比較芸術文化論

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「あいちトリエンナーレ2013」設置作品第1号 打開連合設計事務所《長者町ブループリント》

2013-10-08 23:33:50 | アート・文化
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 3年に一度の現代アートの祭典「あいちトリエンナーレ2013」が名古屋市と岡崎市で、8月10日から10月27日まで開催されている。その設置第一号作品《長者町ブループリント》は伏見地下街にある。
 伏見地下街は名古屋駅と栄駅、両繁華街の中間で空洞化が進行する問屋街に接している。地上の錦通から地下への階段を降りたとたん昭和30年代の商店街にタイムスリップする。まるでタイムトンネルだ。
 そこに目をつけ、現代アート作品を設置した作家は台湾から来日した「打開連合設計事務所」。代表作の《Blue Print》は、台南の道路拡幅により切断された築100年の建物のリノベーションである。切断面を建築設計図の青写真(青焼き、青図)を模して青色に塗り、そこに白線で透視図を画いた。今や青焼き自体が懐かしいが、それが建築の持っていた記憶を呼び覚ます効果を持つ。
 さて、伏見地下街に設置された作品、《長者町ブループリント》は、地上から地下街へと降りる階段口5ヵ所を青く塗って稜線を白線で際立たせたもの。日没後、階段口は、街灯に照らされて深海の青色のように浮かび上がり美しい。
 それに加え、地下街の途中5ヵ所には、階段や鉄道、「忠犬ハチ公」が青地に白の輪郭で画かれている。それも、ビューポイントから眺めると透視図法的に立体感をもって立ち現れるように計算されてもいる。地下街を通過中、ビューポイントにさしかかると、それまで平面的に歪んだ図形が突如として階段や犬として立体的に飛び出してくるというトリック仕掛けだ。ジョルジュ・ルースにも似るが、ルースの場合、ビューポイントから見たとき、建物の立体感は消え去り平面的な図形だけが浮かび上がる。これに対し《長者町ブループリント》の場合、建物の立体感は残ったまま、別の透視図が現れる。現在と未来の透視図が二重像となっている。
 青焼きはいわば未来への設計図であり、それが古びた商店街と奇妙な調和を見せる。つまり、昭和30年代へと時間を遡るタイムトンネルが、実は未来への設計図と繋がっているのだ。
 ところで、今回2回目の「あいちトリエンナーレ2013」のテーマは『Awakening揺れる大地。われわれはどこに立っているのか。記憶、場所、そして復活』である。それは、直接的には東日本大震災後のアートをテーマにしている。しかし、その土地・場所に塗り込められた記憶を呼び覚まし(=Awakening)、際立たせ、再び記憶として刻み込むという意味にも解釈可能だ。《長者町ブループリント》は、文字どおりこのテーマの設計図のような作品だといえる。


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