中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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ペルー周遊記(39):第11日目(3):チャビンデワンタル遺跡(1)

2008年09月17日 19時10分09秒 | ペルー:ブランカ山脈ピスコ山登頂

                 <チャビンデワンタル遺跡を見学する>

     ペルー周遊記(39):第11日目(3):チャビンデワンタル遺跡(1)
          2008年7月11日(土)(つづき)

<様々な石造建造物>

■チャビンデワンタル遺跡の概要

 ブカラジュ湖から,カウィシュ峠を越えて東に進んだ私達のバスは,11時57分にチャビンデワンタル遺跡(Chavin de Huantar)の入口に到着する.
 チャビン文明は,紀元前1200年頃から紀元元年頃までに栄えた.私達が到着したチャビンデワンタルは,儀式を行うための中核となる宗教都市であった.この辺りの標高は3,180メートルもある高地だが,ここを訪れる巡礼者で賑わっていたという.この辺りに集積する石造群はユネスコの世界文化遺産に登録されている(ホセミゲル,2005.pp.88-89).
 ここは,広場,階段,通路,地下室などから構成されるピラミッド状の建造物群と,宗教的な図柄が施された石造建造物群によって構成されていて,古神殿(Old Temple)と新神殿の二つ神殿がある.古神殿は紀元前1,000年頃建築された.古神殿の正面は,太陽が昇る東を向いている.U字型の形状になっていて,建物の幅は100メートル余り,高さは16メートルほどある.
 新神殿は,チャビン文明末期の紀元前500年頃から200年頃までに建築された.神殿の壁は,頭の形をした40個余りの石釘と,大きな石板で飾られていた.

               <チャビンデワンタルの位置>


               <チャビンデワンタル遺跡の外観>


                           <展示品で見る遺跡の外観>

■素晴らしい研究員,カルメラさん
 カルメラさんという素敵な女性が,私達に遺跡の案内をしてくれることになる.彼女がスペイン語で話す内容を,三井さんが日本語に通訳する.早速,私のノートにサインをお願いする.彼女の名前はカルメラフアマンメンドザ(Carmela Huaman Mencoza)さん.何処までが「姓」で何処が「名」なのか良く分からないが,まあ,いいか・・・ でも,彼女の名前が長いので,ここではカルメラさんと呼ぶことにする.
 カルメラさんがスペイン語で説明する内容を,三井さんが日本語に通訳する.カルメラさんは,チャビン文明の研究員をしている.そのため,大変,博識である.私達への説明も理論的で精緻らしい.三井さんが思わず,
 「・・・彼女の説明は,はなはだ専門的で,専門知識がないと,うまく通訳できないよ・・・」
とこぼす.
 
    <学芸員のカルメラさんがガイドする>                    <善悪を象徴する石柱:入り口付近>


                  <古神殿と新神殿の配置>
         ※図中,網掛けの部分が古神殿.
          円形の広場を囲むように古神殿が作られている.
          新神殿は古神殿に接続されるように作られている.新神殿(図中のNew Templ)は四角い
          広場を囲むように作られている.広場には水の音を楽しむための暗渠が作られている.
                                        (出所)Burger,R.L.,発行年不詳,p.131


■古神殿と新神殿
 この遺跡は,モンスナ川(Monsna River)とワチェッサ川(Huachecsa)が合流する三角州状の流域にある.丁度,ブランカ山脈の東側に位置している.
 まずは展示場を見学する.展示場の模型を見ると,古神殿を囲み込むように新神殿が作られているのが分かる.古神殿の建物は,円形の広場(Cirular Plaza)を囲むように「コ」の字に作られている.広場は一段と低い位置に作られていて,石造りの立派な階段を登って,神殿に進むような構造になっている.
 石造りの建造物は,石材を粘土質の接着剤で張り合わせて作られている.

          <古神殿の円形広場>              <古神殿地下への出入り口>

■善悪を象徴する石柱
 カルメラさんから,最初に説明を受けたのは,入口近くにある,石柱である.この石柱には,マントを持ち上げたような姿の人間らしい彫刻が施されている.これは,この世界を形成する4大要素,「地」「水」「火」「風」の神を表しているという.
 私は,説明を伺いながら,鎌倉周辺で良く見掛ける五輪塔のことを連想してしまう.五輪塔は下から順に,「地」「水」「火」「空・風」を表している.そういえば,昔,昔,学生時代に教わったギリシャ哲学概論で,「万物は,地,水,火,風の4要素から成り立っている・・・」という下りがあったことを.懐かしく思い出す.
 この柱の彫刻を良く見ると,人間らしい像がサボテンの枝を持っている.腰にはヘビが巻き付いている.そして,足の爪は鷹の爪の形をしている.これらは「力の象徴」を意味しているらしい.
 ヘビは地面の中の神,ネコは地上の神.そして爪は天空の神の象徴だという.
 サボテンには断面が7本の襞になっている種類がある.このサボテンには幻覚作用があるという.
 
     <幻覚作用のあるサボテン>            <遺跡の外観>
 
■水の音
 新神殿の中央には,周辺より少し低い位置に正方形の広場がある.正方形の1辺の長さは49.64メートルあるという.カルメラさんの説明によると,この広場は南十字星を表しているという.ここで宗教行事が行われていたらしい.
 広場を挟んで,遺跡の建物と反対側に,小さな石に囲まれた孔が開いている.この孔の奥には水路があるらしい.現在は水路が埋まっていて,水は流れないが,水路を流れる水の量の多少によって,水が流れる音が変化するらしい.この水の音には,癒し効果があるようである.

               <水の音が聞こえた孔:現在は泥で埋まっている>

■七つの窪みのある大きな石
 広場の片隅に大きな石が置かれている.この石には7個の窪みが作られている.この孔が何を意味しているかが良く分かっていない.一説では,冬至のときの七つの星座の位置を表しているという.冬至には,ヒツジ座が真北にくるという.2番目の説は,これらの7個の孔で,その年の雨量を予測したというものである.

                   <七つの窪みのある石>

■ヘビの彫刻
 続いて,ヘビの彫刻が施されている石段を見学する.良く見ないと,どこにヘビの彫刻があるか分からないが,とても大切な遺構らしく,周囲に縄を張り巡らして,中に入れないようにしてある.
 
                                    <ヘビの彫刻のある石段>

■石積みの構造
 続いて,神殿の外側を見学する.近くに寄ってみると,極めて大きな石垣状の構造物であることが分かる.大きな石を帯状に積み重ねてあるが,大きな石の上に小さな石を重ね,さらにその上に大きな石を重ねるというサンドイッチ構造になっている.
 石垣の下部には四角形の化粧石が貼り付けられていた.また,石積みの上の方には,丸い顔が付いた石柱が,沢山,填め込まれていたが,現在はわずかしか残っていない.口の悪い仲間が,この石の顔が私に似ているという.そして,私をわざわざ石の顔の下に立たせて,写真を撮る.
 それにしても,この石の顔は不思議な表情をしている.カルメラさんの説明によると,この表情はエクスタシーを表している.エクスタシーを得るには,断面が7本角のサボテンが使われたようである.
 
       <石積みの構造>                   <石の化粧板>
    ※大きな石の層と小さな石の層が交互に重なっている.裾の部分は石の化粧板が貼られている.


                    <壮大な石積みの壁>

                         (つづく)
参考文献
Burger, R. L.,発行年不詳,"Chavin and the Origins of Andean Civilization,"発行元不明.
ホセミゲル,他(著);川又訳,2005,『ペルー発見』,イポカン出版
 

前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/86d4fcfbef17e13f25fdeddf782c6362
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