ映画的に努力して失敗した「緑の巨人伝」の方が僕は共感できますよね。
来年はとても楽しみです!
気持ち的には、制作スタッフを応援したい気持ちでいっぱいなのですがね~。3回も観たから、映画興行的には応援した事になったかも。
来年こそは楽しみたいです!
好きなドラ映画の1つだけに今年のようにはなってほしくないですね。最後のシーン(しずかちゃんとリルルのやりとり)は特に。挿入歌などどうなるのか楽しみです。
こんな感想ですみません。
確かに、来年は原作があるので、元の物語を壊さない様に注意はして欲しいですね。原作を壊さないアレンジというのはかなり難しいとは思うのですがね~。
リルルのキャラクター造形がかなり重要ですよね。期待しましょう!
単に『児童向け』という理由で子どもを『子ども視』してはいけないと思います。
『人魚大海戦』本当に酷い作品でした。こんな映画でお金をとってはいけません。
対象が子どもだからと少し舐めてかかったのでしょうか?
子どもをバカにしています。
漫画本通りだったら良かったのに…。
映像全体も雑というか汚いですし…(綺麗なのは背景のみ)。道具の説明ないし…。人魚族についての説明が少ないし…。ジャイアンあまり喋ってないし…。客をバカにしたようなギャグが鼻につくし…。大体、昔から楠葉宏三さんの作品って期待外れが多いから仕方ないですけど…f^_^;
楠葉宏三さん。お金もらってるんだから仕事くらい真面目にやって下さいね。
と言いたいです。
そういうのを配慮して考えたらどうでしょうか?
凄い批判されてるけど俺は面白かったけどな
ソフィア可愛いし
むしろ上に上がってる、リメイク系作品なんてゴミみたいな劣化作品になってて
かなり最悪の出来でつまらんが……