<7:04 見晴らしの良いところで人休み>
ロッキー山脈紀行(32):第7日目(1):グレイズピークを目指して
(アルパインツアー)
2010年8月19日(木)~28日(土)
第7日目:2010年8月25日(水)
<第7日目の行程>
早朝,専用車で登山口にスティーブン渓谷トレイルヘッドへ向かう.
渓谷に架かる橋を渡り,右手に聳えるケルソ山,およびトレイズピークから続くなだらかな斜面をトラバース気味に進む.
頂上直下,スイッチバックを登って,グレイズピーク山頂に至る.さらに,北に延びる尾根を約800メートル進んで,トレイズピーク山頂に到着する.
往路を辿り登山口に戻る.登山口から専用車でブレッケンリッジへ戻る.
<登山地図>
<プロフィールマップ>
<早朝の出発>
■深夜3時のモーニングコール
早朝,というよりは深夜の3時にモーニングコールで起こされる.
前夜よりは大分よく眠れたので,今朝の体調はまあまあ良さそうである.大急ぎで,洗面,身支度を調える.そして,集合時間の3時30分に,ホテルのロビーへ.集合時間には全員が揃う.何となく寝不足に感じる気分である.
3時40分,私達は2台の専用車に分乗して,ザグレートデバイドロッジを出発する.
<3:30のロビー>
■専用車で登山口へ
真っ暗な中,立派な道路を暫くの間走ってから,舗装されていない道路に入る.車体が大きく上下左右に揺れる.そして,4時40分,登山口であるスティーブン渓谷トレイルヘッド(Stephens Head Trail Head;標高3,423m)の到着する.
辺りには,私達以外に全く人気もなく,真っ暗に静まり返っている.西の空には,少し欠けた月が明るく輝いている.
<グレイズピークを目指して>
■ヘッドランプの光を頼りに登山開始
4時59分,ヘッドランプの光を頼りに,登山口から歩き始める.気温がどの程度か分からないが,とにかく寒い.暗くて寒いと,どうしても気分が萎える.私は心の中で,
「高いお金を払って,なんでこんな辛いことをしているんだろう・・」
と自問自答する.
<4:59 登山道入口の看板>
■末尾のグループと一緒に
今日,私は意識的に足の遅いグループに混じって歩こうと思っている.と言うのも,一昨日のエルバート山登頂で,参加者15名の内4名も途中で落伍するという意外な結果が納得できなかったからである.キリマンジャロ山やモンブラン山なら,標高の高さや技術的困難さから,成功率がそれぞれ80パーセント,および60パーセントと言われている.でも,エルバート山は,標高も4000メートルを越えているとはいえ,それほど高いともいえないし,特段の登山技術も要らない平易な登山道である.この程度の山で4人もの落伍者が出るのは,私の感覚では少々意外である.
とはいえ,私も登山には素人.でも,素人なりに,なぜ4人もの方々が落伍したのか実態を知りたいなと思う.そこで,一昨日からグレイズピーク,トレイズピークの登山は,最も足の遅い方々と一緒に歩いてみようと思っていた.廻りの方々に,
「今日は,一番後ろの方々と一緒に歩きます・・」
とお話をして,行列の一番後ろに廻る.
■月明かりの登山道
上空に冴え渡った月が煌々と輝いている.夜目に馴れてくると,ヘッドランプなしでも歩けるほどの明るさである.歩きながら,ユックリ組の方々(以下遅組と略す)に,
「今日は,ユックリ,マイペースで歩きましょう・・」
とお話しする.
「息が切れたり,流れるほどの汗をかいたりは,ペースが速いんです・・そんなに速く歩くと,すぐに草臥れてしまいます.ユックリ,ユックリ,歩きましょう.」
<5:50 月明かりの登山道>
■最初の休憩
5時52分,標高3,630メートル付近で,最初の休憩を取る.辺りはすっかり明るくなっている.私達はトレイズピークから続くなだらかな斜面の上にいる.すでに森林限界を越えているので,前方には累々と岩屑や礫が重なる山が連なっている.
<6:00 休憩>
■朝日が眩しい尾根道
5時50分頃,朝日が前方に見える山の頂に当たり始める.手許にはラフな地図しかないので,正確な山座同定は期待できないが,私達はトレイズピーク(標高4,347m)のようである.
明るくなってきたので辺りの地形を見回す.地図で確かめると,私達はケルソ山(Kelso Mt.標高3,890m)南東の斜面をトラバースしながら登っていることが分かる.
登山しながら,絶えず地図で現在地を確かめることを癖にしている私には,自分が地図上でどの辺りを歩いているかに,とても興味がある.ただ闇雲にガイドの後を歩いていて,何が楽しいのかというのが,私の率直な感想である.
<6:19 朝日が眩しいトレイズピーク>
■とにかくユックリ
休憩を終えて,6時02分,再び歩き出す.
私達は,すでに,富士山の8合目辺りに匹敵する高所を歩いている.しかし,周囲全体の標高が高いところを歩いているので,高度感は全く感じられない.極端に言えば,伊豆高原を歩いているような感じである.
私は素人登山愛好家ではあるが,これまで標高4,000~5,000メートル級のやや高い山に何回かの取った経験がある.その乏しい経験からいえることは,4,000メートル以上の高山で,一旦,疲労を蓄積してしまうと,もう殆ど復帰不可能になってしまうということである.
従って,高所登山の場合,いくら技術的に平易な山でであっても,決して急いではいけないし,常に深呼吸をするようにしていなければならない.
そんな経験から,遅組の方に,絶えず,
「決して焦らないで・・・ユックリ,ユックリ,・・はい,深呼吸・・」
と言いながら励ます.
それでも,山歩きに馴れていないのか,どうしても,大股で「ハア,ハア」言いながら登る人が多い.これでは,早晩,疲労して参ってしまう.
「前に行っている人のことは,気にしないで・・・とにかく,ユックリ,ユックリ,・・深呼吸!」
私は,バカになったように,同じ言葉を繰り返す.
6時15分,グレースピーク国立リクリエーショントレイル(Grace Peak National Recreation Trail)入口に到着する.大きな看板が立っている.ここは,看板を横目に眺めたまま通過する.
前方には,山頂に朝日が当たって茜色に輝くトレイズピークが見えている.私達遅組は,先頭グループよりも,大分遅れで,100メートルほど後方を歩いている.でも,焦ることはない.もし,ユックリの結果,仮に時間切れになって,山頂を踏めなくても,最善を尽くしての結果ならば,誰でも十分満足するだろう.私は,仮に山頂に行けなくても,全員に満足感を味わって貰いたいと思っている.
■登山道が少し険しくなる
私達は茜色に染まった山稜を眺めながら,ユックリと登り続ける.
私は相変わらず,
「・・ユックリ,ユックリ,・・・ハイ,深呼吸・・」
を繰り返す.
それと同時に,僭越だとは感じながら,歩幅を狭く,フラットフッティング,後に蹴らない,一歩一歩丁寧に・・など,山の歩き方の基本を説く.これも,是非,全員に山頂まで行って貰いたいからである.
■見晴らしの良い平原で朝食
6時55分,見晴らしの良い高台に到着する.ここで,10分余り休憩を取る.
ガイドのネイトさんが,
「しばらく休憩します.どうぞ朝食を摂って下さい・・何かお腹に入れて下さい・・」
と皆を促す.
朝日が真横から射し込んでくる.
進行方向右手には,岩礫ばかりのケルソ山が,大きく立ちはだかっている.
<6:55 休憩>
■標高4,170メートル地点で休憩
7時41分,標高4,170メートル付近で休憩を取る.辺りは,先ほどまでに比較するとゴツゴツとした岩礫が目立ち始め,登山道の勾配もやや急になり始めるが,見た目には,広大な山裾が広がっているだけで,それほど高いところを歩いているようには感じられない.しかし,優に富士山の標高を超える高いところに居る.
快晴だが微風が吹いている,私は遅組に混じって歩いているので,体力的には十分に余裕がある.そのため,歩いていても,全く汗はかかないだけでなく,やや寒い感じのままである.
私は自作のプロフィールマップを,遅組の皆さんにお見せしながら,
「・・今,この辺りを歩いていますよ・・後,○○メートルほど登れば山頂ですよ・・」
と山頂までの見通しを伝える.
■深呼吸しながらユックリと
7時52分,再び歩き出す.標高が高いところなので,特に無理をしないように,遅組の人に注意する.だんだんと足の速いグループとの間の距離が広がっていく.これも致し方ないことである.
絶えず,
「もっとユックリ,・・深呼吸!」
を繰り返して,ややもすれば落伍しそうになる一部の仲間を勇気づける.そして,時々立ち止まって深呼吸をして貰う.
先頭グループとの間がますます広がるが,どうせ往路を下るので,行けるところまで行けばよい.それに,今回は,もう,エルバート山に登っているので,私(わたし)的には,十分,目的は達成している.今日の登山は,まあ,有り体に言えば余録.私的には,山頂へなど,行けても,行けなくても,どっちでも良い.ただ,エルバート山で挫折した4人の方には,是非,4,000メートル級の山に登ったという喜びを味わって貰いたい.これは,今の私の執念でもある.この4人に対して,十分なサポートをしなかったスタッフ各位への当てつけでもある.落伍者を出したことが癪に障るので,全員で登頂して,スタッフの鼻を明かしてやりたい.
<7:45 山頂間近からの眺望>
(つづく)
[加除修正]
(1)2010/11/13 転換ミス数カ所訂正
(2)2010/11/13 表示フォントサイズを10pt.から12ptに拡大.
「ロッキー山脈紀行」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/c0afd656cab3b805754847ce4a84ec07
「ロッキー山脈紀行」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/bd3f82aae545699712445901eaaaeed1
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