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ショパンの「再発見」

2004年11月13日 | 買ったら全部聴け

ショパンの「再発見」


ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11、ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 作品21

クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ&指揮)ポーランド祝祭管弦楽団

録音:1999年8月 トリノ〈デジタル録音)ドイツ・グラモフォンPOOG-10245/6

かねがね思っていたのだが…ショパンはピアノソロでは独創的な構成力と美しさに感動できるのに
ほかの楽器の扱いとなると生硬さばかり目についてしまうということ。
 その筆頭はピアノ協奏曲のオーケストラパートで、第一番のあの前奏がはじまると8割以上の確率で
「もういいや」と聴く気が失せてしまう。
 あれは体操競技とかで難しい演技の前にとるインターバルや助走みたいで(スポーツの方はあれで目を
こらす心の準備になるが)協奏曲でソロの引き立て役みたいにオケの前奏~しかもさえない響きで~
が鳴ったらさすがに白けてくる。

 ツィメルマンはそんな「カラオケ」演奏を無用と考えた。ここからがすごいのだが、現実的に弾き振りは
モーツアルトなら珍しくないがショパンは普通不可能と思う。
だから、自分と意を同じくする指揮者を探すのがふつうである。
 ところが今度はオーケストラの「固定観念」というか伴奏根性?みたいなものが邪魔である。
 そこで彼は自らオーケストラを組織して自身で指揮も執ることにしたわけだ。
 これは経済的(興業的)にも音楽的にも非常な冒険である。
大変好評だと伝えられたが、わたしもこの演奏を聴くまで半信半疑だったのだ。
 慎重な準備のうえ始まった彼らのツアーのさなかこの録音のセッションは組まれた。
 いや、これはむしろこのツアーのあまりの素晴らしさのために急遽行われたセッションではないのか?
とまで思うほど演奏者、制作サイドとも非常な熱気が伝わる素晴らしい録音だ。
 第一番冒頭のあのメロディの歌いかたからしてもう別世界である。
オーケストラ全体が歌っているのだ。この時点で鳥肌ものであるが、全曲一瞬の緩みもなく聴き手をとりこにしていく。
 「ショパンのコンチェルトが退屈なのはショパンコンクールのせいさ」と感じてしまう(因みに彼も優勝者のひとり)。
 ショパンはバッハと同じくらい研究の対象になっていてその成果はピアノのレッスン雑誌にだって載っているが、
曲の成り立ちやアナリーゼができたからと言ってこんな演奏ができるわけではない。
 彼はショパンが書きたかったピアノとオーケストラの間に横たわる音楽を敷衍して描いてみせたのだと思う。
 ことによるとショパンは自身の書いた音楽の成果を気づかぬ演奏家や聴衆をおもんばかってオーケストラに
手を染めることに封印したのではなかろうか?
 願わくば、他の演奏家によってこれに続く更なるアプローチが欲しい。

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【カラオケ演奏】
 「ミュージックマイナスワン」これにキッチリ合わせて演奏できる方を尊敬します。
実演でよくあるコンチェルトの「伴奏」はフォルテとピアノとメゾピアノしか無いやつ(爆)

(HPより転載:初出2001)


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